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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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対抗策の手掛かり その2

ロンロ商会でクロウ達が解決策を探す中。ミトロ、レンター、ニア、ダイナは図書館へと向かって歩いていた。


「うーん。流石に完全に復興した、とは言い難いね〜」

「……それはそうだな。あれだけ被害が出ていた戦いだ。むしろ図書館が残っていればいいが」


ダイナが街で復興作業に勤しむ人達を見ながら呟くと、レンターが心配するような口調で合わせる。

そこで私は自論を述べることにした。


「私としては図書館は残っていると思います。ラクザは海に面した街であり、かつ海からは少し離れた場所に図書館が配置されています。襲われたのがいくら休日と言えど、あの影が出来るのはせいぜい中を荒らすことぐらいかと」

「おぉ!ミトロそれっぽいね!そうだといいね!」


ニアが同調してくれた。確かにこれは推測に過ぎない。だが図書館とされる場所が見えれば……。


「あっ。あれじゃない?ほら。なんか大きい建物」

「……確かに、民家といった感じではない。それに宿泊施設と言った高さでもなさそうだ。あれだろうな」


頷くと、ダイナが風の広域化魔法で私たちを後ろからそっと追い風で押す。

そうして私たちは建物の前までちょっぴり早く移動したのだった。


「ラクザ街立図書館……ここで間違いないわね。入ってみましょう」



中に入ると一階の入口は休憩スペースのような形になっていた。案内所と書かれた場所もあったので、そちらにダイナが一番に駆けつける。


「……ダイナ、図書館の中では走るな」


レンターがツッコミを入れながら私達も歩いて後ろを追う。


「すみません〜。精神に関する本って、何階に置いてありますか?」


子供向けのお立ち台からとんでもないワードを響かせるものだ。しかし、案内員さんは丁寧に教えてくれた。


「あらあら、難しい本だけれど大丈夫かしら?精神学の本は三階のCコーナーに設置してあるわよ」

「ありがとうございます〜」


三階のCコーナー。そこを目指して階段を上った。

三階に到達すると静かに本を読む人が多数いた。勉強に励む人も沢山見受けられる。声を抑えて皆に伝える。


「他の人の迷惑にならないように探しましょう。とりあえず感情に関する本と愛情に絞って皆で持ち寄りましょう」


無言で三人とも頷くと、静かにCコーナーの中で散開する。

私も他の人がいる中、上を見上げながら探してみる。


(うーん……中々無いわね。個人的に興味を唆られる本は沢山あるのだけれどそんな場合じゃないわ)


色んな棚をじっくり見て本を探すこと約十分ほど。ようやくそれらしい本を一つ見つけた。


(もしかしたらCコーナーの分類の中で更に分かれている場所に誰か当たったのですかね。そうするとコーナーの案内図を先に確認するべきでした。一旦戻りましょう)


そう思いながら本を一冊持ちながら先程の場所まで戻った。

既にニアとダイナはそれぞれ本を抱えて待っていた。となると、レンターが当たりを引いたか。


「……待たせた。子育てやらの本の中に愛情に関する本が沢山あってどれを持ってくるべきか迷ってしまった」

「それぞれが読み終わったらレンターの行ったコーナーに行きましょうか」


そう言うと空いている勉強用の机の所まで行き、四人で座って読み始める。

黙々と読み始める。しかし難しい。確かに案内員さんの言う通り、難しい。だがここで諦めては他の仲間と、何より信頼して自分に話してくれたレテ。それに乗っかった自分が許せない。

それからどれぐらいの時間が経ったのか。未だ本を一冊も誰も読み終わらないところでレンターが声を発した。


「……ふむ、ここの記述」


レンターが静かに指でなぞると、皆が身を乗り出してその部分を見る。


「何何……?『過度な愛情表現、特に自身を犠牲にしてまで相手に関心を持ってもらおうとする場合があります。また、愛情表現で関心を持って貰えない場合、あえて嫌われるような行為をすることで目につくようにする事もあります。』……これ、タルタロス王の事?」


ニアが質問すると、レンターが頷いて本を再び見ながら答える。


「……ああ。タルタロスを滅ぼすならタルタロス王は必ず滅する事になるだろう。そうしたらこの記述を見つけてな。その時どうやって攻めの準備をしているタルタロス王を強引に引っ張り出すか……。レテの力のヒントになるんじゃないかと思ってな」


その言葉に納得する。彼の力は愛だと言っていた。確かにその点、何らかのヒントになるかもしれない。


「こっちの本はね〜ダメだ〜分からない」

「そもそも難しすぎるよ……」


確かに難しすぎる。それは読んでいて思った。成果もあまり無さそうだ。仕方ないので少し方針を変えよう。


「そうしたら本を返して、レンターの行ったコーナーから簡単そうな本を選んで皆で読みましょう。最悪借りて、寮で読んでからまた彼にここまで送ってもらいましょう」


彼の力……あの門の魔法は便利である。このぐらいは許してもらえるだろう、多分。

自分でも不確定要素を取り入れたな、と思いつつ皆本を閉じて歩き出す。

そしてレンターの案内でずらりと並ぶ本の中から、とにかく愛情に関する本を必死に皆で探すのであった。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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