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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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いざラクザへと

あれから数日が経ち、休日。朝食を食べた後にすぐ自分の部屋に集まると、各自のやるべきことを確認する。


「俺とショウ、それにシアは商人……ライのところの店に行こう。何かヒントがないか少しでも探るんだ」


クロウがそう言うと残る二人も頷く。


「私とレンターは図書館へと向かってみます。もしかしたらこの前の戦火で無くなった蔵書があるかもしれませんが、それでも関連する蔵書はあるはずです」


ミトロがいつもの口調で落ち着いて話すと、レンターも無言で頷く。


「あ!それ私も着いて行っていい?」

「僕も〜」


ニアとダイナが立候補する。確かに図書館は膨大な広さであるし、そもそもどこから手をつければいいか分からない箇所でもある。御伽噺にヒントがあるとは有るかもしれないと言ったが、本当にあるのかすら分からない。

そう考えれば残りは決定だろう。


「そうしたら自分とファレス、フォレスはレインさんの館と蔵書、聞き込みになるかな。ただ蔵書に関しては漁っても有力な情報が無いって話だったから……見方を変える必要があるかもね」

「見方?」


ファレスが聞き返してくる。それに対して、この前イシュリア王と話した事を説明する。


「先に言っておく。自分の特異能力は『愛』の一文字で表示された。だからこの前皆が意識していてもこっちに向いたのはあの盾が心の中にある愛という感情に干渉したからなんだ。……そして、タルタロス王はティネモシリという王妃への愛の一心で動いてると思っている。だから自分の力を振るえるようなヒントを持ち帰ってくれるだけでも有難い」


それを聞いて皆ポカーンとしてしまう。固まったのかと思ってシアと一緒に皆の目の前で手を振ると再起動したように言う。


「……その感じだと、シアは知っていたのか」


レンターが問いかけると、シアはこくりと頷く。彼女は戦闘用ではないとはいえ数回盾を見せていた。それを受け入れた事でそれなりの耐性がついたのだろう。それでもこの前のは消すまで辛そうではあったが。


「なるほどね〜。そうしたら図書館でも特異能力に関する本を漁ってみた方がいいかな?」

「漁るなら精神に干渉する情報があるものがいいかもしれませんね」

「私は特異能力じゃなくて、精神そのものに関する本を漁ってみる!」


精神関連……というより感情関連は難しい本が大多数なのだが上手く情報を取れるだろうか。かなり心配だがもはや任せるしかない。


「そうしたら出発するか。皆最低限のお金は持ったか?夜まで帰ってこないから昼飯は各自財布から出してもらうぞ」


そう言うとショウがピクっとしてガサゴソと制服を漁る。


「……財布忘れたからちょっと待っててくれ」

「言っておいてよかったよ……」


数分後。準備が終わったことを確認すると最後に集合場所の確認をする。


「帰宅時間は夜の八時目安。集合場所はラクザの屋敷……レインさんの家だ。門もレインさんの部屋に開く……と問題が起こるな。仕方ない、郊外に開くからそこまでは皆一緒に行動しよう」


皆やる気に満ち溢れた目をしている。それが失われないことを祈りつつ、立ち上がる。


「じゃあ行くか」


そう言って右手を伸ばすと、門が出現する。勿論行先はラクザの郊外だ。


「行くぞ!」

「「応っ!」」


そう言って自分が最後に残り、皆入った事を確認すると自分も潜った。



郊外に到着すると、門を閉じる。


「いや〜やっぱり一瞬で来るのには慣れないね」

「慣れる人はあんまりいないと思うよ!」


ダイナの声にニアが答える。一応広域探知をして人が居ない事を確認する。


「ん?」


行商人だろうか。そこに複数人が群がっている反応がする。これは……。


「ちょっと予定変更!多分行商人が襲われているから助けに行くぞ!」

「それは見捨てらんねぇな!」


ショウがやる気満々で言うのを皮切りに自分が走り出すと、他のみんなもついてくる。

森を抜けた先で、丁度影になっている場所で行商人は襲われていた。


「これはラクザの復興に必要な物資です!貴方方のような外道にあげるものでは……!」

「るっせぇな!」


そう言って行商人が蹴られる。護衛も雇ったみたいだが、態度を見る限りグルか何かだったらしい。


「さーて。こっちは食いっぱぐれないように貰っていかないとなぁ……ぐっ!?」


ファレスが高速で動いた。行商人を蹴った男に風を纏わせて顎を蹴飛ばした後、そのまま拳を鳩尾に叩き込む。


「あ!?護衛はお前らだけじゃなかったのかよ!」

「俺たちだけのはずだよ!ちくしょう、このガキ共どこから……うがぁっ!?」


他の盗賊が狼狽えている間に今度はフォレスが岩の弾丸を両目に一発ずつ、槍を腹にぶっ刺す。えげつない。


「ちくしょう!人質だ!人質をと……」


その言葉を聞いた瞬間、自分の中の何かがブチッと切れた。

『左手』に紫の剣を顕現させると、周囲の温度が急激に冷えたように凍える。


「なん、なんだ……俺は……俺は……ああああああああああ!」


他の盗賊も、行商人も、クラスメイトもその剣にあてられて狂い始めていた。

足に風を纏い、護衛、もとい盗賊共を容赦なく斬る。


「ああぁ!あぁ!俺の!俺の!愛おしい腕がああああ!」

「俺の可愛い脚がああああ!」


まあ数人治療では済まない範囲になったが自業自得だろう。盗賊を全員始末して、土で作った縄でぐるぐる巻きにすると土で檻を顕現させてその中に風で放り込む。

そして左手の剣を消すと、皆正気を取り戻したように周りを見る。


「今、のは……」

「……これがレテ君の、攻撃?」


クロウとシアが呆然としながら呟く。あぁ、やってしまったと思いつつ近寄る。


「すまない。人質って聞いたら何かな……」

「……ううん。ありがとう。でも、怖かった」


ファレスが珍しく元気なさげに言う。それに加えてフォレスも言う。


「……確かに心に付け込まれた感じがした。でも、その後……私が私じゃないような、狂わされた感じがした」

「……」


それが左手の剣なのだ。そっぽを向くと、行商人からお礼を言われる。


「あ、あの……!とにかく分かりませんがありがとうございます!迷子でしょうか……あの、ラクザまで一緒に……」

「はい。行きましょう」


即答すると、ほっとした様子で馬を起こして再び歩き出す。

怪我をした盗賊は止血程度の軽い治療しかしていないが、まあこれも自業自得だろうと檻を浮かせながら思った。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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