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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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特異能力 愛

「皆実技に磨きがかかっているなぁ!感心感心!」


スイロウ先生相手の元、クラスメイトが模擬戦を行っていた。

ファレスは付与系統をきっちり活かし、得意の武術で拳に風を纏わせて攻めを続ける。また、引くときはきっちり後ろまで引いてから風の球を飛ばして牽制するなど、自分に有利になるように場をコントロールしようとしている。

逆にフォレスは後衛一本からファレスのように多少動きながら収縮系統の岩の槍を飛ばしたり、収縮という特性を活かしてスイロウ先生からの攻撃を岩で挟み込んで無効化するという芸当を見せた。


(……特異能力で精神を交換してお互いの戦い方を学んだ、って感じかな。いつの間にやったのやら)


それを見終わると、次は自分の番だ。どこまで出そうかと思いつつスイロウ先生から提案が出される。


「そうだぁ!レテ君、本来一年生ではやらないのだが……特異能力の練習をしてみてはどうだね!?勿論、持っていればの話だが……!」

「……特異能力は持っていますが、何故?」


不思議でしょうがない。他の子は皆普通の訓練だったのに自分だけ特異能力。この前の四学年の先輩と同じだ。


「タルタロスなる異界から攻められた時、君は大いに活躍してくれた!それはもう間違いはない!だが、あのように多くの敵がいては魔力切れも必至である!だから魔力切れにならないよう、特異能力による戦闘を提案したのだが……どうかね?勿論、選択権は君に委ねる!」

(……特異能力。そう、タルタロスを『攻める』時は使わなければいけない力……)


ふとそんな事を考える。そして反射的にこくりと頷くとスイロウ先生がおぉ!と歓声をあげる。


「そうか!とりあえず見せてくれるだけでも有難い!……一応他の待機している先生にも伝えてくる故、待っていてくれるかい?」

「わかりました」


そう言ってスイロウ先生は走っていった。その後クラスメイトが聞き始めてくる。


「特異能力!?ねえねえ、どんなの!?」


ニアが一番手に話して、皆がそれを待っている感じだ。


「……もしかしたら見ていられないかもしれないから先に言うけど、心だけは強く持っていてくれ」

「えー!それじゃ何も分からないよ!」


そんな中一人、ミトロだけは何かを納得したように頷く。


「……ミトロ?」

「いえ、少し心当たりがありまして。……大丈夫です」

「そう?でも、本当に気をつけて欲しい」


そう言うと自分は訓練場でスイロウ先生を待つことにした。


(彼が持つ力。そして前に聞いたシアさんの事。それが私の推測通りならば……)


心を強く持たねばならない。それは自分の意志を強く持つだけでは足りない。自分は決して支配されないという確固たる心を持たないといけないと、ミトロは一人思った。



「待たせたなぁ!待機中の先生を呼んできたぞぉ!」


スイロウ先生が戻ってくると、三人ほど先生が来た。一年生が特異能力を使うのだ。これでも恐らくは少ないのだろうが、これ以上は居なかった、というべきか。


「……ではお手柔らかに」


スっと目を細めると、久々に自分の鼓動を確認する。

心臓の高まり。期待の目。不安の目。それに込められた愛を、感じ取る。


「じゃあ何時でもいいぞ!来なさい!レテ君!君の特異能力を見せてくれ!」


そう言われた瞬間、自分のそれが弾け飛んだ。

右手をずっと前に出して、ただ一言発する。


「慈愛の盾よ」


そう言うと純白の盾が顕現する。その瞬間、クラスメイトはおろか、スイロウ先生、連れて来られた先生すら必死に耐える。


「な……これは……暴走ではない……!」


予備の先生が苦し紛れに言う。その通りだ。暴走ではない。愛という心に付け込むその力こそ自分の特異能力。


「くっ……!これでは……」


スイロウ先生も何とか自我を保っているが、フラフラとこっちに来ている。赤子が母親を求めるように、覚束無い足取りで。


「先生。これは盾。……武器ですよ」


そのまま無抵抗のまま近づいてきた先生に勢いよく盾を突き出す。盾により無抵抗のまま吹き飛ばされた先生は転がりながらも立ち上がり、またこちらにやってくる。


「抵抗が……!出来ない……っ!凄いなぁ……!」


クラスメイトの皆も警告したとはいえ、苦しそうだ。盾を消すと、唯一体験し、無事だったシアが皆の介護をしている。


「……レテ君、今のは……暴走では無いのだね?」


正気に戻ったスイロウ先生が聞いてくる。それに頷くとはっきり答える。


「はい。これが自分の特異能力です。……しかし、これは守る為に過ぎません」

「……あれだけ私を吹き飛ばした盾とは別に、特異能力があると?」


その答えには首を横に振る。


「いえ、正確には精霊召喚などとは違い……そうですね、精霊召喚で様々な属性の精霊を呼べると言えばいいのでしょうか。自分の能力は守る為の力と戦う為の力があるのです」


その言葉に大きく頷くと拍手が送られる。


「なるほどなぁ!しかし、既に特異能力を制御できているとは凄いなぁ……!相当な努力を積んだと見える!」

(努力……そうかもしれない)


他の先生もフラフラしながら立ち上がる様子を見て呆然としているのが分かる。

これがもしも本物の戦場ならば。レテという人物はこの場の全員相手に無抵抗で勝利できる。

そんな畏怖を植え付けたのかもしれない。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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