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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

愛する人を間違えた。

作者: ゆいさと

前書き

僕は、他の人とはどこか違う。 どこが違うのかは分からない。この小さな体では。


あと数ヶ月で小学生になる 笹倉 海唯 (ささくら かい)は、両親、姉、妹の5人家族だ。 妹は、生まれたばかりで病院にいる。母も、病院にいる。

家には、姉と父と海唯の3人だ。だけど、姉の咲唯(さい)は、高校生で家には居たくないと行って帰って来ない。友達の家にいると言っているが、本当は、彼氏の家にいるのを海唯は、知っている。つまり、家には、父と海唯だけだ。


「お父さんやめてよ、」

「痛いよ、」

「うるせえ」

お父さんは、僕とお母さんに暴力を奮う。

夜には、ビール瓶を投げ飛ばす。怒鳴りながら窓を割る。


お母さんは、病院で安全だけど僕は、危ないまま。

学校が、始まるまで僕はお父さんと2人で暮らさないといけない。

生きていられるかが分からない。


母から手紙が届く。それが海唯にとって1番の幸せで時間を潰せることだった。

だが海唯は、字が読めないので父に読んでもらっていた。


父は、慣れた手つきで封をあけて舌打ちし 息を吸った。



海唯へ


母です。最近は夜が冷え朝起きるのが憂鬱だと思うけどちゃんと起きてる?

お母さんは、毎日朝起きてすぐに芽唯めいを見に行かなくちゃ行けないから、憂鬱なんて言ってられません。海唯まだ咲唯はまだ帰って来てない?

帰ってきたら病院に顔出しなさいと言って! あと、お母さんは元気です。

この手紙は、お父さんが読んでると思うから言うけど、、、、。



「お父さん??」


声が止まり父は手紙を持つ手が震えてる。顔が強ばって、いつ手紙を破ってもおかしくないような様子だった。


「なんでもない。」


いつも僕達を殴っているお父さんとは別の顔を見た。いつも眉間にシワをよせた顔とは違う、何か嫌なものを見たような顔。


「手紙の、、、続き。」

少し怖くてかすれてしまった声にお父さんは今までに見たことのない顔つきで答えた。


海唯お勉強しなさいよ。入学式楽しみにしてるからね!


愛唯あいより



部屋の空気は最悪なものだった。

父の顔は、好きな歌手のデビュー曲を嫌いな芸能人が歌ってるのをテレビで見てるような顔だ。


僕はこの顔を忘れない。



4月中旬 入学式 当日 朝



「海唯一 準備できたか? 行くぞ」


「はい。」


「どうした? 元気ないな。」

「怖いか?」


「うん。」


「安心しろよ。 お父さんがいる。」


声は小さかったし、遠くを向いていたから聞き取りにくかったが、確かに言ってた。


車に乗り、小学校近くの駐車場に車を置き、2人で歩いて行った。

学校に着き先生と思しき人に、案内されるがまま教室へ。


体育館に整列して、連れて行かれた。

後ろの観客席が、とても気になるがそれよりも前の子の髪の毛がどうも硬そうで触りたくてどうしょうもなかった。


何も起こらずに入学式は終わった。

外へ出てすぐにお父さんとお母さんの姿を見つけた。


「お母さーーん。」

走って駆け寄った。


「海唯かっこよかったよ!」


「あぁよかった。」


父が笑顔になったのは、僕の前では初めてだった。


少し横に咲唯が見えたが声はかけなかった。



車に乗り、4人で家へ帰ると咲唯がいた。



忘れない。忘れられない。父の一言。


「家族会議だ。」


お姉ちゃんは、下を向き黙り。 お母さんは、芽唯を抱きずっとあやしている。


「海唯。 お父さんとお母さんは、、、、、、離婚する。」

「咲唯と芽唯は、お母さんと住むそうだよ。 海唯はどっちにする。」


突然のことだった。 さっきまでの、喜びや幸せは全て一瞬のすきに、消えた。


「僕は、、、、、、。」


声が詰まる。まだ何も分かっていない僕は。


「お父さんと住む。」


「えっ?なんで? 馬鹿なのあんた?」

咲唯だった。

「こいつと居ても何も無い。ただ痛みや言葉の暴力を浴びせられて。」

「こんな男といるぐらいなら、、、。」


思いとどまった。一瞬でも頭が冷えたのか、言葉の暴力。 ただの暴力。

咲唯にとっては、苦痛 苦悩 死因になりうるものだったのだ。


「愛唯、、、。海唯が決めたんだ。納得してくれ。」


「グズッ…。グズッ…。」


お母さんは芽唯を抱いたまま泣き崩れた。





6月下旬 朝 6:30 家



父の仕事は土木作業で、毎日ボロボロで帰ってくる。

家事と勉強をどちらもするのは苦難だが、なんだかんだ楽しい。


いつものこの時間に起きて、お父さんの寝息が聞こえてくる中、歯を磨き、顔を洗って、お父さんのご飯を作り、洗濯物をまわしつつテレビを見てご飯を食べる。洗濯物を干してから、学校に行って授業に受けて帰ってきたらすぐに勉強をしなきゃいけない。夕方には、洗濯物を入れてお風呂を掃除して、ご飯を作り、食べ、寝る頃にお父さんは帰ってくる。



これを僕は、、、8年間続けた。



8年後 3月中旬 卒業式当日


学校の観客席の1番左の後ろから2番目の席。 いつも父が座る席。

そこは、、、空席だった。



昨日の同時刻ぐらいのこと。


父は、亡くなった。

死因は、事故による窒息死で、ちょうど舗装していた生コンに頭を突っ込み、起き上がれず、もがいていた跡があった。最悪なことに、父の周りには人がいなかった。そのまま起き上がれず亡くなった。


葬式は、旧姓 笹倉 愛唯 が全て行ってくれた。


「海唯、一緒に暮らさない??」

「あなただって、苦しかったでしょ。今咲唯がいないから1つ部屋が空いてるの。ねぇ考えてみて。」

「答えはこちら今じゃなくていいわ。」




ガチャ…

バンッ

カチャ

ドスッドスッドスッ

ボスッ

ドンッ

グズッ…グズ…


海唯は一晩中ずっと机に張り付き、なき続けていた。



どう?

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