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時割れの双子  作者: 猫箱
2/53

1 始まり1

火の弾ける音で、黒猫は目を覚ました。

赤い瞳は、最初、焦点があわずぼんやりとしていた。

けれど、2、3度瞬きしてようやく自分のいる場所がどこかを見ることができた。

どうやら猫は畳の上に寝ているらしかった。

まわりの空気は暖かく、近くで煙の匂いがする。

どこかで火が燃えているのだろう。

猫がそちらに目を向けると、紅いかたまりがあった。

かたまりは、よく見れば人だった。

それも、背中越しでもはっきりわかるほど、幼い子供だ。

けれど

(人の匂いがしない)

ふんふんと猫が鼻を動かしても、感じるのは火と、畳の香りだけ。

目の前の子どもからは、なんの匂いも感じない。

不思議に思って、黒猫は子供の赤い衣に前足を伸ばした、

ぽふん、と肉球は子供の背にぶつかる。

やはり、子どもは目の前にいるのだ。証拠に

「ん?」

その子は振り返り、ぱあっと顔を明るくする。

「よお、目が覚めたのか。

 具合はどうだ?ん?

 お前、浜辺倒れてたらしいぞ。

 よかったな、拾ってもらえて」

目にも鮮やかな真っ赤な着物。

うなじの所で切りそろえられた灰色の髪に、同色のくりくりした目。

長く伸びた前髪が、右目だけを隠している。

桜色の唇はほころび、猫を抱き上げ膝に抱いた。

「どうした?

 なんも話さねえけど、びっくりしてんのか?」

(何をいっているんだろう)

猫は首を傾げる。

猫が喋るわけがないじゃないか。

子どもだから、その辺の分別がつかないんだろうかと、猫が呆れていると

「もう、やってらんないわ。

 人使いが荒いったらありゃしない」

どたどたと、床板を踏み鳴らす声が飛んできた。

「アケ、いる?」


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