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正統なる叛逆者  作者: 太占@
36/36

人間的な。

『歯の治療は一度に二本まで』っていう制度は今すぐ撤廃すべき。

(諸事情で歯が三本折れた)


前の方の読み直したら誤字脱字が酷かったので、Twitterなり作者マイページからのメッセージなりで報告してくれるとありがたいです。

 ◆◇ロロ視点◆◇


 蔵を出て街中央の広場へと向かえば、敵は既に崩れており、ダンメルク王国軍による掃討戦の様相を呈していた。


 「戻ったか。間に合ったようでなにより」


 ティセリウス家の近衛隊に向かえば、南路側の部隊に指示を出していたらしいアインス殿は数名の護衛と共に各々の武器を持っている。

 どうやら、彼らも切り込むつもりらしい。


 「そのご様子では、アインス殿も剣を振るわれるので?」


 「うむ。まともに抵抗する敵はもはやいない。ゆえに指揮を執る意味も薄れた。それに、大将を護衛する近衛隊を率いているのだ。則ち、私はティセリウス家の名代としてここにいるということ。ならば、我が手柄はご当主の手柄。……剣を振るわぬ理由があろうか?」


 ガリア的な、あまりにガリア的な。

 悲観をその基盤とし、不幸と悲哀を善とするこの道徳……。

 この善悪の価値表は、速やかに破り捨てられなければならない。


 「……その心意気、感服致しました。なるば私も、我が主のために、もう一働きしましょう」


 我が主、主なるは、そも、そも。


 「……我ら仰ぐ主人は違えども、共にダンメルクの旗に集う者。いざ往かん!」


 そうアインス殿が声を張り上げれば、近衛の者共は応えて走り往く。


 我々も適当に応じて彼らとは別の方向に歩み往けば、しばらくの後、視界の外へと出る。


 ……さて、そろそろガリア文化の体験は終わりだ。

 これからはノルド文化の時間である。

 

 そう、略奪の時間だ。


 ◆◇◆◇


 押し入りたるは、教会なり。


 それは、資金集めという目的に忠実であった結果だ。


 私もリザも唯一神教徒ではないが、そこに金品のあるを知っている。

 宗教は往々にして信徒より金を募るものであり、またその権威を示すべく、金の形を変えるからだ。


 成果は上々。

 神父の衣には見るからに高価な宝飾が施されており、祭具の数々も混ざり物の少ない金銀。

 食器は柄の刻まれた銀であった。


 唯一神教に精霊信仰、遠方の地の宗教も。

 私の知る限り、祭具の形や聖職者の纏う印には、全て意味がつけられており、その変化は少ない。

 ゆえに、他の細工物の様に、柄形での価値変動が少ないのである。

 しかも宗教というのは、いわば面子の商売なので、箱物を高価な素材で作りたがる。

 先程収奪したものであれば、祭具は真鍮や青銅で済むものをわざわざ金銀で。

 食器ならば、木製で済むものを銀で。

 なによりも、箱物の極みであるこの教会こそ、それを示しているだろう。

 石造りなのは、この様な戦禍を凌ぐためというのは理解できる。

 だが、その石が白亜である必要はあるまいて。


 まぁ、その性格が我々食い詰め傭兵──所属が浮ついている私も同じ様なものである──の助けとなるのだが。

 

 惜しむらくは、その素材が重い事だろう。

 今回はリザがいるので背嚢一杯に詰める事ができたが、悔しい事に、私であれば宝飾の幾つかと片手に祭具を持って逃げるのが精一杯である。

 最も貴重なものは、安全に運び出すには重く脆く、大き過ぎる。


 ……面子を気にして略奪の憂き目にあった金品を担がせつつ、『淑女に荷物を云々』と面子を気にしていては、後世の説話にまとめられてしまいそうだ。


 「だが、口に出さなければ問題無い」


 「何をだな?」


 ……しまった!

 

 「まぁ、戦争屋やら傭兵やらが紳士淑女を名乗ってもせむ方ありませんしね」


 「それはその通りなのだが、ご主人はいったい何の話をしているのだぞ?()の気にでも当てられたのだな?」


 いたって冷静さ。


 「身の丈と格好の話ですよ」


 「たしかに、ご主人の身長は高くないし、格好ももっと上等な物を着ないと紳士は名乗れないのだな!」


 うるさい。


 「……歯に衣着せぬ言い様ですね」


 「ふふんっ!狼が牙を覆ったら、それは人間が知恵を捨てた様なもの。その狼は最早、狗なのだな」


 「それはそれは。……為政者は狗でしょうが、手元に置くならば、私は狼の方が好ましい。どうぞ、そのままに」


 「……そのままでは鈍ってしまうからな、爪も牙もちゃんと研いでおくぞ」


 「ふふっ、……程々に頼みますよ」


 牙は楽しいので構わんが、爪は割りと生命の危険がある。


 「うむ。研ぎ過ぎると、折れてしまうのだな。爪は慣れたが、牙は痛いぞ……」


 「……それは、どちらの?」


 「……どっちも、だな。まぁ、リザは強いから問題無いと思うのだ」


 「たしかに、腕っ節()()はかなりのものです」



 司教室の方角より来る足音が礼拝堂に届いたのは、何気なく、床に転がる()()を蹴ったその時であった。




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