霊長5
どんなに対策をしても、なる時はなる。(熱中症)
夏バテで執筆ペースがガタ落ちです。
(1週間に1回以上は守りたい)
◆◇ロロ視点◆◇
リンデバウム市内最高の採光率を誇る部屋から教会広場を望めば、広場にて戦闘を行う一団と、無人となった南路が映る。
これだけ大きな都市の大通りが無人という光景は、非常に稀であろう。
いわば、絶景である。
「リザ、残党の掃討を……。いや、必要ありませんね。とりあえず死体を検分しておきましょう。紋付きの装備の有無だけでは、確認しておきたい」
確認したところで既に殺してしまっているのだから、どうしようも無いのだが、それでも調べずにはいられないのが、人間というもの。
全く愚かしいとはわかっているが、やはり、不安は拭い去りたい。
その先に、さらなる問題が待ち受けているかもしれぬ、というのに。
だが、知ることができれば対策を取れるやもしれぬのも事実。
ならば、調べて損は無い。
◆◇???視点◆◇
最近の俺は、ツイてない。
数ヶ月前までは国王配下の騎士団に所属するエリートだったのに、今は新しく創られた軍だとかで、新米騎士どもの子守をさせられている。
しかも、このガキども、全く使えやしねぇ。
目の前で誰かが死んだだけでピイピイと喚くわ、矢を射られただけで退こうとするわ、戦争する気を疑うぞ。
それでいて、俺がちょっと喝を入れてやっただけで文句垂れるわと、あいつら、先輩への敬意ってのが足りねぇんじゃねぇのか?
俺と一緒に左遷された同僚に聞けば、なんでも、騎士見習いをせずに騎士の訓練を積んだとか。
どおりで礼儀がなってないわけだ。
騎士見習として雑用にこき使われて上下関係を学ぶというのに。
……そんなクズどもの相手に、団内でも指折りの実力者である俺を回すなんて、団長の頭は狂っちまったんじゃねぇだろうか。
だがまぁ、不満ばっか言ってても始まらねぇ。
せっかくの戦争だ。
愉しまなきゃなぁ。
逃げ惑う奴らを殺して周るのもいいが、今は略奪の気分だ。
ちょうど今、目の前で震えている女をいただくとしようか。
……滾るねぇ。
恐怖に歪んだ、その顔。
それを見れただけでも、ガキどもを置いてきたかいがあるってもんだぜ。
◇◆ロロ視点◇◆
おかしい。
明らかにおかしい。
一通り死体の検分を終えたのだが、1つも無いのだ。
大隊長などの要人や騎士団所属の騎士は、装備一目見れば身分のわかるものだが、小隊長や中隊長はそうもいかないため、目立つ所に何らかの印を付けているはずである。
だが、彼らにはそれが無い。
これは新設師団に限ったことではなく、戦争の慣習なので、どの軍でも共通だ。
則ち、先程討ち取った者の中に、隊をまとめる身分の者がいないということである。
考えられる可能性は、あの集団が傭兵団だったという事。
個人の傭兵をまとめた傭兵部隊と違って、元より一定数の集団である傭兵団は互いに声や顔と役職を認識しているため、印で識別する必要が無いのだ。
軍や将軍にもよるが、100人隊長──国王軍でいう中隊長──程度の規模もあれば、その傭兵団単独で一隊とされるので、団長一人が隊長の印を示すだけで十分である。
しかし、集団の指揮を執っていたゴリラの練度を想像するに、略奪を主目的とする傭兵が、未だ脅威の排除されていない危険地帯に来るとは考えにくい。
ならば、他の何者かに率いられていたのだろうか?
わからない。
それともう一つ。
彼らの屯していた商家の中から荒らされるような音が聞こえるのだが、中の人物は、何をしているのか?
まさか、ゴリラの撤退指示が聞こえなかったのだろうか?
阿呆なのか?
わからない…………




