霊長1
初投稿です。(錯乱)
◆◇ロロ視点(リンデバウム突入時)◆◇
ラベ川での会戦にて敵軍を壊滅させた我々ダンメルク王国軍は、勢いそのままハノーファーの街とその周辺村落を落とし、2日前にリンデバウムを包囲。
丸1日、兵を休ませた後、今から数時間程前に、夜闇に乗じて総攻撃を開始した。
野戦での被害が大きかったためだろうか。
市壁に見える兵は疎らで抵抗は薄く、城門の突破も容易であり、突入後、間もなくの内に残敵掃討戦へと移行した。
「3人1組で家屋を洗え!追い詰められた鼠は猫を噛むぞ。ヘマするなよ!」
アインス殿の指揮に従って、ティセリウス家の近衛隊は素早く動き始める。
その流れるように組を作り散っていった様は、並々ならぬ訓練と、実戦での経験を覗わせ、ティセリウス家の精強さを物語る。
これほど高い練度の兵ならば、いかなる戦術をも為し得るだろう。
斜頚陣を組むことできるかもしれない。
夢が広がるなぁ。
今すぐにでも指揮を執りたいものだが、今は忍従の時。
半ガリア共を利用してのし上がるまでの辛抱よ。
……ところで、今の指示に対して、我々はどう行動すれば良いのだろう?
近衛達は予め組を決めていたようだが、臨時編入の我々は何も決めていない。
リザと廻っても良いのだが、それは3人組の命令に反してしまう。
公的には、私の主人はティセリウス家当主ではなくヘレナ伯であり、また、ヘレナ伯と我々以外の者は『ロロは国王に仕えている』と認識しているはず。
……あぁ、あとミラ嬢もまた別の認識か。
ともかく、大本の所属が違うため、微妙な線の命令違反は咎められないだろうが、無駄に反感を買う必要は無いので、現場責任者にお伺いを立てよう、ということだ。
「ロロ君はお供と一緒に周ってくれ。下手に連携が取れない3人より、気楽な2人の方がやりやすいだろ?それに、お供の生尾人は中々強そうじゃないか」
「フフンッ。褒めたって何も出ないのだぞ!」
「了解いたしました。それでは」
「ああ、ちょっと待ってくれ」
背を向けて去ろうとしたところ、呼び止められる。
「なんでしょうか?」
「注意を忘れていた。王軍ではどうだったかは知らんが、我らティセリウス軍の近衛隊には軍規がある。まず、過度な略奪は禁止だ。全くとは言わんが、節度を持つように。次に、暴行も禁止する。逃げる民を追う暇があるなら、敵兵を追ってくれ。最後に、命令無き放火は……無駄か。もう、燃えている……」
アインス殿の視線を追えば、そこには小さいながらも火柱があがっている。
「南門の方ですな。担当の家は?」
「わからん。あそこは小中の家の混成部隊だ。……まぁ、無駄に延焼させないでくれよ」
「かしこまりました。以上で?」
「うむ。では、健闘を祈る」
「アインス殿も」
私はリザと共に、逃げ惑う住民とダンメルク兵の入り乱れる市街へと駆けて行った。




