然る、一つの命題
改稿したよ!(題名も変えるかも)
次いでに誤字も修正してく。
『忠と愛をもって仕えよ』
我が兵学の師は、そう述べていた。
この言葉を知ったのがいつだったか詳しく憶えていないが、私がまだ正式に騎士位を拝する前だったのは確かだ。
もっとも、師は同じ様なことを何度も教えてくる方だったので、どの箴言もその都度言い回しが異なっていたし、まして、初めて教えられた時など憶えていることの方が少ないのだが。
忠と愛を基に仕える。
しかし、師は説かなかった。
『忠とは何なるか?』
器械的な恭順か、報酬が対価としての献身か。
『愛とは何なるか?』
盲目的従属か、自己陶酔による独占欲か。
『何に仕えるのか?』
雇い主か、指導者か。
それとも、また違う何か、か……。
我が師は黙したままで、私は今も、迷い続ける。
◆◇◆◇
しがない騎士であった。
少なくとも私は、私自身をそう形容する。
過去に幾星霜とあり、そして今もなお戦の花形としての名声を持つのが騎士という肩書であるが、そのような名誉は乱世に雨が如くあり、また露の如く消える、儚くも小さなもの。
男女を問わず己が覇業を往かんこそ乱世の習ひならば、我もて野心抱かんこそ本懐なれど、ただ、憂き世にあって後世まで残る華というは、書物に撰じられし、『怪力乱神を演ずる英雄』か『情に訴ふ忠君の話』のみ。
弓馬の腕は上々なれど、あくまで凡夫の内にて神代の域に及ばざれば怪力乱神に遠く、また、並々ならぬと自負せし知略を以て仕う程の者もあらざれば、主君に尽くす忠は無し。
されど、かような物語のみが書物にはあらざりて、現世には戦禍によりて散逸すれど、『古にありし戦物語』や『先人の知恵と技』を記せしものもあり。
さらば、己が学によりて名を轟かせんことこそ本懐なり。
◇◆◇◆
国王の名の下で10と幾つかの歳に騎士の訓練を始め、密かに師を得て兵学を修める事、はや4年。
騎士位を授かり軍務に着きて一月もせぬ内に、王命は下った。
戦である、と。
案外と、運は良いのかもしれない。