空想科学グランドツアー
甲「南半球にある国は、地図帳を見る限り四十三ヶ国だな。アメリカが、アルゼンチン、ウルグアイ、エクアドル、チリ、ブラジル、パラグアイ、ペルー、ボリビアの八ヶ国」
乙「アジアとオセアニアが、インドネシア、オーストラリア、キリバス、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ナウル、ニュージーランド、バヌアツ、パプアニューギニア、東ティモール、フィジー諸島の十二ヶ国」
丙「アフリカが一番多くて、アンゴラ、ウガンダ、ガボン、ケニア、コモロ、コンゴ、コンゴ民主、ザンビア、ジンバブエ、スワジランド、セーシェル、ソマリア、タンザニア、ナミビア、ブルンジ、ボツワナ、マラウイ、マダガスカル、南アフリカ、モーリシャス、モザンビーク、ルワンダ、レソトの二十三ヶ国だな」
甲「海洋が八割で、陸地は二割。星座の基準となるのは、南十字星」
乙「季節が北半球と真逆で、東から昇った太陽は北よりを経由して西に沈む」
丙「熱帯低気圧の渦巻きが逆で、時計回り」
甲「地中海性気候なのは、チリのサンティアゴ、オーストラリアのパース、南アフリカのケープタウンの三都市」
乙「あぁ、もう。地理の勉強って退屈だ」
丙「急に大声出すなよ。鼓膜に悪影響だ」
甲「ちょっと現実逃避するか。作り話をしよう」
乙「おっ、いいね。ベタな設定をテンコ盛りにしよう」
丙「息抜きか。それじゃあメモを用意するから、テーマを書いていこう」
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甲「厳正なる抽選の結果、ディストピア版、アールピージー風、銀河鉄道の夜に決定しました」
乙「エスエフ冒険ファンタジーってことだな」
丙「まずは、ディストピア要素だけど」
甲「こんなのは、どうだ。――半世紀前に第三次世界大戦が勃発。核戦争で九十億人居た世界人口が百分の一になり、ユーラシアと北アメリカ大陸の大半が居住不能で上陸不可に指定された」
乙「終末というか、世紀末というか、どこか禍々しいな」
丙「希望もブレンドしよう。――産業革命前と同等の人口規模の世界では、国境が撤廃され直接民主制の世界政府が樹立。首都は南極点で、南極大陸は、どの街の領土でもない。協議の末に平和と持続可能性を重んじる憲法が制定。公用語は人工言語エスペラントで、公文書や公教育はすべて公用語で行われる。公用旗は白地に緑の五芒星。暦は終戦の年を世界暦一年として改新。西暦や諸外国語を使うのは六十五歳以上の高齢者に限定されている。主な食糧は大豆、南瓜、甘藷など植物で、人々は皆、慎ましく身の丈に合った生活に勤しんでいた」
甲「急に牧歌的になったな。物質的には恵まれてなくとも、健気に逞しく生きてそうだ」
乙「そこへ、転機が訪れてしまう。――ところが、長らく戦いの無かった世界に、突如として争いの火種が撒かれ始める。世界を悪の組織の手から守るため、伝説の宝剣を手に冒険の旅を続ける正義の勇者、ジョバンニ。旅の途中で出会った心優しい魔法使い、カンパネルラ。幾多の試練を乗り越え、最後に二人の前へ立ちはだかる悪の総帥、ザネリ。一進一退の白熱した攻防を繰り広げるジョバンニとザネリ。ザネリの一撃がジョバンニを襲う。ザネリが止めを刺そうとする直前、命の危険を顧みず、滅びの呪文を詠唱するカンパネルラ。……こうして世界は救われた。一人の勇敢な戦士の活躍と、一人の魔法使いの犠牲によって」
丙「謎の感動を残したラストだな」
甲「それな。……学校だけ消滅させることが出来たらなぁ」
乙「マジ、それ」
丙「はぁ。過去か未来にタイムリープして、学校教育制度が無い世界に行きたいなぁ」