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19.血の雨後、氷雨

バリケードを立てかけた廊下側の扉が激しく叩かれる。向こう側からリザードマンが扉を破ろうと必死なのだろうね。とりあえず、いつ扉を破られても良いようにウォン、ロリ、私が前衛に立つ。

ナルディアが副族長を連れ中衛に立ち、カタラが後衛に立つ。特に戦闘に関して相談はしていないが、長年の経験から自然と隊形を取っている。さて、念のためにナルディアが暴走しないように先に釘を刺しときましょうかね。

「ナルディア、分かっているよね。ここで火炎や隕石の魔法を使ったら、私達まで巻き込まれるからね」

「くっ、わ、我がそこまで浅慮であると思われるとは心外だ。そのような事、無かろうが!」

「前科があるから言ってるんだよね。もう忘れた?ブラックドラゴン戦の時のことを。大魔法使い様の記憶力ってその程度なんだね」

「ふ、我が忘れるはずがなかろう、あの大活躍を。あの隕石落としはトカゲ共に非常に効果があったであろう」

「充分に効果があったよね、私達にもね」

思い切り、ナルディアへの視線に最大限の殺気を叩き込む。瞬間的にナルディアの全身が震える。横でオークの副族長が失禁をしているのはご愛嬌ということで。

「う、うむ、そ、そうだな。あれは効果が有り過ぎたな。我の魔力の強大さを失念しておったようだ。ここは、ミューレの指示に従うとしようか」

はい、素直でよろしい。たまには、力関係をハッキリさせておかないと舐めてくるからね。ちなみに私の殺気にウォン、ロリ、カタラは涼しい顔をしている。リザードマン共は、一瞬静かになった。あの三人には、まだ通用しないのか。残念だね。私もまだまだ精進しないといけないのか。また、ウォンと仕合をしようかな。あの対峙した時の緊迫感は、普通のモンスターからは感じられないからね。おっと、今は戦闘中。そちらに集中しなきゃね。

「扉が破られたら魔力光弾を叩き込んでね。後、カタラは背後の警戒をよろしくね。外から帰ってくる連中がいるからもしれないからね」

「はい、そちらは私にお任せ下さい」

涼やかな声でカタラが答える。やはり私の殺気は効果がなかったみたいだね。カタラは、守衛室へ戻り、洞窟の入り口の扉の鍵を締め、さらにテーブルを扉に立てかけて、控室に戻ってくる。

これで、背後からの増援は来ても不意打ちはないかな。

さて、今できるのはこれくらいかな。扉にヒビが入り始める。扉が破られるのもあと数秒かな。私はバスタードソードを音も無く抜き放つ。鈍い光りを放つ刀身が頼もしい。ウォンもロリも剣を抜き、準備万端の様だね。ウォンなんか、笑顔を浮かべているよ。本当に戦闘好きなんだから。

その時、扉の一番薄いところを三叉槍が一本貫いてきた。時間が来たね。

「ナルディア」

静かに名を呼ぶ。

『魔力光弾』

ナルディアの朗々とした声が控室に響き、光り輝く十二本の光弾が扉の中へ吸い込まれていく。一本目が扉を破壊し、次々と廊下へ光弾が飛び込み、爆発音と悲鳴と怒号が響く。

くやしいなぁ、私が作れる光弾が一回で七本が最大なのにナルディアは十二本か。やっぱり本職とはこういう処で差がつくんだよね。一応七本を超えるオリジナルの魔力光弾の魔法は開発してあるけれど、魔力を馬鹿食いするんだよね。必殺技的な使い方がせいぜいかな。気を取り直して、目の前の戦闘に集中しますか。

リザードマンの第一波は、肉の塊となって廊下に散乱した。さてさて、いったい何匹居たのかな。数を数えるのは、これは無理だね。原形を留めてないからね。

間髪入れず第二波が来る。学習してきたのか、錆びついてアチラコチラが凹んだラージシールドを前面に構えて押し進んでくる。だけど、それじゃナルディアの魔法を防御することは無理なんだよね。

「ナルディア、もう一回、魔力光弾ね」

「ふ、そんなに我を頼りにされるとは、さすが大魔法使い様だ。フハハハ」

「早く!」

『魔力光弾』

「ち、もう少し楽しませてくれれば良いものを」

ナルディアが愚痴をこぼしているが、皆聴き流しているね。まぁ、いつものことだからね。

光弾は、粗末なラージシールドごとリザードマンを吹き飛ばしていく。新たな肉片が廊下に飛び散っていく。それを見てか、リザードマンの第三波が突入してこない。あちらさんは作戦タイムに入ったのかな。


「なぁ、ミューレ。このままだと犬歯が残らんぞ。いいのか?」

「多分、残らないよね~。でも怪我するよりはいいでしょう。と言うか、接近戦をウォンがしたいだけじゃないのかな~」

「まあな。射撃戦はこれくらいでいいんじゃないか。ロリ、廊下に何匹いるか分かるか?」

「う~ん、鎧の音がうるさくて良く分からないけど、二十匹以上は居ると思うよ」

「なら、頃合いじゃないか。俺の出番だろ」

「はい、はい。じゃあ、接近戦に移行する?皆もいい?」

念の為、全員に確認する。返事は帰ってこない。ということは皆OKって事だね。

「ナルディアとカタラは現状で待機。後方警戒をよろしくね。私達は後で廊下に行くけど、付いて来なくていいからね」

さて、待てどもリザードマンは突入してくる気配がない。うかつに扉に近づくと肉片にされるから警戒しているのかな。仕方ない、こちらから突っつこうかな。

「あ、動き出したよ。来るよ」

ロリの耳が何かを捉えたようだ。リザードマンの動きを伝えてくる。

リザードマンが姿を見せずに槍だけで突いてくる。だが、バリケードに刺さるだけで効果がない。とりあえず、壁に隠れて盲刺しをしてきたようだ。まあ、よくも効果がない事を思いついたものだね。所詮はリザードマンの頭か。

ちなみに奴らの手は細かい物を掴むのに向いていないから、弓は使えない。苦肉の策かな。仕方ないね。

次に槍が突き出された瞬間、ウォンが動いた。突き出された槍を掴むとその力を利用し、リザードマンを引っ張り出して一瞬で首を切り落とす。惚れ惚れするような無駄のない流れるような体捌きだね。リザードマンの頭だけがバリケードを越えて私達の足許に転がり落ちてきた。何が自分の身に起きたか理解していない表情だ。あれ、何で地面に居るんだって顔だね。で、バリケードの向こうに残った身体は、首の切り口から大量の鮮血を周りに撒き散らしながら膝から床へとゆっくり崩れていく。

お見事。パチパチ。敵の勢いを利用した攻撃。壁の向こうでどよめきが聞こえる。あいにく、リザードマン語は分からないので何を言っているのやら。

また、膠着状態になる。さて、どうしたものかね~。

「もう、突っ込んでいいか?」

「え~、あの肉片の中に入っていくの」

「何か、問題あるか」

「気分的な問題だけど…」

「大丈夫だ。問題ない。外に川があるからすぐに洗える」

さすが、ウォンだね。目の前の廊下には三十センチ以上積もった肉片で溢れかえっている。さらにおびただしい量の鮮血が川となり、廊下の低い方へ流れている。

その中に入っていくのに躊躇いがないなんてね。私は精神的に嫌だな。どうしようかな。

「じゃ、ロリ行きま~す」

ロリがバリケードのリザードマンの死体を踏みつけ、肉片の沼へ風のように突貫していく。

しまった!暴走する奴がもう一人いた。大人しかったから油断した。

「あ、ずるいぞロリ。俺も行く」

ウォンは手をついて、器用にバリケードを飛び越えていく。

君たち、プレートメールを着ているんですよ。全て魔法のアイテムだから通常装備より軽くなっていると云っても、装備重量二十キロはありますよ。何で二人共、そんなに身軽なのかな?奴ら戦士は、やっぱり脳みそが筋肉になると、鎧の重さとか気にならないのかな。恐るべし、脳筋共。

ああ、ウォンも行っちゃったね。よくあんなところに躊躇いもなく足を踏み入れられるね。あぁ、ロリの右足に腸が絡みついているよ。うわぁ、ウォンは豪快に剣を振るから血溜まりの血を全身に浴びてるね。

はぁ~、仕方ない、私も行くか。バリケードのリザードマン死体を歩いて乗り越える。私は脳筋共と違い、そんなに身軽には動けないからね。ま、歩いたり走ったりする分には問題ないけどね。

廊下には肉片の沼が広がっている。はぁ、ここに入るのか。覚悟を決めて、足を踏み入れる。柔らかい肉片に足が沈み込んでいく。心なしか鎧越しに生暖かさを感じる。

思った通り、非常に滑りやすいが、特に問題にはならないかな。氷の上でも滑らずに戦える技量はあるからね。もちろん、ウォンとロリもね。カタラはギリギリかな。ナルディア、ブラフォードなら間違いなく転んでいるね。それも見てみたいかな。全身血まみれになって頭から内臓をぶら下げて座り込んでいる姿も面白そうだしね。やっぱりそれはそれで、後でうるさいから控室で大人しくしていてもらおう。

「ちょっと、斬ってくる」

「お気をつけ下さい」

「ふむ、任せた」

相変わらず、ナルディアには腹が立つね。やっぱり、こっちに引き込んで血まみれにしてやれば良かったかな。ま、転んで邪魔されるよりかいいか。

さてと、ウォンは廊下の左側で、ロリが廊下の右側に展開して剣を交えている。数的にウォンの方に敵が多いようだけど圧倒的に優勢な様だね。まったく、多人数と相手をしているのに不安を感じさせない安定した戦いをしている。リザードマンじゃ、ウォンの敵にはならないか。となると、ロリの応援に行きますか。

ロリとリザードマンが対峙すると巨人と戦っているようだ。向こうの身長は三メートル、ロリの身長は一メートル半。倍も違いがある。私も百五十四センチしかないから似たようなものですけどね。

ロリがしゃがみ込むとリザードマンの死角に入り込むらしく、見事に槍を避け、面白いようにスパスパ足を斬っている。だが、ピグミット族は素早いが力がないため、リザードマンの硬い鱗に阻まれ、切断どころか重傷までは負わすことが出来ない。だが、リザードマンの身動きが取れなくなることは私の前では致命的。一気に勝負をかける。

「ロリ、しゃがんで」

私の声ですぐにロリが反応し、しゃがみ込む。

『風刃断裂』

私の手元から見えない圧縮した空気の数十本の鎌が廊下を三十メートル程を一秒で走り抜け、直径一メートルほどの筒状の空間を作り上げる。ある者は風刃に右手を持っていかれ、ある者は半身を、ある者は体の中央をくり抜かれ、十匹近いリザードマンが体の一部か命を失った。足や腰を持っていかれ、態勢を保持できないリザードマンがゆっくりと順々に床へ崩れ落ちていき、盛大な血しぶきを跳ね上げる。

ミューレ特製の風魔法!ナルディアはこの魔法の存在を知らないし、今も見られないようにナルディアの死角から魔法を放った。精霊のことをよく知っているエルフだから生み出せたんだよね。風の精霊に感謝。

ロリは、しゃがみこんでいた為、頭上を風刃が通り過ぎ、何も被害は無い。こういう狭い空間に適した魔法なんだよね。

「ロリ、いいよ」

その一声でロリがリザードマンの集団に飛び込む。まだ、息のある者の首を返り血も気にせず掻き切っていく。頸動脈を切られ、鮮血が盛大に噴出する。次々と弱っているリザードマンへトドメを刺していく。私も仕事、仕事。

『魔力光弾』

私の周囲に七本の光弾が出現させ、すかさず一番奥のリザードマンから順番に眉間へ光弾を叩き込み内部で破裂させ、所構わず脳漿が飛び散っていく。これなら、口周りには、被害がないし犬歯も残るだろうね。手前からロリが攻め、私が奥から攻めていく。それに奥から七匹倒した事で通路を塞ぐことになり、絶対に一匹たりとも逃さない。

私も自然体で肉片の沼地を掻き分けていく。退路を断たれたリザードマンが必死の槍を突き出してくるが、盾で軽く力の向きを変えてやる。逆に渾身の一撃が仇になり、簡単にリザードマンは足を滑らせ仰向けに倒れる。私は、そのまま横を通り過ぎる時に喉を一刺しし抉るだけだ。最初から目もくれない。正面しか見ない。この距離なら気配で手に取るように分かる。

二匹目が慎重に間合いを詰め、槍を突き出すが、次は体捌きだけで前へ避ける。槍は間合いの内側に入られると攻撃力が極端に下る。目の前のリザードマンは両手で握っていた槍を手放し、腰に下げていた剣を抜こうとするが遅い。まず、両手首を切り落とし、返す刀で首を刎ねる。だが、剣の速度が早く、首はそのまま落ちずに載っていた。リザードマンは首を斬られたことに気がついていない様だ。両手の痛みに叫び、前屈みになった瞬間、首が肉片の沼地へ落ち、そいつは静かになった。

二匹目は殺されたことに気がついていないだろうね。続いて三匹目だ。先の二匹を見てか、突きは危ないと感じたのだろう。力一杯、横殴りで槍を振るってくる。私はあえて何もしない。歩みを続けるだけだ。私の間合いに槍が入った瞬間、光が瞬き、槍が空振りする。正確には槍だった物だけどね。リザードマンは何が起こったか理解していない様だ。手応えの無さに不思議そうな表情をしながら、改めて槍を突いてくるが私には届かない。そして、穂先を見て初めて気がついた様だ。槍が半分以下の長さになっている。手許の柄しか残っていない。私が先程の一瞬に切り飛ばしたのだ。状況を理解したリザードマンが一瞬固まる。その隙を私が見逃すはずがない。

歩みを止めていない私はさらに間合いを詰め、リザードマンのレザーアーマーごと心臓を貫き、刀身を抉る。筋肉が固まる前に素早く剣を抜く。リザードマンが私の首を絞めようと手を伸ばすが、途中で息絶え血溜まりに沈む。その時にはすでに四匹目のリザードマンの首を刎ねていた。何せ、無防備に棒立ちになっていたからね。どうせ、この惨状に戦意を無くしたのだろう。四匹目の棒立ちを利用し、五匹目の死角に入るように接近する。五匹目はロリに注意が向いている。ロリに向け槍を振り上げた瞬間、バスタードソードを腋から心臓を貫き、刀身を捻って抉る。そして背後にせまる殺気に対し、バスタードソードを水平に薙ぐ。六匹目のリザードマンは背後から不意打ちをするつもりだろうが、殺気で位置が丸わかりだ。バスタードソードは、粗末なレザーアーマーごとリザードマンの腹を断った。切れ目から腸が勢い良くこぼれ出していく。リザードマンは、慌てて槍を離し両手で腹に腸を押し戻そうとするが次から次へと溢れ出し、腹に戻す作業が追いつかない。このまま、放置しておいても無害だが見苦しい。さっさと首を落とし、通り過ぎる。背後で血溜まりに倒れる派手な音がした。さすがに私も全身に返り血を浴び、真っ赤に染まっている。もう、汚れることを考えなくていい。効率重視で倒していく。二匹のリザードマンが前後から突き刺してくる槍の向きを盾で変え同士討ちにする。お互いが心臓を槍で貫き合い、何故という顔で二匹が見つめ合い絶命する。ならばと、別の二匹のリザードマンが次は並んで槍を突き出してくる。ちょいとこれは面倒かな。リザードマンの筋力には、真正面からは対抗できないからね。

『魔力光弾』

槍が私に接する前に七本の光弾を周囲にばら撒く。目の前の二匹を含めた七匹のリザードマンが胴体に穴を開け、血の沼に沈んでいく。こちらは魔法剣士。剣術に拘る必要はないもんね。七匹同時に倒したことにより、周囲に大きな空間ができる。ならば、ついでだ。魔法発動に大きい動作が必要な風と水と炎の精霊に協力を仰ぐ神楽舞を行なおうかな。風の精霊には荒々しい風、水の精霊には万物を凍らす氷、炎の精霊には眠りをもたらす魔力を舞いながら注ぎ込んでいく。私は、三精霊に捧げる神楽舞を続ける。リザードマンも見惚れる程、優美にそして優雅に舞う。最後にオリエンタルで「正座」と呼ばれる形で舞が終わる。

『氷結吹雪』

私のつぶやきにより、絶対零度の冷気が廊下に出現する。十メートル四方の魔法範囲内の水分がたちどころに凍っていく。それは無機物も生物も同じだ。魔法範囲内に居たリザードマンが一瞬で内臓まで凍らせ氷となる。急激な温度変化に身体が耐えられず、破砕していく。廊下の壁や天井、床も含め全てが氷となり次々破砕していく。廊下に焚かれた松明の光が、空中を舞う血肉を含んだ赤い氷の破片を反射させ、幻想的な空間を産み出している。まるで巨大なシャンデリアだね。

強力な魔法だが、使い所が難しい。魔力はドカ食いするし、発動するまで舞い続ける必要があり、中断した場合には最初から舞い直さなければならない。その場合、注ぎ込んだ魔力は浪費することになる。それに味方を巻き込むと助けることは不可能だね。蘇生魔法は身体が残っている事が前提条件だけど、氷結吹雪を使うと魔法範囲内の全てが氷となって破砕し、溶けてしまい、何も残らない。もし、敵が貴重なアイテムを持っていても氷となって破砕し、溶けて消えていく。

ゆえに、使えるのは味方がいない。敵が適度に離れており、神楽舞をする空間と時間がある。貴重品を敵が持っていない事を確信できる。そして、一番重要なのが無風であること。風が微風でもあると流され、魔法の効果範囲がズレる。これが非常に怖い。自分自身の方に流されると自分が魔法を喰らうことになる。そうなれば、回避不能、人生終了。

それが、この強力な魔法を使うのに躊躇わせる。実際にブラックドラゴン戦で使えれば、即一匹は仕留められただろう。だが、奴らは羽を持っており簡単に氷結吹雪を吹き飛ばしてしまう。それに神楽舞を舞っている最中に噛じられて、最後まで詠唱できないだろうね。

血肉が練り込まれた微細な赤い氷は直ぐに溶け、血の池を作る。十メートル四方の空間が完全に何も無くなる。

廊下の控室側の壁も溶けて綺麗に無くなる。一応、控室の奥には範囲内にならない様に気を付けて魔法を放った為、カタラ達に被害は無い。ナルディアがキョトンとアホ面をさげている。私が氷結吹雪を使ったことは魔力の流れで把握しているだろうね。何せ、余りにも特殊な詠唱方法で有名だし、高位の魔法使いなら誰でも分かるはず。私が氷結吹雪の様な上級呪文は、使えないとでも思っていたのかな。甘い甘い。こちらはエルフだから、修行する時間はタップリあるからね。逆にナルディアには、習得は無理じゃないかな。あの身体の固まり具合は、多分習得していないね。詠唱方法が神楽舞のため、基本的に女が習得しやすい。男には手先や足先の繊細な表現をするのが難しいからね。特にガサツなナルディアには無理だね。さぁ、私のことを見直したかな。大魔法使い君。


リザードマン共が戦意を失ったようだ。こうなれば、後は掃討戦を行なうだけだね。敵の抵抗力が極端に落ちたというか、無くなったに等しい。特にリザードマンからの反撃も無い為、機械的に剣を振るい、次々とリザードマンの死骸を積み上げていく。ロリの方も素早さと小ささを活かし、次々と無気力になったリザードマンを屠る。

背後からはウォンの肉を切り、骨を断つ音しかしない。

そして三分後、静寂が空間を支配した。


どうやら、この場に居たリザードマンは全て倒したようだね。生きている者はいない。さて、何十匹居たことやら。この状況じゃ、数えることなんてできないね。

リラックスするために、一つ深呼吸をする。鉄と脂の臭いが鼻腔を突く。いつもの事だし、気にも留めないけどね。

「ウォン、ロリ、怪我は無いよね」

「おう、もちろんだ」

「うん、無いよ~」

二人から予想通り、いや、予定通りの返事が返ってくる。もちろん私も怪我をしていない。

ロリと私は全身血塗れだが、ウォンの足許は赤く染まっているが、上半身は綺麗なままだ。返り血が付いていない。相変わらず、技量の差を感じさせる。何時になったら、ウォンの剣技に追いつけるのだろうかな。

「あの程度では俺を追い詰めることは出来ないな。数が多いからもう少し歯応え、いや手応えか、まぁどちらでもいいか。あると思ったんだが、拍子抜けだったな」

「いいじゃない。怪我をしないことは良いことだよ」

「まあな。だが、剣の修業にならん」

「どっちにしても城に入ったら、嫌でも苦戦するよ。だって、レッドドラゴンだもんね」

「ふ、楽しみだな」

「え~、私はヤダ。だって炎を吐いてくるもん。髪の毛とか焦げちゃうよ」

「そっちを心配するか、普通」

「折角、腰まで綺麗に伸ばした黒髪なのよ。ここまで伸ばすのに何年かかったことか」

「男の俺には分からん」

「男が分からないのじゃなくて、ウォンが理解出来ないの。ポニーテール属性とかお団子属性持ちの男だって居るんだよ」

「やっぱり、俺には理解できん」

まぁ、これ以上朴念仁のウォンと話しても埒が明かないかな。

それよりも洞窟探索を一旦中断して、身体を洗い流したいよ。ちょいと今回は派手に暴れすぎたかな。まるで血の宴の後だね。

大変、ながらくお待たせ致しました。

ようやくの更新でございます。

まさか、この2週間の間に風邪を3回も引くとは思いませんでした。その為、更新が予想以上に遅くなり申し訳ありません。

その分、内容は濃く出来たかなと自画自賛をしております。

少しでも皆様に楽しんで頂けたら幸いです。

今後とも、よろしくお願い申し上げます。


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