16.密約
ウォンと別れ、族長室へ向かいながら今後のことを考える。エンヴィーから砦に向かう三日間、ブラフォードの扱いに気を取られ、砦の防衛力の増強の件をすっかり忘れていたんだよね。
族長には、砦の守備力を上げる約束をしているんだけど、実際の計画をまだ話していない。
私の計画は、魔法使いのナルディアの魔法でスケルトンを創造し、守備兵に置くことを考えているんだよね。
ナルディアにスケルトンを想像する魔法のことを確認すると触媒に骨が必要だという。つまり、仲間の墓を暴いて、その骨でスケルトンを作り、こき使うけど良いよねって話をする訳だよね。
これは、さらに恨まれるね。ダメだ、とても言い出せないよね。
代わりの骨が、何処かに埋まっていないかな。そうすると、仲間の骨を使わずに済むのだけどね。心当たりがないんだよね。
とりあえずは、ブラフォードをここの守備兵に置いて、その間に廃城のモンスターを狩り、スケルトン化させて地道に増やしていくことが現実的かな。
これ以上、族長達の心象を悪くすると暗殺されるかもね。クワバラクワバラ。
よし、ブラフォードをここに置いておいて、明日から探検に行こう。この線で話をして、地道にスケルトンを増やしていきますか。うまくいけば、オーガやトロールのスケルトンが出来れば、多少の強敵が攻めてきても追い返すことが確実にできるだろう。ゴブリン級なら攻めてきても楽勝だしね。うん、仲間の骨を使うより廃城でスケルトンを増やしていこう。まだ、行ったことがないけどモンスターに困ることは無いみたいだしね。よし、この線ででっち上げるとしましょうか。
私は腹をくくって、族長室へ足を踏み入れた。
「族長、お邪魔するよ。今、戻ったよ」
族長が椅子にふんぞり返っている。その目は非常に冷酷で、そして逆に復讐に燃え上がっている。やっぱり、怒っているよね。許せるはず無いよね。
「ふん、ミューレ殿か。帰ってきたか。要件は何だ」
「今後の計画の相談をと思ってね」
「わかった。聞かせてもらおう。だが、我ら七人揃ってから話を聞く」
「いいよ。集まるのを待つよ」
時間をもらえるのは私も有り難い。今の内にでっち上げを補強しておこう。
しばらくして、族長室に生き残りのオーク七匹全員が揃った。
さて、始めますか。オーク七匹と私だけだし、いつもの猫をかぶった話し方は必要ないかな。
地を出しますか。こいつらに本性を隠す必要は無いしね。私の本性を喋るようなら…。
「さて、お前達には遠慮はしない。よって、本来の私をさらけ出す。この態度、話し方をここに居るものに以外に話せば殺す。まず最初にそれだけは言っておく」
私自身も今まで隠していた気迫を全て解き放つ。
オークたちに動揺が走る。たかが小娘のエルフと思っていれば、実はとんでもない人物ではないかとざわつく。『そういえば以前に勇士殿と互角の仕合をしていた。見た目に騙されていたが、我らでは勝てんぞ。』オーク共が突如慌てふためく。
勝手に想像していろ。私はそこまで関知しない。
「仲間のドワーフを守備兵として砦に置く。どの様に使っていただいて結構。死ぬことがあっても文句は言わない」
「ウォン殿と同じくらい強いのか」
「いや格下だ。冒険者としては一流だ。オーガ相手には遅れは取らん」
「ならば、いいだろう」
「廃城探検において、倒したモンスターをスケルトン化し、砦の守備兵として置く。支配権は族長に渡す。オーガやトロールを倒せば、かなり強いスケルトンを作ることができる。それにスケルトンであれば見栄えは悪いが、衣食住の心配がない」
「つまり、食事も睡眠も不要。金もかからず、二十四時間、立ち番が出来るわけか」
「その通りだ。スケルトンが揃い次第、小隊、中隊、大隊と組織をしていく。大隊規模になり次第、スケルトンの提供は終了。そのどこかで、守備力が十分であると判断した時点でドワーフはパーティーに戻す。スケルトンは、どの様に使っていただいて結構。補充が必要なら申し出でよ。補充してやる。ただし、廃城、赤き城には私達六人以外は近付けさせるな」
「それが、守備力を提供する交換条件というわけか。しかし、大隊規模のスケルトンを俺に預けてお前達を攻撃するとは考えないのか」
「脅しにもならん。スケルトン級ではウォン一人でも勝てる」
「確かにウォン殿なら、可能か。それにミューレ殿も先日のウォン殿との仕合で恐ろしき強さを見せられた。そこに魔法が加わればウォンどのも倒せる可能性がある。それに我らごと魔法で一掃も出来るか…。我が同胞の様にな」
「否定はしない」
「どうあがいても、お前達には歯向かえないのか…。それが定めか。わかった。皆と会議をする時間が欲しい。」
「好きなだけ打ち合わせをすればいい。こちらには、時間はたっぷりある」
オーク達が円陣を組み、オーク語で話し合いを始める。オーク語を理解する私には筒抜けだがあえて知らぬ振りをしておく。
ソファに深く座り直し、紅茶をゆっくりと味わう。いったい、どんな答えを出してくる。
一度は降参している奴らだ。さんざん実力も見せつけた。ウォンに砦に残って貰ったのも砦の防衛力の他に私達の実力を更に知ってもらうためだ。
ウォンから私達の強さを聞き出しているはずだ。何を悩む必要があるんだ。オーク共の声がどんどん小さくなっていき、ついに聞き取れない。仕方ない結論が出るまで大人しく待つとしよう。
「お待たせ致しました」
結局、オーク共は話し合いに一時間以上かけた。一時間程度待つ事ぐらいエルフには一瞬でしかない。しかし、口ぶりと態度が先程までと打って変わって丁寧になっている。どんな答えを出したんだ。そちらの方が気になる。
「結論から申し上げます。ミューレ様の下僕にして下さい。この砦もご自由にお使い下さい。今から我らミューレ様の忠実なる下僕となります」
突然の族長の申し出は予想外だった。私はかなり憎まれており、一生許されることはないと踏んでいた。この会議は、こちらの申し出を飲んで終わりだと思っていた。
しかし、現実はさらにその上を行く。私の部下いや、さらにその下の下僕になるという申し出には面食らった。正直、完全に私の思惑を超えている。生き残るためには何でもありですか。
この族長は頭が切れすぎるな。元の人間の血を色濃く継いでいるな。ハーフオークというのは、知恵と教養があれば人間と変わらないのか。逆にオークの力強さを持っている分、やっかいかもしれない。
オーク共は、個人の感情より一族の生き残りを平気で選択してきた。それも七人の意見をまとめてくるとはやるじゃないか。いいだろう、下僕になるというのならそれも飲み込もう。仮にも姫と呼ばれる身。たかだか七人の部下位、掌握できずにどうする。
「本気か。配下ではなく下僕でいいのか。それも冷血にして効率主義者の私のだ。私は冷酷非道な手段も必要とあれば、躊躇わずに作戦に組み込むぞ。その作戦に死ねと言われるような計画も含まれるぞ」
私はソファから立ち上がり、床にひざまずく七匹のオークを見下す。
「ミューレ様に命を捧げます。我ら一族は滅びました。この怒りを持ち続けても無意味。ならば、せめて名将のもとに新たなる繁栄と栄光ある死を求めます」
「貴様らの命などいらん。安い命など何の役にも立たん。何があってもしぶとく生き残る道具なら必要だ。死にたがりなど作戦遂行の邪魔だ」
「では、我らは何があっても死にません。必ずミューレ様の元に戻ってまいります。便利な道具としてお使い下さい」
「一体何を考えている。お前達にとって私は仇ではないのか。それに新たなる繁栄など約束などせぬ」
「確かに憎き仇です。ですが、その的確な判断能力に光明を見ました。我が一族の再興を、ミューレ様についていけば、必ず可能であると判断しました。ゆえにミューレ様の下僕となり力を蓄えます」
「禍根は胸の奥に秘め、未来を見ると申すか。よかろう。その願い叶えてやろう。下僕にしてやる。我が手足となり、この地域を完全に平定せよ。時間はいくらかかっても良い。再興のためなら、武力が揃い次第、近場のオークを飲み込み一族を増やしてもかまわん。あと、エンヴィーへの裏街道を馬が通れるようにしろ。これは後回しで良い。急がない。あと一つ、人前ではミューレ殿で通せ。私の下僕になったことは誰にも言うな。あくまで対等の協力関係として振る舞え。誰にも悟られるな」
「かしこまりました、ミューレ様。ちなみに、このような手配書が回っております。拝見されますか」
私は手を伸ばし、羊皮紙を受け取る。
『指名手配 ミューレスト・ウィザー 捕獲者に金貨1万枚 死亡時は一切支払われない』
そこには、エルフの美少女が微笑んでいる。そう、私の素顔が書かれている。
こんなものが、ここにまで回ってくるとはあいつらも暇だね。
「これを見ても下僕になるのか」
「はい、ミューレ様がただの殺人鬼ではないと判断する材料になりました。おおよその事情はこの手配書を手に入れた時に調べ、存じ上げております」
「そうか。なお仲間たちはこの事は一切知らない。絶対に口外するな」
「かしこまりました」
「早速だが、明日廃城に向かって出発する案内役が欲しい」
「では、副族長に案内をさせます」
「わかった。副族長、明日はよろしく頼む」
副族長は頷く。相変わらず話そうとしない奴だ。
「じゃあ、あいつらにも作戦を伝えてくる。くれぐれもボロを出すなよ」
「はい、重々承知しております」
私は踵を返し、族長室に出る。久しぶりに姫に戻ってしまった。五十年ぶりくらいだろうか。いや、今はその事は忘れよう。みんなの所に戻るまでにはミューレに戻らなければ、軽く両方の頬を叩く。よし気分が少しは変わった。皆の所に戻ろう。ゆっくりと考えをまとめ直しながら一歩を踏み出した。
結局、作戦7のカタラを城主にするが、私が城主になったというわけだね。
ほぼ、初期の作戦を実施できるということかな。ま、結果が良ければいいよね。
さて、みんなの所に戻ってきたし、作戦を説明しましょうかね。
「お待たせ。族長達と話をつけてきたよ。じゃ、説明するね」
「ミューレ、怪我はありませんでしたか。何もされませんでしたか」
「あぁ、カタラその心配はないぞ。しばらく砦に一緒にいたが、あいつら根は良い奴らだ。俺が保証する」
カタラが心配し、ウォンが実情を説明してくれる。確かに、オーク達の根は良い奴らだと思うよ。そいつらのほとんどを消し炭にしちゃったけどね。
「ウォンの言うとおり、問題なかったよ。大丈夫、平和に話し合えたよ」
「なら、良かったです」
「ふん、オーク共も気が弱いな。こんな耳長族なんぞ。一切りしてやれば良かったのにな」
さて、筋肉ダルマの馬鹿は無視して話を続けようかな。
「明日から、廃城を目指すね。案内は副族長がしてくれることになったよ。但し、城が見えるところまでね。城が見えたらお別れですよ。足手まといになりますからね」
チラリと筋肉ダルマへ視線を飛ばすが、本人は気づいていない。ウォンとカタラは、それを見てため息をついている。またかこの二人は、という顔をしているね。
「そこから先は私達だけで動きますね。中にはレッドドラゴンが居るとの話なので、不意に扉を開けず一部屋一部屋慎重に探索していきます。大声なども禁止だからね。時間は無期限だから慌てる必要ないし、疲れたら素直に砦に引き返して休養をとるよ。それでいいかな」
ドワーフを除く四人からは、異口同音で同意が取れた。だが、ドワーフだけはやはり納得していない。
「たかがトカゲの親玉なぞ、一撃で粉砕してやるわ。ワシに任せとけば一日で方をつけてやる」
ブラフォードは、バトルアックスに振り回されながら意気込んでいるね。見ているだけで危なかっしいよ。それに一日というか、十分で確かに方はつくよ。ホットなビア樽の完成だね。
「ブラフォード、ブラックドラゴン戦のことを忘れたのですか。レッドドラゴンは、ブラックドラゴンより数段上級種になるのですよ。先日より厳しい戦いになるはずです」
カタラがたしなめるが、効果は無いようだね。
「あの時は二匹だった為、遅れをとったが一匹などに遅れは取らんわ。ドハハハハ」
どこから、その自信が溢れてくるんだろうね。先日の戦いでブラフォードがしたことは、鱗を数枚剥がした事と尻尾で壁まで弾き飛ばされたことぐらいだったかな。あ、毒ガスのブレスを浴びて地面でピクピクもしてかな。カタラが解毒してくれなければ、あの世行きだったね。ち、惜しいことをした。
「あぁいい忘れてたけど、ブラフォードは単独行動を取るということで、私達五人は、周囲のモンスターを倒し、援軍を呼ばれぬように外堀を埋めていこうね」
「ま、待て、ワシは一人で行動するとは言っとらん。もしも、レッドドラゴンに出会った時には粉砕してやろうと言っているのだ。早とちりはいかんぞ」
「別にいいよ。単独行動しても。勝てるんでしょう」
「もちろん、ワシが勝つ。しかし、皆を守るという指名がワシにはある。残念じゃ」
「遠慮しなくていいよ。五人でパーティー組むから遠慮なくレッドドラゴンを倒してきてね」
「遠慮なぞしてはおらん。ワシは皆を心配しての判断だ」
「ごめん、ごめん最初に言ってなかったね。ブラフォードはお留守番。砦を守ってね。それが族長との約束だから」
「何、留守番だと。チッ、仕方あるまい。トカゲ野郎を粉砕してやろうと思ったが、族長と約束してしまったものは仕方がない。エースであるワシでなければ、砦を守ることはできないという事か。ワシが行けば、数分で勝負がついたのに残念じゃ」
あぁ、面倒な奴だよ。実力がないくせに良い格好をいつもしようとする。だから、わざわざ、こんな茶番を組んで砦の防御をさせるなんて。早く自分の実力を自覚してね。本気でよろしく。
「じゃあ、攻略戦の続きだけど、倒したモンスターはスケルトンにして、族長にあげるね。で、砦の軍事力にしてもらうから。自由にしていいよって言ってあるから、ナルディアは指揮権を族長に設定してね」
「ふむ、我の力を思う存分オーク共に見せつけてやろう。我の魔法の偉大さに心より打ち震えるが良いわ。フハハハ」
ナルディアは明後日の方向に向いて高笑いをしている。相変わらず、一体何を考えていることやら。
「作ったスケルトンはどうやって砦に送るつもりなんだ?」
ウォンが素朴な疑問をぶつけてきた。そうだよね、普通は気になるよね。
「自分で歩いて、砦に戻ってもらうね。戻る途中で壊れるような脆いスケルトンはいらないからね。問題ないよ。ね、ナルディア」
「無論、我のスケルトンならその程度の命令は楽にこなす。そして、リタイアするような柔なスケルトンなど我のプライドにかけて創造せぬわ。任せておくが良い。フハハハ」
とりあえず、三馬鹿は機嫌さえ良ければ、割と思惑通りに動かせるんだよね。邪魔くさいけどね。
「他に何か質問はあるかな」
「ロリは何をしたらいいの。ねえねえ、ロリはレッドドラゴンを見たことがないからワクワクしているんだよ」
「では、出会うまでのお楽しみにしてね」
「うわ~、どんな大きさだろう。この前のブラックドラゴンより大きいのかな。どうかなカタラ」
「そうですね、多分大きいでしょうね。ロリ、十分気をつけるのですよ。ミューレ、私達にはどんな役目があるのでしょうか」
「もちろん、臨機応変でよろしくね」
「ミューレ、それは臨機応変とは言いません。行き当たりばったりです」
「そうとも言うね。カタラ、言葉って難しいよね」
正直、臨機応変でも行き当たりばったりでもどちらでもいい。結局、やることはモンスター発見、斬る、倒す、進む、何だからね。ただ、ドラゴン戦の時に乱入や応援が来るのを避けたいから先に処理しておきたいんだよね。
あと、レッドドラゴンと戦う前に実物も目にしておきたいしね。やっぱり、知っているのと知らないのでは対策の立て方が変わると思うんだよね。心構えも変わってくるだろうね。
遭遇戦で不意打ちを喰らうのだけは避けたいね。ドラゴンブレスは確か炎。鎧じゃ炎は防げないもんね。
「よし、明日に備えて俺は寝るぞ」
「じゃあ、ロリも寝るね。ここに来るのに疲れちゃった」
ロリ、お前は砦に来るまで喋り続けていたでしょう。それは喋り疲れだと思うよ。
「我は、魔法の書物を少し読み込んでおくか。スケルトンか。創造するのは久しぶりだな。ま、天才の我なら、間違いなくすぐに思い出すであろう」
「どれ、ワシは族長の顔を見てくるか。どちらが上かハッキリさせねばのう」
オークごときに本気で張り合ってどうするんだろうね。勝って当たり前だよ。相変わらず、筋肉ダルマは自己顕示欲が強いね。
そして、皆がそれぞれ散り、広場には私とカタラが残された。
「どうしたのカタラ。休まなくていいの?」
「皆がいる前では聞くのはどうかと思い、二人きりになるのを待っていました」
はて、カタラが気にする様なことはあったかな。
「ミューレ、族長室で何があったのですか。いつもと雰囲気が違いますよ。いつもでしたら、雲のように掴み所がないといいましょうか、穏やかな空気を纏っています。しかし、今は全身から殺気が溢れようとするのを無理に押さえ込んでいます。多分、ウォンは何も言いませでしたが、気づいていると思います」
やれやれ、付き合いが長いと些細な変化も読まれちゃうね。
「城主にカタラをという話をしていたでしょう。あれね、私がすることになっちゃった」
「あら、よくあのオークの皆さんが認めてくれましたね」
「ううん、逆。なってくれと頼まれちゃった。一族再興には優しさより効率主義が必要なんだって」
少し、カタラが悲しそうな表情をする。優しさがいらないというのが、悲しいのだろうね。
「案内してもらう条件で承諾しちゃった。仕方ないよね。誰かがここの統治をしないといけないんだからね。別に私が特別に何かをすることはないんだけどね。ナルディアのスケルトンを使って、オークが勝手に動くんだから。最初から言っていたように名前だけだよ」
「そうですか。意に沿わぬことがあって気が立っているのですね。仕方ありません。ミューレもしっかり休んで下さい。そうすれば、明日にはいつものミューレに戻っています」
だと、いいんだけど。密約があるからね。一日休んだくらいではあまり効果ないかな。まぁ、冒険が始まれば忘れちゃうと思うけどね。
「うん、そうだね、もう休むよ。カタラ、心配してくれてありがとう。おやすみ」
「仲間じゃないですか。心配します。では、ゆっくり休んで下さい。おやすみなさい」
少し、日が高いが自分の寝床に向かう。
一度、自分の中で今日起きたことを整理した方が良いのかな。そうすれば、少しは落ち着きを取り戻すかな。どうやら、自分では冷静さを保っているつもりだったけど、感の鋭い人間から見れば冷静じゃないみたいだね。
そうだよね。殺したいほどの憎い仇の下僕になるなんて選択肢が現れるとは予測してなかったもんね。少し、私の動揺が外に漏れたかな。沈着冷静の冷血漢が動揺するなんてねぇ。
ま、今晩はゆっくりとこの意味を噛み締めて熟考し、明日には気分を変えて冒険に挑もう。
だって、私は冒険をするために世界に出てきたんだもの。こんな処で躓いていられないよね。
さて、今回はどんな冒険になることやら。楽しみになってきたよ。
今日の出来事を反芻しながら、まどろみに落ちていった。