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15.三馬鹿登場

四季物語で遅めの昼食を取った後、カタラと一緒に三馬鹿の家に向かった。

私は薄い水色のワンピースにポニーテール。このままでは、エルフ特有の長い耳が見えるのでつばの広い丸い帽子を被り、中に耳を入れて隠してしまう。

一方カタラは、代わり映えがしない。いつもの藍色の宗教着を纏っている。一体、同じ物を何着持っているんだろうね。

どんな服や鎧を来ても、カタラの美貌が際立つのは変わらない。後、腰に護身用の警棒を提げている。折角の街歩き、例え三馬鹿の家に行くだけとはいえ、女の子なんだから少しはお洒落に気を使おうよ。

まあ、以前にも同じことを言って、贅沢は不要、磨くのは己自身です。と、返事を貰ったからもう言わないけどね。


ところで意外にも三馬鹿の家は、エンヴィーの中でも上流階級が住むエリアにある。正確には、三馬鹿の家ではなく魔法使いの家なんだけどね。そこに他の二人が転がり込んで居候をしているわけだけど、まぁ自分の家同然にしているね。遠慮とか配慮とかって食べられるんですかの二人だからね。

よく、魔法使いも何も文句を言わないもんだよ。私だったら、一時間も立たない内に家から叩き出していると思うね。

それにしても、カタラと並んで歩いていると視線が痛い。

カタラに対しては皆が顔を見て、デレ~と口を半開きにして眺めているけど、私の場合、足許から見て胸辺りまでは、カタラと同じ反応なのに顔を見た瞬間にギョッとする。確かに美少女かな~とワクワクしながら顔を見たら、白亜の仮面を着けていたら驚くのは分かるけど、何か理不尽さを感じる。目元が隠れるぐらいの小さい仮面なのだから、美少女のオーラが溢れているはずなんだけどな~。

ま、所詮、見た目で判断するのが普通ですよね。わかりますよ。ハァ~、悲しい。

気を取り直して、さらに道を進んでいくと中流階級のこじんまりした家々から、一軒一軒に塀がある大きい家が建つ区画に進んできた。さらに奥に進むにつれ、段々と敷地が大きくなっていく。

この上流階級の住居エリアの中央当たりが最も大きい家々が並んでいる。いや、家と家の間隔が広いから離れていると言った方が正しいのもしれない。この辺になると住んでいる者も各ギルドの長や歴代市長とか、この街の実力者が多い。基本的に石造りで荘厳な雰囲気を漂わせる家が多い。その中で目立つのが他よりも塀の高さが周りの三倍、だいたい三階建てくらいの高さの塀が周囲を覆っている家が魔法使いの家だ。

ハッキリ言って、周りから浮いている。高級住宅街に突如現れる箱。中の建物より高い塀が周囲を囲っており、門も分厚い木製で中をうかがい知ることが出来ない。ある意味、要塞と言えるかもね。

あれ待てよ。今、気がついたけど、この造りは刑務所と同じじゃないかな。外からも中からも壁で遮られているのって。うん、間違いない刑務所と同じだよね。

さすが、馬鹿魔法使い。高い金を出してわざわざ高級住宅地に自分専用の刑務所を作るなんて何を考えているのやら。だから、後の馬鹿二人もここに住みたがるんだね。三人で共同生活が出来る理由がようやく分かったような気がするよ。今まで、不思議だったんだよね。協調性の無い三馬鹿がどうやって共同生活が出来るのか。刑務所なら絶対に共同生活できるよね。長年の不思議がようやく解けたよ。


カタラがノッカーを三回鳴らす。金属同士が当たる鈍い音が響く。普通なら家の中まで聞こえない。この音で門番が取り次いでくれるのが普通なのだけど、この家には三馬鹿しか住んでいない。だけど、門はすぐに開いた。中から十歳位の男の子が顔を出してくる。

「あー、カタラだ!久しぶり。会いたかったよ。もちろん、ミューレにも会いたかったよ」

ピグミット族のロリだ。見た目は十歳の男の子だが、実年齢は百歳。長命種で四百年程の寿命がある。実年齢は百歳だが、中身つまり精神年齢も見た目の十歳と変わらない。ピグミット族は、別名『永遠の子供』と呼ばれ、これ以上歳をとらない。後はこのまま死んでいくだけだ。

気がつくと、いつの間にかカタラに抱きついて豊満な胸に顔を埋めている。

カタラも嫌がる素振りを見せず、頭を慈しむように撫でている。

「ささ、中に入ってよ。相変わらず散らかっているけど気にしちゃだめだよ」

カタラと私の腕を掴み、門の中に引き込まれる。ロリの家じゃないぞ~。魔法使いの家だぞ~。遠慮はないのか~。と、声に出そうかとも思ったけど、無意味だし止めた。

中庭には、一番会いたくなかったドワーホ、いや、ドワーフが奇妙な掛け声とともに素振りらしきことをしていた。

「ウ、ワチャー!ドンリャー!」

一声毎に力一杯、バトルアックスを振り回す。優雅さや技のキレなんて全く感じない。

「あ~、これは効果のない練習方法だね。素振りというのは、基本動作を一つ一つ確認しながらするのが基本で、力任せに振り回すだけならゴブリンと同じだね。」

「なんじゃと、この耳長族が!ワシがゴブリンに負けると言うのか!」

身長一メートルちょいの筋肉ダルマがこちらに絡んでくる。

「あれ、カタラ。もしかしたら私、声に出してた?」

「はい、それはもうハッキリと。聞き間違いが起こらない素晴らしい滑舌でした」

「そうなんだ。ま、いいか。本当の事だしね」

「ミューレ。人は本当の事を真正面に言われると傷つき、怒るものです。注意した方が良いです。たった今、ブラフォードを怒らせたでしょう」

カタラは基本的に善人なのだが、ごくたまに天然を発揮する時がある。今まさに発揮された。カタラに悪気は無い。これは断言できる。ま、私のは悪気も茶目っ気も含めた発言だけどね。

ちなみにブラフォードというのが、このドワーフの名前だ。歳は三十前半だったかな。興味ないから忘れちゃった。正直に言えばパーティーの囮役だから、重要視していないもんで興味が湧かないんだよね。何か特技でもあれば弱いなりに記憶に残るんだけど、猪突猛進しか取り柄がないから、代わりが幾らでもきくんだよね。あ、また酷いことを考えているよね。ま、いいか。

「オー!なんってこった!カタラまでワシを侮辱するか!斬る。絶対にたった斬る!」

いや、ブラフォードの実力じゃ無理。私もカタラも斬れないよ。

「で、ロリ。馬鹿魔法使いは、研究室にいるの?」

「そうだよ。さっき覗いた時、何か『へへっへ』って変な笑い方をしてたよ」

あぁ、これは研究が順調に進んでいるという事かな。機嫌が良いという事は、魔法自慢が出そうだな。覚悟しておきますか。

「二人とも早く食堂に行こうよ。飲み物でも入れるね」

ロリが私達の手をズンズン引っ張っていく。ロリは私達に久しぶりに会えて嬉しいみたいだ。三馬鹿の中では、まともな方だから助かるよ。

「ロリがお茶を入れてくれるのですね。私、嬉しいですわ。楽しみです」

「うん、カタラ、期待してね。新しいお茶の入れ方を考えたんだ。ロリのオリジナルだよ」

あ、これはダメな奴だ。飲んだら美味しくないパターンだ。後で、自分で入れ直そう。

「こら、お前ら人の話を聞いておるのか!」

ここの食堂には、何が置いてあるのかな。紅茶やコーヒーがあれば良いんだけど、薬草茶は苦手だな。普通の茶店で飲めるものが置いてあります様に。そう願いながらロリの案内で家の中に入っていく。家は木造平屋建てで確か十部屋以上あるとか、魔法使いが自慢していたかな。

でも、そんな自慢をされても旅烏の私には家なんて必要がないから、憧れとか羨ましいとかいう気持ちにならないんだよね。まぁ、家を建てる気になったら、いつでもこれ位は建てられるんだけどね。ウォンもカタラも。それ位は、楽勝に蓄えているんだよね。というか、普段着ている装備品を売りはらってもこの屋敷程度ならお釣りが来るかな。でも、魔法使いにそれを言うと機嫌をすぐに損ねるから三人とも適当に話を合わせているというか、聞き流している。

「お前達待て!ワシと立ち会え!逃げるのか!」

後ろからまだ何か聞こえる様な気がするが、気のせいだよね。だって、隣りにいるカタラが人の話に返事をしないという事は有り得ないもんね。

玄関の扉が閉まり、静かになった。私達三人の足音しかしない。やっぱり幻聴だったんだね。

ちょっと、冒険で疲れが出たのかな。最終日は、休息に当てた方がいいかもね。


ロリの案内で食堂の大理石のテーブルに着く。あまり、石系統の机は好きじゃないんだよね。触感が冷たくて固いし、何か寒々しく感じるんだよね。家具は、木製がいいな。

ロリが、高級そうなティーカップによく分からない紅茶の様な物を出してくれる。匂いを嗅ぐと腐臭というかアンモニア臭がする。よし、カタラが飲んでから味見をしよう。

「ねぇねぇ、カタラ、ロリのオリジナルのお茶は美味しい?」

カタラが澄ました顔でティーカップに口をつけているが、口にはほとんど含んでいない。と、いうことは不味いということだね。

「えぇ、とってもロリらしい味がしますわ。ロリにしか創り出せない味わいです」

と言って、カタラがロリに微笑む。

さすが、カタラです。決して不味いとか人を悲しませることは言わず、如何にも美味しいように聞こえます。カタラが一口も飲まないなんて、余程不味かったのですね。わかります。机に置いてあるだけで香る臭いが物語っているよね。この臭いは、下水管から漂う臭いに近いよね。よく、これを口許まで持っていけたよね。さすがカタラだよ。感心するよ。

「カタラもミューレもお代わりあるよ。どんどん飲んで」

「ロリ、ありがとうございます。残念なことに先程、宿で食事をしてきたばかりなのです。次も期待していますね。さぁ、余り時間がありませんの。ナルディアに挨拶をしたいのですが」

ナイス誘導だ、カタラ。どこにも不自然さは感じなかった。これで謎茶は飲まずに済んだよ。

「そうなんだ、ゴメンね、ロリ。ちょっと、人を待たせているから時間が無いんだよね」

正確には人ではなく、オークを待たせているんだけどね。言うとややこしくなるから人にしておこう。

「残念だな~。じゃあ、次の機会にはもっと美味しいスペシャルティーを作るから楽しみにしててね。じゃあ、実験室へ行こう。多分、そこにナルディアがいるよ」

さすが勝手知ったる他人の家。ロリは、我がもの顔で私達二人を研究室へ案内していく。そしてノックもせずに入っていく。

「ナルディア~、カタラとミューレが来たよ~」

「くくく、我には分かっていた。お前達三人が来ることがな。ウォン、カタラそしてミューレ!たった今、閃いた大魔法の概念を聞くがいい!」

絵に書いた様な魔法使いの研究室の中央に一人の男が立っていた。中肉中背でタキシードに黒いローブを着ている。歳は確か二十一歳だったかな。このハイテンションマンが魔法使いのナルディアだ。

このテンションの高さには正直ついていくのがツライ。ロリとブラフォードだけが、このテンションに乗っていける。私達三人は、置いてけぼりをいつも喰らってしまう。

「ねぇねぇ、ナルディア。ウォンは来てないよ。慌てん坊だな」

ロリの言葉にナルディアが固まる。

「ハハハ!我が水晶球に汚れでも付いていたか。汚れとウォンを見間違えるとは我ながら情けない。だが、仕方あるまい。奴は小汚い格好をしておるから見間違えたのだろう。なははは!では、今回の大魔法の講義に入るぞ」

あぁ、このやり取りが疲れる。だから、私は三馬鹿と会うのに悩んだんだよね。会って数分でアンデッドのエネルギードレインを喰らった様な気がするよ。

「ゴメンね。ちょいと時間が無くてね。講義は又の機会でいいかな。三人に協力して欲しいことがあるんだよね。みんなで話を聞いてくれないかな」

取り敢えず、何としても話を本筋から外すわけにはいかない。一度、脱線を許せば時間を大量に浪費することが分かっているからね。

「ナルディア、ロリ、大事なお話なのです。先のブラックドラゴン戦の保管先が見つかりそうなのです。それに、大魔法を幾らでも実験できる様な場所だそうです」

カタラが助け舟を出してくれる。そうだよね、幼馴染だから一度脱線したらどうなるか一番良く知っているよね。

「何と!実験し放題だと!その話詳しく聞かせてもらう必要があるようだな。よかろう。ロリ、食堂にて話を聞くぞ」

「はいは~い。じゃ、ブラフォードも呼んでくるね」

「うむ。我らは食堂へ先に参る」

どうやら、大魔法とやらの講義は聞かなくても済みそうだね。

やっぱり、カタラを連れてきて正解だったね。この二人の扱いが上手いね。ちゃんと手綱をとっているもんね。私だったら、どこかで爆発してもおかしくないよね。

説明はカタラに任せようかな。私が話すよりも良さそうだよね。


三日後、予定通り副族長のもとに五人が集まった。約束通り、酒を二樽買ってきた。銘柄は四季物語のマスターに任せたのでよく知らないものだ。でも、マスターが選んだんだし、多分美味しいと思う。樽は、ブラフォードに持たせた。こういう力仕事は向いているんだよね。戦闘はからっきしだけどね。ブラフォードも私達よりもっとレベルの低いパーティーに所属すれば活躍できるのにね。勇者の助っ人を時々している私達のパーティーに加入するには本当に力不足なんだよね。私達のパーティーって、そんなに居心地いいかな。私だったら、居たたまれないよ。

さてと、ようやく廃城攻略戦が始められそうだよ。レッドドラゴンが相手か。絶対手強いよね。正直に言って死人が出ると思う。カタラさえ無事なら蘇生魔法で何とかなるから、カタラを如何にして守るかが重要かな。カタラを失った瞬間にパーティーは崩壊だね。前回のブラックドラゴン戦の様な遭遇戦は避けたいよ。あんな思いは二度としたくない。まさか、女を捨てる羽目になるとは…。

今度こそ作戦を立てて臨みたいよね。

死んでもカタラの蘇生魔法で復活できるとはいえ、痛いことには変わりない。それに蘇生魔法は病気や寿命に対しては蘇生出来ないんだよね。廃城にアンデッドがいて病気を移され死亡なんて事もありえる。

今回の冒険は、かなり難易度が高いね。成功率を五分五分にまで持っていければ、勝てる気がするんだよね。とりあえず、偵察が重要になってくるかな。と、なるとロリの敏捷性と小柄さが重要になってくる。種族能力が斥候に向いているからね。

魔法使いは性格が破綻しているけれど、魔法による大火力が凄いから、その辺は頼りになるね。この前も洞窟の中で上級魔法の隕石落としをしてくれるし、あぁ思い出したら腹が立ってきた。いや、落ち着こう。この程度でイライラしていたら、冒険中にストレスでナルディアを後ろからサクッといってしまいそうだよ。

やっぱり、この二人は必要な人材だね。困るのは、ブラフォードをどうするかだよね。盾に使うとあっさり倒されるし、攻撃は命中率が悪すぎる。だから、自身が振り回されるバトルアックスを止めてハンドアックスと盾装備にしろと言っているのに頑として聞かないんだよね。

大獲物を手足のように使えないのなら、小さい獲物で当たるようにして欲しいよ。とりあえず、あの大声と態度で敵の注意を引いてもらって、ウォンとロリで隙をつく形に持っていくしか無いかな。私がカタラの防御を主にすれば、魔法も剣も使えるよね。

はぁ~、結局いつものフォーメーションになるんだよね。ブラフォードがまともな戦士として使えれば、ロリに背後からの不意打ちや死角からの攻撃とか色々できそうなんだけどな。

ウォン一人で矢面に立つのは厳しいな。私かロリが立って連携をしないとウォンがすぐに潰されちゃうね。で、私が前に立つと魔法を使う暇が無いし、ロリが後ろに下ると弓でチビチビ攻撃するしかない。やっぱり、ロリが前衛で私は中衛の一択か。本当にブラフォードは使えないね。とりあえず、先頭を歩かせて罠発見機で当面活躍してもらおうかな。

これが、オーク砦に戻る三日間で考えていたことだった。

ほとんど、堂々巡りで新しい作戦は浮かばなかった。三馬鹿の扱いは、申し訳ないけどカタラに全て任せた。何せ、そうしないと私が切れてしまうんだよね。

ゴメンね、カタラ。


エンヴィーを出発して三日後、樹海を抜け草原地帯に出た。目の前にはオーク砦が見える。

さて、ウォンは無事にしているかな。

門をくぐり広場へと入る。一番に聞こえたのが、剣戟の音だった。やっぱりな。そうじゃないかと思っておりました。

予想通り、ウォンが上半身裸にダガー一本を握りしめ、フル装備の戦士長と仕合をしている。

「おー、みんな揃ったか。ちょいと待ってくれ。いいところなんだ」

ウォンがのんびりと声をかけてくるが、一度もこちらに視線を送らない。戦士長を見続けている。相変わらず、気配だけで人を特定している。超一流の戦士は、こうでなくては。ブラフォードも見習え。

ウォンは、全く汗をかいていないし、呼吸も乱れていない。自然体で立っているだけだ。対して戦士長は、全身から汗を流し湯気が立っている。呼吸も荒く、私の見立てでは次の一合が体力の限界だろうね。

二人の仕合の雰囲気に全員が巻き込まれていく。訂正、筋肉ダルマは雰囲気に呑まれているね。固くなっているよ。私達が動くことがウォンの邪魔になると感じた。ここは大人しく見ていよう。さて、戦士長はどう出るのかな。

「ロリ、チョコレートがあるんだけど賭けないかな。オークがウォンに攻撃を当てることができるかだよ。ちなみに私は当てる方に賭けるね」

「いいよ。じゃあ、ロリは当てない方に賭けるよ」

よし、この賭け貰った。ロリは、戦士長の実力を知らないし、街に行っている間、ずっとウォンが戦士長と仕合をし続け、オーガを超える実力だと想像もできないだろうね。

動きがあった。戦士長が上段からロングソードを振り下ろす。ウォンは最初から構えていたかの様にダガーでロングソードをあっさり受け止めていた。戦士長がダガーごとウォンを切り裂こうと力を入れるが、ピクリともダガーは動かない。

だが、それはフェイントだった。自由になっている左手のシールドでウォンの顔面を殴りとばす。だが、一瞬直撃したように見えたが、ウォンは頭を数センチ下げただけで避けた。だが、戦士長が一枚上手だった。盾は腕から外されていたのだ。飛んでいったのは盾のみ。その盾でできた死角を利用し、左の拳がウォンの鳩尾に直撃する。ウォンにダメージは入っていないが、当たりは当たりだ。やったね。私の賭けの勝ちだね。

「ロリ~。私の勝ちだね」

ロリに手を伸ばすとポケットから一掴みのチョコレートを私に渡してくれる。若干、ロリの頬が膨れているような気がする。

「毎度あり~」

「戦士長、やるじゃないか。よく、俺に攻撃を当てたな。トロールにでも勝てるんじゃないか。この数日の特訓の成果が出たな。良い攻撃だった。俺の知らない攻撃パターンだったから、予測していなかったぞ」

「いや、まぐれだ。次、当たらないこと分かってる。それにダメージ入っていない」

「まぐれだろうと、刃物を使っていれば俺を殺せる唯一のチャンスだったぞ。まぁ、確かに次は無いがな。もう、この攻撃は見切ったな。皆、帰ってきたし、ここまでにするか」

「そうか、残念。また、仕合頼む」

「おう、時間があれば何時でも付き合うぞ。俺も勉強になった。ところで、全員集合か」

ウォンが私の目を見つめてくる。

「えぇ、全員集合よ。今晩は休んで明日から砦の補強作業に入りましょう」

私もウォンの目を見つめ返す。

「野獣剣法もなかなか面白かったぞ。今回の探検でモンスターの出方がわかりやすくなるかもな」

「あら、そうなんだ。強気だね~。相手はレッドドラゴンだよ。野獣剣法とは完全には別物だよ。勝つ見込みがあるんだ」

「それはない。見たこともない相手に対して勝てるとか言える程の戦士にはまだなっていない」

「ウォン様とあろうお方が弱気ですか」

「弱気と過大評価は違うな。過信は命を落とす。俺は自分をそこまで実力があると評価していないぞ」

「そう。実力は十分だと思うんだけどね。ウォンが勝てる人間って今いるのかな?

勇者チームの戦士もウォンに勝てないでしょ。売り出し中の戦士連中にもそんな実力者はいなかった様に思うけど」

「俺達のパーティーみたいに潜っている連中が居てもおかしくないぞ。実際に俺達自身は、エンヴィー最強のパーティーだけど知名度は無いだろう」

「へぇ~、ウォンも考えているんだね。やっぱり、兵法を覚えた方がいいと思うな。もったいないよ。本を読むのが億劫なら私が教授しようか?」

「いや、ミューレに直接教えてもらえるなら、身につくだろうが、その時間を訓練に費やしたいな」

「やっぱり、そう言うと思った。さて、族長に挨拶に行ってくるね。どんな対応されるか怖い怖い」

「骨くらいは拾ってやるぜ」

私は、何も答えず後ろ手に、手を振り族長室に向かった。さて、歓迎してもらえるか、それとも冷遇されるのか。どちらだろうね。

ようやく、三馬鹿を出すことが出来ました。本来ならもっと前半に出す予定でしたが、ついつい脱線をしてしまいました。お待ちしていた方がおられましたら、嬉しく思います。

本筋は決めているのですが、その場の思いつきで寄り道し、かなり遅い登場となってしまいました。

さて、あまりにも作者からひどい扱いを受けるブラフォード君ですが、ほぼ実話です。

基本ベースは、テーブルトークのリプレイです。ただし、十年以上前のプレイのため、実際のプレイ内容とは異なっています。もう、記憶があやふやです。各キャラクターは、現実に存在しています。作者の主観で性格を表現しておりますので、各プレイヤーが見れば、こんな性格じゃないとクレームが付くかもしれませんが、あくまで作者の主観です。クレームは受け付けできません。あしからず。

ですから、各プレイヤーにはこの小説は基本的に内緒です。ちなみにウォンとカタラは知っていますが、読んでいてくれているかは、恐くて聞けません。

さて、ようやく全キャラクターが揃いました。どんな冒険を引き起こしてくれるか作者も分かりません。

予定通りの本筋をたどるのに苦労する気がします。

実際のプレイでもこの三馬鹿がゲームマスターをよく泣かせていました。

今度は作者が泣かされる番のようです。三馬鹿が予定通り行動してくれる事を祈るばかりです。


最後になりましたが、いつも更新と同時にすぐにお読みくださる方々には頭が下がります。

本当に感謝しております。皆様がおられる為、何とかモチベーションを保っております。

皆様がおられる限り絶対に完結させる覚悟でございます。今後共、お付き合い頂けますよう、伏してお願い申し上げます。

本当に読者の皆様ありがとうございます。これからも精進してまいります。

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