第8話 準備
警備室の奥にあるシャッターの中で、重武装の4脚ロボットを3体見つけた
その姿は高さ2m、色は深緑で、頭は円筒形で横一文字に溝が走ってある、そこが目となるカメラの部分のようだ。
両腕が特徴的で、両手とも前腕が武器になっている。
右手はマシンガン、左手は火炎放射器の様だ。
それぞれ太いチューブが背中に伸びており、その先には円筒形のタンクを2つ背負っている。
それぞれに弾薬と火炎放射器燃料を詰めてあるのだろう。
脚部は足が4本。
太く、装甲が付いていて、その姿は中世の鎧を着た騎士二人が背中合わせにイスに座っているかの様な形だ。
近くの机を探す、コレの資料は……あった。
ダイン工業社製、重警備ロボットJL601、民間向け警備ロボットとしては最新鋭だそうだ。
右のマシンガンは7.62mmライフル弾を連射でき、その威力は40mmの鉄板を撃ち抜く。
7.62mmライフル弾の弾頭の重さは10グラム、5mmライフル弾は4グラムだからコレだけで威力は2.5倍。
さらに火薬の量は50%増しなので、単純計算で5mmライフル弾の3.75倍の威力となる。
弾薬の最大積載量は300発。
左の火炎放射器はガソリンを主体とした混合燃料を吐き出す。
その温度は1000℃、あまり高い温度ではないがその状態で10分間放射し続けれるようだ。
最大積載量は20リットル。
これは本当に警備用なのだろうか……?
「なんか金に飽かせてとにかく強力なのを、と買い揃えた感じだな……」
まぁ、おかげ様で僕がこんなに強力な武器を扱えるので、100年前のお金持ちさんありがとうございます、と言ったところだ。
ちなみに価格は1体3000万クレジット、僕のこづかい6000ヶ月分である。
バッテリーがカラになってる様なので、とりあえず充電しておく。
明日には使えるようになっているだろう。
ここには僕自身が使えそうな武器は無いようだ。
一度、コントロールルームに戻るか。
コントロールルームに戻り、さっきの重警備ロボットのことを考える。
あれを使えば地上まで脱出できるだろうか?
……難しいかも?
弾薬はすぐに尽きる、火炎放射器は僕とポチが近くに居ては使いづらいだろう。
なにより怖いのは後ろから追いかけられることだ。
ダンジョンコアが魔物を大量に生み出して追いかけさせた場合、前後で挟まれれば確実に乱戦になる。
魔物退治で確実なのは、今みたいに安全地帯からガンタレットで撃ち殺して数を減らしていくのが一番安全なんだよな。
ガンタレット自体は上の階にも備わっている。
急げば、敵の物量で押し潰される可能性が高い。
さて、どうしたものか?
悩む……。
それから5日経った。
ダンジョンコアは毎日10体から20体のリザードマンを生み出し、それをガンタレットで片っ端から撃ち倒していった。
結果、地下5階の廊下にあるガンタレットの内、2つが残弾0に、残りの2つもそれぞれ50発ほどしか残っていない。
もっと持つかと思ってたが、武装したリザードナイトが3日前から毎日生み出され、それを倒すのに弾を大量に消費してしまったのだ。
食料はまだ残り13日分あるが、もう弾が無い。
決断するべき時が来た。
現在のステータス。
ステータス
Name アルス・クレート
Age 16
Lv 21 (+5)
HP 220/220 (+60)[生命力]
MP 1775/1775 (+120)[魔力量]
Str 29 (+6)[筋力]
Vit 31 (+6)[耐久力]
Mag 62 (+12)[魔力制御力]
Dex 31 (+6)[器用さ]
Agi 31 (+6)[素早さ]
装備
■バール
■作業着
所持品
コントロールキー、ポチ、食料13日分、工具箱、財布。
リザードマンのウロコ 109個、リザードナイトのウロコ 8個、リザードナイトの剣 2本、リザードナイトの盾 2つ。
これが現在の持ち物だ。
リザードマンのドロップアイテムは大量に手に入った。
今の所使い道が無いが一応集めている。
リザードナイトの剣と盾は筋トレに使っている。
実戦で使うには重く厳しいので使っていない。
そして、決断だが……ダンジョンコアを破壊することに決めた。
理由は魔物の発生を止めないと弾薬が尽きて、脱出の途中で詰む可能性が高く思えたからだ。
ぎりぎりまで粘り、レベルも上げられるところまで上げた。
後は考えれる手を全て使って、まずダンジョンボスを撃破する。
そしてダンジョンコアだ。
動力室の監視カメラがマシンガン付属のガンタレットだったら、遠隔操作で簡単にダンジョンコアを破壊できたのだが、動力室には監視カメラしか設置されていない。
攻撃力のある警備機器は置いてないのだ。
なのでダンジョンボスは絶対に倒さなければならない。
この5日間のうちに考えた手を使う。
まずは警備室だ。
廊下に出る。
今朝、リザードマンたちを倒したので廊下に敵はいない。
この5日間で、ダンジョンコアが魔物を生み出すのに時間が掛かるのを確認した。
強い魔物ほど、その後に時間が空く。
さっきリザードナイトを倒したから、後3時間は安全だ。
小走りに移動していく。
警備室の奥の機械にコントロールキーを通し、管理者情報更新。
これで僕がこの重警備ロボットの管理者になった。
「ピッ! マスター、ご指示を……」
重警備ロボットは音声で指示できる様だ。
「よし、付いて来い」
僕の後を3体の重警備ロボットが付いて来る。
ポチも重警備ロボットを見上げながら、うれしそうに足元を走り回っていた。
まずは用具室。
ここで電線を手に入れる。
80mの電線を2本見つけた。
それを繋いで、片方を1体の重警備ロボットに結ぶ。
結んだ方の電線は外皮を剥ぎ、銅線が剥き出しになっている。
そしてもう片方をコントロールルームの手前に運ぶ。
できればこの手は使いたくないが、万が一の切り札だ。
重警備ロボット達に命令して、ダンジョンボスの居るエレベーターホール前のドアに待機してもらう。
僕とポチはコントロールルームに退避だ。
コントロールユニットから遠隔でドアを開ける。
プシューッ……とドアがスライドしていく。
さぁ、勝負だ。