表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/69

第68話 トマト草

 魔力を通した光ファイバーを引っ張ってみるが切れないし、曲げても折れない。

 魔力を強めれば強めるほど青い輝きが強くなった。

 さらに強化されたか?

 引っ張っても切れないので強度はわからないが、絹糸のようにしなやかになった。

 今度は魔力を通すのを止めてみる。

 光は収まり、曲げても折れなかったが、思い切り引っ張ると切れてしまった。

 魔力を付与させた強化の影響は少しだが残ったようだ。

 これからは寝る前に少しずつ魔力を通してなじませてみるか。




 それから1週間。

 概ねシェルターの探索と北の山での狩りに励んだ。

 ヌーを最初シェルターへと連れて行こうとした時は、人食い鬼の巣だと知って逃げ出そうとしたが。

 居ないと確信すれば鼻息荒くジャンク漁りに精を出す。


「こういう壁の中や天井裏に銅線がよく残っているんですよー」

 そう言って僕のバールを借り、金属で出来た壁のパネルを剥がす。

 バールをよじる毎に四隅の太いネジが吹っ飛んだ。

 パネルを剥がした内部を覗けば人一人がなんとか通れるほどの隙間があり、電線などが通っていた。

 僕の魔術で電気が通っているかどうかはわかるので、安心してそれらを回収していく。

 天井裏はリリィが登り、埃だらけになりながら電線を回収していた。

 リサイクルプラントでもそうしていたな。

 埃だらけになりながらも楽しそうだ。

 落ち着くのだろうか?

 ジャンク漁りではやることのないポチもロボCとのおしゃべりを楽しんでいる。


 リリィたちを連れシェルターの奥で銅貨を放ってみたが、あの銀髪の少年は現れなかった。

 彼は一体何だったのか?


 途中、一度トレーダーギルドに寄り、科学者の情報について尋ねたが。

 今は科学者が引っ越したとされる都市に問い合わせをしているところらしく、まだ掛かると言われた。


 そして成長したトマト草はスイカ草と同じく頭の部分が大きく膨らみ、大きな口のある外見となった。

 近づくとギィーッと鳴き、種を吐きかけてくるのも一緒だ。


「そう何度も喰らうか」

 吐いてきた種を手で受ける。

 手の中の種はくるみほどの大きさで球形、黄褐色だ。


「ギィーッ!」

 再度トマト草が…プププッ!と種を吐きかけてくる。

 それに構えるが……3連射!?


「痛だっ!」

 両手で受け止めきれずにおでこに一発もらった。


「こいつ出来るにゃ!」


 トマト草は止まらず、リリィやヌーに連射していく。

 わー、きゃーしながらそれを避けていく。

 30発吐き出したところで疲れたのか、トマト草が横になってしまった。

 ありがたく種を拾い、埋めていく。

 水を掛ければすぐに芽が出、1週間もすればまた成長するんだろうな。


 帰りにホランドさんの鍛冶小屋に寄り、手斧とナイフを受け取る。

 リリィは魔鋼である緑銅製の穂先の長い槍を受け取っていた。

 普通の青銅は錆びることで青緑色になるが、この槍は地金がエメラルドグリーンに輝いている。

 全長は2mほどだが穂先は長く幅広で60cmほどの長さに5cmの幅、刀身には肉球の模様が彫ってある。

 柄は目の詰まった硬い木で持ち手は楕円形、持つだけで刃の向いている先がわかるようにだ。

 突くのではなく、払うことに特化した槍のようだな。

 この形状の刀身の長い槍を大身槍おおみやりと言うそうだ。


「おおー! すごいにゃ。ありがとうにゃ!」


「なんの、それとぼうずにもあるぞ」


「え、僕にもですか」

 期待した僕の前にホランドさんが差し出してきたのは、緑銅色のバールだ。


「こいつなら硬さと粘りがあるからどんな扉でもこじ開けれるし、魔物相手でも十分使えるぞ」

 そう言ってホランドさんが笑う。


「へ、へい……」

 ありがたく戴くことにした。




 それからさらに1週間。

 トマト草の子種たちは育ち、背丈は1mを越すほどに。

 その枝の先には赤々とした実を結んでいた。


「収穫にゃー!」

「わん!」

 リリィとポチが喜び勇んで畑へと入るとトマト草の子苗たちは身じろぎし、近くにあるものから一斉にその実を落とし始める。

 実は柔らかいのか、べちゃりと潰れてしまった。

 その光景に二人の足が止まる。


「あ!」

 ヌーが声を上げた。


「これ知ってます。自殺トマトっていうやつですよ」

 物騒な名前が出てきた。


「何それ?」


「近づくと実を落としダメにする、農家泣かせの作物です」

 また変なものが出てきたものだ。

 だがヌーが対処法を知っていたので、すぐに用意をする。

 柄の長い虫取り網で落ちる場所に先回りして、空中で掬い上げていく。

 それでも半分ほどダメにしてしまったが、地面に落ち潰れてしまったのはポチが片付けていく。


「わうわう♪」

 美味しそうに食べている。

 僕も一つ齧ってみたところ、噛むと弾ける様に果汁が飛び、酸味が舌先へと触れ。

 それを押し流すように今度は甘みが喉の奥へと向かっていく。

 香りは健康的な青臭さで、まるで草原に寝そべっているかのような清々しい匂いが鼻を抜けていく。


「これ、すごい高級品ですよ。干したものが一つ30Dで売られてるの見たことあります」

 ヌーが手の中のトマトを恐れ多いように眺めている。

 30Dと言えばガソリンが3リットル買える値段だ。

 芋なら30個だな。

 自分たちが食べる分以外にも商業用として有用な作物のようだ。

 ただ、ずいぶん柔らかいのでヌーが言ったように、干さなければ持ち運び出来ないのかもしれないが。

 ヌーがトマトを見て皮算用を立てたようでニヤリと笑う。

 その横でリリィが抱えたトマトを、


「ふーん」

 と次から次へと口にしていく。


「え! 売る分が!?」


「何言ってるにゃ。出来たら食べる、大自然の掟にゃ」

「わん!」

 農家と商人の考えの溝は大きい。


 そんな二人と一匹が言い争ってるのを横目に他の作物も見る。

 じゃがいもやニンジンも芽が出てきて、順調に育っている。

 シェルターで集めた銅線も500kgを超えた。

 換金がてらにギルドへ赴くか。

 そろそろ科学者の情報も集まってるかもしれない。



これにて2章の閑話はおしまい、次は3章に向かうことになります。

3章のプロットを組む前に別の中篇を書くので1ヶ月以上掛かることになります。

それまで更新は停止します。

待っている読者様にはお待たせしてしまい、申し訳ありませんが。

次の中篇がこの10ヶ月で学んだ知識と他の作品を書いてて思いついたアイデアの実践の場となり、自身の成長のために避けては通れない作品になるのでこちらを優先します。

「崩壊世界のテストプレイヤーと猫」の方は今まで通り更新します。

それまでお待ちいただければ幸いです。

よろしくお願いいたします。


最後に現在の主人公のデータを載せます。



ステータス

 Name  アルス・クレート

 Age   16

 Class   テクノシャーマン


 Lv  20        

 HP   980/980   [生命力]

 MP  2000/2000  [魔力量]


 Str   120     [筋力]

 Vit   121     [耐久力]

 Mag  242      [魔力制御力]

 Dex  121      [器用さ]

 Agi   121     [素早さ]


 属性  《機械》 

 使用魔術 情報魔術


 スキル  

 ■アクセスⅡ          MP消費 1~不明

 魔力を電波のような波動に変えて放つ。

 魔力に意思を乗せ、機械を操ることが出来る用になる。

 アクセスⅠよりも高出力になった。


 ■テックブースト        MP消費 20

 魔力を機械に流し、強化させる。

 強化する能力はそれぞれで異なり、機械によっては能力が拡張される。


 ■ショートサーキット      MP消費 10  

 機械属性のスタン攻撃。

 アクセスで魔力回線を繋げることで使用可能。

 遠隔攻撃。


 ■フラグメントウォ-ル    MP消費 20

 魔力を固定化し壁とする。

 元が実体の無い魔力なので堅牢さは低いが、同じく実体の薄い熱や電気、魔力などは完全に遮断できる。


 ■ノイズパルス 《new!》   MP消費 5

 魔力波で相手の精神を揺さぶり攻撃する。

 混乱、恐怖、不快といった状態異常を引き起こす。




■所持品

緑銅のバール、手斧、ナイフ、9mmハンドガン(残弾15発)、光ファイバー(20mを5本)


ダークメタルスパイダーの魔石、メタルオーガの金属塊、ギガントトードの翡翠。

古代の銅貨82枚、グリーンマンの葉っぱ50枚、リザードナイトのウロコ8枚。


銅線500kg以上。


所持金 5660D


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング よければお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ