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第67話 光ファイバー

 花モグラはヌーにトドメを刺され、その頭部からぷしゅっと魔素を吹き出す。

 目の前にいたヌーは魔素を見たのは初めてか、及び腰だ。


「消える前に浴びるにゃ!」

 リリィのげきを受け、目をつぶりながら、えぃっと両手を出す。

 その手にへと魔素が吸い込まれていった。


「どう? 変な感じはない、動悸がするとか」


「えっと、手がひんやり冷たかっただけで……、他には何も?」

 ヌーが自身の体を見回し、手をグー、パーしているがレベルアップは無さそうだな。


「花モグラは少ないから、すぐには上がらないにゃよ」


「そう言えばすごく少なかったね」

 ぷしゅっと吹き出し、それでお終いだ。


「モグラが弱すぎるのあるけど、地上じゃそんなもんにゃ。ダンジョンの中が異常なんにゃ。通路が魔素で埋まるほど出るなんて初めて見たにゃ」


「そうなんだ」

 僕はダンジョンで魔物を倒すのが多かったから気づかなかったが、倒した後姿を消失させる以外にも特徴があったんだな。

 この後、さらに3体のモグラを退治したがヌーもリリィもレベルは上がらなかった。



 ……

 …………

「大漁にゃ!」

 リリィがうれしそうにモグラの血抜きをしていく。

 すぐに帰るので内臓は抜かないようだ。

 首を裂かれたモグラはロープで木に吊るされ、血抜きの終わったのをヌーが車へと運ぶ。

 日は傾き、赤みを帯びてきた。


「そろそろ帰ろうか」


「そうだにゃ、今日の分はこれで良いにゃ。また明日来るにゃ」

 モグラ1匹、10kgぐらいありそうなんだが。

 骨とか皮を取り除いて、村の人たち全員で食べても一人当たり1kg近くになるぞ。

 帰りは練習がてらヌーが運転してみた。




「あらあら、こんなにかい」

 食堂でマイルズさんの奥さん、ソーニャさんへと獲物を渡すと喜んでくれた。


 早速、皮を剥いだり内臓を取り分けたりする。

 僕らも手伝う、と言ってもやることは穴掘りだ。

 食べない部分、腸や胃の辺りは埋めて処理するのがこの村のやり方らしい。

 元々はスイカ草への肥料として獲ってきた物だから、あいつにやるか。

 相変わらず近づくとゲーッと威嚇してくるが、僕の運んでるものに気づいたか、そわそわと揺れる。


「やっぱし食べるのかな?」

 口元へとバケツに入れた内臓を近づけるが、大きく反って首を振る。

 頭を下げ、根元辺りを口を使って掘り始めた。


「わかった。そこだな、ポチ」

 ポチが足掻きで根元に穴を掘っていく。

 出来た穴に内臓を落とし埋めていくと。


「ゲッ♪ ゲッ♪」

 揺れながら鳴いている。

 喜んでいるのだろうか?

 とりあえず終わったと立ち去ろうとしたところ、僕の後ろ頭に種を吐かれる!

 3つも。


「ゲッ♪」

 スイカ草は機嫌良さそうにまだ揺れている。

 もしかしてこいつなりの感謝の仕方だろうか。


「どうも?」

 種を拾い、戻る。



 食堂では肉を焼く香ばしい匂いが漂っていた。

 もう手伝うことも無いのでリリィたちと共に座る。


「はいよ、おまたせ」

 出てきたのは焼肉の盛り合わせだ。

 大振りに切られたもも肉や背の部分が焦げ目が付くほど焼かれ、湯気を立てている。

 半球状の切り身は内臓かな?

 こちらもよく焼けてるが色はクロっぽい茶だ。


「急だったんで焼いただけだけど、明日にはスープやベーコンも作るからね」

 そう言ってソーニャさんは厨房へと戻る。

 さて、と僕の視線が皿へと戻ると。


「いただきますにゃー!」

 早速リリィの手が伸びる。

 フォークで刺し、口元へと運ぶ。


「アチッ、アチッ!」

 目元を緩めながら肉を噛み千切っていく。


「わー、こんなにお肉食べれるの久しぶりですよー」

 そういいながらヌーも皿を突く。

 僕も手を伸ばすが、


「わう?」

 誰か忘れてませんか?という視線をポチが送ってきた。


「あ、ごめんごめん」

 すぐに小皿に取り、ポチの分を取り分けた。

 それから僕も食べるが。


「ふむふむ……」

 かなり硬い肉だ、噛み切るのに思い切り顎を噛み締めないといけない。

 だが、味は良いな。

 豚肉みたいな旨みに甘い風味がついてくる。

 これは……蜂蜜かな?

 肉そのものが甘いわけではないが、噛むほどに薄っすらと蜂蜜の香りが口内に漂い、臭みが無い。

 次に内臓も食べるがこちらも臭みが無く食べやすい。

 でもちょっと血の味が強いかな。

 噛むほどに奥歯が歯がゆくなる。


「うひょー、内臓最高にゃー」

「わん!」

「ですねー」

 リリィたちには高評価のようだ。



 食事も終え、今日はお開きだ。


「明日も獲りに行くにゃ。車があるから北の山まであっという間にゃー」

 リリィがお腹をさすりながら言う。

 リリィとポチは僕とヌーが満腹で食べれなくなってからも、ずっと食べ続けた。

 僕の倍以上は食べたんじゃないかな。

 ポチはうつらうつらとしている。

 満腹になって眠くなってしまったようだ。

 ポチを起こし、部屋へと戻る。


 部屋へと着くとポチはそのままベッドの横に寝そべり眠ってしまった。

 僕も眠る前に身支度を整える。

 部屋にはシャワーが付いているが、主電源が無いためか水しか出ない。


「うー、さぶっ」

 シェルターの発電機をこっちへ移すことを考えないとな。

 髪が乾くまで何をして暇を潰そうと考え、光ファイバーの束をもらってきたのを思い出した。

 手慰みにゴムの皮膜を剥いで、中の細い透明な線を出していく。

 一つのケーブルに5本の線が入ってあり、長さは20mもある。

 これ、何かに使えないかな。


 試しに曲げてみたところ、折れてしまった。

 両手に持ち、思い切り引っ張ったらぶつりと切れてしまう。


「強度は無い、と」

 そうなると糸や紐としては使えず、元の機器を接続するためのケーブルとしてしか運用できないのだろうか?

 だが、僕は機械属性の魔術師、テクノシャーマンだ。

 これを見た時に何故かビビッと来たのだ。

 普通に使えないなら魔術を通してみるか、と考えるがすぐにどうやって?と自分でも疑問に思う。


「とりあえず……アクセス」

 魔力波を放出。

 光ファイバーへと当てていくと、ほのかに青く光り始めた。


「お、反応有りか」

 その状態で曲げてみる、折れない。

 引っ張ってみても千切れなかった。

 どうやら魔力波を受けて強化されたようだ。



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