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第58話 クラスタの街

ちょっと遅れました。

通常更新再開です。

またよろしくおねがいします。


 荷物を纏める。

 カバンは拾ってきたお宝でパンパンだ。

 電線やケーブル、工具箱にたくさんのスマホに衣類、カバンに入りきらないそれらを無理やり押し込む。


「それじゃロボC、また来る」


「はい、お待ちしております」


「またにゃー」

「わん!」


 機械の腕を振りながら僕らを見送るロボCに後ろ髪を引かれる思いだが、警備室を後にする。

 次、来る時には回復手段を持って訪れたい。


「それにしてもお宝でいっぱいだったにゃー」

 先を進むリリィが階段を上がりながら、首だけ振り返った。


「そうだね、今回は持って帰れなかったけどリザードナイトが落とした剣や盾も2つずつあるし」

 アレ、1つ20kgもあって僕には扱いきれないが、パワードスーツ(アイギス)を身に着ければちょうど良いかもな。

 もしかしたら鍛冶屋のホランドさんに渡せば打ち直してくれるかもしれないし。

 持ちきれなかった電線もまだある。


「またすぐ来るにゃ。とりあえず次はガソリンにゃ、村に届けたらすぐにトンボ帰りで戻ってくるにゃ!」

 リリィがにんまりと笑いかけてくる。


 ロボCとの再会は存外早くなるかもな。




 それから外に出て、山の中腹まで歩きで戻り、停車していた車に荷物を積んでいく。

 助手席のリリィはカバンを胸の前に抱え、後部座席の上にはポチが寝そべり、足元は僕のリュックや入りきらなかった電線・ケーブルで埋まる。


「次はクラスタにゃ、ここからずっと南にゃ。ダイン都市跡を抜けてさらに南にゃ、川に突き当たるまでにゃ。

 テーベ川に跨る様にしてあるのがクラスタの街にゃ。ちなみにこの川の上流、東に私たちの村にゃ」


「わかった、とにかく南だね」

 キーを回し、エンジンを掛け、バギーが土煙を上げながら荒野を駆けて行く。




 ダイン都市跡を迂回しながら、そのまま南へ。

 地平線の向こうに灰色の影がぽっかりと浮かび上がってきた。

 アレがクラスタの街かな?

 視線を手元に落とす、ガソリンのメーターは10段階の内、2の目盛りまで落ちていた。

 何とかあそこまでは持ちそうだな。


「アルス、止めるにゃ」


「うん?」

 言われたとおり車を止めるとリリィが降車して、ポチの上へと布を被せる。

 あれはカーテンか、地下3階にあったな。

 あんなのも持ってきたのか。


「どうしたの?」


「ポチ君は目立つにゃ、理由は後で話すにゃ」


「わかった」

 車へと戻り、発進させた。



 見えた都市影の中央辺りに人ごみがある、先には大きな門があり入場待ちの列のようだ。

 背中に大きな荷物を持った人たちが数十人立ち並び、のっそりと前へ進む。

 ゆっくりと車を動かし、僕らもそれに並ぶ。


 ピーッ!!

 突然、笛の音が鳴り響く。


「車は向こうの列だー!」

 赤い棒を持った男が右に30mほど行ったところを指し示す。

 たしかに向こうにトラックやワゴン車が並んでいる。

 軽く会釈してそちらへと並びなおした。


 こちらの車列は徒歩の列と違いすいすい進んで行き、すぐに僕らの番がやってきた。


「何処から?」

 コンクリートをただ塗りこめただけの飾り気の無い四角い建物。

 それを切り出しただけの無骨な窓から男が身を乗り出し、こちらを誰何して来る。


「パルテルからにゃ」

 そう言ってリリィがカバンから四角い銅版を取り出し、渡す。

 それを男がサッと眺め。


「うむ、行っていいぞ。次!」

 銅版を返し、手の平をぞんざいに振る。


 そのまま低速で街中へと入っていく。

 初めて入る街、大通りの左右には店や屋台が立ち並ぶ。

 店先には雑多な人の群れが行き交う。

 みすぼらしい服装の人もいればスーツを着たビジネスマンの様な人。

 革鎧を付けてハンマーを肩に乗せた人なんかもいる。

 車道は十分な幅があるが、それらにぶつけない様に慎重にハンドルを握る。


「とりあえずこのまま真っ直ぐにゃ。大きな交差点に出たら……、えっと、確か右にゃ」


「わかった、さっきの……それは?」

 リリィがカバンに仕舞おうとした銅版に横目を向ける。


「コレは通行証にゃ。コレ出さないとお金取られるにゃ。おじいちゃんがくれたお金の中に入ってたにゃ」


「へー」

 この街だと通行料が取られるのか。

 今はホランドさんに買い取ってもらったウロコの代金が銀貨30枚、3000D(ドラン)ほどあるが、シェルターを出てまっすぐこちらに向かっていたら入れず、途方に暮れてたかもな。


 そのまま車を走らせ、交差点を右へ。

 大きな建物が見えてきた。

 その先に駐車場と矢印が書かれた看板が。

 リリィに顔を向ければ頷いたので、中へと入っていく。


「ここがギルドにゃ、こっちはトレーダーの方にゃ」


「ん? ギルドってのはいくつかあるの?」

 駐車場の隅に車を停めながら尋ねた。


「他にもハンターギルドがあるけど、今はちょっと寄りたくないにゃ」


「どうして?」


「ダンジョンを踏破してそこを村にしちゃったにゃ。それを言ったら調査って名目で村に押し寄せて来て、物を勝手に持っていくんじゃないかっておじいちゃんが言ってたにゃ」


「へー、それはマズイね。ハンターギルドって悪い奴らなの?」


「んー、お父さんもハンターだったしそこまで悪い訳ではないにゃ。ただ、頼りにならないし、ジャンク拾いを専門にしてる人が多いし……。

 まぁ、拾えるものなら何でも拾おうとする意地汚い連中が多いにゃ。そいつらに大義名分を与えたら村の物全部持ってかれちゃうにゃ」


「うわ、厄介だね」

 これは何とかしないとな……


「まぁ、そんなに難しく考えることはないにゃ。パルテルには私とアルスとポチ君の3人も踏破者が揃っているにゃ。

 私たちが力を付ければギルドも無理難題は言ってこないはずにゃ」


「……ギルドに踏破者は?」


「さぁ? 聞いたことないにゃ。多分居ないんじゃないかにゃ?

 力の有る人はこんな田舎に居るより中央を目指すものにゃ。だからここでは私たちの力は秘密にゃ。

 ポチ君もここでおとなしくしててにゃ?」

 リリィの口元に指を立て、しーっとした呼びかけにポチが頷いた。



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