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第57話 お宝漁り

 非常灯の灯る薄闇の中、僕一人が取り残される。

 銀髪の少年は僕が目をらした隙に、まるで最初から居なかったかのように姿を消した。

 だが、片腕に抱えたニンジンや巨大な種が現実であったことを知らせる。

 彼は一体何者だったんだ?

 そして、神話の時代には魔物は居なかったとの言葉の意味は?

 何か腑に落ちないものを感じながらも、一度警備室へと戻ることにした。




「わん」

「おかえりなさいませ、マスター」

 警備室へと戻ると二人が出迎えてくれた。

 リリィはまだ戻ってないようだ。


「ただいま。さっき奥の方で……」

 二人にさっきあった事を伝えた。


「わう?」

「そんなことが……、この場を動けない身ですが警戒しておきます」


「うん、それでロボCを修理するための工具を探していたんだけど、まだ見つからないんだ。ごめんね」


「お気遣いいただきありがとうございます。私めを直すのであればAとBのパーツにまだ使えるものがあります」

 警備室の奥、シャッター向こうの壁際に壊れた2体のロボットが安置してある。


「うん、それを僕も考えていたんだ」


「はい、ですが足をそのまま付け替えるだけではダメなようです」


「ん?」


「コンディションチェックによると胴体側のサーボモーターと周辺機器にもダメージが入っており、それらも交換する必要があります。

 脚部の付け替えだけでなく私の胴体も開き、電装系をいじる知識が必要となります。

 ポチから外の世界の事を聞きました。私を開発した企業が消滅した可能性大、サポートが受けれない以上修理は難しいかと思われます」


「……そうか。と、なると僕には手が余りそうだな。すまない」


「いえ、こちらこそ申し訳ありません、マスター。どうか私の事は忘れてマスターはご自身の目的の為に動かれてください」


「いや、仲間を見捨てる気は無い。それに僕は君とも一緒に外を旅したり、今の村で暮らしたりしてみたい。

 大丈夫だ、次に近くの町へと寄る予定なんだ。そこには科学者が居たらしい。力を貸してもらえればなんとかなるさ」


「マスター……ありがとうございます。引き続き、この場所にてお待ちしております」


「ああ、必ず何とかする。それまで待っていてくれ」

「わん!」


「さて、そうなると今日は日帰りで帰る予定だから、街での探索時間も考えて急いだ方が良いか。

 リリィを探してくる、ポチはここで待っててくれ」


「わん」


 警備室を出る。

 リリィは確か上の階で宝探しをすると言ってたな。

 地下3階が100年前に僕たちのクラスが寝泊りしていた場所で、そこにスマホや衣服などが置き去りになっていた。

 リリィも多分そこだろう。


 地下3階へと上がるとすぐに大広間でロッカーを漁っているリリィを見つけた。

 傍らにはパンパンに詰まったリュックが置いてある。


「お、アルスにゃー。そっちの探し物は見つかったのかにゃ?」


「いや、こちらは……空振りってところかな。変な事はあったけど」


「変な事?」


「後で話すよ、そっちはどう?」


「見てにゃ! 大漁にゃ。通信機もいっぱい手に入ったから村のみんなにも渡せるにゃ!」

 いくつものスマホをリュックから取り出す。

 元の持ち主には悪いが今の時代を生きる為に有効活用させてもらおう。


「やったね。それと、そろそろ出発の準備をしようかと思って、伝えに来たんだ」


「あ、もう帰るにゃー? 最後にもう一稼ぎしたいにゃ。何処かおすすめないかにゃ?」


「おすすめ……うーん、僕が寄ったのは用具室と発電室ぐらいで工具とケーブル類、電線とかしか……あ!」

 電線だがその材質は……


「どうしたにゃ?」


「電線がいっぱいあった! えっと、銅で出来た紐みたいなのがいっぱい!」


「銅にゃ!? それは良い稼ぎになるにゃ。拾うにゃ、拾うにゃ!」


 二人で先を急ぐように地下5階へと降りていく。




 用具室の扉を開き、壁際に視線を向ければ積み上げられた電線やケーブルの束が。

 丸く束ねられた電線は一つ20kgほどの重さがある。

 腕にずっしりとくるがお金の重みと考えればうれしいものだ。

 振り返りリリィに見せるが、ゴムで出来た皮膜を見て首を傾げた。


「この中に銅が詰まってるんだよ」

 断面の酸化した青緑の錆びを見て、理解したらしく。

 壁際に積まれてるのを見て、目を開く。


「うひょー! いっぱいあるにゃー! 全部持ってくにゃ、全部にゃ!」

 しっぽを揺らしながら、その場で小躍りし喜ぶ。


「あ、でも全部は。荷台が……」


「あー、ガソリンタンクで埋まってるにゃ……」


 今日の目的はガソリンを買う事もあるので、これを疎かにするわけにもいかない。

 実際、車に積めるのは後部座席に置ける分くらいか?

 後部座席は二席にまたがる様にポチが横になっているから、足元の空間に詰められるだけだな。


「とりあえず手に持てるだけ持っていこうか?」


「うー、残りはまた今度にゃ」

 二人で電線の束を抱える。

手の中の重量は相当なものだ。

レベルアップで力の増した僕でも腕がぷるぷる震える。


「うー、重いにゃー。ん? コレ、軽いにゃ。コレも貰ってくにゃ」


「うん?」

 リリィが電線以外のケーブル?も拾ったみたいだが、アレは何だろう?

 まぁ、いいか。

 一度警備室に戻って、次は街だ。


「ここは良い所にゃ。また来るにゃ!」

 電線をいっぱい抱え、ホクホク顔でしっぽを振るう。



いつも読んでいただきありがとうございます。

今週の投稿はここまで、来週は中篇製作4回目(全4回予定、延びるかも?)なので。

次の投稿は再来週の火曜日(9/27)になります。

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