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第54話 再会

 村を出て、車を西よりに走らせる。

 ポツポツと丈の短い草の生えた平原をオフロードバギーが疾走していく。

 助手席のリリィによれば進路変更の目印としたダイン都市跡は西のちょい上の方角に進めば良いとのことで、コンパスとにらめっこをしながら指示を出してくる。

 ポチは後ろの座席二つにまたがり、わぅ……と欠伸をしていた。

 僕はというと運転席で薄目になりながらハンドルを握っている。

 運転自体はこの1週間土運びをしたことで慣れてきたのだが、さっきから土埃が飛んできて目を開けてられないのだ。

 この車にはフロントガラスは付いてるのだが、サイドは開けっぴろげでドアが付いてるだけだ。

 横風が土埃を運んできて、肌がチクチクする。

 後で付近の街……クラスタと言ったか、に寄る予定なのでそこでゴーグルを買わないと長距離の運転はきついなぁ。

 土を運んでた時は低速運転だったから、別に気にならなかったんだが。


「あ、見えてきたにゃ。あれの手前で右に曲がって北にゃ」

 リリィの指す方を見ると……確かに薄っすらと建物の影が地平線の向こうから湧いてきた。


「あそこもダンジョン化してるんだっけ」


「そうにゃ。でも入り口が何処かわかんにゃいから放置されてるにゃ」


「ん? それでもダンジョンってわかるの?」


「時々魔物が湧いてくるにゃ。それでダンジョンじゃないかって言われてるにゃ。

 出てくるのが虫系で小さいのが多いから、多分入り口はガレキで埋まってるんじゃないかにゃ?

 って聞いたことあるにゃ」


「へー」

 徐々に街の影が大きくなってきたが、やはり僕たちとレイダーたちが最初に会った場所みたいだ。


「あそこでレイダーたちと出会ったんだけど、奴らの拠点もあそこなのかな」


「多分、そうじゃないかにゃ? 攻略もされてないダンジョンなんてスカベンジャーでも立ち寄らないにゃ。

 レイダーとか街を追い出された食い詰め者はああいう所に住み着くらしいにゃ」

 レイダーの話になり思い出したか、リリィが眉を寄せた。


「ごめんね」


「いいにゃ。それと前にも言ったけど寄り道はダメにゃよ。ガソリン無いんだからにゃ」


「わかってる」

 都市の手前で右にハンドルを切り、北へと走らせた。

 ……

 …………

 30分も走らせたところで遠くに山影が見えてくる。

 もうすぐだ。


 山に近づき建物の跡も増えてきたところで道路に乗る。

 山へと続く大通りは広いのだが、ところどころに陥没した穴も開いており、それらを踏まないように慎重に進めた。

 大通りを抜けて、山の頂上へと続くつづら折りの登り道へ。

 山へと入ると空気から埃臭さも抜け、深緑の匂いが濃くなり気持ちが良い。

 ハイキング気分で途中までは順調に行けたのだが、崖が崩れて落石が道を塞いでいた。

 ここから下りてきた時は別の歩道の階段を歩いてきたから気づかなかった。


「ここからは歩きだね。後、半分くらいだよ」


「わかったにゃ」

「わん」


 積み重なった岩の上を登り、向こうの道へと。

 そのまま道路沿いに歩いていく。

 日差しが強い、額を流れる汗を拭いながら二人は疲れてないか?と見渡せば。

 ポチはしっぽを振りながら余裕を持って歩き、時々林の木に爪で傷を付けてマーキングをして散歩気分だ。

 リリィはと言うと、緑の濃い棒状の野菜をぽりぽり食べていた。


「ん、アルスも食べるにゃー?」

 リリィが背負ったリュックの中から一本差し出してくる。


「ありがとう、貰うよ」

 掴んだ野菜はきゅうりを太くしたような野菜、ズッキーニャと言うらしい。

 乾燥に比較的強く、この辺ではよく育てられているそうで。

 味は青臭く、やや酸味があるものの水っぽい。

 酢漬けにした漬物やスープに入れると味がよく染み込んでおいしいのだが。

 水代わりにぽりぽりと食す。


「それにしてもあっついにゃー。アルス、魔法でなんとかならないかにゃ?」


「僕の機械属性のだから……あれ?」

 フラグメントウォールは特殊攻撃用の防御魔術で酸や魔力、電気に熱といったものを通さない効果が。


「フラグメントウォール」

 頭上に青く透き通った板を出す。

 それは6角形のガラスのようなものが連なり構成されていた。

 その下にみんなで移動するが……涼しい!

 頭上からくる日光の熱を遮っているようで、日陰にいるような涼しさがあった。


「涼しいにゃー」

「わん!」

 二人からも好評だ。

 もっと早くに気づくんだった。

 これで車を覆えば土埃も防げたかも。

 少々の物理耐性もあるらしいし。

 指先にフラグメントウォールをリンクさせ、親指を上げて、傘を差して歩くように頂上へと向かう。


 頂上に着き、大聖堂の廃墟を横目に森の山道へ。

 獣道と化した藪を渡っていき、見覚えのある洞窟が見えてきた。


「あれが鬼の居た穴にゃー?」

 リリィがその場に伏せながら聞いてくる。


「そうだよ。もう居ないから大丈夫だよ」

「わん」


「うー、信じるけど怖いにゃぁ……」


「そんなに怖いの?」


「昔から悪い子はあそこに連れて行かれて、鬼に頭からパクリ! って言われてるにゃー」


 子供を仕付ける為のお伽話みたいなものか?

 苦笑しながら僕とポチが先頭に中へと入っていく。

 リリィはおっかなびっくりとそれをついてくる。

 洞窟をくり貫いた下り道を通り、正面エントランスへ。

 分厚い金属のドアをくぐるとセンサーが反応したか、非常灯がき、部屋を赤く薄っすらと照らす。

 部屋の脇には人骨と壊れた装備が山になっており、それを見てリリィのしっぽがピンッと立ち、毛が逆立っていた。

 僕も見ていて気持ちの良いものではないので、足早に過ぎ去る。

 奥の階段を下っていく、徐々に空気が変わる。

 このカビ臭さと鉄の臭いが混じったような臭いに帰ってきたんだなぁ、と感慨を抱いた。

 非常灯の灯る薄暗い階段を僕らの足音だけが響いていく。

 一応、念のためにバールを手に持っているが魔物の気配は無い。

 そのまま地下5階へ。

 地下5階の通路は焼け焦げだらけで、大きく息を吸うと鼻にツンとくる異臭がする。

 メタルオーガを倒す際に起こした粉塵爆発の影響だ。

 ロボCを置いてある警備室は火元から遠かった為に、ドアが焦げただけで済んでいる。


「アクセス」

 ドアのロックを解き、中へ。

 そのまま奥のシャッター脇のカードリーダーにもアクセスを掛け、解除する。

 シャッターが開き、中で鎮座していたロボCのカメラアイに緑のランプが灯る。

 首をこちらへと向け。


「おかえりなさいませ」


「ああ、ただいま」

「わん」

「よ、よろしくにゃー」

 久しぶりの再会だった。



いつも読んでいただきありがとうございます。

今週の投稿はここまで、次の投稿は火曜日になります

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