第47話 畑の相談
リサイクルプラントの方を見回り、避難所の方へと帰ってきた。
リリィたちの様子を見るが、疲れてるようでまだ寝ていた。
そのままにし、僕は長老さんやマイルズさんと村の再建について話し合う。
避難所の奥の隅に3人と1匹で胡坐をかく。
「住む場所は良さそうだし、次は畑だな」
「そうじゃのう」
「畑作りですか?」
「ああ、まずは土作りからになるが……まともにやったら5年は掛かるんだよな。
村から土を荷車で運んでこないと今年の作付けができねぇや」
「それでしたら車が4台ありますし、それで運べそうですね」
「だな。あの車は荷台が小せぇから、ロープで荷車を繋げて運べば楽が出来そうだ」
「他の資材もそれで運べそうじゃのう」
「……ガソリン、持ちますかねぇ?」
「……多分、足りねぇよな? 街で買ってくるか」
「ガソリンっていくらぐらいするんです?」
「ん? さぁ、俺もめったに買わねぇけど1リットルで10Dぐらいじゃないか?」
「ドラン……」
僕が眠る前の世界ではクレジットが使われていたが、今の世界では独自の通貨を使っているようだ。
「1Dでいくらぐらいの価値がありますか?」
「変なことを聞くなぁ。1Dだと両手で掬える位の麦か、でかい芋だな」
やばい、全然わかんない。
「……アルスさんはずいぶん遠くから来たようですな」
「ええ、実はずっとシェルターの中で生活していて、地上に出てきたのが最近のことなんです」
「シェルターって何だ?」
「えぇっと……地下に作った家みたいなもんです」
「へー、そんなのがあんのか。どっから来たんだ?」
「ここから北の山の中にあるシェルターからですね」
「北っていうとオリンポス山だな。恐ろしい化け物が居るってんで有名な所だ」
「……もしかしてシェルターというのは山の頂上近くの廃墟の近くにある穴ぐらのことですかのう?」
「ええ、そうですけど。知ってたんですか?」
「げ! 廃墟近くの穴ぐらって言えば、例の人食い鬼の出る場所じゃねぇか!」
多分、メタルオーガのことだろうな。
「ええ、銀色の鬼のことですよね? あそこもダンジョン化していて、僕はそこを攻略して地上に出てきたんですよ」
「うぇ!? 冗談だろ? 人食い鬼って言えば北の戦士たちも集団で狩りに行ったけど歯が立たず、銃も効かないってんで街のハンターたちですら逃げ出したっていう札付きだぞ?」
「ええ、強かったですねぇ……。攻撃がまともに通じなくて。
あ、これが証拠になります」
背のリュックサックからメタルオーガの金属塊を取り出す。
くすみのある白っぽい銀色の塊で重さは10kgぐらいある。
「これが……」
「すごいですのう……」
二人がメタルオーガの金属塊を眺め、唖然としていた。
「坊主……いや、アルスさん。すごいっすね」
「いや、急に畏まらないでくださいよ。今まで通りの喋り方でおねがいします」
「すごい方だとは思っていましたがまさか、北のダンジョンを攻略しているとは思いもしませんでしたのう」
「僕の力だけではないですけどね。ここに居るポチを始め、他の仲間たちにも手伝ってもらいましたから」
隣のポチを撫でる。
「わん!」
「それでもすごいですのう。それにしてもそこに住んでたというのは?」
「……事情があって僕一人、そこに取り残される事になってしまったんです」
冷凍されて100年間眠っていたなんて信じてもらえるだろうか?
何と言えばいいのか、悩む。
次の句をどう告げばいいのか、押し黙ってしまったところ。
「いえ、詮索するする気は無いのです。お気にされたら申し訳ありませんじゃ」
「いえ、こちらこそ。ちょっと変な事情を抱えてるものですから」
「まぁ、生きてりゃいろいろあるわな! 俺たちゃそんなの気にしないぜ!」
マイルズさんが胸を叩いて、ガハハと笑う。
長老さんもニコリとそれに頷く。
良い人たちに出会えたと思った。
「えっと、そんなわけで地上の事に疎く。お金も持ってないんですけど。
あそこで魔物のドロップはいろいろ手に入れたんですよ。これとか売れそうですかね?」
リザードマンのウロコや古い銅貨、グリーンマンの葉っぱなどを見せてみた。
「ほう、こりゃいろいろあるなぁ。ウロコは同じ重さの銀と同じ価値があるって聞いたことがあるな。
青い方のウロコは知らんけど」
「この葉は薬草ですな。孫の治療に譲っていただいて助かりましたじゃ」
長老さんが再度、頭を下げてきた。
「いえいえ」
「この銅貨とかは何だろうな? 見たことねぇや」
「……ダンジョンで手に入れた銅貨と言えば、暗闇の商人の話があったのう」
「ああ、あの。御伽噺だろう?」
「その話とは?」
「昔、わしの息子が街のハンターたちから聞いた噂話ですが。
とあるジャンク拾いがすでに攻略されたダンジョンで、使えるものはないかと漁ってたときに1枚の銅貨を拾ったそうです。
他にはまさに鉄くずとしか言えないものしか拾えず、このままでは帰れない。
勇気を出して奥まで出向いたそうです。人っ子一人居ない闇の中、何か無いか?と、手の中の銅貨を弄びながら探索していたところ、誤って銅貨を取り落としてしまったそうな。
銅貨は甲高い音を立てながら暗がりへと転がり、慌ててそちらにランプを向けたところ。
灯りに浮かび上がる、人の足。
そこには銀髪の少年が立って居たそうな。
ここには自分以外居なかったはずと男が驚いていたところ、少年が「コレ、落としたよ」と銅貨を差し出してきたそうです。
男が慄きながらそれを受け取ると、こう言ったそうな。
「良かったらその銅貨と何か交換しようか?」
男が何と交換できるんだ?と尋ねたところ。
「銅貨だと大した物は出せない、野菜なんてどうかな?」
男は何か胸がざわざわとして、とにかくここからすぐに逃げ出したい一心で。
「何でもいい、交換してくれ」と言ったところ。
「じゃぁ、コレでいい?」とオレンジ色の野菜を出してきたそうです。
男はそれを受け取ると代わりに銅貨を差し出し、一目散に逃げ去ったそうな。
それ以来、ダンジョンの奥で暗がりに銅貨を投げ込むと謎の商人が現れると言われてるそうな」
「……不思議な話ですね」
「そうですのう」
「オチもあってよう。男が手に入れた野菜はそれまで誰も見たことがない野菜で。
男が安酒場でそのホラ話と一緒に見せびらかしていたところ、それを見たハンターがたったの10Dで野菜を買い取ったんだと。
ハンターは遠くで農園を開き、その野菜を栽培して富豪になり、男はそこで小作農をしているとか。
それが有名な迷宮ニンジンの逸話だとかって話だ。
多分、売るための作り話だと思うけどな」
「へー、ダンジョンから野菜が出ることもあるんですか……。
あ! そういえば……」
地下2階のオロチプラントが種を落としたのを思い出し、取り出す。
「コレなんかどうです?」
「ん……って、コレ!? じいさん!」
「おお……、間違いない。コレは夜逃げスイカの種じゃ」




