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第46話 引越し相談

 ダンジョンコアを破壊し、リリィのクラスチェンジも無事済んで地上へと戻ってきた。

 さて、ここから後の処理をするわけだが……どうしたものか。

 村はレイダーたちに破壊され、建て直しが必要で。

 村人も大半が北の故郷へと避難してしまった。

 村を立て直すなら彼らも呼び戻さなければならない。

 後は……何が必要だろう?

 村の皆さんが避難している奥の建物へと向かう途中、リリィがこちらに振り返る。


「アルスはしばらくうちに泊まるにゃ。賑やかで良いにゃ。

 ポチ君もにゃー」

 そうか、僕の今後の衣食住の事も考えないとな。


「そうだね、お世話になるよ。ところで村の立て直しとかはどうするか、考えているの?」


「んー? おじいちゃんやマイルズさんたちが何とかするんじゃないかにゃー?

 あ、ちょうどいたにゃ。おーい!」

 リリィの視線の先には避難所の横の水道で水を啜っているネコ族のおじさんの姿が。

 あの水道、大丈夫なのだろうか?

 地下の浄水設備止まっている様に見えたし、でかいカエルがプールに浸かっていたが。


「お、リリィたちも帰ってきたか。ボスの方はどうだったんだ?

 ケガ無ぇか?」

 口元を腕で拭いながらマイルズさんが答えた。


「この通りにゃ!」

 リリィが腕をまくって力こぶを見せる。

 無事だと言いたい様だ。


「僕らも大丈夫ですよ。な、ポチ?」


「わん!」


「おお、それなら良かったんだ。長老も中でお前らが帰ってくるの心待ちにしてるからよ。

 早く行ってやんな」


「わかったにゃー」

 軽く一礼してから、テッテッと先に行くリリィを追いかける。




 避難所へと入るとリリィが長老さんに抱きついて「ただいまにゃー」と言っていた所だった。


「ただいま戻りました」

「わん」


「おお、よくぞご無事で! 孫も守っていただき何とお礼を申したものか」


「いえいえ」


「世話になったにゃー。お陰でクラスチェンジ出来たにゃ。

 あ、タルパ! ちょっと行ってくるにゃ」

 リリィがタルパ君の寝ている部屋へと急ぐ。


「クラスチェンジ……まさか、本当に孫が踏破者になったので?」


「ええ、クラスチェンジしてリジェレネートソルジャーという回復魔術の使えるクラスになったようですよ」


「そんな……本当によろしかったので? ボスを倒したのはおそらくアルスさんだと思うのですが、孫はあんなですし。

 貴重なダンジョンコアを譲っていただいても?」


「ええ、僕らはすでにクラスチェンジしていて新たなコアは不要ですから」


 すでにクラスチェンジ済みという理由もあるが、それ以外にも単純に怖いからというのもある。

 ダンジョンコアの膨大な魔素はクラスチェンジの力として消化する分には良いが、吸収するとなれば……体が耐えられないんじゃないだろうか?

 水だって飲みすぎれば中毒を起こす。

 ダンジョンコアの魔素を吸収するのは体に満タンのプール一杯の水を収めるのに等しい。

 水と違い物理的な実体や重さが無いとしても、アレを体に収められるものだろうか?

 もし、クラスチェンジといった形で消化できなかったらどうなってしまうのだろう。


「それよりも村の再建の事なのですが……」


「ええ、それも頭の痛い問題ですがなんとかしますですじゃ」


「そうだなぁ、それも考えんとな」

 マイルズさんが戻ってきて、長老の横に座った。


「まず村の建物を直すとして……すぐに全部は無理じゃのう」


「そうなると北から皆を呼び戻すとしても窮屈な思いをさせることになるなぁ。

 半分くらいはしばらく北で世話になることになるか?」


「そうじゃのう……」

 二人が下を向いて押し黙ってしまった。

 そんな二人に僕からも提案してみる。


「それでしたらココで暮らしてみるのは?」


「ココって……ダンジョンでか!? って、もうダンジョンじゃないのか」


「ええ、コアはもう破壊しましたし魔物も出ないから。

 壊れた入り口さえなんとかすれば建物自体は頑丈だから良いんじゃないかと」


「んー、どうするじいさん?」


「そうじゃなぁ、良さそうに見えるのう。

 水道もあるしのう」


「そうだな、水道は良いな。あれがあれば畑に水撒くのが楽になる。

 今まで農業用水は川から汲んでたからなぁ」


「向こうの大きい建物は2階が居住施設になっていて、部屋ごとに分かれていましたよ」


「ほう、すぐに使えそうなのか?」


「2階はガラスの壁、今は壊れてしまいましたがそれで隔離されていたので魔物も入り込んでなかったみたいですね。

 ちょっと待ってください、アクセス」

 魔力波を広げ施設内の全ガンタレットに繋げる。

 そこから見える範囲の様子を探るが。


「……魔物は居なさそうですね。後で目視でちゃんと確認しないといけないですけど。

 とりあえず見に行ってみますか? 僕とポチが居れば安全ですよ」


「そうじゃのう……。それではお願いできますか」


「わかりました」

 3人で元ダンジョンのリサイクルプラントを見に行くことになったので、リリィに一言断りにタルパ君の休んでいる部屋へと向いノックをするが。

 返事が無い。


「リリィ? 入るよー?」

 ドアを開け、中を覗くとタルパ君の横でリリィが床に突っ伏していた。


「リリィ!? 大丈夫?」

 3人で慌てて駆け寄る。


「あ、アルスにゃ……。ぅぇ、ダルイにゃぁ……」

 リリィが半目でぐったりと横になっている。


「一体どうしたの?」


「ヒールを使ったにゃ。1回じゃ足りないかと思ってもう1回使ったら、目が回ったにゃ」

 視線を横に移すが、タルパ君は静かに寝息を立てている。

 顔色も土気色だったのが赤みを差してきた。

 魔術は効いていそうだ。


「……もしかして魔力切れ?」

 リリィは魔力の数値が極端に低かったはずだ。


「ちょっと待つにゃ……」

 リリィが腰のラジオを作動させると魔力の値が0になっていると告げてくる。


「魔力切れになるとこうなるのか」


「うぅ、ダルイにゃぁ。ところでアルスたちはどうしたにゃ?」


「ああ、これから向こうの建物の中を探検してみようと思って。

 もしかしたら新しい村の居住施設として使えるかもしれないから」


「そうなんじゃ。アルスさんに教えてもらってのう。

 使えそうならこっちに村を移すことになるかもしれん」


「そうなのかにゃ……。いってらっしゃいにゃ。私はしばらくココで寝てるにゃぁ」


「お大事に」


 避難所と化した元発電施設を出て、リサイクルプラントへ。

 僕とポチを先頭に中へと入るが、魔物の気配は無い。

 2階へと上る。


「わん!」

 ポチが前に出て声を掛けてくる。

 どうやら先行して様子を見てきてくれるようだ。


「おねがいね」


「わん!」


 階段で二人を背にポチの帰りを待つ。

 無事、何事も無くポチが戻ってきて2階には魔物が残っていないことが確認できた。


「わん!」

 ポチが階段を下りていく。

 他の階も見てきてくれるようだ。

 そのまま任せ、僕らは中の見回りに。



「思ってたよりキレイに残っているもんだなぁ」


「そうじゃのう。埃が積もっておるが、それだけじゃ。

 掃除をするだけで良さそうじゃのう」


「そうですねー」

 部屋数は20あり、背もたれの倒れるリクライニングチェアーがたくさん並んだ休憩室や食堂もある。

 下の階の部屋や元発電施設も使えばかなりの人数が寝泊りできそうだ。


「後は畑か。一から作り直すのは手間だが種はあるし、水も使い放題。

 将来性を考えても良いんじゃねぇか?」


「そうじゃな、良い場所じゃ。ここでやり直すとしよう。

 アルスさん、孫を助けてもらっただけでなく村の再建まで世話になり感謝の言葉もないですじゃ。

 本当にありがとうございますじゃ」


「おう、助かったぜ。ありがとうな」


「いえいえ、僕もここでお世話になろうと思っていますから」


「おう、困ったことがあったら何でも言ってくれ。ちょっとした大工仕事や肉体労働なら得意だぜ!」


「ありがとうございます。その時はお世話になります」


「へへ、何でも言ってくれよ」


「わん!」

 ポチが階段を駆け上がってくる。

 探索から帰ってきたようだ。

 様子を見るに戦闘はしてないみたいだし、魔物は全て駆除できていたようだな。


「それじゃ、一度戻りましょうか」


「ですのう」

「おう」


 また、避難所へと戻るのだが。

 畑を作り直すというのが気に掛かる。

 表に車が4台あるし、それを使えば……うーん、後で相談してみるか。

 それと種か……。

 前にダンジョンで手に入れたのが1つあったなぁ。

 コレも後で聞いてみないとな。



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