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第43話 事後処理

 巨大カエルにトドメを刺す。

 その巨体の端から徐々に紫の魔素の霧へと変化していった。

 カエルの口からショットガンを引き抜き、横に鋭く振って張り付いた血反吐を振り払う。

 そんなことをしていると足元がズブリ……と沈み込んだ。

 僕の足元も紫に染まり、どんどん分解されている。

 このまま沈み込み、カエルの臓物に塗れるのもごめんなので横の水面に飛び降りる。

 水に飛び込んだときの浮力といった抵抗が無く、ズボッ!と勢い良く体が沈みこみ、すぐに水底に着地。

 思ってたよりずっと早く着地の衝撃が足裏に響いてドキッ!とする。

 パワードスーツを着ているのを忘れてた。

 今は全身を鋼鉄の装甲が覆っているような状態だからな、

 浮力なんてほとんど無い様なものか。

 カエルから距離を取るがポチとリリィはどうしてるんだろうと見渡せば。

 リリィはプールサイドで座って、頭を振って水気を払っている。

 こちらへと気づいたら手を振ってきた。

 ポチは?と左右に頭を振れば、右足を引っ掛かれる。

 ポチがプールの中でお座りをして、こちらを見上げていた。


「あ、ポチも浮かべないのか」


「……ごぽごぽ」

 水の中で吠えているようだが音にならず、小さな気泡が浮かんでくる。


「おいで」

 腰を落とし両手を広げる。

 そこにポチが擦り寄ってきて、僕の肩へと手を乗せる。

 そのままポチの脇を掴んで持ち上げた。

 生身の状態だったらポチを持ち上げるなんて無理だったが、流石パワードスーツ。

 肘の辺りがギシギシ鳴ってるが抱え上げることができた。


「わん!」


「ああ、よしよし」

 そのままポチを抱えてプールサイドへと。

 リリィがこちらへとやってくる。


「アルス! 大丈夫にゃ?」


「ああ、僕もポチも大丈夫だよ。そっちは?」


「私も大丈夫にゃ!」

 リリィがニッと笑う。

 濡れた髪が口元に張り付いるが色っぽく感じられ、思わず目をそらす。


「あ、そろそろ終わりそうにゃよ」

 リリィの指差す先、プールの真ん中にカエルの遺骸は無く。

 濃い紫の霧が立ち込めている。


「それじゃ3人で吸収しようか」


「私も良いにゃ?」


「もちろん。一緒に戦ったんだから」

「わん」


「やったにゃ!」

 そう言ってプールに飛び込んでくる。


 それから3人で魔素を吸収した。

 僕とポチはレベルが5ずつ上がり、リリィは10上がったようだ。

 パワードスーツを着たまま魔素を吸えるかが疑問だったが杞憂のようだ。

 魔素は鋼鉄の装甲も透過して直に体へと浸透してきた。


「すごいにゃ! 10も上がるなんて初めてにゃ!」

 リリィはノイズ混じりのラジオから聞こえる、ステータスチェックの機械音声を何度も再生しては喜んでいる。

 ポチは僕から離れ、カエルの居た辺りを探っている。


「良かったね。それじゃ、次はダンジョンコアの破壊に行こうか」


「うん!」


 そんなことを話しているところにポチが石を咥えて戻ってきた。

 大きさは手の平大で、白と緑の混じった半透明なヒスイのような石だ。

 これがあのカエルのドロップかな?


「ポチ、良くやった」

 しっぽを振ってじゃれてくるポチを撫でる。


「わん」


 ポチを抱えてプールから上がるが、立ち上がろうとしたところでビィーッ!……と警告音が鳴り。

 右ヒザから力が抜けた!?

 踏ん張りが利かず、前のめりに倒れるのを腕で防ぐ。


「アルス!?」

「わぅ?」


「右足が動かない。ちょっと待ってくれ……」

 パワードスーツのパラメーターチェック画面を呼び出し、状態をチェックするが……

 全身を表す簡略図が映し出されるが、ほとんどの部分が黄色か赤の色付きで表示された。

 黄色が軽い損傷、赤が機能を維持できない重大な故障のようだ。

 右足は真っ赤に染まっている。

 その部分に注目し、経過ログを呼び起こす。

 故障箇所は……人口筋肉の一部断裂に制御系の配線が途絶。

 後は装甲と基礎フレームに歪みか。

 人口筋肉が全て千切れたわけではないが、一部切れたことで緊急停止が起きたようだ。

 停止信号を止めるが、これはもう動かさないほうが良いだろうな。

 仰向けに転がり、前面装甲を開いて中から出る。

 リリィとポチが不安げにこちらを覗いている。


「アルス、大丈夫にゃ?」


「ああ、大丈夫だよ。パワードスーツはちょっと壊れちゃったみたいだ」


「わぅ……」

 ポチが動かなくなったパワードスーツを前足で掻いている。

 パワードスーツはロボットではないが、同じ機械の仲間としてシンパシーを持っているのかもしれない。

 僕もスーツを撫でる。


「……良く頑張ってくれたな」

 このスーツ無しにカエルと戦うことは出来なかった。

 僕の代わりに傷ついたことに申し訳なく思う気持ちが湧く。

 報いたいと思う。

 とりあえず直す方法を探さないとな。

 そう言えばコレには名称が付いてたっけ。

 重アサルトアーマー兵装 《アイギス》だったか?

 これからはアイギスと呼ぶか。




 それから武装のチェックをする。

 僕はバールにショットガン、残弾は2つの詰めたっきり。

 リリィは手持ちの槍が曲がってしまったようだが、まだ使えそうだ。

 ポチは変わらず、こちらにしっぽを振っている。

 カエルに投げつけ暴走させた予備バッテリーも回収してみたが。

 端子部分が真っ黒に焦げ、これはもう使えそうに無い。

 アイギスと一緒にここに置いていく。

 向かうはカエルの守っていた奥の扉。

 この先の化学処理プラントにダンジョンコアがあるはず。

 コアを砕かない限り、無限に魔物を生み出されてしまう。


「それじゃ行こうか」


「にゃー!」

「わん!」


 奥へと続く、重い鉄製の扉を押し開いていった。



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