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第37話 決着

遅れました。

いつもよりちょっと長いです。

 レイダー達が僕の落とした魔物のドロップアイテムを拾い集めてることに気づいた。

 コレって……売れる物なのだろうか?


「長老さん、すいません。コレって価値があったりしますか?」

 リリィのおじいさんに手の平大のウロコを見せてみる。


「ほう……緑のウロコということはリザードマンのウロコですな?

 魔物は体の一部にその魔力を集中させることがあり、その部分を使って精錬や調合をすると特別なものが出来ると言われてます。

 リザードマンのウロコなら銅と混ぜ合わせることで緑魔銅になるはずですじゃ」


「へー、結構高値が付いたりするんですか?」


「確か……同じ重さの銀と同等ぐらいの値段じゃなかったですかのう」


「結構な値段ですね。他にもあるんですけど見てもらえますか?」


「どれどれ……なっ!?」

 リュックの中を見てもらったところ、驚かれた。

 ダンジョンボスの魔石とメタルオーガの金属塊はわからないが、それ以外でも数が多くそれなりの値段が付くので一財産になるそうだ。

 中でも植物型の魔物、グリーンマンの落とした葉っぱは薬草としての効能があり。

 すり潰して患部に塗れば止血、回復促進。

 飲めば強壮剤になるそうで、タルパ君の治療のために譲って欲しいと懇願されたので快く20枚ほど譲ることにした。





 そんなやり取りをしている間に村の人たちを連れてリリィたちの篭っている施設まで戻ってきた。

 頑丈そうなドアにはカギが掛かっている。

 呼び鈴も無いので中から開けてもらうのは面倒だな。


「アクセス」

 ガチャッ!と音を立てロックが外れた。


 中からは、にゃにゃ!?と声が小さく聞こえてきた。

 中へと入ると宿直室のドアの隙間から覗くネコの目が1つ。


「にゃんだ、アルスかぁ。びっくりしたにゃ」


「ごめんね、タルパ君の様子はどう?」


「今、寝てるところにゃ。伝言は伝えてくれたかにゃ?」


「それもあるけど、皆一度こっちに避難してもらうことになったから」


「にゃ?」


 入り口から続々と村の人たちが入ってくる。

 おじいさんも杖をカツカツ鳴らしながら急ぎ足で入ってきた。


「この……バカ孫がぁ!」


「にゃにゃ!?」



 ……

 …………

 それからおじいさんにみっちりと説教されてリリィは涙目だ。


「みんな、迷惑かけてごめんにゃ」


「もう突然出て行かないでね?」


「それはそうだけどにゃー。ところで何でみんなを連れてきたにゃ?」


「あのまま北へと向かっていたら車で追いつかれる心配があったんだよ」


「ああ……、それは確かににゃ」


「それに村から誰も居なくなれば、奴らは次の獲物を探し始めるだろうから。

 そこを利用してダンジョンまで誘き出そうと思って」


「ん? 奴らと戦うにゃ!?」


「ああ、覚悟を決めたよ。それにここなら僕の力を使えるし。

 奴らのことは任せて欲しい」


「そうかにゃ、ありがとうにゃ。私も戦うにゃ、どうすればいいにゃ?」

 リリィのしっぽがピンと立ち、戦意に燃える。


「んー、リリィはここの防備を頼むよ。罠を張るから手は足りてるんだ。」


「そうかにゃー」

 しっぽは垂れ下がってしまった。


「ココの入り口は頑丈そうな扉1つだけだけど、万が一もあるから中で待機してて欲しい」


「んー、わかったにゃ」

 そう言うとリリィは槍の手入れに入る。

 組み立て式だが全身金属製の頑丈そうな短槍だ。

 穂先を見て、ヤスリみたいな鉄片で研ぎ始めた。


「アルスさん、重ね重ねありがとうございます。

 危険な役どころを押し付ける様になってしまい、申し訳ない」

 おじいさんが頭を下げてきた。


「いえ、僕も奴らには撃たれていますし。どうも追いかけられているみたいですから」

 背のリュックを軽く叩く。


「お礼としてはなんですが、わしらに出来ることなら何でも言ってください」


「……それじゃ、全てが終わったら僕もあの村に住まわせてもらっていいですか?

 他に行く場所も頼れる人もいなくて」


「ええ、そんなことで良ければ喜んで」


「お! アルスもうちの村に住むにゃ! なら一緒に狩りをするにゃ」

 聞き耳を立てていたリリィが声を上げる。


 その後は来た人たちを奥の広間まで案内し、荷物の運び入れは自分たちでしてもらう。

 おじいさんたちに僕の計画を話し、ここに立て篭もってもらうことにした。

 タルパ君もロブ婆さんが煎じた薬湯を飲み、すり潰した薬草を塗って治療されている。

 僕もこれからの準備だ。

 レベルアップしたが確認してないことに気づき、ステータスを見直す。


 ステータス

 Name  アルス・クレート

 Age   16

 Class   テクノシャーマン


 Lv  15        (+1)

 HP   760/760   (+40)[生命力]

 MP  1700/1700  (+50)[魔力量]


 Str   90     (+5)[筋力]

 Vit   91     (+5)[耐久力]

 Mag  182    (+10)[魔力制御力]

 Dex   91    (+5)[器用さ]

 Agi   91     (+5)[素早さ]


 属性  《機械》 

 使用魔術 情報魔術


 スキル  

 ■アクセス           MP消費 1

 魔力を電波のような波動に変えて放つ。

 魔力に意思を乗せ、機械を操ることが出来る用になる。


 ■テックブースト        MP消費 20

 魔力を機械に流し、強化させる。

 強化する能力はそれぞれで異なり、機械によっては能力が拡張される。


 ■ショートサーキット      MP消費 10  

 機械属性のスタン攻撃。

 アクセスで魔力回線を繋げることで使用可能。

 遠隔攻撃。


 ■フラグメントウォ-ル《new!》 MP消費 20

 魔力を固定化し壁とする。

 元が実体の無い魔力なので堅牢さは低いが、同じく実体の薄い熱や電気、魔力などは完全に遮断できる。



 新しい魔術を覚えていた。

 相変わらず使いどころを選び、汎用性の低い魔術だが初めての防御手段だ。

 魔物相手には心強いかもしれない。

 ポチのステータスは変わらずだ。

 確認を終え、僕とポチはすぐに出立する。




 荒野を全力で走ること、30分。

 村から300mほど離れたところから遠目に村の様子を見るが、すでにレイダー達がやって来ていた。

 4台の車で乗りつけ、村を荒らしているように見える。

 白いパワードスーツを着た男が一人に、その手下が10人か?

 ずい分荒い家捜しで、ボス格と見えるパワードスーツの男がその力で家の壁を壊して回っている。

 村人も盗む予定だった財産も見つからなくて苛立っているみたいだな。

 あいつらが北へ向かおうと考える前にこっちへ引き寄せないとな。

 さぁ、また鬼ごっこの始まりだ。


「ポチ、合図したら大きな声で吠えてくれるか?」

 ポチは無言でうなづく。


「ばら撒く物の用意は……と、良し。いいぞ、やってくれ」


「ワン!!……ワン!!……ワン!!」

 ポチが村に向かって吠える。


 村の方でも何人かがこちらを見る。

 ポチの銀色のボディが日光を照り返し、離れていても目立つ。

 こちらを指差してるのを確認したところで、すぐに振り返り走り出した。

 2,3分したところで後ろからエンジン音が聞こえ、ほっとする。

 獲物は掛かったようだ。

 4台のバギーがあっという間に走る僕たちの後ろへと張り付く。

 首筋にちりちり……と視線を感じる。

 振り向けばパワードスーツの男がこちらにショットガンの銃口を向けようとしていた。


 そう何度も撃たれてたまるか!


「ショートサーキット!」

 パワードスーツを着た男の車を急停止、さらにアクセスで操作して急ブレーキをさせる。


「うぉ!」

 それに続いてダンッ!と発砲音。

 散弾は横へと逸れていく。


「ちゃんと動かさねぇか! 外しちまったじゃねぇか!」


「す、すいません、急に動かなくなって……」

 後ろから男たちのやり取りが聞こえてくる。


 止まった車から他の車へと乗り換えてる間に距離を離し、さらにウロコや缶ジュースをさりげなく落としていく。

 後ろからはレイダー達の拾え!という声や、いいぞ、もっと落とせ!ヒャッハー!などの歓声が聞こえてくる。

 拾うたびに車を止めているようだ。

 そんな中、ボス格の男は執拗に僕を狙い続ける。


「わん!」

 ポチの警戒声を聞いて、横に逸れて走る。

 またもや散弾が横を通過する。

 後ろからは怒鳴り声が聞こえてきた。


「お前らいちいち止まるな! ちゃんと追え!」


「でもお頭、今拾っておかないと後で拾いなおすのは大変ですよ。

 こんなだだっ広い荒野ですし」


 そうですよー、なんて相槌も聞こえてきて、ボス格の男の苛立ちがこちらにまで伝わってきそうだ。

 なのでもう少し煽ってやろうとさらにポイポイ放り出す。

 後ろから歓声が響く。

 追いかけてくる足はさらに遠のいた。


 走り続け、ようやくリサイクルプラントが見えてきた。

 相変わらずボス格の男はこちらを狙おうとしてくるので、ジグザクに走りながら扉に取り付く。


「アクセス!」

 ロックを素早く外し、全力で重いドアを引き開け、中へと体を滑り込ました。

 それと入れ違いに散弾がドアを叩く!

 後ろからはクソ!と罵声が届く。


 中に入り、通路の先に向かってウロコや缶ジュースを投げ込む。

 僕とポチはそちらには行かず、横の扉から階段を駆け上がっていく。

 2階に着いたところで下の階からドタドタと足音が響いてきた。

 足音を立てないようにトイレに立て篭もり……。


「アクセス」

 施設全体へと魔力の波を広げた。


 施設内の全てのガンタレットが起動する。

 送られてくる映像に魔物を見つけた。

 地下でまたリザードマンが生み出されたらしい。

 プールから離れた所にリザードマンが10体ほどたむろって居た。

 ちょうどいい、こいつらを使ってやる。

 ウロコが欲しいなら自分たちで剥ぎ取れ。

 リザードマンたちの近くのガンタレットを操作。

 1階へと続く階段に向かって撃ち込む!


 ダンッ!……という発砲音が通路に響く。

 リザードマンたちがその長い首を揃えたように階段へと向けた。

 階段まで近づき、上に人が居ることに気づいたようだ。


「キシャァー!」

 尖った歯を剥き出しにして階段を駆け上がっていく!


 それに慌てたのはレイダー達だ。

 僕を追って勢い込んで中へ入り込んできたところで、魔物と鉢合わせになるとは思わなかったのだろう。


「え!?」

 階段近くに居たレイダーの首へとリザードマンが噛み付く!


「な!? こいつら!」

 仲間を助けようと別のレイダーが銃口を向けるが、仲間の体が邪魔で撃てない。


 そうこうしているうちに首を噛み千切られ、ドサリ……と体が落ちる。

 レイダー達が顔を真っ青に染め上げる。

 ボス格の男もその動きが止まった。

 その隙を突くように階段から一斉にリザードマンが湧き出してくる!


「うわぁぁ!?」

 レイダー達が後ずさる。


「お前ら! 撃て! 撃てー!」

 ボス格の男が声を張り上げるが、それに返すように通路を踏み鳴らす音が遠ざかっていく。

 戦おうとせず逃げようとする奴が相次いで出てきた。




 その光景をガンタレットのカメラ越しに見ているが、ここまで誘い込んで逃がすか!


「アクセス!」

 入り口のドアをロックする。

 セキュリティも復活させ、中からも開けなくした。


 ガンタレットのカメラ越しにはドアに張り付くレイダー達が見える。


「おい! 早く開けろ!」

 後ろの男が背の向こうをしきりに振り向きながら、怒鳴る。

 それに対してドアに張り付いた男は。

 ドアをガチャガチャといじっているが開く気配は無い。


「待ってくれ……、何で開かないんだよー!?」

 男の絶望の声が通路に響いたその時、その肩に爪が食い込む。

 男が痛みに呻き、振り返ったところでリザードマンがその首筋に噛み付いた!


 別のカメラを覗いたところ、ボス格の男はまだ生きているようだ。

 ショットガンは撃ち尽くしたのか、素手でリザードマンを叩いている。

 その身に纏ったパワードスーツのお陰か、リザードマン相手にも対等以上にやり合っていた。

 だが、多勢に無勢。

 パワードスーツの装甲にリザードマンの歯が立たないのは、リザードマンたちにもわかったようで。

 集団で掴みかかり引き倒そうとし始めた。


「やめろ!」

 焦った男が腕を振り回し、包囲を外れる。

 そのまま通路を駆け、手下たちが襲われている入り口へと戻り。

 それに気づいた手下たちが歓声を上げた。


「お頭!」

 噛み付かれている男が声を掛ける。


「邪魔だ! どけ!」

 瀕死の手下の助けを呼ぶ声をすげなく打ち捨てて、ドアへと一直線に走る。

 そのまま減速せずに体当たり!

 地響きが2階にまで伝わってきた。


 ドアは蝶番が取れかけ、さらに体当たりを繰り返すことで両開きの扉の片方が外れる。

 そこからボス格の男だけが逃げ出す。

 他の手下たちはリザードマンに押さえられ、動けない。


「お頭ー!!」

 手下たちの上げる怨嗟の声が響くが、それに一切振り返らずボス格の男が一人で出て行った。




 ボス格の男がカメラの視界から外れたところで僕も動く。


「逃がすか!」

 トイレの窓から飛び降りて、外に出る。


「ワン!」

 ポチは窓から出れないので中を通って追って来てもらう。


 地面へと降り立ち入り口の方を見れば、あいつらは車のエンジンを掛けているところだ。

 車の見張りとして2人残していたらしい。

 2台の車を起動し、その後部座席にずんぐりとした白いパワードスーツが乗り込もうとしている。

 そこへバールを片手に駆け寄った!


「あ、あいつ!」

 車を動かそうとしている男が先に気づく。


「ん!? あ、あの野郎! 死ね!」

 ボス格の男がショットガンの引き金を引くが、弾切れか?

 何も起こらない。


「クソ! 轢け! 轢き殺せ!

 このまま舐められっぱなしでいられるか!」

 ボス格の男が命じ、2台の車が急発進!

 砂煙を立ち上らせながら僕へと向かって来る。


 それに対してバールを捨て、両手を車に向ける。


「アクセス!」

 両手の平から魔力波が車に向かって突き進む。

 魔力波が車を捕らえ、指先に糸が張り付いたような手応えが返ってきた。

 両手を外側に向かって大きく振るう。

 それに合わせて車の進路が外側へと大きくずれた!

 前からはハンドルを握った男たちの戸惑いの声が伝わってくる。

 今度は開いた両腕を一転内側へと振り返し、交差させた!

 それに合わせて車が急ハンドル、アクセル全開で互いに衝突するコースへ……

 ドンッ!!と衝突音!

 重い振動が空気を伝わり、僕の肌を震わせる。

 2台の車は僕を避けるようにXの字を描いて転がっていく。

 後部座席に乗っていたボス格の男も悲鳴を上げて振り落とされた。



 土煙が辺りを覆い、何処からかツンと鼻をつくコゲ臭いにおいが漂ってくる中。

 地面に打ち付けられたボス格の男がゆっくりとだが立ち上がろうとする。

 激しい衝突事故にも関わらず、大したケガはしていないのか?

 同じく車から放り出された男たちはぐったりと横たわっているのに。


「て、てめぇ……」

 バールを拾いなおし、近づいてきた僕に気づいたようだ。


「死ね!」

 ショットガンをこん棒のように持ち直し、僕へと叩きつけようと腕を振り上げてきた!


「ショートサーキット」

 僕の左手が一瞬光る。

 それとほぼ同時に目の前に電流が走るような光景が見え、ボス格の男の動きが止まった。


「う、動かねぇ!? てめぇ、一体何をしやがった?」


「魔術だよ」

 喋りながらアクセスの魔力波を目の前のパワードスーツへと十分染み込ませていく。


「魔術だと……、まさか踏破…」

 男が言い終わる前にその頭部の金属の面貌が跳ね上がる。

 中から出てきたのはネズミを思わせる貧相な男。

 その野蛮な振る舞いから想像していたのとは違うな。


 大きく深呼吸。

 息を吐き出し覚悟を決める。

 バールを肩まで引き上げ、その切っ先を男に向けた。


「ま、待て! 俺たちが悪かった! 謝るから許してくれよ!」

 パワードスーツはショートサーキットで動きを停止してある。

 男は逃げることも出来ず、声を張り上げた。


「ダメだ。お前たちは放っておけば、次は僕の友達たちを殺すつもりだったんだろう。

 絶対に逃がさない。ここで終わらせる」

 手に持つバールが、重いのか軽いのかわからなくなる。

 切っ先が手の動きに合わせ、揺れる。


 ……

 僕と男が無言でにらみ合う。

 時間が止まったように感じた。

 だが、そうでないことは頬を撫でる風が教えてくれる。

 汗が額から頬へと流れた。


 ……

 頭の中をさまざまな雑音が喚きたてるようだ。

 だが、止まるわけにはいかない。

 ここで躊躇すればいつか必ず後悔する。

 それは誰かの命を失ってだ。

 息を止め、考えることを止め、……1歩踏み込んだ。



「ま、待っ……」

 男の目にバールが深く突き刺さる。



いつも読んでいただきありがとうございます。

今週の投稿はここまで、次の投稿は火曜日になります

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