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第32話 リサイクルプラント2

 カンッ!……カンッ!と石を割るような音が響く中、天井のパネルを外してリリィが顔を出す。


「リリィ!?」


「呼ばれた気がして来てみたにゃけど……うわ! 魔物にゃ!」

 僕らの後ろではリザードマンたちがガラスの壁を壊そうと執拗に叩いている。


「リリィが突然居なくなるから探しに来たんだよ!」


「そうだぞ、姉ちゃん!」


「えー……ちゃんと書置きは残したにゃ」


「そういう問題じゃないだろ」


「よくわかんにゃいけど、大変そうだからそっちに行くにゃ」

 リリィが天井からシュタッと降りてきた。


「はぁ……、とりあえず脱出しよう。

 リリィはどこから入り込んだんだ?」


「こっちにゃ」


 リリィの先導で通路の中ほどにあるトイレへと入る。

 ここの狭い窓から中へと入り込んだようだ。

 窓の直径は40cmほど。

 僕らなら体を捻ればなんとか抜けれそうだが、ポチがなぁ……

 ポチは肩幅が60cmぐらいあるし、体も物理的に固い。


「あ……、マズイにゃ。ポチ君が通れないにゃ」


「くーん……」


「ん、ポチ。壁を叩いてみて、思い切りね……テックブースト」


「わん!」

 青く光ったポチがさらに爪を伸ばす。


 一旦重心を落として、後ろ足を縮め。

 そのまま一気に床を蹴り上げ、窓の下の壁に向かって飛び掛かる!

 伸ばした爪がカッ!と突き刺さった。

 ポチが壁から離れ、開いた穴を観察するが……

 コンクリートは貫いたようだが、中には太い鉄筋が何本も走っている。

 これまで切断するのはさすがに難しいか。

 なんとか窓を壊し、広げる方法はないかと思いを馳せた時、通路の向こうでひときわ大きな何かが崩れる音がした。


「他に出口は!」


「他の窓は全部鉄格子が嵌まってるにゃ!

 後はさっきのガラスの壁が反対方向にもあるにゃ」


「とりあえず、そこへ!」


 トイレを出て来た方向を見ればガラスの壁は崩され、出来た穴を窮屈そうにリザードマンたちが抜けているところだ。

 急いで通路を駆ける。

 通路の奥にはドアが1枚真ん中に立っているように見えた。

 アレの左右がガラスなのだろう。

 距離は100mほど、リザードマンたちとの距離も同じくらい。

 後ろからリザードマンたちが大挙して追いかけてくるが、これなら逃げ切れる!

 4人で必死に走っているところ、後ろからカン……カン……っと何か硬い物が壁に当たったような音が聞こえてきて、振り向いてみると。

 青い肌のリザードナイトが剣や盾、兜などを投げ捨てながら追いかけてきた!

 げ!

 コイツ、ポチ並みに速い!

 今まで以上に必死に足を動かす!

 それでも少しずつ距離を詰められる。


「アクセス!」


 悠長にドアを開けている余裕が無い。

 遠距離でドアのロックを解除する。

 頭に浮かぶセキュリティの糸玉を強引に引っぱり、正解以外の糸を引き千切っていく。

 間違って正解の糸まで引き抜きそうになったが、慌てて手を止め、それを意識すると糸玉が消えロックが外れた。

 ロックの外れたドアをポチが押し開ける。

 続いて僕がドアに辿り着き、後ろを振り返った時にはリザードナイトがリリィに飛び掛かっていた!


「姉ちゃん!」

 タルパ君が体を入れ替えるようにリリィに体当たり!


 リザードナイトの爪がタルパ君の背をなぞる。


「貴様!」


 僕も駆け戻り、バールを一閃!

 リザードナイトのヒザを砕く。


「ワン!」


 続いてポチがその首に噛みつく!

 リザードナイトが両手でポチの頭を掴み離そうとするが、ゴキン!と音が鳴り、その手が床へと垂れる。


「タルパ!?」

 リリィがタルパ君に駆け寄るが、抱き寄せるその手が真っ赤に濡れた。


「うぅ……」

 タルパ君はぐったりしている。


 おそらく痛みで体に力が入らないのだろう。

 出血が酷いが立ち止まっているわけには行かない。

 後ろからは残りのリザードマンたちが駆け寄ってくる。

 リリィがタルパ君を背負い、ドアを抜けてまたロックを掛ける。

 階段を下りる時には背後から悔しそうにガラスを叩くリザードマンが見えた。


 階段を下り、再び1階へ。

 とりあえず手近な部屋へ入り、タルパ君をうつ伏せに寝かせた。


「タルパ! しっかりするにゃ!」

 リリィがその背中を押さえるが、血は止まらない……


 すぐにリュックから救急箱を取り出し、包帯を巻いていくが血が止まらない。

 巻いた包帯がすぐに赤く染まる。

 顔色も悪い、血を流しすぎたかもしれない。


「うぅ……ごめんにゃ……。私が勝手なことしたばっかりに……」

 リリィの頬を涙が零れた。


「……すぐに止血する方法に考えがある」


「本当かにゃ!」


「リリィはここでタルパ君を見てて、準備が出来たら呼ぶから。

 それと、これを……」

 タルパ君の背に折りたたんだ予備の服を当てる。

 この上から圧迫すれば少しは血を止められるだろう。


 「うぅ……こ、今度こそは……こん……」

 かすれ声でうわ言の様に何かを呟いている。

 

 血だらけの彼を見る。

 彼なりに家族を思いやり、守りたい物があったのだろう。

 僕が眠る前に失い、今なおぽっかりと空いた心の穴にあったはずのもの。

 心の奥でロウソクが1つ灯る。


「後は任せろ」



 部屋の壁に掛けられた施設の間取り図を頭に入れてから部屋を出る。

 ドアにカギを掛け、階段を見る。

 階段の上からはガラスを壊そうと叩く音が。

 タルパ君を助けるには上の奴らを倒すしかない。

 僕が前にやったようにレベルアップで体のキズを塞ぐ。



いつも読んでいただきありがとうございます。

今週の投稿はここまで、次の投稿は火曜日になります。

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