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第31話 リサイクルプラント

すいません遅れました。

 両開きの大きなドアを開いていく。

 厚さ10cmもある鋼鉄製のドアで両開きにすれば車が通れそうなほど大きい。

 ドアを開けた先も舗装されたコンクリートの大きな通路で、車がゆうに通れるほどの幅があり奥へと続いている。

 ここはおそらく搬入路なんだろうな。

 ドアを開けた影響か、非常灯がつき始め緑色の薄い明かりがぼんやりと通路を照らしていく。

 入り口横の非常灯もつき、その下に建物の案内図が浮かび上がった。

 ニュータイタンリサイクルプラントと書かれた案内図には3つのフロアが書かれている。

 地下1階の水処理プラント、1階の熱処理リサイクルプラント、そして2階の居住スペース。

 リリィが居るとしたらおそらく2階の居住スペースだろう。

 2階には休憩室や仮眠室、食堂などがあるようだ。


「お、おい。これからどうするんだ?」


「多分、お姉さんは2階だろうから、えっと……この先のドアから2階に上がれるみたいだね」


「わかった、2階……」


「わん!」

 ポチが通路の奥に向かって吠える。


 通路の薄暗い明かりに照らされこちらに向かって来る人影。

 ペタリ……ペタリ……と足音が響く。

 その特徴的な丸頭を緑の非常灯が照らし、ウロコが反射する。

 丸い赤い目がこちらを見つめ、細められた。

 リザードマンだ。

 その数は5体。


「ギィィ!!」

 リザードマンが一斉に走りこんできた!


「リ、リザードマン!?」

 タルパ君は驚き硬直している、すかさず肩を叩き。


「右側を頼む!」

 そう言って、左側へと寄りバールを構え、ポチにテックブーストを掛ける。


 タルパ君も硬直が解け、長槍を構えた。

 そうしている間にポチは通路の真ん中を駆け、先頭のリザードマンへと体当たり!

 二つの影が重なる。

 ゴッ!と重い衝突音が響き、ポチの頭がリザードマンの腹へとめり込む。

 そのまま弾き飛ばされ、口から青い血を吐きながら床で痙攣していた。

 そのポチの横を通り、左右へと分かれた残りのリザードマンが迫ってくる。

 すぐさまポチが踵を返し、右側のリザードマンの背を爪で切り裂く!

 ギィィ!……と鳴きながら、しっぽを振り回しポチを打ち払う。

 手負いのリザードマンがポチと睨みあい。

 タルパ君は槍で目の前のリザードマンを牽制している。

 そして僕の前には2体のリザードマンが踊りかかって来た。


 先頭のリザードマンが素早く足を動かし、飛び掛ってくるように右の突きを放ってくる。

 サイドステップでそれをかわしたところへ、後ろのリザードマンがぐるりと一回転してしっぽの薙ぎ払い!

 両手で構えたバールに丸太で殴られたかのような衝撃が伝わり、手の平にバールが食い込む。

 少し痛いが前に肋骨を折られた時に比べれば軽く感じる。

 一瞬、動きが止まったのを隙が出来たと見たか、先頭のリザードマンが大きく口を開けて噛み付いてきた!

 それを軽くバックステップで避ける。


 うん、衝撃を受けて体が硬直したかと思ったが、これぐらいなら十分に受けきれる。

 前にバールで戦ったときに比べステータスは4倍近い。

 前はポチと二人掛かりで何とかといったところだが、今なら!


 僕の目の前をカラ振り、無防備となった頭に向かって上段に構えたバールを、腹筋に力を入れながら思い切り振りぬいた!

 バンッ!と弾ける様な音がしてリザードマンの頭が床に叩きつけられる。

 割れた頭から青い血が溢れ、血溜まりが沸く。


「ギィィ!」

 残されたリザードマンが仇とばかりに右手を振り上げる。


 それを下段から跳ね上げるように振ったバールで打ち払い。

 前に倒れこむように振り下ろした袈裟切りで腹を叩いた!

 パンッ!と自転車のタイヤが破裂したような音を立て、リザードマンが腰を折る。

 頭を下げたリザードマンのこめかみに向かって、バールの切っ先を突き込みトドメを刺した。


 タルパ君たちの方は?と見れば、ポチが最後のリザードマンの背を踏み、そこに槍が差し込まれたところだった。



「大丈夫?」


「あ、ああ。そちらこそ?」

 タルパ君がこちらを見て、目を白黒させていた。


 リザードマンはダンジョン産の魔物のようで、紫の霧へと変わっていく。

 それを吸い取っていたところ、奥からガチャッ……ガチャッ……と金属の鳴り響く音が。

 ポチが唸り声を上げる。

 鎧を纏ったリザードマンがその後ろに大勢のリザードマンを引き連れながら行進してきた。


「げ! リザードナイトか!」


 強敵だ。

 その身に纏う鎧や盾は5mmライフル弾を弾き、20kgもある大きな片手剣を軽々と振るう。

 ポチでもあの剣を叩きつけられれば只ではすまないだろう。

 銃があれば……と思うが手持ちには無く、通路の天井にガンタレットが有るが電源が通っていないため動かせない。

 今の戦力でまともに戦える相手じゃない。

 進むか、退くか……考えるなら当然!


「あのドアを通って2階へ!」

 通路の先にあるドアに向かって駆ける!

 こちらが逃げると思ったか、リザードマンたちの迫る速度が上がる。


 退けばリリィがあいつらに襲われる。

 なら、それよりも早くリリィを見つけ脱出だ。

 ポチが体当たりでドアを打ち破り、それに続こうとしたところで不穏な風切り音が……

 慌ててしゃがんだところで入り口に大きな鉈のような片手剣が回転しながら突き刺さった!

 その下を掻い潜り、中へ。

 ドアの先にはエレベーターと階段が。

 エレベーターを無視して階段を駆け上がるが、天井からコッと何かが当たる音が。

 タルパ君の長槍が踊り場で引っ掛かる。


「捨てろ!」


「ちくしょう!」

 タルパ君もすぐに槍を手放し、僕の後へと続いた。


「ギィィ!!」

 何も着けていない身軽なリザードマンがリザードナイトよりも一足早く階段のある部屋へと雪崩れ込む。


 階段を2段飛ばしに跳ねる様に駆け上がってきて、タルパ君へと襲い掛かる。

 それをポチが前足で払い除けるが、今度は標的をポチに切り替え圧し掛かってきた。

 ポチの体にしがみ付き、動きを止めようとする。


「は、離れろ!」

 タルパ君が腰のナイフを抜き、リザードマンの首へと突き刺した。


 僕もバールで飛び掛ってくるリザードマンを叩き返すが、そうこうしているうちにリザードナイトまで部屋に入り込んで来た!


「とにかく上へ!」


 リザードマンたちを無視して、階段を駆け上がる。

 ポチもリザードマンを引きずりながら力強く駆け上がった。

 階段を駆け上がった先には透明な壁が……?

 厚さ20cmほどのガラスの壁の真ん中に金属の扉が埋め込まれている。


「アクセス!」

 魔術で干渉しながらドアに触れるが……これもセキュリティか!


 頭に浮かび上がるこんがらがった糸玉を解しながら、チラリと背を覗く。

 階段の先には続々とリザードマンが湧き出してきている。

 それに向かってポチが体を大きく振るった!

 ポチにしがみ付いていたリザードマンが打ち付けられ、悲鳴を上げながらそいつらと共に階段を転げ落ちていく。


「わん!」

 ポチが力強く僕に向かって応える。


 後ろは気にしなくても大丈夫だ。

 セキュリティを解く事に専念し、ロックを解除する。

 ピーッ……という電子音と一緒にドアが開く。

 そこに3人で滑り込んだ!

 すぐにドアを閉める。

 リザードマン達がドアを叩くが、厚みのある鋼鉄のドアはびくともしない。

 続いてガラスの壁を叩き始めたが、頭突きをしたリザードマンが頭から血を流して倒れた。

 どうやら強化ガラスのようだ。

 これで安全か、と眺めていたところに遂にリザードナイトたちが現れた。

 その剣をドアに向かって振るう。

 キンッ!と甲高い音が響くがドアに異常は無い。

 続いてガラスの壁に向かって振るった!

 カンッ!と乾いた音を立て、ガラスの破片が舞う。

 その破片は6角形でガラスにも細かな6角形で出来たクモの巣の様なヒビが走る。

 が、そのヒビはすぐに消えてしまう。


 対衝撃複合ガラスか!

 これは非常に硬い6角形のガラス片と粘着性のある流体ガラスを組み合わせた強化ガラスの一種だ。

 車やリニアの窓に使われていた素材だ。

 これならそう簡単に崩せないから、多少の時間は稼げる。


「今のうちにリリィを探そう」

 二人に向かってそう言った、その時。

 天井のパネルがガコッと外れる。


「呼んだかにゃ?」

 天井から埃塗れの顔を出してリリィが答えた。



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