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第30話 ダンジョンへ

 リリィが向かったと思われるダンジョンへと向け、荒野を駆ける。

 同行者はポチとリリィの弟のタルパ君だが、様子がおかしい。

 思いつめた表情をしている。

 なんか危ういなと思い、走りながら話しかける。


「タルパ君はどれぐらい戦えるんだ? レベルとか」

 舌を噛まないようにゆっくり喋る。


「あっ! ああ、……レベルは5だ。俺も父さんから通信機をもらった。

 魔物とは戦えるっ……」

 息を切らしながら、答えてきた。


 まだ僕に対して少し反感があるようだが、村に居たときよりは話が通じる。

 落ち着いてきたのかな?

 5レベルか……、思ったより低いがそれでもステータス的には初期値の倍ぐらいにはなってそうだから、ゴブリンぐらいだったらなんとかなるだろう。

 それ以上の相手が出てきたら……ポチに目配せをする。

 ポチが静かにうなずく。


「おい…、もうすぐ着くぞ…」


「ん、アレか」

 遠くに大きな建物が見えてきた。


「グルルゥゥ……」

 近づくにつれポチが威嚇声を上げる。


 警戒して足を止める。

 タルパ君も止まるが、槍に寄りかかるようにして息を切らしていた。


「はぁっはぁっ……、敵か……」

 大分きつそうだ、革鎧を着けて手に槍を持って駆ければ当たり前かもしれないが。


 僕とポチはほとんど息を切らしていない。

 僕のレベルは14だが、ステータスは初期値の8倍にはなっているからな。

 元の8倍の力に体力、大人と比較しても3、4人分くらいの力がある気がする。

 10kmの距離を時速20kmで走ったとしても、早歩きをしたぐらいにしか感じない。


 僕たちとダンジョンの間には開けた平原があり、ぽつぽつと草が茂っている。

 その草に寄りそうにいくつもの黒い半球が置いてある。

 大きさは1mぐらいか、数は……30ほど。

 ポチはそれに向かって唸っている。

 タルパ君が指を指す。


「はぁっはぁ……、あれはボールバグだ。この辺には多い、硬いぞ」


「なるほど、魔物だよね?」


「? 当たり前だろ」


 魔物ということは人を見ると問答無用で襲い掛かってくるだろうな。

 なら殲滅するしかない。

 バールを抜く。


「テックブースト!」

 ポチが青く輝く。


「な! ……それが魔法か」


「それじゃ行くよ、用意して。ポチを先頭に僕、タルパ君の順で突撃!」

 目を丸くして驚いているタルパ君に唐突に告げ、走り出す!


「な! ちょ、ちょっと待てよ!」


 タルパ君も僕らを追って駆け出すが、遅い。

 当然だ、疲れきっているのだから。

 元よりタルパ君を前衛に出すつもりは無い。

 なら、ここから一気に駆け込めば、自然とさっき言った順番になる。

 大きく距離を開けて。


 先頭を行くは当然ポチだ。

 その走りは今まで見た中で一番速い。

 そういえばポチが全速力を出すのを見るのは、これが初めてかもしれない。

 核シェルターの中は狭いし、ポチはいつも僕を守るように側についていた。

 楽しそうにポチが平原を駆けていく。

 その速度はバイクのアクセルを全力で開けたかのような急加速だ。

 そのままボールバグの目の前で軽く跳び、青く輝く前足を振り下ろす!

 空振ったかのようにポチの前足が地面を叩く。

 …ボールバグが5つに裂かれた。

 ポチの前足からは4本の爪が剣の様に飛び出しており、それが収縮して元に戻っていく。

 戻ると同時に次の敵に向かって急加速!

 今度は頭から突っ込んで、吹き飛ばす!

 青い体液に甲殻の破片を撒き散らしながら、ボールバグがくの字に曲げられ飛んでいく。

 当たった衝撃を使って方向転換、別の敵へと向かっていく。

 ボールバグもポチに脅威を覚えたか、キュィィ!と威嚇音を鳴らす。

 止まらず駆け続け、ポチが戦場の騎兵のように敵を分断していく。


 ポチが大方の敵の目を引きつけてくれてる内に僕も仕事をする。

 僕に背を向けているボールバグに飛び掛り、体重を掛けて振り下ろす!

 ギィンッ!っと金属質な高音を上げてバールが甲殻にめり込む。

 ……確かに硬い!

 叩いた衝撃で手が少し痺れる。

 甲殻は叩き割れたが……


「キィィッ!!」

 ボールバグはまだまだ元気だ。


 近くで見れば、ボールバグはダンゴムシのお化けみたいなものだった。

 違いは大きさと目が赤く光ることと、その顎がアリの様で太くトゲトゲしいことか。

 ボールバグが僕に向かって来る。

 その細い足を何本も細かく動かし、加速をつけたと思ったら僕の目の前で前転。

 そのまま球状になって迫ってくる!

 慌てて横に跳び、避ける。

 転がったボールバグはUターンをして僕を追いかけてくる。


「そういうやり方か……」

 僕の知ってるダンゴムシに比べずいぶんアグレッシブな動きだ。


 ボールバグが僕に迫ってくる。

 バールで打ち返すには……痛そうだな。

 自分の体重を駆けた一撃でも手が痺れたのに、あれだけの質量、硬さをまともに打ち返そうとしたら手首がバカになるだろう。

 ならば……、バールの釘抜き部分を前に出し、軽くステップを踏む。


 もう一度ボールバグの体当たりを避けた。

 今度はサイドステップでバールを振りながら。

 バールがボールバグの側面を擦る。

 ぶちぶちっと何かを引きちぎる感触。

 僕の横を駆けたボールバグが蛇行しながら、……横に転ぶ。

 片側の足は半分以上引きちぎられていた。


 ボールバグが体勢を直そうとするが、その猶予を与える気は無い。

 次々と釘抜きで引っ掛けて、足を引きちぎっていく!

 ボールバグがキィィッ!!と悲鳴を上げる。

 全てちぎったら、次だ。

 トドメはポチに任せれば良い。


 ボールバグの大半はポチを追いかけている。

 僕へ向かって来るのは少数だ。

 それを次々と釘抜きを引っ掛けるようにして足をちぎっていく。

 ボールバグの転がりはそれなりの速さで、時速30km以上は出ているだろうが。

 動きが単純で小回りが利かず、簡単に避けられる。

 転がってるところを倒そうとしたら難しいが、比較的脆い足をちぎるだけなら簡単なものだ。

 時々、複数で向かって来るのもいるが、そういうのは飛び越してしまえば避けられる。

 引き付け、手傷を負わせ、避けていく内にどんどん数が減っていく。

 そのほとんどはポチが片付け、タルパ君も追いつき、動けないボールバグにトドメを刺して行く。

 30体と数は多かったが10分と掛からず殲滅した。




 ポチがその太い爪で次々とトドメを刺して行く。

 わうわう!と軽くステップを踏んでいくように前足を突き刺していった。

 トドメを刺されたボールバグから紫の霧が吹き出て、散っていく。

 ダンジョンの魔物と違い、こいつらも死体はそのまま残るようだ。

 タルパ君の方は、と。


「このっ! このっ! 死ねっ!」


 槍で滅多刺しだ。

 腹部は柔らかいのか、結構簡単に突き刺さっている。

 必死な表情で刺しているが、ボールバグはとっくにその動きを停止していた。


「……それ、もう終わってるよ」

 横に立ち、声を掛ける。


「あ、ああ……」

 声を掛けられ、始めて気が付いたように返事を返し、次の相手へと向かっていく。


 この子、やはり危ういなと思った。



 ボールバグを片付け、ダンジョンの様子を見る。

 ダンジョンコアが巣食ったのはリサイクルプラントと呼ばれる施設のようだが。

 遠目からは1つの大きな四角い施設に見えたが、近くで見れば二つの建物に分かれているのが見えた。

 手前に長方形のかなり大きな建物と、後ろに正方形の大きな建物がある。

 リリィが向かったのはどっちだ?


「どっちに向かったか、わかる?」


「……わかんねぇ。ここには近づくなって言われてたから。

 姉ちゃんはよくここにボールバグを狩りに来ていたみたいだけど」


 もう少し近くで調べることにする、と。


「わん!」


 ポチが長方形の建物の2階を示す。

 この建物は2階建てだ、その窓に何か布切れが引っ掛かっている。


「アレだ! 姉ちゃんの服の模様が入ってる!」


「じゃあ、こっちか」

 長方形の建物のドアを開こうとするが、開かない。


「カギが掛かっているな、それで2階からか……」

 ドアは両開きの大きなドアで車が余裕で入れそうな大きさだ。


「どうするんだ?」


「ちょっと待ってて……アクセス」


 魔力の波動を広げていく。

 半径300m、そこまで広げて施設全域を覆った。

 反応するのは……この感じはドアと非常灯かな?

 非常用の電源はまだ生きているようだ。

 それ以外の設備は電源が入ってないのか、反応が無い。

 だが、僅かな引っ掛かりの感触が設備の内容と位置を僕に知らせてくれる。

 予備電源の装置やガンタレットもありそうだ。

 でも主電源の反応が見当たらないな?

 核シェルターにあったレーザー核融合炉のような反応が見当たらない。

 ガンタレット等の警備システムは核融合炉などの要警戒設備を持つ施設には設置義務があると教わった。

 ガンタレットがある以上、有りそうなものだが。



 まぁいい、まずは目の前のドアからだ。

 ドアにアクセス、解除しようとするが……反応が鈍い。

 セキュリティか。

 意識を集中する。

 頭にこんがらかった淡く光る糸玉の様な物が浮かぶ。

 糸玉からはたくさんの糸が出ており、それが解除キーの様だが、ほとんどはダミーだ。

 頭に浮かぶ魔力の手で解そうとするが、……難しい。

 1本緑に光る糸が出ていて、それがロックシステムに繋がっている。

 その緑の糸に繋がる別の糸を見つけないといけないみたいだが……

 むしゃくしゃして全部一気に引っぱってみる。

 緑の糸が点滅する。

 お、いけるぞ。

 今度はそれを2つに分けて、引っぱる。

 片方の束を引っぱった時に点滅。

 点滅しなかった方は邪魔だからなんとかしたいな。

 魔力の手をハサミに変えるイメージ。

 ハサミで邪魔な束をちょん切る。

 切るとその分の糸が消え、糸玉も小さくなった。

 そうやって半分ずつに分け、順に切っていく。

 すぐに答えに辿り着き、正解の糸を引っぱった。


 ガコンッ!と重い音を立て、ロックが外れる。


「ふぅ……、それじゃ行こうか」


「あ、ああ。……なぁ、今のどうやったんだ?

 手を触れたと思ったら、カギが開いたぞ?」


 自分では5分ぐらい掛かったかな、と思ったが。

 外から見れば一瞬だったか。


「おいおい話すよ。それより今は先を急ごう」


「そうだな」

 タルパ君は槍を握り直す。


 3人でリサイクルプラントへと入っていった。



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