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第29話 リリィの依頼

また、こちらの更新を再開させます。

よろしくおねがいします。


これまでのあらすじ

地上に出てきたがレイダーに追われ、川辺でネコ族のリリィと出会い、村へ。

「この村にレイダー共が来たのは4日前のことです」


 それからレイダー達の悪行を聞いた。

 レイダーはこの村に貢物を要求し、それを断った村人達を殺したそうだ。

 その時に8人の村人が犠牲になり、ケガをした人たちはその倍以上に出て、村の家々も壊され。

 そして今日、22人の村人が村を出て行き、村に残ったのはたったの10人だそうだ。


「あの時、ハンターをしている息子はちょうど出稼ぎに出ていて村に居なかったのです。

 2日後に帰ってきた息子はすぐに討伐へと向かいました。

 ですが息子は帰って来ず、隠れて息子の後を追った孫だけが額にケガをして帰ってきたのです」


「孫というのはリリィじゃないですよね。もう1人いるのですか?」


「ええ、タルパという男の子です。何があったか聞きたいのですが。

 ケガして帰ってきてからはずっと部屋に篭ってしまって……」



 それから離れの小屋へと案内された。

 家は一部壊されて、客間を用意できないのを謝られたが、突然押しかけたのはこちらなのだからと感謝を伝える。

 礼金というわけではないがジュースを10本渡す。

 魔物のドロップアイテムは扱いがまだわからない。

 落ち着いたらそこら辺の質問をしたいが、今は厳しいだろうな。


 その後、夕飯をご馳走になる。

 粗挽きにした麦を粥にして、そこにサイコロ状に切った芋をたくさん入れてある。

 芋がメインなので芋粥と言ったところか。

 芋は初めて食べる種類の物だが、黄色が鮮やかで甘く美味しい。

 味付けは塩だけだが芋の甘みに、麦が粥になり薄らいだ風味が柔らかな味でするすると胃に収まっていく。

 ポチも気に入ったのかすぐに皿をカラにし、皿を舐めている。

 食事の礼を言い、食後の甘味に1人1本ずつジュースを渡す。

 この場にいるのは僕とポチとリリィとおじいさんの4人。

 タルパ君は部屋に篭っているようだ。

 タルパ君の分も合わせてリリィに2本ジュースを渡した時に小声で囁かれる。


「ちょっと話があるにゃ。後で部屋に行っても良いかにゃ?」


 食事を終え、部屋へと戻った。




 日が完全に沈み、備え付けのろうそくに火を着け、ろうそくの長さが半分ほどになった頃に戸を叩かれる。

 すぐに中へと招く。


「夜遅くごめんにゃ。ちょっと聞きたいことがあったにゃ」

 リリィが小袋を手に持ち、やって来た。


「聞きたいことって?」


「クラスチェンジとかダンジョンの事を聞きたいにゃ」


 それから僕が核シェルターでどう過ごしたかを話す。

 100年前の事や冷凍睡眠の事はぼかした。


「そうかにゃ……、ダンジョンコアを破壊すればクラスチェンジ出来るんにゃ……」

 リリィのラジオ型の通信機では単純な操作しか出来ず、魔物辞典や崩壊後の歴史記録を見たことはなかったらしい。


「アルスにおねがいがあるにゃ。この近くのダンジョンの攻略を手伝って欲しいにゃ」

 リリィが真剣な表情でこちらを覗ってくる。

 そのピンクの髪がろうそくの炎に照らされ薄闇の中に淡い桃色を浮かび上がらせ、その黄金色の瞳は燃えているようだ。

 その姿にドキッとしながら、理由を聞く。


「それはお父さんの仇を討つ為?」


「そうにゃ! でもお父さんでも勝てなかったんじゃ……、私じゃ多分勝てないにゃ。

 だから踏破者になりたいんにゃ。魔法があればあいつらをぶっ飛ばせるにゃ」


 正直、心の中では受けるべきだと思った。

 レイダー達の悪行は聞いて許せないと思ったし、自身に掛かる非道には力を持って立ち向かうべきだと思う。

 だが問題はどう、それを叶えるかだ。

 リリィは知らない、ダンジョンボスがどれだけ危険な存在かを。

 僕の話だけではまだその危険性を理解してない様に思える。

 メタルオーガやダークメタルスパイダーを相手にするぐらいなら、レイダー達を倒す方がよほど楽だろう。

 ただし、レイダー達は銃を持っているのが厄介だ。

 少なくとも荒野のような開けた場所では勝ち目は薄いだろう。


「リリィの気持ちはわかった。でもダンジョンは本当に厳しいところなんだ。

 特にダンジョンボスは雑魚とは力の差が有りすぎる。

 協力したいけど……即答は出来ない。ごめん」


「なんでにゃ……。アルスは踏破者なんだから簡単なんじゃないかにゃ?

 お礼も用意したにゃ。……足りなければ、……わ、私の体を差し出してもいいにゃ」

 リリィがじっと目を瞑り、握り込む手に力が入り、小袋からはチャリッと硬貨の擦れるような音が立つ。


「え!? ちょ、そういうことじゃ。

 と、とにかくちょっと時間が欲しいんだ」


「……わかったにゃ」

 リリィは落胆し、とぼとぼと部屋を出て行く。



 リリィの居なくなった部屋にろうそくのか細い炎が揺れる。

 甘い香りが僅かに残る。

 心臓がバクバクする。

 今は動揺している時ではないと頭を振り、考える。

 レイダー達を相手にするとして、見通しの良い荒野ではマズイ。

 身を隠す障害物のある場所ならまだ何とかなるか?

 ダンジョンは正直厳しいな……

 僕の情報魔術は相性次第だからな。

 そうなると、やはりうちの最大戦力は…


「ポチ、また力を借りることになるかもしれない」


「わん!」

 ポチは真っ直ぐに僕を見返す。


 その日はどうやってレイダーを相手にするか考えてるうちに寝てしまった。




 次の朝、なにやら表がバタバタ騒がしいと思ったらドンドン!と戸を叩かれる。

 小屋から出てみると。


「はぁはぁ……朝早くすいませぬ、リリィは来てませんかな?」

 おじいさんが息咳きり尋ねてきた。


「いえ、今朝は来ていませんがどうしましたか?」


「これを……」

 手渡してきた手紙を見てみると……


『ちょっとダンジョン行って、こっそりダンジョンコアを壊して、パパッと踏破者になって戻ってくるにゃ』

 と、書いてある。


「げ!?」


「これを残して、朝からリリィの姿が見えぬのです……」


 昨日、依頼を断った時点で諦めたかと思ったのだが、突っ走ってしまったようだ。

 これには軽々しくダンジョンの事を話した僕の責任もあるかもしれない。

 すぐに追いかければ間に合うか?


「ちょっと探しに行ってきます。このダンジョンの事を教えてもらえますか?」


「申し訳ありませぬ……、お願いできますか。

 あの子まで居なくなってしまったら、わしは……」


「すぐに連れ戻してきます」

 そう言って、一度小屋に戻って準備をしようとしたところ、後ろから声を掛けられる。


「俺も行く!」


「待つのじゃタルパ! お前まで行ってしまってどうするのじゃ?」

 おじいさんが赤髪の少年を引き止めている。


「でも姉ちゃんが!」


 タルパと呼ばれた少年は赤い髪にネコミミ、額に包帯を巻いていてそれが左目にも掛かっていた。

 背丈は僕よりも10cmほど低い、155cmぐらいか?

 その背丈に不釣合いな長く重そうな槍を手に持っていた。


「お前だけに任せられるか! 俺も行く!」

 タルパ君もついてくるつもりのようだ。

 おじいさんに目線をやる、と。


「すいませんがこれも連れて行ってもらえませんか?

 ここに残らせても、すぐに抜け出して後を追うでしょうから。

 アルスさんと一緒に居てもらえたほうが安心できます。

 こんなことをお願いして非常にずうずうしいとは思うのですが、よろしくおねがいします」

 深々と頭を下げられた。


「……わかりました。ただし、道中は僕の言うことを聞くことが条件です」


「ムッ、お前の言うことなんか……」


「タルパ!」


「うっ……」


「この通りです、よろしくおねがいします」


 それからすぐに必要な物だけ持って、旅立つ。

 場所は川沿いに東へと向かった先にある古い工場らしい。

 リサイクルプラントと呼ばれているとか。

 道すがらタルパ君にダンジョンの事を聞きながら、僕とポチとタルパ君の3人で駆けていく。



明日はテストプレイヤーの方を再開させ、続きは来週の火曜となります。

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