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第2話 矢印の主

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「ゲェェッ!」

 後ろのトカゲ男が声を張り上げる。


 その声を背中で受け、鳥肌が立つのを感じながら必死に走る!

 自分でもこんなに速く走れたのか、と思うほど体がグイグイ進む、逃げるために。

 突き当たりのドアはすぐに目の前まで来た、開閉ボタンを押す。

 プシューッ!とドアがスライドする間がもどかしい。

 体をねじ込むように開いた隙間に入れようとするが、トカゲ男がすぐ近くにまで迫ってるのに気づいた。

 このままじゃ、入ったとしても閉めるのにまた時間が掛かるから、その間に捕まってしまう!?

 ドアの隙間へと体を捻りこみながら、ポケットを探る。

 すぐに目当ての物を手に取り、包装を少し破ってトカゲ男に放り投げた。

 ソレはトカゲ男の胸に当たり、トカゲ男が歯を剥き出しにしてこちらを睨みつける。

 だが、すぐに何かに気づいたようにその鼻をひくひくさせた。

 投げたのはチョコバーだ、それに気を引かせてる間に開閉ボタンを押す。


 プシューッ!とドアが今度は閉まっていく。

 チョコバーを拾っていたトカゲ男がそれに気づき、こちらへ駆け寄ってくるが。

 ドアが閉まるほうが早い、タッチの差でドアが閉まり、ガンッ!と向こうから叩かれる!

 すぐにドアのロックを掛け、開けられないようにした。

 ガンッ!ガンッ!とドアは叩かれ続ける。

 その音から逃げるように部屋の隅で体育座りをして、縮こまり震えていた。





 何十分とそうしていたのだろうか?

 とっくにトカゲ男はドアの前から去り、また静けさが戻ってくる。

 何故、僕がこんな目に?

 そんな疑問を抱えながら部屋を見渡す。

 ここもまた大きな部屋だ、教室1つ分といったところか。

 壁にまた矢印を見つけた。

 その矢印に従って行く。

 部屋の隅へと辿り着く、下向きの矢印の先には何かのハンドル状のスイッチ。

 片手大のハンドルを下へと引き下げる。

 ビーッ!という警告音と共に、ドッドッドッ!とエンジン音の様なものが聞こえてきた。

 ッ、パッ……!パッ……!と、非常灯から天井の照明に切り替わる。


 明るく照らされた室内は映画などで見た作戦室の様で、中央に機械の置かれたコントロールユニットがあり、奥には壁一面に映像パネルが埋め込んである。

 今入れたスイッチを見れば、予備電源と書かれていた。


 壁にまた矢印を見つける。

 部屋の隅にあるデスクを指しているようだ。

 デスクを漁る、本やカードがあるくらいだ。

 カードは黒塗りの箱に丁寧に入れてあった。

 カードには、オリンポス教会 ニュータイタン地区避難シェルター・コントロールキーと書いてある。

 避難シェルターというのはココの事だろうか?

 ニュータイタン地区はたしか実家の隣の地区だ。

 ここへ……僕は……学校の、行事で……ズキッ!


「痛ぅっ!」

 また頭が痛む、無理に思い出そうとしない方が良さそうだ。


 とりあえず探し物の続きをしよう。

 これで全部か?

 引き出しは全て開けた、他には?

 ふと、床を見たら取っ手を見つけた。

 床下収納もあるようだ。

 中には・・コレ、見覚えがあるぞ!

 僕の服にスマホ、リュックサックに財布と・・小麦粉?

 小麦粉が20kg、それと手紙を見つけた。

 手紙には、1行。


 ごめんなさい。 メイアー・ナイン


 と、だけ書かれている。

 メイアー・ナインというのは僕が居たトロイア高校1年3組の担任の名前だ。

 メガネを掛けてて、ちょっとドジなところがあり、生徒からはメイアーちゃんなんてからかわれ慕われていた。

 ごめんなさいというのはどういうことだろう?

 僕をここに置き去りにしたのはメイアー先生?

 あの矢印を書いたのもメイアー先生?

 何で、僕はここに……ズキッ!


 ぐっ!今は考えない方が良いな。

 この小麦粉はメイアー先生からの贈り物だろうか?

 辺りを見渡す、調理できそうな場所は無い。

 メイアー先生・・、こういうドジはちょっと・・


 とりあえず荷物のチェックだ。

 スマホの電源ボタンを押すが起動しない。

 電池切れのようだ、充電器はあるからコンセントに繋ぐか。

 服は今更着替えるのもめんどうだから、このままでいいとして。

 財布には小銭と学生証が入っている。

 学生証にはアルス・クレート、僕の名前が書いてある。


 問題は食料か。

 今の手持ちは水が2本にゼリーが2食分、チョコバーは1本。

 マズイな……

 今日1日分しかない、今が何時かはわからないが。

 小麦粉が20kgあるが生で食べたらお腹壊すよな?

 どうしよう……


 水を飲んで、気を落ち着かせる。

 ん?手元の水の入ったペットボトルを見て、何か引っかかる。

 そうだ、これは僕が入っていた箱に一緒に入っていたんだ。

 あの箱は全部で20個あった。

 アレを探れば、あと19日分の食料は手に入るかも?

 希望が湧き、腰を浮かせる。

 だが、すぐに沈むことになる。


 廊下にはあの怖いトカゲ男が居る……

 ダメだ……、食料を取りに行けない。

 気分が沈む、気分転換に音楽でも聴くか。


 充電中のスマホの電源を入れた。

 えーっと、音楽プレイヤーのアプリは……と。

 その時、着信が鳴る。


 ゲームの効果音が勢い良く鳴り出す!

 僕はゲームが好きで着信音には、ゲームの効果音やオープニングメロディを使っている。

 このせいでクラスではゲームオタクとか馬鹿にされていたりはするが、この音はメールだな。

 メールのタイトルは……


 生き残った人たちへ


 と書かれている。

 見た瞬間に息をするのを忘れ、胸の鼓動が激しくなった。

 差出人はペイルオペレーター、知らない名だ。

 開こうとして不自然な数字に気づく!

 送信日時が2205年となっている。

 今は2105年のはずだ、スマホの調子が悪いのか?

 混乱する中、メールを開き。


 僕はこの世界のことを知る。



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