第16話 地下4階の攻略
事務室で予備電源を入れた。
「これでここにもう用はないな、っとオークのドロップを忘れてた」
オークのドロップアイテムはまたもや骨だ。
「コレ、何か使い道あるのか? まぁ、いいや。ポチのおやつにはなるだろう」
骨を2つ拾い、また換気口に上がる。
換気口を通り、ポチの居る部屋へと戻る。
「わん!」
「おお、ポチ。良い子にしてたかー?」
「わん!」
「よし、それじゃおやつ上げようなー」
オークの骨を取り出す。
「わん!!」
ポチはしっぽを振りながら、うれしそうに骨を齧っている。
「さて、それじゃこっちもやるか、アクセス!」
倉庫のガンタレットを意識し、操作する。
右目はガンタレットの視界へと切り替わる。
奥の倉庫には4つのガンタレットが四方の隅に配置してあり、それぞれに5mmライフル弾が300発装填してある。
倉庫のオークの数は100体ほどだが、銃弾は十分だろう。
倉庫のドアを魔術で遠隔操作して、ロックを掛ける。
これでこいつらを閉じ込めれた。
ガンタレットを動かす、ロック解除、赤いレーザーポイントが宙を泳ぐ。
狙いは近くに居るオーク。
その頭部に合わせて、3連射!
ダダダッ!!
5mmライフル弾がオークの頭を撃ち砕く!
青い血が床に撒き散らされ、その光景に他のオークたちの動きが止まる。
デブオークは……まったく動じず、近くのオークを捕まえて噛り付いているな。
唖然とした表情のオークに照準を合わせ……撃つ!
ダダダッ!!……ダダダッ!!……ダダダッ!!
次々とその頭部を撃ち砕き、数を減らしていく。
「ブヒィィ!!」
「ブヒー!!」
「ブヒヒィィン!!」
その光景を見たオーク達が怒号を上げる!
まだ90体以上いるオークが一斉にこちらへと駆け寄ってきた!
それに向かい、撃ち続けるが……
「クソ! 数が多すぎて間に合わない!」
倒した隙から、その隙間を埋めるようにオークが群がり、距離を詰められる。
倉庫内にはコンテナがそこら中に転がっているが、それによじ登ったオークが……ガンタレットへと跳んだ!
跳躍したオークがガンタレットにしがみつく。
ガクガクと揺らされ……
「うわ!? 止めろ! 視界が…うっ、気持ち悪……」
右目の視界がガクガクと揺れ、真っ暗になった。
「う、今ので1つ目を壊されたか……、なら次だ! アクセス!」
別のガンタレットに意識を移す。
壊されたガンタレットに群がるオークの群れが遠目に見える。
今度は射撃モードを連射に切り替え、弾幕を張った。
赤いレーザー光がオークの群れを横一文字になぞる。
ダダダダダダッ……!!と射撃音がうるさいほどに鳴り響く。
それに合わせ青い血しぶきが、音に乗る様に吹き散らされた。
「ブヒィィッ!!」
さっきと違い、急所の頭部を狙った射撃ではないので、即死せずに残ったオークが叫びを上げた。
弾薬を全て吐き出すつもりで、とにかく撃ち込んでいく!
こちらに真っ直ぐ向かってきたオーク達は、弾丸の雨をかわせず沈んでいく。
仕留めた数は……20体ほどか。
残りのオークはコンテナを盾に、こちらへと回り込んできた!
またもや視界が揺さぶられる……
「クソ! またやられた!」
これで2台目、半分だ。
3台目のガンタレットを起動させる。
このままではマズイ、これまでに倒したオークの数は30体ほど。
残り70体も残っている。
倉庫内にコンテナが散らばってるのか厄介だ。
コンテナの陰に入られると射線が通らない。
オーク共も学習したようで、コンテナの陰を使って回り込んでくる。
近づいてきたのにフルオートで撃ち続けるが、また視界が揺れた……
「もう4台目かよ……」
オークはまだ残り60体ほどいる。
考えなければいけない、このままでは大量のオークを廊下で待ち構えることになる。
廊下のガンタレットを一瞬起動して、廊下の様子を見る。
廊下にはまだ倒していないオークが20体ほど、倉庫前のドアをうろちょろしている。
先に倉庫の方をなんとかしたかったから後回しにしたが、こいつらと合流されたら廊下のガンタレットの弾幕の雨を押し切られるかもな……
今、居る場所のドアが頑丈とはいえ、数十体のオークに群がられたら壊されるかもしれない。
倉庫内のオークは4台目に気づき、コンテナを盾にしながら近づいて来ている。
それとは別に平然と共食いをしているデブオーク。
それを忌々しそうに見ているオークがいることに気づいた。
「……これだ!」
デブオークへと照準を合わせる。
その太く短い両足へと赤の射線を引く。
もう聞きなれた射撃音がデブオークのヒザを撃ち砕いた!
「ブゥビィィッ!!」
デブオークが太い悲鳴を上げる。
それを聞いたオーク達の動きが2つに分かれる。
片方はこちらへと近づき、もう片方はデブオークを取り囲んだ。
背に回ったオークがデブオークを蹴り飛ばす!
それに続いて回りのオーク達も攻撃し始めた。
デブオークもやられっぱなしではない、反撃する!
近くに居たオークを掴み、その頭に噛り付く!
ゴリッ!と骨を噛み砕く音が聞こえ、ブヒィィ……と短い悲鳴が響く。
それに触発されたオーク達がデブオークの体に取り付き、噛み付く!
デブオークも負けじと噛み返す、どちらが先に死ぬかの噛み付き合いだ。
20体ほどのオークがデブオークに群がり、団子の様になっていた。
こちらも近づいてくるオークを撃ち続けるが、また視界が揺れる。
「これで4台、全部ダメか……
後はあいつらが共食いで数を減らしてくれればいいんだが」
ポチを撫でながら、不安な心を鎮める。
「そういえば魔素の霧いっぱい溜まってたな……」
倉庫内は死んだオークの魔素の霧が立ち込め、天井付近に漂っていた。
それが揺らり…と動いていたような。
「あ! そういうことか、アクセス!」
魔力を核シェルター全域に広げる。
反応する光点がいくつか見える。
それからスマホで撮った見取り図を重ね合わし、核シェルターの換気口の動きを探る。
「地下5階に直接繋がる外気の穴がいくつかあって、そこから吸入した外気を地下5階から上へと、シェルター内を循環させながら通気しているのか」
直接地下5階へと送り込まれた空気がシェルター内の換気ダクトを通じて、上へ上へと循環している。
空気を送り出す換気扇はシェルターの外にある外気口と、階と階の間にあった。
その階と階の間にある換気扇にアクセスし、逆回転させる。
しばらく待つと天井の換気口から魔素の霧が逆流してきた。
「良し! ポチ、おいで」
ポチと一緒に換気口の下に座る。
二人で魔素を少しずつ吸収する。
換気扇の向きを逆にすることで、地下4階と5階に倉庫内の魔素が逆流したのだ。
「こりゃ楽だ。ポチ、しばらくこうしてような」
「わん!」
ポチが元気良く応える、骨は食べ切ってしまったようだ。
リュックから新しい骨を出して、ポチに与える。
ポチを撫でながら、しばらく待つ。
10分ほどしたところで魔素の逆流が止んだ。
「ん、もうか? もっと頑張れ!」
換気口に向かって言うが、もちろん返答は無い。
「じゃ、廊下のを片付けるか」
廊下のガンタレットに意識を合わせる。
廊下には倉庫前のドアにへばりつくオークが20体ほど居る。
それをフルオートで撃ち砕く!
右へ、左へと赤い軌跡がオーク達を撫で、青い血とオークの悲鳴が射撃音と共に響き渡る。
5秒間、100発の射撃でオーク達は紫の霧へと変わった。
それをポチと一緒に吸いに行く。
吸ったらすぐに廊下の角の突き当りまで下がる。
もう一度、ガンタレットの確認、残弾は200発。
大きく息を吸って吐く、覚悟を決める。
倉庫のドアのロックを開いた。
倉庫の中には傷ついたオークの群れが見える。
動けない個体も居るようだが、動けるオークがこちらを向く。
憎悪に塗れた赤い瞳を向け、ニヤリと笑う。
こいつら僕を見ると、というか…おそらくは人間を見るとやたら好戦的になるよな。
ガンタレットで相手していた時とは雰囲気が違う。
何でだろう?
そんなことを考えながら、倉庫の中に居るオークに向かい右手を向ける。
指の形は銃の形に、指先へとガンタレットの照準をリンクさせる。
右目には照準のマークが映る。
僕の脳内だけの幻覚とはいえ、遠くに居るオークに照準が重なる。
心で引き金を引く。
ダダダッ!!
5mmライフル弾がオークの頭を撃ち砕く!
会戦の合図だ。
残りのオークが一斉にこちらへと走りこんでくる!
その数40体。
デブオークは20体ほど食いちぎるか、戦闘不能にしてくれたようだ。
そんなオークの群れにフルオートで撃ち続ける!
10秒で撃ち尽くし、残り20体。
「ポチ! ちょっとだけ足止めしてくれ!」
「わん!」
ポチがオーク達の前に立ちはだかる。
オークがポチに殴りかかるが、ポチの鋼鉄の様なボディには効かない。
逆にポチに噛み返される。
他のオークがポチに掴みかかり、噛り付いた!
流石にこれはポチも嫌がり、体を振って跳ね飛ばす。
その隙に僕は角を曲がり、階段前に設置されたガンタレットの下へと。
すぐに振り返り、アクセス!
「ポチ!」
ポチに掴みかかっていたオークへと5mm弾を叩き込む!
「わん!」
その隙にポチがこちらへと脱出してきた。
オーク達がこちらへと大挙して押し寄せてくるが……
銃弾の雨が全て撃ち砕く!
轟音が止み、廊下に豚の影無く、紫の霧が満ちた。
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