第13話 フレンド
「そうか……、あの時殴られ意識を失ったまま、冷凍睡眠装置に入れられたのか……
そして、目覚めたら100年後という訳か」
おそらく記憶障害も、その時の後遺症だったのだろう。
頭にショックを受けた状態で冷凍するなんて、無茶苦茶をしたせいじゃないか?
クラスチェンジによる、生まれ変わりに近い変化をしたことで、傷ついていた部分が回復したのだと思う。
「僕を嵌めたのは3人と……1人」
ジェフ・ワンダー
シーマ・セイカー
ラザド・トリア
そして、メイアー・ナイン先生
正直、メイアー先生については恨むべきなのか、仕方ないと思うべきなのかわからない。
あの時、メイアー先生は僕を助けようとはしていた、だが結局僕は助からなかった。
100年、誰も助けには来なかった。
メイアー先生が後悔してるのは手紙からもわかったが、何故途中でもいいから起こしてくれなかったのだろう?
わからない……
「…て、考えても仕方ないか。もう、100年前のことだもんな……。
それよりも今のことを考えなきゃ」
クラスチェンジを果たした、ステータスを見る。
ステータス
Name アルス・クレート
Age 16
Class テクノシャーマン
Lv 1 (-30)
HP 200/200 (-130)[生命力]
MP 2000/2000 (+5)[魔力量]
Str 20 (-21)[筋力]
Vit 21 (-21)[耐久力]
Mag 42 (-42)[魔力制御力]
Dex 21 (-21)[器用さ]
Agi 21 (-21)[素早さ]
属性 《機械》
使用魔術 情報魔術
スキル
■アクセス
魔力を電波のような波動に変えて放つ。
魔力に意思を乗せ、機械を操ることが出来る用になる。
■フレンドⅠ
機械に魔力と魂の一部を引き換えに、仮初めの魂を吹き込むことが出来る。
使えるのは1度のみ。
げぇっ!?
レベル1に戻ったのはわかるけど、ステータスが大体半減している。
くっ……、仕方ないか。
必要な魔術を覚えることが出来た。
「ポチ、おいで」
「わん!」
ポチがびっこを引きながら寄ってくる。
見れば後ろ足だけではない、体中擦り傷だらけだ。
「今、治してやるからな」
魔素を吸収するとレベルアップやクラスチェンジの際に回復する。
もし機械とはいえ、仮初めの命を与えられたら?
それはクラスチェンジに近いか、それを越える現象なのでは?
「……《フレンドⅠ》!」
僕の中で魔力が膨れ上がる……
何百何千という力有る、黄金の文字列が僕の胸から湧き出て来た。
黄金の文字が出るごとに、僕の中の魔力を奪っていく。
黄金の文字は目の前で収束し、光の玉となっていく。
出来上がったそれを、ポチの体へと押し付ける。
ポチの体が光り輝く!
ポチの表面に光の文字列が浮かび、徐々に埋め尽くす。
その文字の数に比例するように、ポチの体が徐々に太くたくましくなっていく。
光が消えた後、そこには二回りほど大きくなったポチがいた。
「……ぽち、大丈夫か?」
「わん!」
ポチが僕に飛び掛り、押し倒す。
うれしそうに僕の顔を舐めまわす。
「うわ! 冷たいよー、ポチ。わかったから。
なんかぬるぬるするし……、え? 濡れてる!?」
ポチの舌は金属製の様だが、唾液にまみれていた。
「わん!」
ポチが鳴くと、僕の前に情報ウィンドウが宙に浮かんだ。
ステータス
Name ポチ
Age 0
Class サイバードッグ
Lv 1
HP 550/550 [生命力]
MP 50/50 [魔力量]
Str 100 [筋力]
Vit 150 [耐久力]
Mag 20 [魔力制御力]
Dex 50 [器用さ]
Agi 80 [素早さ]
属性 《機械》
使用魔術 機獣魔術
スキル
■バイオメタル
再生力の有る魔法金属。
魔力を使い、キズを治すことができる。
「うわぁ、ポチ強い……」
僕のステータスがカスのようだ。
目の前に浮かんだ情報ウィンドウは手で触ろうとすると、すり抜けてしまう。
ホログラフィ映像みたいだな。
ポチにコレを見えるか尋ねたところ首を傾げていたから、僕にしか見えないらしい。
これもテクノシャーマンの力だろうか?
「ポチ……、本当に命が宿ったんだなぁ」
ポチを撫でながら実感する。
ポチの姿は前より二回りほど大きい、体長120cm。
見た目は金属の様だが、表情に合わせて金属が形を変える。
動きもしなやかになり、金属ではなく銀色の毛皮を纏った大型犬の様にも見えた。
だが、触ってみると金属の硬さを返してくるので、ポチの感情と動きに連動して形を変えられるようだ。
「ステータス」
自分のことを意識しながら唱えてみる。
目の前にポチの時と同じで、情報ウインドウが開いた。
ステータス
Name アルス・クレート
Age 16
Class テクノシャーマン
Lv 1
HP 200/200 [生命力]
MP 1000/1000 (-1000)[魔力量]
Str 20 [筋力]
Vit 21 [耐久力]
Mag 42 [魔力制御力]
Dex 21 [器用さ]
Agi 21 [素早さ]
属性 《機械》
使用魔術 情報魔術
スキル
■アクセス
魔力を電波のような波動に変えて放つ。
魔力に意思を乗せ、機械を操ることが出来る用になる。
「魔力が半減して、やっぱし《フレンドⅠ》が消えたか」
もう一度使えれば、重警備ロボCも治せたんだが。
僕がテクノシャーマンを選んだ理由、それは単純にポチ達を治したかったからだ。
僕の魔力量を考えれば、最適なのはおそらくサイキックウィザードだったのだろうが。
僕は裏切らないと決めた。
ポチ達は僕の仲間だ。
損得勘定も正解も関係ない、僕は僕の意思を貫く。
そして、ここを出て……
クラスチェンジをしたからだろうか?
記憶を取り戻したからだろうか?
僕はこんなにも感情的だったかな?
僕の胸の中で熱いものが蠢いている。
だが不快ではない、その熱が心地良い。
「それじゃ、ポチ行こうか」
「わん!」
生まれ変わった1人と1匹で地上を目指す。




