第10話 ダンジョンコア
非常灯の照らす、薄暗いエレベーターホール。
目の前でダンジョンボスである、ダークメタルスパイダーが火達磨となっている。
その体は徐々に紫の霧となり、火の粉の舞うさまと合わせ、散っていく。
その光景は浄化の儀式のようで、神秘的できれいだと思った。
火は1分としない内に弱まってきた。
燃焼力の高い火炎放射器燃料は消えるのも早いようだ。
火を取り囲むように漂う、魔素の霧へと手の伸ばす。
指先に魔素のひんやりとした感覚。
指先から吸収し、徐々に魔素の霧全体を吸い寄せ、全身で魔素を吸い上げていく。
全て吸い取った後、マグマの様に熱い血がドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッと全身に流れていく。
ステータス
Name アルス・クレート
Age 16
Lv 31 (+10)
HP 330/330 (+110)[生命力]
MP 1995/1995 (+220)[魔力量]
Str 40 (+11)[筋力]
Vit 42 (+11)[耐久力]
Mag 84 (+22)[魔力制御力]
Dex 42 (+11)[器用さ]
Agi 42 (+11)[素早さ]
体に力がみなぎってくる。
子グモに噛まれた足の傷もきれいに治ったようだ。
気分が高揚したところで、エレベーターホールの奥を見通す。
そこには動力室へと続く厳重な両開きのドアがある。
バールを抜き、覚悟を決めた。
「ロボC、ここで待っててくれ」
足を壊され、動けない重警備ロボットCに告げる。
「了解しました。お早いご帰還をお待ちしております」
「それじゃポチ、行こうか」
「わん!」
エレベーターホールを進む。
途中、壊されてロボAとBのそばを通り、心の中で謝る。
僕にはもう、彼らがただの機械だとは思えない。
このダンジョンと化した核シェルターの中で、僕の味方になってくれたのは、ポチと彼らだけなのだから。
それを使い潰すようにしてしまったことに、罪悪感を覚える。
動力室前の大きなドアの前へとやって来た。
近くで見て、ドアに隙間が出来てるのに気づく。
開き、その側面を見ればロックを掛ける太い鉄の棒が溶かされている。
あのクモの仕業か。
時間を掛けてロックの部分を溶かし、こじ開けたみたいだな。
中へと進む。
短い通路を抜けて、コントロール機器の置いてある小さな部屋へと出る。
一面のガラス窓の向こうに、非常灯の赤い光に照らされた大きな機械と怪しげな紫の光……
慌てて視線を切る。
直視しないように顔を背けながら部屋を出て、ダンジョンコアへと向かう。
顔を背けながら歩いているのに、その歩みに迷いは無い。
一直線にダンジョンコアへと向かう。
見なくてもわかる、進む先から魂を冷やすような冷気を感じる。
一歩進むごとに冷気の渦、ブリザードの中心へと向かってるような錯覚を覚えた。
指先が冷え、かじかむ。
体全体が冷え、吐く息すらその熱を奪われているかの様だ。
耳が徐々に遠くなり、耳の奥でキーンッ……と音が鳴る。
目が霞む、瞼が徐々に重くなり……
「わん!!」
意識を取り戻す!
奥歯を強く噛み閉め、反抗する!
体の奥の熱を意識した。
レベルアップの時のような、体中に熱い血が流れていく様を。
この熱こそが魔素なのだろう。
前にモニター越しに見たときは、その魔素がダンジョンコアに魅かれ、体内で暴れたが。
今はもう僕のものだ。
アデプトシステムにより、僕の力へと最適化され、魔力に変わった。
それを意識すれば、徐々に体が熱を取り戻す。
妖光の差す異界の狭間で、追い詰められた魂が魔力を理解した。
真正面からダンジョンコアを見据える。
目の前には一抱えはありそうな、大きなひし形の紫の宝石が輝き、浮いている。
紫の光が目に入るたびに、頭の中をかき回されるような幻覚に襲われるが。
奥歯をかみ締め、心を燃やし、全身に熱を回し、纏わり付く冷気を打ち払う!
バールを上段に構え、ダンジョンコアを睨みつける。
向こうからもこちらを覗き返している様な錯覚をした。
迷いを振り払い……
「砕けろ!」
思いっ切り振り下ろし、打ち砕いた!
パリンッ!……とガラスの割れるような音を立てて、ダンジョンコアが砕ける。
その欠片が煌きながら、宙に舞っていき……魔素の嵐へと変貌する!
動力室の中は一瞬で濃い魔素の霧で満たされ、それがどんどん自分の中へと入り込んでくる。
体の熱は一瞬で奪われ、心臓が止まりそうだ……
おもわず膝をつく、その時。
ピッ!
-- ダンジョンコアの消滅を確認 --
-- これより魔素の最適化を……! エラー! --
-- エラーパターン01、魔素の量が膨大すぎます --
-- 緊急回線を繋ぎます --
アデプトシステムが起動したようだが、またエラーが起きたようだ。
なんでもいいから早くしてくれ、とその場でうずくまり耐える。
スマホの画面から魔方陣が浮き出てきたと思ったら、それが拡大し。
そこから青く透明な人影が出てきた。
冷気に震えながら、その人影を見るが。
何故だか、向こうはこちらを見て驚いているような気配が伝わってくる。
誰だ?
輪郭がおぼろげでわからない。
青い人影は僕の顔をじっと見た後、指先に黄金の光を灯し、僕の胸にそれを突き入れる。
胸から暖かい波動が全身に広がり、楽になってきた。
気を緩めたからか、そのまま意識を失ってしまった。
うっ……
頬を誰かに擦られる。
目を開ければポチが心配そうに佇んでいた。
「ポチ、さっきはありがとうな。助かった」
ポチの吠え声が無ければ、ダンジョンコアに意識を押さえられたかも知れなかった。
「わん!」
ポチはうれしげに鉄のしっぽを振る。
「ん? なんだ?」
スマホの呼び出しランプが激しく点滅している。
スマホの画面を覗く
「魔素の吸収を一時的に抑え、封印しました。
至急、クラスチェンジをして消費してください。
制限時間内に出来ない場合、封印が解け暴走します
残り 00:03:05 」
なっ!?
残り3分しかない!?
すぐに次の画面をめくる。
「
下記が貴方の適性クラスになります。
■テクノシャーマン
■サイキックウィザード
■リジェネレートソルジャー
」
明日は短い閑話を投稿します。




