第1話 目覚め
新作書いてみました、2作目になります。
よろしくおねがいします。
光が一つもない真っ暗闇の中に、ブゥゥン……と機械の駆動音がなだらかに流れている。
100年の間、暗闇の中にあったのはこれだけであった。
そこに変化が加わる。
部屋の中に安置されていた大きな機械から、青い光が自らをなぞる様に発せられた。
光に照らされたその姿は、長方形でメタリックな輝きがあり、金属で出来た棺おけの様だ。
ピーッと電子音が鳴った後、機械の音声アナウンスが流れ、蒸気を噴出しながら棺おけのフタが観音開きに開く。
それと同時に部屋の非常灯が点いた。
非常灯の赤い光が部屋の中を照らす。
棺おけの中に入っていたのは裸の少年のようだ。
「ん……。…ん? さ、寒っ(さぶっ)!」
少年が棺おけの中で身じろぎをする。
「え? え? 何で裸? うぅ…、寒い…」
何故、僕は裸なのだろう?
それに頭が重く、体もダルさを感じる。
起き上がり、辺りを見渡せば、赤い非常灯の灯る薄暗い部屋の中。
部屋の中には自分が入ってた箱と同じものが20個並んでいる。
かなり広い部屋だ、教室が2つ入るぐらいか?
その時、ピーッ!と電子音が響いた後、ウィーンッ……と何か機械の音がする。
音の出所を探れば、この箱の側面から何かがせり出してきて、パカッ!と開く。
中には衣服と食料に水が入っていた。
青い作業着のような服を纏う。
服は厚みがあり、丈夫そうで暖かい。
食料は吸うタイプのゼリーにチョコレートバー、ペットボトルに入った水が3つずつ入っていた。
3食分かな?
とりあえず水を飲む、ゴクゴクと喉を鳴らし、胃が膨れる感触で自分が空腹だと自覚する。
自覚すると同時に、唐突な飢餓感が襲ってきた。
貪るようにゼリーとチョコバーに喰らいつく。
ゼリーはリンゴ味で甘みが強く、柔らかな酸味が与える刺激が心地よい、喉を中心に優しいメロディが広がっていくかのようだ。
チョコバーは包装を開けるとチョコの強い香りがぶわっと広がる。
中にピーナッツクリームが入っていてかなり甘いが、食べるごとに背中を中心に熱が灯り、温まってきた。
二つとも食べ切り、口直しに水を飲み干す。
まだ腹8分目だが、残り2食しかないことを考え、とっておく。
さて、腹が膨れたところで考える。
何で僕はこんな所にいるんだろう?
思い出す……、確か学校の移動教室で……、山に……
ズキッ!と頭に痛みが走る!
「痛っ! 痛たた……」
思い出そうとすると頭にズキズキと痛みが走る。
「思い出すのは後にして、とりあえずここから出るか・・」
自分が今まで収まっていた箱から出て、赤い非常灯の灯る方へと歩く。
非常灯の下にはドアがあり、出入り口はあそこだけのようだ。
食料と水をポケットに突っ込んで、ドアを開く。
プシューッ!と音を立て、ドアがスライドする。
ドアの先は通路のようだが、壁に矢印のマークがペンキで書いてある。
「何だこれ? 左を指してるみたいだが」
左を見れば突き当たりにドアがある、アレを指しているのだろうか?
その時、ヒタッ……と反対側で音が立つ。
右側に振り返れば、異形が通路を塞ぐように立っていた。
薄暗い非常灯の明かりでは細部まで見えないが、全身に鱗があり、その四肢は太く引き締まっていて、それよりも太いしっぽが垂れている。
180cmほどある、緑色のトカゲが人の様に立ち、こちらの様子をうかがっていた。
「は?」
何だコレ?
目の前の光景が信じられない、何だこの生き物は?
ただ、呆然と見つめ合う。
目の前の光景が信じられず、テレビの画面を覗くようにただ瞳に映す。
だが、これは現実だ。
ヒタッ……
ヒタッ……
こちらの心情などお構い無しに、恐怖は一歩、また一歩と近づいてきた。
瞬間、背筋を悪寒が走り、麻痺していた頭が動き出す。
頭の中は、わからない、何故?でいっぱいだ、それでも下せる決断は。
「うわぁぁ!!」
悲鳴を上げ、逃げることだけだった。
今日は4話まで投下した後、短編を続けて投下します。