242:広がるお邪魔素区域
邪竜復活の予兆が現れたと知らせる、三つの黄色い狼煙が、上空で滲んで掻き消えるのを見上げた。
西はレリアス、北は大森林地帯にあるディプフ王国、東はパイロ王国に向けたものだ。
それから目を離すと、フェザン道具店に向かった。
店に入る前からの異様な光景に、嫌な予感がする。
木箱タワーが外に聳え立ち、入り口には冒険者が列を作っている。珍しく不機嫌な様子でストレス値はかなり高そうだが、別のタワーを積む場所もないな。
「ちょっといいか。フラフィエ?」
「あっ、お師匠ぉ!」
「おっそうだタロウだったな。片付け師匠!」
なんで全員が、ぱあっと嬉しそうに俺を見るんですかね。
店内を見て全てを理解する。
木箱タワーが、そのまま倒れて店内にバッテン印を作っていたのだ。
どうやったらこうなる。
「お、おいフラフィエ、タロウのこの様子がそうか?」
「ああわわわそうですどうしましょう、師匠の真顔が出てしまいました」
でかいひそひそ話はやめろ。
倒れかけの箱のてっぺんは蓋がずれて、見覚えのある袋が覗いている。
「納品用の魔技石だな。そこの人、これ押さえてくれ。そっちの人、ここから持ち上げるのに手を貸してくれ。フラフィエ、この商品台の上は崩れるが急ぐだろ」
「はは、はい!」
かかれ野郎ども! おー!
というわけですぐに片は付いた。
「ふぅ、さすがは混沌を弄ぶ魔技使いだぜ!」
「そんなもんはないからな。フラフィエも出来ない商品の宣伝はやめるように」
「ごめんなさい!」
箱の四隅の枠部分に浅い凸凹があり、連結していたようだ。崩れない加工は諦めてなかったらしい。
中身が柔な魔技石だから下手に扱えず、しかもまた揺れておろおろしていたところに俺が来たと。これくらい皆もすぐに気付いただろうが、つい余計な気をまわしてしまった。
「とにかく、多めに作ってもらって助かるぜ。タロウもありがとな!」
やけに人数がいると思ったら、各々が担いで方々に走っていった。あの微妙な箱車での移動は時間がかかるもんな。
荒れた店内を片付けるフラフィエの顔色は良くない。
俺も地面に落ちた商品のカゴなどを拾っていく。
「よく、この短時間であの量を用意できたな」
「新たに発注が来てたんですよ。その前から師匠の魔技石作りを邪魔されないよう、せっせと作り置きしてましたし。失敗分も混ぜてますからね」
混ぜるなよ。
「……俺のは特注だろ」
「えへへ、元の大きさで少し変えただけのお試し品も、たくさん出来てしまって。でも効果に差はないんですよ」
「やっぱり、無理してたんだ」
「無理じゃないです。だって色々作るの楽しいじゃないですか」
それは疑いようがない。えへえへと顔だけでなく小羽まで緩んでいる。
「楽しいから倒れてもいい、なんていうなよ。当てにしてる人は多いし、周りが心配する」
「こう見えて頑丈なんですよ。でも、ありがとうございます!」
フラフィエは振り向いて笑ったが、目は血走っていた。
「目が赤い……よもや邪魔素が、人にもこんな影響を及ぼすとは」
「ただの寝不足です。師匠の注文分も終わりましたからね!」
「お、おぅ。助かるけど、多い?」
「あと、これも持っていっちゃってください。うーん」
フラフィエは作業場出入り口脇に置いてあった木箱に手をかけると、足を開いて腰を落とし持ち上げようとする。
恰好はともかく、いつもの元気さえないじゃないか。
「自分で見るから。フラフィエは掃除しててくれ」
「はーい」
言われずとも中身は魔技石だったが。
「多すぎ!」
「毎日毎日、ものすごく必要そうじゃないですか。それに、まだまだたくさん作らないとなりませんもんね」
そりゃ、これからもっと必要だろうが……そうだ、住人が避難するなら。
「フラフィエも、疎開の準備で忙しくなるだろ。何か手伝えることあるか」
フラフィエはきょとんと見ている。
「こんな時だし、依頼してほしいんじゃない。荷物まとめる時間を、魔技石作りに充てられるだろ。あと俺のは、これでしばらくもちそうだから、ギルドを優先してほしい」
できれば休んでもらいたいけどな。せめて別の時間を減らす手伝いくらいしないと気が咎める。
「なに言ってるんですか。この街で専門のマグ職人は私だけですよ。砦の皆さんも冒険者さんも困っちゃうでしょう」
「そりゃそうだけど。疎開先はジェネレション領なんだろ。近い、らしいんだから、作ったもんはすぐ運べる」
「緊急も緊急の大急ぎで必要なときに場所が変わるなんて、余計な作業が増えて本末転倒です。それに魔物が増えたら、運ぶのも限られた人になっちゃいます」
運ぶにも、相応の力が必要……その通りだ。
だとしても、譲りたくないような気持ちが湧き上がる。
「まだ子供だろうが」
幾ら力があって優れていても、子供は守られるべきだ。若くして技術があるならなおのこと。
次代を担うに必要じゃないか。
優秀だとかそうでないとか関係ない。
何の力もない大人になろうとしてる俺でも、体を張ることはできる。
……砦長の言う通り。それしかできないと悔しくはあっても、せめてそれで時間を稼ぐことができるなら、無意味なわけない。
「なあフラフィエ、ジェネレション領なら職人はいるだろ。合流すりゃ作業場はあるし、分担すれば数も増やせるんじゃないか。楽しくはないだろうけど、一時的なものだし考えてみたらどうかな」
フラフィエは俯いて、前掛けの大きなポケットを握りしめていた。
「山に師匠の言った通りの心配が起きたから、暢気なところを心配してくれるのは分かります。それに、お片付け技術は、師匠の足元の雑草ほどさえも身につきませんけど……」
雑草いる?
馬鹿にされたと怒ったのか、絞り出した声はざらついていたが、上げた顔は誇らしげに輝いた。
「これでも私は、この道具屋フェザンの看板をお父さんに任されたんです。いい腕を持つ職人が、弟子を一人前と認めたってことです。その時点で私は、この店とお客さんに対する責任も譲り受けたってことなんです」
大人も子供もない、職人の腕が基準。
俺の言ったことに真っ向からかぶせてきたな。
もちろん、現代の日本人らしい価値観だろうなと思いつつ物を言った。
そういったものは簡単に変わらない、心の根っこに食い込んだものだ。危機に面したり不意打ちを喰らった時の判断だとかに、しばしば無意識に出てくるもんで、そんなときの行動を支えるためのものでもある。
けれど普遍のものはあって、そこは一致すると確信したんだ。砦長の言ったことや、宿屋での家族の話を嬉しそうに話すおっさんとか見てるとさ。
緊急時に、この世界の住人がどう行動するか、どう考えるか、一部を垣間見ただけだ。共通すると思ったのは、それらは過去から続くことの中から、各人の性格や立場などから浮かび上がるんだろうということ。
もっと先にあるものを見て、自ずと出てくる行動や言葉というか。
俺も出来ることをやらないと。
何度かそう思っても、実際それが何かは見つからないままだ。ひとまず手近に出来そうなことを目標にして、クリアしたら別の目標作って……そういった動くための無理矢理に設けたものとは何かが違う。
この店を発展させたいかどうかは分からないが、フラフィエは腕を磨いて、住人に必要とされるように維持していきたい。そんな強い意志が眼差しに宿っていて、圧倒されてしまった。
なら仕方ないと頷くしかできず、魔技石を持って店を出た。情けねぇ。
街道の半ばまで来ると森を突っ切った。
「沼の底はどうなってる」
昨晩のケダマがあの調子じゃ、また沼も危ないんじゃないかと思い真っ先に確認に来た。
今度は、ノマズが頭を出していた。
《なんと忌々しい。あれだけ主が片づけたというのに、濃度がさらに高まろうとは》
「は、なんだって?」
思わず漏れた白々しいボケに、スケイルは律儀に返してくれる。
《そうだな……この場に現れる魔物の中で、最大の魔物の割合が増えたようだ》
はみ出てるのがフナッチからノマズにレベル上がってるの見えてるから、そうだろうと思ってたよ。クソが。
大枝嬢は、今は高ランク冒険者が街に一人も居ないと言ってたし。
「定期的に枯らしに来るしかないな」
早速、ヴリトラランスを沼に突っ込み、轟音に俺とスケイルが飛び上がって終わり。とはならず、頭を出していたノマズが吹っ飛びながら青い火花を散らした。
やべぇ、ちょっと楽しい。
沼を片付けると、街道を南に向かう。
あんなにケダマが溢れるなら、もっと分裂元を片づけないとまずい。
川のことや放牧地側が溢れそうなのも気になるが、俺が気にしても……気になるに決まってる!
あんな湖があるのに地下が崩れたら、空っぽの魔脈が大変なことになるんじゃないかとか、それで討伐に向かえないとしたら、地下で水生の魔物になるのか?
それで外に出られずに固まり、第二第三のビチャーチャが現れたらどうする。
たまに緩やかな地鳴りがする。朝から、続いている。
魔震が増えるほどに魔物も増え地表を覆っていく。それだけで大地に張り付くように生きてる人間なんて、どうにもならなくなるんだ。
そこに本体なんて戻ろうもんなら、どうなることか。
《主よ、ここが限界だ》
速度を落としたスケイルが俺を振り返る。前方を見れば、山の合間に見えなくなる道に変化は見られない。道を通すのに削ってできた麓の崖が割れて滑り落ち、破片が細い木々を倒しているくらいだ。この程度と思ってしまうのも麻痺してるな。
「逃げたときは、もっと南じゃなかったか」
《撤退したのは、そうであるな》
ヒソカニやハリスンが一瞬にして隙間なく溢れたなら、確かに俺の命はなかった。
今も藪はガサガサと揺れて、黒いものが見え隠れしてはいる。
「あの慌てようだし、もっと想像もつかない変なもんでも出るのかと思ったよ」
《魔脈変動が始まったのだ。危険は常に足元を掬うものよ。あのように》
「どれ?」
スケイルが沼がある側の森を向いた。
そういえば、沼の奥にあるヒソカニ齧りヶ丘が近いな。クロッタたちには、さらに厳しい状況になってるだろう。大丈夫かな。
少し道を戻り該当の場所に向かってもらう。遠目にでも確かめておきたい。今後に変化があるなら、その違いに気付くためにも。
などと考える必要はなかった。
「なんだよ、あれ」
ヒソカニ齧り崖が幾つか連なる狭間に、黒い土山が出来ていた。
《足元から来ると言ったろう》
「言葉のまんまかよ」
ひそひそと話しつつ、木陰から山の様子を窺っているのは、その側面に大きな穴が開いていたからだ。カマクラみたいな開き方するのは仕様か?
「魔物数が爆発的に増えたのも、こういったもんが、あちこちに出来たからか」
《一定量を吐き出せば、しばし鎮まる。今はその空白であろう》
といっても、急に出口が増えたらこっちから出向くより、まとまるのを待ち構えた方がいい気もする。
現在は目立った数の魔物はいないため、一度は誰かが巡回に来た後だろうな。
《一匹来るな》
「はぐれた奴がいたのか。洞窟ならコイモリかな」
ナガミミズクとか、ないよな?
のっそりとした動きが暗がりに見えた。コントローラーを掴む手に力がこもる。
影は大きくなり全体的に薄茶色が浮かぶ。ナガミミズクではない。
ずずずと地を這う音が届き、姿も大きくなる。そいつはさらに大きくなり、入り口を削りながら表に出た。
横穴を塞ぐほどの巨体。
「いいい一匹ってコイモリ何百匹分だよこれ」
《相手取るのにちょうど良かろう。魔物の中では中の下といったところだ》
「そこに俺は届かないんだが?」
《我がいるではないか。それに主の懸念は正しい。たった一匹だが、千のケダマになるやもしれん》
「おのれ憎き敵め」
知らず顔を伝った汗を乱暴に拭う。
初見の敵だ。
《我らが組めば、たかが一匹のイモタルなど朝飯前の御弁当よ》
「あれが、イモタル……」
洞窟の外に出てきてんじゃねぇよ。
ゲーム中レベル33だが、こっちでは中ランク上位の奴らがようやくまともに戦う気を起こす、中から高難度に入ろうかという相手だ。
ゲームデザイナーは、レベル設定を間違えたとしか思えん。それに姿も、これ絶対画面に入りきらないサイズだろ。
木の切り株のような胴体の上部から、薄茶色の瘤がぼこぼこと膨らんで山を作っている。まるで巨大な桶に詰められたジャガイモのようだ。溢れて滴るのはただの水ではなく赤く透明。間違いなくマグ成分だろう。桶の底からは幾つもの根がはみ出し蠢いている。ずるずると這う細根を見れば、転草がこいつのコピー元の一部なのは確実。他に幾つかの太い根があり、それはこちらへ掲げられた。攻撃用はあれか。思いっきり気付かれてるよ。
ゆっくりと俺も木陰からスケイルの背にまたがり、戦闘態勢を整える。
イモタルは攻撃用らしき根の最も太い二本を持ち上げたが、その先端を、おもむろに桶に浸す。なんとそれで水を掬い上げるや芋頭を磨き始めたではないか。
触腕かよ。イモかイカかはっきりしろ。
「ゾッとする姿だ、生かしてはおけない。覚悟しろ……この芋洗い妖怪!」
逸る俺をスケイルが止める。
《待つのだ主よ、あれは生半可な傷ではすぐに回復する。あの忌々しい縄のような手足を断ち切ったところで、即座に他の足が捕らえに来るぞ》
「厄介な。しかも回復するんだろ?」
《あの赤き水でな》
「あれかよ……」
回復能力はゲーム通りだ。実際に戦うなら、長引くほど不利? それとも少しずつ体力を削っていった方がいいパターンか。
それも、いつもなら、だよな……。
魔脈の活性化による影響は確実にあるだろう。そうでなければ、こんなところに湧き出てこれるはずがない。
こちらの動きを確かめるように、芋根がすっと伸びてくる。その一本を、スケイルの舌が切った。
いきなりスケイルカッターなどという小技を使うとは、気を抜いていい相手ではないようだ。
「パピュルルル……」
樽が空気を押し出すような妙な音を発する。どこから音がしたよ。
切られた芋根は、傷を赤い水に突っ込んだ。
その間、他の根っこが様子見攻撃を仕掛けてくる。桶から戻った根の断面は、元通り綺麗に細くなっていた。
もしかしてそれ、削っただけじゃね?
「あいつ、どのくらい回復できるんだ?」
《手早く片付けた方がよい》
「際限なしってことか」
《時をかけるほどに他と遭遇する危険があろう》
「それもそうだ」
一気に片を付けるなら聖魔素で破壊するしかないが……高出力のリーチでも、あの足を避けて本体に近付けるか?
《狙うなら瘤だ》
「桶みたいなのは、ヴリトラソードでも無理なのか?」
《あれはマグではなく本物だ》
「木の皮みたいなのが?」
なるほど。こいつが中ランク上位のツタンカメン枠だな。
森林破壊度合いも、より酷い。
「分かった、瘤だな。高出力を使うにはマグ量が心もとないから外すとまずい。確実に届くところまで近付くとして、根をどうするか……」
《それが良かろう》
「まだ何も言って……おい、いきなり近付くな!」
スケイルは身を低くし、慎重ながらもイモタルににじり寄る。
すかさず根がスケイルの足を払おうと撓った。
《遅い》
スケイルはフッと鼻の穴を膨らませる。
前足を上げて避けたスケイルは、地面を鞭打った根を踏み砕いていた。
ぐぶっ。あ、あぶねぇ。落ちるところだった。
そんな危機にも慣れたもの。両手が条件反射でしっかり鱗羽を掴んでいた。嫌な慣れだ。
《見たか主よ。我が力の片鱗を》
ああ、鱗の欠片なら視界に踊ってるな。アホ羽をふりふり、また少しイモタルとの距離が詰まる。
これまでと比べりゃ、かなりの大物だ。スケイルの口は緩み、目を輝かせているから欲に眩んでいるのだろう。
お前、頻繁に主の言ったこと忘れるよな。
ぺたぺたと先ほどよりも軽快な足取りで桶に近付くと、太い根っこが一斉に襲い来る。
根も素早いとは思うが、四脚以上ハリスン以下といったところだ。強度は先ほどの攻撃でさっくり断てる程度。スケイルなら問題ない。その自慢の舌を硬化させ頭を振って払っていく。しかし数が多い。
すぐに別の根っこがスケイルの首に絡まった。
「グゲレェ」
「スケイル、お前……囮になってくれたんだな」
ほとんどがスケイルの対応に回っていて、イモタルは身動きができずにいる。急所はがら空きだ。
すぐに芋洗い行動もできまい。この特殊技もマグを使用するから、さっき太めの根をスケイルに踏み砕かれ、今も細い根はぶちぶちと千切られているのに回復しないんだろう。
《あ、あるじ、そうではなぐゲぇ》
「そうだ殴れ? 了解! ……ヴリトラランス!」
スケイルの気概に負けないよう、俺も高らかに恥辱の詠唱を響かせる。
ヴリトラソードと呟いた後にランスと言い直すの面倒になってきた。
巨体を貫けるほどは近付いてないが、刃先がサクッと触れたイモタルは、ミチミチと山芋をすりおろす如くに粘っこい悲鳴を上げて崩れ落ちた。声じゃないだろうけど。
消えた地面には、じめっと湿気た跡に、ばさばさと木の皮が落ちた。
スケイルを含めた全身が、膨大な煙に包まれる。こいつ、めちゃくちゃマグ持ってるな。
「ということは、倒せた……?」
なんとも呆気ないといった気分には不似合いなほど、ばくばくと心臓は鳴り、汗で服がべたつき気持ち悪い。俺が挑んでいい相手ではないと知っていたからな。
「ゲロルゥ……」
「スケイル、お疲れさん。背中押してくれて助かった」
あくまでも、あの根に関して言えば、俺のナイフでも断てる程度のものだとスケイルは見せてくれたんだろう。
そして、懐かしささえある感覚。
イモタルを倒し、レベルが上がった。
見るからに鈍重そうな姿だもんな。でかい的だったぜ。生命力値に極振りの特殊な奴なんて、俺のためにいるようなもんじゃね?
言い過ぎましたヴリトラソードのお陰、その刃が届くまで近付けるのもスケイルのお陰です。
「おっ、レベルが2も上がるのかよ」
《ぬ? 主よ、主! それだ!》
「なっなんだよ、服を噛むなって」
《我の予想通りだったではないか!》
なんの話だ?
蜥蜴目をまん丸に見開いて鼻を寄せてくるが、必死ながら嬉しそうだな。
《これまでよりも、主のマグに力強さが増したのだ!》
「あ、あああ、そうか!」
維持力を伸ばすなんて、何をどうすりゃいいのかと思ったが、レベルが関係してたから机上の空論でしかなかったわけだ。
確かに、レベルアップで全ステータス底上げされるって、突然入れ物が大きくなるようなもんだ。
人族が、スケイルが求めるだけのレベルを上げるなんて、それこそ誰が試す?
俺も人族の平均レベルは20前半辺り、30を超えるとしたらお肉製造おっさんのような人くらいかもと考えたじゃないか。
「さっそく試したいが、まずはここから離れよう」
「クァ!」
イモタルの皮をついでに拾う。でかい。
これ素材なんだよな、多分。いや自分で言ってた。最上級革素材をドロップするって……。
すごい微妙なんだが、丸められるし背負って持って帰るか。
戻りながらコントローラーを確認した。
『レベル32:マグ181655/4451793』




