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最弱だろうと冒険者でやっていく~異世界猟騎兵英雄譚~  作者: きりま
聖獣のおまけ冒険者編

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239:有名無実

 いつものように、街の入り口でスケイルにはコントローラーに戻ってもらい街に駆け込む。案の定そこからでも通りの慌ただしい動きは見えた。

 通りすがりに見た、店先に転がった品を掻き集める人々に、前回までの気の抜けるような暢気さはない。どこか夢から醒めたような困惑を感じた。


 俺の行き先はギルドだ。通りの先へ目を向ければ、中ほどから北へ走っていく幾人もの姿がある。すでにギルドからの指示は出てるんだろう。

 まだ前回の片付けも終わってない。魔物の分布が変わったこともあって、それに合った方針が決まり、人員を配置し直してようやく動き出した矢先のはずだ。

 もう、こんな目先の対策で済むレベルなのか?

 それを決めるのは俺ではないけど。


 ギルドに到着するのと入れ違いに出て来たのは、ギルド長の悪巧み参謀役らしい岩腕族のギルド職員だ。防具を着込んだ職員は、なんだか意味ありげな笑顔で目礼を寄越した。怯えて俺も小さく会釈を返すと、そいつは南へと走って行った。

 一体、なんだよ。

 あの人も罵倒会議に参加してたくらいだから、おっさんらの思惑に深く関わってはいるんだろうが……こんな時期に、あの態度? 不吉すぎる。


 野郎のツラなど頭から追い払ってギルドに踏み込むと、すでに戦闘服に着替えた職員たちにギルド長が優先的に確認する場所を告げていた。一斉に出て行く職員らに道を譲る。先に出たのか大枝嬢はいない。

 たった一人お留守番のトキメにギルド長は幾つか指示を残すと、こちらへ足を向けた。俺に構ってる暇はないだろうと思ったが、通り過ぎながらギルド長は声をかけてきた。


「積極的に中ランク区域の魔物を討伐していると聞いている」


 げっ、すでに知られてる。というか報告は受けていたとして、それを今持ち出すかよ。なんかそのまま出て行こうとしてるし、話に付き合えってか?

 仕方なく後を追いながら弁解する。


「か、街道は誰でも通れる場所ですし、結界石も埋まってると聞いたんでその……」

「行動できるだけの力をつけ、知識の裏付けもあるならなんの非難もせんよ。全く、他の聖獣にそこまでの能力はないというのに、驚きの事実が続々と現れる」


 ああスケイル任せのところはきちんと伝わってたのか。タグでごまかせないから、その辺も軽く説明しておいた。人族の結果としてもおかしいし。


「猶予はある。それまで、南方面でならば好きにしろ」


 それだけ残すと、ギルド長は振り切って行った。

 猶予?

 邪竜復活を懸念しての言葉にしてはおかしいような。


「南方面、なんて曖昧でいいのか。それだと解釈のしようがありすぎるぜ?」


 不敵な笑みを浮かべて挑発する。相手がいなくなった後で言っても空しいな。

 ギルドに来たのは、いつものように何か情報が分かるか、俺はどうしていればいいか相談してみようと思ったからだ。何かあればとにかく一度ギルドへというのは、シャリテイルや他の奴らの動きから自然と学んだことだ。

 しかしギルドへは戻らず南の森へ走っていた。


 指示ならギルド長が言ったことがそうだ。

 急激に魔物が活性化して増える。しかも日が傾くまであまり時間がない。普段から南側にまで人手が割けない状況。このまま一晩待っていたら、どれだけ増えるか。今回はまずいと、俺でも肌で感じたほどだ。朝を待つ前に結界柵まで押し寄せるのは確実。

 だが今の俺なら、俺……スケイルの足ならば、この短時間でも南の森全域を一掃できる!

 いや、さすがに奥側から片づけないと日が暮れるか?


 とにかくあの、人族には期待しないと言ったギルド長が、直接俺に指示した。人族の手も借りたいほどの状況だからだとしても、土砂の撤去などではなく、討伐を認めてくれたんだぞ。あのおっさんだから、できると確信したからこそだ。

 応えずにいられるか!


「あら藪だと思ったらケダマだわ! などと恐ろしい場所に、俺の目が黒い内には変えてなるものか。本気で行くぞスケイル。毛まみれの森を救いに!」

《そのような気配は感じぬが……》


 俺を連れて逃げたほどだから嫌がるかと思ったが、呆れたように項垂れたアホ毛を揺らしながらも、再び外に出てくれた。

 もちろん忠告はされた。


《まだ先ほどの場所までは戻らぬがよかろう》


 俺には危険区域となっているらしい。そこは大人しく従おう。




 スケイルライダーとなったタロウは、悪を斬るべく散歩風の討伐に向かう。

 まず魔物が溢れてまずいと頭に浮かんだのは沼地だ。森の中を突っ切るよりは短距離で済む、街道側から真っ直ぐ向かった。

 さっそく魔物が渋滞を起こし始めていたため、切り札を解放する。


「ヴリトラランス!」


 高出力ヴリトラソードを進む先に振り下ろすと、直線上に思い切り振ったコーラの炭酸が弾けるような音と青い火花が激しく散る。

 三度で燃料切れとなったが、通常モードで使用できる分のマグは即再補充できるほど数が多い。

 いつもはなんの影もない沼地の表面にも、ぽこぽことフナッチが頭を出していた。


「これはやばい……今晩にでもビチャーチャが生まれそうだ」

《うむ。かなり水面下の魔素濃度が高まっているぞ》


 あんなものが夜に、街に入り込んだらと思うと身震いする。

 くそっ、出待ちなんかしてる時間はないってのに。

 どうにか地下の奴らも全滅できないか……あ、こいつでいけるんじゃね?

 うずうずする好奇心のままに、沼目がけてヴリトラソードを刺してみた。


「はびゃあ!」

「グャゲァ!」


 泥水が沸騰したように沸き立ち、響き渡った轟音に俺と一匹は飛び上がった。

 だから、どんだけ潜んでんだよって!


「この手応えなら、ビチャーチャは生まれないんじゃないか?」

《いやはや主の機転には度肝を抜かれた。驚くほど濃度が薄れたぞ》


 音に驚いただけだろ。

 とにかく、ここが片付いたなら他を見て回る余裕はできた。街の側なら夜の討伐を長めにやればいいだけだからな。


 念のために沼地の奥側へも回りこんで、周囲の四脚ケダマらを片付けておく。


「あれ、ここまで四脚だっけ?」


 もうここまで来たら山が近い。小さめの丘といった起伏が山並みに連なっていて、視界は傾斜に生えた木々が遮る。そこそこ魔物を減らしてみれば、魔震の直後とは思えない静かさだ。いつもより木々のざわめきは大きいが、全体に満ちたような感じはない。


《あの小山で遮られているようだな》

「ちょっと覗いてみるか」


 手前の丘を回りこんでみれば、下半分は猫に爪とぎでもされたような岩盤を覗かせている。地滑りなどとも思えない。これがストンリの言っていたヒソカニの殻作り痕かと思っていると、別の音が届いた。


《他の冒険者だろう》

「じゃあ、この辺りの魔物を集めてるか、そこで食い止めてんのか」

「クェ」


 ジグザグの岩壁の影から首を出すと、四人ほどが魔物に囲まれている。

 こっち側で人の気配すら感じたことはなかったが、恐らくここまでが巡回ラインなんだろう。

 どうも見覚えがあるような。


「あ、あいつら……嘘だろ」


 クロッタ、バロック、ライシンの岩腕族と、森葉族のデメント。元、低ランク仲間だ。岩壁を背に、襲いくるハリスンの塊の合間にカワセミの混ざる群れを相手取っている。

 ほんと成長目覚ましいな。この前までアラグマ一匹に苦労していたなんて信じられん。


 前衛のクロッタやバロックのやや背後で、ライシンが全体を見てフォローし、デメントは牽制の為に杖を振り回している。しきりに辺りを見回しているのは、マグ感知も合わせて警戒しているからだろう。が、そこへ脇から別の魔物グループが飛びかかった。

 すぐにクロッタが下がってヘイトを集めるも、すでにぎりぎりらしいデメントは、まとわりつく魔物を倒すのに集中してしまった。

 そして待ち構えたように危機が迫る。


 おいデメント、敵! 崖の上から敵! 迫ってるぞ!


「崖から敵が来る。スケイル、跳べ!」

「クルアァ!」

「あびゃあ!」


 注意のために叫んでも間に合う気がせず、咄嗟に指示していた。

 一応、衝撃に備えてはいたんだ。備えてはな。


 バビュンと風を切るような効果音が、漫画のように背景に見えた気がした。

 直後にブチャッと敵が潰れて中身を撒き散らす効果音が重なる。


「おわぁ!」

「なっ……!」

「ひえっ」

「な、なんだ!?」


 スケイルはひとっ跳びで奴らの頭上を越えて崖の中ほどに到達、まさに落ちようとしていた敵に俺は頭突きしていた。ラッキーだったのは、受け止めたのが顔面じゃなかったことだけだ。

 スケイルは岩壁を蹴って華麗に地面へと着地したが、俺は頭突きの衝撃で吹っ飛んでいた。

 予想していたらしいスケイルが横っ腹で受け止めてくれたこともあるが、分厚い草の層があって助かったよ。いやなんでこんなところまで背高草が生えてる。


 ごろんごろんとスケイルの舌と前足で転がされクロッタらの方を向けば、衝撃を受けたような、複雑な顔で固まっていた。

 肩で息を切らしている。ちょうど魔物は片付いたらしい。怖々と近付いたクロッタが剣の柄で俺の体をつついた。


「ひっ! し、しんでる?」

「……まだだ」


 ほっと肩の力を抜いた四人だが、何かを言いたそうに歯を食いしばっている。

 危ない真似したもんな。どこかおちゃらけたようなこいつらでも、さすがに腹を立てそうだ。

 スケイルの舌に引きずり起こされて、再び背に這い上った。疲れたからちょうどいい。はーどっこいしょ。

 まだ黙り込んでいたクロッタたちをスケイルの背から見ると、今度はみるみるうちに深刻な雰囲気が広がる。理由は俺が考えていたものとは違った。



「……シャソラシュバル」



 運悪くそんな囁きが、風を通して揺れる葉擦れの合間を縫って届いた。


「そうだ。そいつだ。英雄……本当に、聞いた通りの姿なんだな」

「ただの昔話じゃねぇって、村の爺たちが言ってたんだ」

「大きな災いが襲い来るとき、シャソラシュバルは必ず現れるって……魔震続きだしよ」


 そうなんだ。多分それ、国がそう思わせてるぞ。


「なんてな!」


 四人は驚愕の表情を崩すと一斉にゲハゲハと笑い出した。

 そういやこんな奴らだったよ。


「待った、馬鹿にしてんじゃないんだって」

「これでもすっげぇ緊張してたからさぁ、気が緩んでついな!」


 ぷぅと空気吐き出しながら言われても。


「あー上から来てるの、気付いてなかったみたいだから。邪魔したな」


 話が噛み合わないだろうが、通りかかっただけだし。


 俺は一人、トマト投げ祭りに参加したような姿だろう。

 無残な姿で地に落ちている敵は、振り草。巨大ウツボカズラのような姿で魔物さえ喰らう、恐ろしくも憎い敵だ。

 マグ成分多めなら、この消化液も消えりゃいいのに。魔物に囲まれたところに、このどろどろ液が目を塞げば本当に危なかったと思う。

 随分と強くなってるが、まだ全方位からやってくる魔物に対処できるほどではないようだ。壁を背にしてたし。そう見えただけかもしれんが。でもこれで中ランクの下っ端なんだよな……。中ランクに求められるラインおかしくね?

 はぁ、消化液は人間の肌にも良くないだろうし、先に宿に戻って洗うしかないかな。


「待てや!」

「な、なにかな?」


 そっと踵を返したところ、怒鳴るように呼び止めたのはデメントだった。


「俺、気が多すぎて隙だらけだって、言われてんだよ。悪かった、んで、助かった」


 前から思ってたが、やっぱり言われるんだ。

 指摘を真面目に受け止めて努力してる最中なんだろう。デメントは不貞腐れ気味に言った。森葉族って任される範囲広くて大変そうだよな。前衛がぶん殴るだけで楽だとかは決して思わないけど。

 でもな、俺はなんにも言われないんだぞ。無意識に戦力外通知されているのは辛いが仕方がない。


「あっそうだった、ありがとよ。ほんとまだまだ気が回らなくてな!」


 クロッタらも慌てて付け足す。

 いいってことよ。この、スケイルが勝手に動いただけさ。

 などと恰好つけると、我はそんなこと考えないと騒ぎそうだからやめよう。


「そういやタロウも大変らしいな」

「そうそう、この聖獣見りゃたまげるわ」


 なんか囲んでまじまじと見られると怖い。


「ゲルル」


 だからって威嚇すんな。スケイルの鼻面を叩いてやったら、眉間に皺を寄せて鼻の穴を膨らませた。どんな心情だそれは。


「さっきの話さ、噂が流れてきてんだよ。なんかタロウが砦兵になるとかなんとか」

「砦兵じゃなくて、国に仕えるだとかの理由だろ。そんなん聖者しか思いつかねぇけど、タロウに聖魔素なんかないしなぁ」

「でもさぁ、ギルドの怖い姉ちゃんなんかは、砦の話はデタラメだって言うし」

「あ、リンダさんのことな。本人の前で言ったら殺されっぞ」


 それぞれが捲し立て始めたのをなんとか聞き取れば、どうもこれまでとは流れが違う。いつも事実は一部を残して大げさな話に変えられたが、さも真実のように語ってたろ。

 この件に関して、おっさんらは水面下でも張り合ってんのか?


「こりゃ英雄の再来だなんてのも信じてしまうさ。こんな時に馬に乗って助けに来られちゃ、うごお!?」

「グゲオォォ!」

「どうどう」


 ライシンが苦笑しながら言いかけて、スケイルの口に危うく挟まるところだった。


「ごめん。馬と一緒にされるのを嫌うんだ」

「ああそっかそうだよな、俺が悪かった!」

「プクゥ」


 しかしこいつらも、こんな時だというなら、ただの魔震とは思ってないんだろう。

 それで、どうしてこうもいつも通りなのかは不思議だ。


「俺が言いたかったのはな、やっぱ人族がこんな聖獣と契約するんなら、何か言われたんだろってことだ」


 相変わらずライシンは鋭いな。


「まあ、砦とギルドで経緯を確認されはしたよ」


 曖昧な噂というのも尾ひれがつきそうで嫌だし、一応、両者に確認されたことは伝えておいた方がいいだろう。だからこそ、こうして自由にしているのだと思ってほしいというのもある。それに、こいつらからなら尾ひれ付きだろうと、曖昧ではない話が他の冒険者たちに伝わるはずだ。


「やっぱりな。おっさん連中はさぁ、なんか面倒な理由見つけねぇと済まないだろ? まじ、うんざりするっての」

「俺たちなんか、まだギルド長たちと話すことなんかねぇけど、まとめ役だとかに絞られるのも面倒だもんな」


 デメントはらしい意見だが、クロッタ他までオッサン連中がどうのと相槌を打っている。


「そういえば地元ではなく、この街で冒険者になりたくて来たんだよな」


 単刀直入に聞けず、遠回しの言い方になってしまった。

 何もギルドに属するのに年齢や大した理由が必要なんてことはないだろうが、その歳で低ランクなら目指したのが遅いのではないかと思ったんだよな。現にシャリテイルは若い内から働き始めたようなことを言ってたし。


「俺んとこは街の外にある村だから、ギルドなんてなくてよ。まあ、ここと似たり寄ったりな場所だぜ。防壁にはしっかり囲まれてるけどな。親に言われるまま継ぐより、自分でやってみっかって始めた方がいいかなってさぁ」

「ああ、一端の働き手として家業に組み込まれる前に逃げりゃ、おやじ連中の小言から解放されるなんて思ってたんだ。甘い? 分かってるよ!」


 ゲハゲハ笑ってるが、未成年が都会で成功してやると息巻いて出て来たようではないか。


「まるで成人前のような言い草だな」

「タロゥ、幾ら俺たちがそそっかしいからってそれはないぜ!」

「十分、働けるくらい成長してるだろぉ!?」

「しゃーねぇだろ。実際、俺たちゃ十数年しか生きてねえんだから」

「喚いても歳は追い越せねぇぞ」


 は? ライシンとバロックも頷くの? こ、こいつらが十代!?

 年下とか嘘だろ!


「こんなおっさんくさ……なんでもない。わるい、冗談だ!」


 早い内から苦労して過ごせばこうもなるだろう。きっとぬくぬく生きていた俺には分からないことなのだ。生命の神秘には触れまい。


 なんか話がすごい逸れてしまったが、その後肝心の話は聞けた。

 やっぱり中ランクにとっては低難度の場所で、前の魔震時にこの辺を連れ回されたとのことだ。今回ようやく一人前のパーティーとして派遣されたらしい。

 先輩の指導や交代要員が用意されてるわけでもなく、自分たちで判断して討伐し、さらに派遣が必要そうならば報告するようにと指示されたようだ。

 きっと以前なら、もっと様子を見たはずだ。六脚ケダマ道で通りかかった半人前中ランクのやつらにも、まだまだ届きそうには見えないんだから。

 それだけ人の手が足りない。

 これまでも無理をおしてきて、今後はますます楽観視できない。本当に、ギルド長はどうする気なんだか。上の連中が問題なんだろうが、歯痒い……。


「お、もう集まってきやがったか。仕事に戻るぞ」


 周囲を見ていたクロッタがリーダーらしく合図をする。

 こいつらにとっては休憩がてらのお喋りに乗じて、つい情報収集してしまった。


「タロウ、俺たちが同時期に始めた低ランク仲間なのは変わらないぜ!」

「ちょっくら俺たちが中ランクに足をかけてるけどな! ちょっとだけな!」

「だがそんな同期は、えらい伝説作って聖獣を手にしてるんだから実際は負けてるかもな。まあ、楽しく張り合っていこうぜ!」

「あのな、タロウ。周りの勝手な言い分に疲れたら、俺たちを思い出せよ。げへへ」


 照れるなきもい。

 ただ、心配して言ってくれてるらしいのは伝わった。

 だから俺も負けずに見栄を張る。


「お前らも俺の手が必要なら言えよ。スケイルが助けるからな!」


 俺の見栄は、これが精一杯だった。




 引き続き魔物討伐に急ぐ。草の消化液はお喋りの間に、水筒の水で顔周りは拭っておいた。日が沈むまで、もう少し片づけられるしな。

 沼の他に魔物が吹き溜まるといえば、祠近くの最弱洞穴の奥地だ。


《請われれば手助けも吝かではないが、なんとも喧しい者どもだったな》

「でもいい奴らだ」

《主を品定めするような視線を向けなかったことは、良い部分と言えるか?》

「それ貴重だろ」


 うっかり野郎度合いなら俺も負けない。

 しかし自分たちが大変なときでも、なんとなくの噂で人のことまで気を遣えるところが、勝てねえなと情けない気分になった。悪い気持ちはしないけど。

 俺は何ができるか、その意味はとか、そんなことばかり考えて、俺に出来ない交渉事なんかでは、もっと何かできるはずだろとオッサン連中を責めていた。


 中身が伴ってないか……。

 その通りだ。それを理解してるなら、今はそれでいい。

 成長の余地があるってことだからな!

 少しでも見合うように活動する。今からでも、間に合うように。


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