201:慌ただしい帰投
拠点の篝火前へ到着したが、まだ誰も居ない。
「遅れてるな」
カイエンは苦い顔で頭を掻き、呟いた。
普段と違う状況なら、その場合の決まりはあるだろうが、なんにしろ人手が必要だ。それは手分けできる奴のことで、戦えない俺ではない。
ときに森へと目を向けながら、カイエンは考えあぐねているようだ。一人なら、すぐにシャリテイルたちと合流するんだろう。俺がここに残って待つと言っても、聞かないだろうな。
それに、俺たちはケルベルスが居るはずのない場所で遭遇し、シャリテイルたちは増えたペリカノンを誘き寄せていた。ならば交代の奴らも、魔物に手間取ってる可能性が高い。
「それって、もしかして……」
「タロウ、足元に気を付けろ!」
カイエンは危険を察知したのか叫んだ。
なにごとかと腹に力を入れて固唾を呑む。間もなく足に伝わる地響きが届いたかと思えば、ぐらりと横に揺れ、眩暈に似た感覚が襲う。
俺たちは同時に叫んでいた。
「魔震だ!」
嘘だろ……こんなところで!
前より揺れは大きく、長く感じたが二度目だ。木を掴まずとも、どうにか立っていられたが喜んでる場合ではない。
「ケルベルスの行動がおかしかった理由は知れたな」
「たしか、魔脈の活性化に魔物も影響受けるんだっけ」
マグが漏れ出て魔物が増えるんだったかな。カイエンは頷きつつも、剣を構えると森を見据えた。
魔震の影響があるなら、片付けたと思っても、どこからか魔物が現れる可能性はある。それとも既に察知してるのか?
はたして木々が揺れ、それは枝葉の狭間から飛び出した。
「カイエン戻ってたのね! タロウは」
「新種の魔物シャリテイル……」
「いたわね! 先に戻っていてくれて良かったわ」
シャリテイルが着地すると、ウィズーたちも拠点へと駆け込んできた。こいつらは普通に地上から来てるじゃないか。
ようやくカイエンも安堵したようで、肩から力を抜き剣を下ろした。それを見て、俺も少しホッとする。
しかし俺たちを見たシャリテイルやウィズーらは立ち止まると、荒い息を落ち着けている。息が上がっているところなんて初めて見たぞ。
動揺を抑えて、まずは情報を擦り合わせようと近くにいたウィズーを見れば、すごい形相で睨まれた。
「おい、一体なにがあった!」
ビクッとして後ずさってしまったが、なぜかウィズーはカイエンに詰め寄る。ただでさえガラの悪そうな人相なのに、さらに目は鋭く眇められ、見た目だけならカイエンより怖い。デープとダンマも、まるで威圧するかのようにカイエンの側に立った。
お前らも相手が高ランクだからって遠慮しないじゃないかよ。
それより、ウィズーの視線で言いたいことは分かった。説明のため俺も割って入ろうとしたが、一歩遅れてシャリテイルも気付いたらしい。
「きゃー、どうしたのタロウ? お皿が割れちゃってるじゃない!」
人を河童みたいに言うな。
両腕と片方の脛部分のヒソカニ殻装甲は砕け散り、一部しか残っていない。うう、考えないようにしていたのに……作り立てだぞ? トホホな気分だ。
「俺が、へましたんだよ。いつものことだろ」
シャリテイルの気が抜ける声に負けないよう、ウィズーに向けて言う。
ウィズーは険しい視線のまま俺を見るが、ケルベルス戦を生き延びた今、そんなもんに慄く気力は尽き果てている。
それに、この人見知り野郎をおどかして、逃げられたらどうするよ。こんな時に、こんな場所で戦力低下とか俺の心の平穏が乱される。
「く……くく」
だが俺の懸念をよそに、なぜかカイエンは俯いて含み笑いを漏らす。
お、おい、テンパってんじゃないよな!?
「なにが、おかしい」
低めた声で返したウィズーの目は不穏に輝き、ますます顔付きは険しくなる。顔を上げたカイエンは挑発するような笑みを消し、真剣に告げた。
「近くで、ケルベルスが出た」
ホアアーッ!
とたんに魂の抜けたような声を上げて驚きを見せるウィズーたちを見て、どうしても怖がれないのは、こういうところだろうと思った。カイエンは、そんなウィズーらを嘲笑うようにして詰め寄り返す。形勢逆転、ウィズーらは焦りを見せて後ずさる。なんの攻防だよ。
「驚くのは早い。そのケルベルスはな、タロウが止めを刺したんぐお!」
「何をっ、言ってくれてんだよ!」
「ぐああ! だからっ、隙を狙うのは卑怯だろって!」
「嘘を言ってんじゃねえぞ!」
思わずワンステップで距離を詰めるとカイエンの脇腹に渾身のチョップをくれてしまったが、これくらいは許されるだろう。
「いいかウィズー、止めはカイエンがっ!」
「オレが止めを刺せたのはっ! 今みたいにケルベルスの隙をついて、タロウが尾を叩っ切ったからじゃん!」
「曲解されるような言い方するなっての!」
俺がチョップ二刀流でカイエンに攻撃をしかけるも、カイエンは両腕を交差してガードする。小癪な。
「ケルちゃんを、タロウが……?」
「信じがたいことが起きたようだな……」
「しかも、低ランクが高ランクと連携だと!?」
「それもケルベルス相手に!」
ああああぁ、ほらみろまた!
「また人族にできもしない噂がとびかったらどうすんだよ!」
「オレは事実しか言ってないし?」
「ねーよ」
背高草を薙ぐ気合いで手刀を叩き込むが、カイエンはガードしたまま腰を落としてヒソカニのようにガニガニと逃げる。器用な真似を!
だがすぐにカニ歩きに疲れたのか動きは鈍った。もらった!
突きを放とうとして、真面目な顔付きで言われたことに俺の動きも止まった。
「戦えないと思い込んで、危険にさらした。タロウの機転で、オレが助けられたのは本当だ」
いや戦えないのは、それこそ事実だろ。気まずいなんてもんじゃない。うまくいったのは偶然だ。俺は溜息を呑み込んだ。
真面目に受け取りたいが、カニのまま半分シャリテイルの背後に隠れて言われると気が抜ける。
「そもそも俺が逃げ遅れたから、危険な状況になったんじゃねえか……」
何が何やらで見ていたシャリテイルだったが、気を取り直したようで、ぽんと手を打った。
「いけない! ほんと盛り上がりたくて盛り上がりたくてたまらないんだけど、ちょっと状況がまずいわ」
「おっと、そうだった」
カイエンはすっくと人間に戻り現状を伝える。そういった皆の切り替えの早さは、俺も見習うべきだな。
「オレたちも戻ったばかりだが、まだ交代の奴らは来てない」
「それなのだけど、たぶん繁殖期が来たの。って伝えようと思って慌てて戻っていたら、魔震まで来ちゃったじゃない? だから予定変更よ」
そうだ俺も、まるで繁殖期のようだと思っていたところだ。
大変だ、急いで戻らないと!
荷物置場に飛び付き、鞄を取り出して皆に渡していく。
「普通、繁殖期と魔震って同時に来ないもんなのか?」
「そうなの。ふわふわ君がやたらと多いと思ったのよねー」
「そうだったな。どうも活きのいい日だと思った」
あれ多かったのかよ! なんで初めに気付かないんだ? これだから強者は!
シャリテイルは一つ大きく息を吸って肯くと、さすがに真面目な様子でカイエンと打ち合わせを始めた。
「街にいる高ランクの当番は誰?」
「キグスだ。畑側に多く魔物が押し寄せても、あいつなら問題はない」
「あの人ね……腕には問題ないけど、なにかあったとき指揮してくれるかしら」
キグスといえば、もう一人の炎天族で……確か面倒くさがりだったよな。炎天族はそんな奴ばかりなの? いや他の高ランクが誰かはまだ知らない。高ランクは難のある奴ばかり、なんてことはないと信じたい。
「今出払っている高ランクの中では、オレが一番街に近いか。なら、オレたちは先に戻るが構わないか?」
俺たち?
「んー、そうだけど。確か北側はあの人たちだし、ええと……」
「なんにしろ上位の人手は必要だろ。ウィズーたちも戻った方がいい」
シャリテイルは少し考えた様子を見せつつも頷いた。
「こうも重なると、そうするしかないわね。お願いするわ」
えぇ、お願いしちゃうの?
全員が拠点から移動を始め、崖沿いの下り坂へと差し掛かる。
「ええと、気を付けて」
「おう、タロっちゴメンな! また今度ケルベルス談義しようぜ!」
できるか!
カイエンとは違い、ウィズーたちは険しい顔付きのままだ。俺を見てから、シャリテイルへと視線を戻す。
「残していくのは、気が進まねえが……」
まあ、そうっすよね。
もし巨大ケダマ軍団が道を塞いでいたら、俺は逃げ切れるのだろうか。
何か言いかけた言葉をウィズーは飲み込んだ。俺一人のことを、あれこれと考える暇はないだろう。
「大丈夫よ。私たちも遅れてる人たちと合流するわ」
シャリテイルの言葉にウィズーたちは頷くと、カイエンの後へ続く。
「じゃあな、タロウ。気ぃつけろよ」
「ああ、ウィズーも……おい、カイエン!」
俺の挨拶は喉につっかえて消えた。カイエンは焦れたのか、滝の横の崖を飛び降りていきやがった……。
「あの野郎、ちったぁ周りのことも考えろ! チッ……俺たちも行くぞ!」
ウィズーがキレつつも崖を飛び降り、デープとダンマも手を振ると、普通に後に続いて行った。
なんで、ついていっちゃうの!?
崖っ縁の岩に張り付きつつ見下ろせば、途中の岩を蹴りつつ下りている。
人類には無限の可能性があるなー……。心臓に悪すぎる。
なんだよ、どう考えてもお前らだって日帰りできるじゃんか。
やっぱり俺を適当に煽てていただけだったんだな!
「タロウ、あれって結構危険なの。真似しちゃだめよ?」
誰が真似するか!
俺に出来るのは、アイキャンフラーイとでも叫びながら落ちることだけだ。ミズスマッシュをおびき寄せる撒き餌としてなら役に立つことだろう。
「さあ私たちも急ぎましょ」
シャリテイルも俺がいなければ崖を飛び降りて行ったんだろうな。
前回の魔震時も、ギルド長さえ出かけていたと聞いたし、今ギルドは人手がいるはずだ。
怯んでる場合ではない。
もちろん大変な状況だろうと、こんな時のことなど皆は慣れてるようだし、人をまとめるのに大枝嬢もいる。ここで俺が焦ったって仕方がない。せめて恐怖に固まったりして、シャリテイルの足を引っ張らないようにしよう。
「なるべく走るよ」
「そうね!」
シャリテイルはにっこり笑うと、木の根が作る段差のある道を軽やかに飛び降りた。
こんな滑りそうな場所で跳ぶなよ!
俺はそろそろと、シャリテイルは軽やかに崖沿いの道を下る。
すぐに六脚ケダマが行く手を阻むも、一匹だけだ。ありがたいことに、それ以降は現れなかった。
「ふわふわ君も数匹で固まって行動するのに、一匹ってことは近いわね」
他の奴らが戦っていて、そこからはぐれて来たんだろうというシャリテイルの説明に納得しつつ進むと、予想通り六脚ケダマの群れと戦ってる奴らと出くわした。
安堵に弛みかけた表情筋は再び緊張する。
ぎゃー!
一人がこちらに気付いて、俺たちに片手を上げたのだ。
ケダマの脚が今にも絡みそうな位置にいながら、なんで笑顔で手を振るんだよ!
無論、俺などに心配されるまでもなく即座に片手でぶった切っていた。
「ちょっと待っててね」
シャリテイルも手を貸しに飛び出した。
俺もナイフを手に木陰から応援しつつ、場の状況を見分する。戦っている交代要員を数えてみたが、やっぱり八人いる?
ただし戦力には多少差があるようで、二人で一匹に対処しているやつらが二組いた。あれが中ランクでも下位の奴らのようだな。
俺たちに余裕ぶって挨拶してきたリーダーらしきやつを含む四人は、上位者っぽい動きだ。
まあ俺にどこまで見極められるのかって感じだが、多くの危険を乗り越えたのだから、目くらいは肥えていてほしい。
ともかく、普通はあの人数が必要ってことだろうか。
今回の俺たちは、なんてアンバランスなメンバーだったのだろう。激しくバランスを崩していたのは俺だが。
そいつらはケダマを倒すとシャリテイルの元へ集まって来た。
こそっと俺も近寄る。
「みんなお疲れー」
「シャリテイル、遅れてすまん! 魔物が多くてな。しかも魔震だ、どうする?」
「おお、タロウもいるじゃねえか! まさか研修だったのか?」
大所帯だから仕方ないのか一斉にざわつくのを、シャリテイルが素っ頓狂な声を上げて制止する。
「ほっほーい聞いて! 予定通り拠点へ向かって欲しいのだけど、どうかしら?」
「ああ、今日は中ランクに成り立ての奴もいないし、こいつらなら問題ない」
いつものようにシャリテイルは笑顔ながら、話している内容は深刻なものだ。
「そう、なら拠点の維持だけお願い。さっきカイエンが街に向かったから、すぐに助けの人員を送ってくれるはずよ」
「応援を? そりゃ助かるが、今から呼ぶとなると、それなりに時間がかかるだろう。周囲を片付けておかなくていいのか」
明朝には本来の交代要員も来る予定かもしれないが、こんなときは夜通し動き回ったりするんだろうか。
「落ち着いて聞いて。多分だけど、繁殖期みたいなの」
「ええぇ!」
皆が飛び上がって驚愕の表情を見せた。
しかしシャリテイルはさらに畳み込む。
「しかもね……南側の中間地点にケルベルスが現れたそうよ」
「ひゃー!」
俺のように情けない悲鳴もあがった。
このメンバーなら大丈夫なんじゃなかったのかよ。いや普段は、ケルベルスは出ないんだったな。
「魔震の影響もありそうでしょ。また様子の違うことがあるかもしれないわ」
「応援ってそういうことか……分かった。了解。大人しく拠点維持に努めるぜ!」
「大変なときにごめんね。じゃあまた!」
「おう。来がけにあらかた片付けてきたが、シャリテイルもタロウも気を付けろ」
挨拶して別れた擦れ違いざまに、そいつらの驚愕した理由が聞こえて来た。
「くはー繁殖期かぁ、面倒くせえな」
「魔震後はあいつら元気いいしな」
「儲かるのはいいが、寝る時間が減るのがつらいんだよなぁ」
そんなこったろうと思ったよ……。
それからは会話もなく、俺たちは食事も歩きながら摂って移動を続けた。意外なことに、シャリテイルは根を上げる様子がなかった。
いや、意外でもないのかな。
こっち側の山の麓で振り草退治に走り回ったとき、一緒に行動したタルギアたち三人と居た時も、疑問に思い始めていた。
あいつらが中ランクの上位者だからというのはあるのかもしれないが、俺と一日走りとおした。休憩を挟みながらだろうと、随分とスタミナがある。
俺だって戦い続けたことで、苦手な部分が、わずかだろうとマシになってる。早く強くなれる他種族なら、それこそ俺などよりずっと底上げされるはずだ。シャリテイルやカイエンたちと行動して、より強くそう思えた。あいつらが人間離れしているだけなのかもしれないけど。
ただ、みんな面倒くさいとか、すぐ休みたいと言うのは、毎日のことだから無理せず行動してるだけのことに感じられる。だって仕事を怠けたりはしないもんな。
俺は、全てに劣る人族でも一つくらいは勝てることもあると信じたくて、考えまいとしていたように思う。
今までなら、こんなこと考えたら一日は不貞腐れてたのにな。そんなもんだと、すんなり受け入れてるのが不思議だ。俺も、ここの価値観に染まってきてるんだろうか。
ああ、違うな。
他種族が底上げされるなら、このままいけば俺も、確実に今より強くなると保証されたようなもんだからか。
何年後に到達するのかと思っていたレベル30に、こんなに早く届いたんだ。運が良いのか悪いのか分からないが、思わず笑えてしまうのは、やっぱり俺が単純だからなんだろう。
川の側まで下りて来たときには、ほっとしていた。
行きがけよりも早かったが、交代の奴らが頑張ってケダマを処理してくれたお陰だろうな。
まだ街までは距離があるものの、魔物の種類は俺に倒せる可能性がなくもないレベル帯だ。六脚ケダマ以上と比べれば、気分だけはマシになる。
やばい場所にいたせいで感覚がマヒしてるんだろうか。
「森の中を移動するわ」
急な方向転換に慌ててシャリテイルの後を追う。川沿いを離れたのは、俺を連れて水生の魔物に対処するのは厳しいからだろうな。といっても、木々の壁を挟んだ脇を通るだけだが。
シャリテイルも少し気が緩んだのか、お喋りが戻った。
「タロウのお陰で、この辺りも移動し易くなって助かるわ。今回の繁殖期は、いつもより楽に過ごせそうよ」
本当にそうなら嬉しいが。
言われて俺も気付いた。
クロッタたちと来たときと比べて、随分と移動しやすい。
よく通る道筋は、俺の後にも気が付いた誰かが手入れしているように見える。一度、場所を開けてみれば作業しやすいのかも。
この初めの一歩を刈ったのは俺なんだ。
そう思うと、そんなに前のことでもないのに、ちょっと感慨深い。
自分の仕事の成果が目に見えて分かるってのは、ほんといいもんだよな。
「やった畑よ! ここまで来ればこっちのものね。タロウが頑張ってくれたから、かなり早くついたわ!」
シャリテイルの言う通り、日差しはまだ夕日と呼べるほどではない。
西の森を出れば見慣れた畑が視界に広がり、結界柵は遠いのに、ようやく心から安堵した。
まあ安心できる状況ではないな。
すでに情報は行き渡ったようだ。
冒険者たちが森沿いに集まり、なにやら指示しているらしい声が届く。森の中で誰ともすれ違わなかったのは、いったん集められたせいだったのか?
班分けしたらしい一部が、森へと入っていく。俺たちに気が付いて手を振るやつらに手を振り返した。
シャリテイルは、あぜ道を急ぎながらも俺をちらと振り返った。
「ここまで来たら、もう大丈夫?」
「ああ、もう大丈夫だ。急ぐんだろ?」
「ごめんなさい、先に向かうわね。でも、タロウもギルドへ向かってくれる?」
「依頼の終了はコエダさん……も忙しいだろうな。トキメにでも伝えておくよ」
「ええ、よろしく。まったねー! ぴゅー!」
自分で効果音をつけるなよ。
挨拶のつもりか、シャリテイルは万歳ポーズで駆け抜けていった。
いつもながら慌ただしいことだ。
本来の意味でスローライフな街だが、スローなライフを送れる冒険者など俺だけだろうけどな!
俺に何ができるかなんて、今はいい。
ふと首のマグタグを握る。
ギルドに急ぐ理由が、ここにあるじゃないか。
「よし」
まだ走れる。俺も気合いを入れて通りを急いだ。




