表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱だろうと冒険者でやっていく~異世界猟騎兵英雄譚~  作者: きりま
低ランク冒険者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

142/295

142:補充

 昨日は日も半ばだったこともあり、感覚的には今日が正式なクエスト初日の気分だ。といっても上りが早かったから、あまり作業量に違いはない。それどころか、討伐のついでに連れて行かれた感じだから、仕事自体は楽になっていた。同行者の予定さえ合うなら、二件分まとめて終わらせられただろう。


 中途半端な時間のため、ギルドの待合室は人もまばらで、窓口に居るのは俺とシャリテイルだけだ。職員の間にも、のんびりとした空気が流れている。一際のんびりして見える大枝嬢が、ぐにゃりと微笑んだ。


「確かに、こちら受領しましタ。お疲れさまでしタ」


 本日、俺が手にしたのは14363マグだ。

 前回に続いて依頼報酬は一万マグ。三千は道々刈った分だ。他の依頼であの周辺のものがあり、そこから分割して支払ってくれた。なんだか手間をかけてしまったみたいだが、俺には助かる。

 報酬以外はケロンが800ちょいで、残りは草に含まれていた分。草も強情な奴が多いせいか、背高草よりも随分と実入りがいい。


 しかしケロンの奴、一部のダメージでこんなに手に入るとは、レベルの割に美味しい魔物なんじゃないか? 当然、俺以外にとっての話だ。


 タグをしまおうとして、報酬額を幻視する。タグ自体には何も書かれてないからな。砦は別として、一万続きだ。もしかして、全依頼で報酬は同じ?


「あの、ちょっと依頼書を確認させてもらっていいですか」

「はい、どうぞ」


 今は大枝嬢が預かってくれている依頼書をカウンターに並べる。やっぱり。

 報酬は一万で揃えられていた。

 だとしたら……なっ、合計で、十二万マグ!


「なにか変なことでもあった? どうして青くなってるのよ?」


 じっくり確認したのは依頼場所だけだ。拒否権がなさそうとはいえ、危険すぎる場所なら前もって心づもりをしておきたいし。

 報酬については、今のところ搾取される心配はしてなかった。というか、まだまだ金銭感覚が身についてないからな。相手は安く頼んだつもりが、俺には結構いい報酬じゃんと思えるならそれでいいやと。


「桁が、ちがう」


 正直に言おう。

 一桁下に見間違ってた。


 砦の依頼は、初めに提示されたのはフラフィエと同額だったし、一日しっかり働いたこともありそんなもんかと思っていた。

 え、だって半日だぞ?

 危険区域だろうと、たかが草刈りだ。千マグでもラッキーなのに。

 だだだって約一年分の家賃がわずか二週間そこらで稼げるってことだ。そんな大金を小市民な俺がいきなり手に入れて人が変わってしまったら、どどどうするんだよ!


「えっ、もしかして……足りなかった?」


 逆に勘違いできる感覚が恐ろしい。

 シャリテイルと大枝嬢の丸い目を交互に見る。まるでなんでもない日常の一つで、俺の方が何を騒いでいるのかといった態度。


 森の中での光景が過った。今日の行動は、普段の中ランク冒険者たちの日常を垣間見れたようなものだろう。四脚ケダマだって400マグは持ってるし、よりレベルの高いハリスンは幾らあるのか知らないが、百匹は下らないんじゃないかという大群を相手にしていた。こいつらは、それをほぼ毎日続けているわけで……。

 あ、普通の冒険者には、はした金ですよね、はい。


「ゴホン、そ、そろそろ貯蓄を考えないといけないかなあ、なんて思ってね?」

「そうよね、うっかりしてたわ! コエダさん話してくれたのね?」

「以前、簡単にですがご利用規則を説明しましたネ」


 ギルドでマグを保管してくれるという貸金庫のようなサービスだが、正直なところ、利用できる日が来るとは思えなかった。

 思い付きで言ってみたが、早いところ利用したい気はある。けど、まだまだ必要なものはあるし、これから買い物もしなくちゃならない。まだ注文した防具の半額も残しておかないとならないから……まだ難しそうだな。


「……依頼を半分終えたら、もう一度考えます」

「はい。お待ちしておりまス」


 あれやりたいこれやりたいと積もるだけだった予定が消化されていく。見通しが立つって素晴らしい!

 雑用係が欲しくて生贄獲得を目論んでいたにしろ、もっと安く買い叩くこともできるのに。暮らせるだけの報酬を弾んでくれることには感謝しよう。


 大枝嬢はシャリテイルにもタグを返しながら溜息をついた。


「それにしても、こんなに早くケロンとまで渡り合えるようになるなんて、驚きましたヨ」

「そうよね。誰だって駆け出しの頃は痛い目に遭うケロンなのよ? 私も驚いたし、ちょっと悔しいわよね!」

「いや、倒したわけじゃないし。って、痛い目に遭うって、その程度……?」


 俺は死ぬかと思ったんですが。と言いたかったが、背後がざわめいた。


「なに、ケロンだと……? おい、聞いたか」

「タロウがケロンを片付けただと」

「人族がケロンを……馬鹿な!?」


 お前らいつも盗み聞きしてんのな。静かだし嫌でも響くか。

 また明日には誤報が広まるんだろうな……。

 肩を落としつつギルドを出てから、慌ててシャリテイルを呼び止めた。予定聞くのを忘れてた。


「次の依頼はどうする。また明日になるのか?」

「いけない、伝え忘れてたわね。実は、今は判断が難しいの」


 シャリテイルは言い淀んだが、すぐにその理由を聞かせてくれた。

 南の山脈周辺へ送った人員は、一晩野営して明日に戻るらしい。その報告の結果が良ければ、魔物の数も平常時に戻るだろうから、また北側周辺の洞穴方面へ。延長する必要があれば、また少しは安全な西の森方面になるだろうということだ。


 ただし、そいつらがいつ頃戻るか、はっきり言えないから、午前中の予定次第になると。

 まあ西の森なら作業はし易いし、午後からでも入れるとありがたいかな。


「というわけで、明日は好きにしていてくれればいいわ」

「いつも通り、街の周辺にいるよ」

「そ。じゃあまたね!」


 まだシャリテイルも忙しいのか、予定を決めると慌ただしく駆け去っていった。

 また買い物に付いてくるんじゃないかと思っていただけに、少し寂しいものがある。まあ、パンツ買うのを見られるのも嫌だけど。


 いや、懐が温かくなる嬉しい仕事なのは俺だけだ。シャリテイルの収入は目減りしてるだろう。あまり付き合わせるのも悪い。


 これもどうせ臨時報酬だ。必要なものは思い切って買っておこうと、衣料品店へと入りながら、何かが気にかかって足を止めた。

 臨時?

 なんとなく、ギルド長から渡された依頼書が全てと思い込んでいた。

 クロッタが依頼の張り紙を見たと言っていたよな?

 まさか……今朝もあったんじゃないだろうな。


 数を制限してるもんだと思っていたが、ギルド長から渡されたのは、あの時点で受け付けたものだろう。

 まずい、クエストボードを確認した方が良さそうだ。


「いらっしゃい。何か探し物かい?」


 戻ろうと振り返ったところに、首羽族にしては横幅のある女性店員がいて、阻まれてしまった。


「……シャツと下着を、まとめて買いたいんですが」

「ちょくちょくありがとうね! ちょっと待ってな」


 すでに覚えられていたか。選ぶほど店の数もないけど。

 せっかくだから買い物を終えてギルドに戻ろう。


 店内には平たい籠が並び、布きれやらシャツやらが品毎に野菜かよといった風に盛られ、木札には『一枚100マグ』と書かれている。

 一応サイズは大中小くらいは揃っているが、それだけだ。それも体型によるサイズ違いではなくて種族別といった感じだから、大サイズは炎天族向けに特大すぎるし、中サイズもぶかぶかで、小は女性や子供向けといった大ざっぱなものだ。


 その籠を乗せてある木箱は引き出しになっていて、そこから店員は紐で括った商品を取り出す。


「はい五枚ずつ。下着とシャツ、どっちも五百マグよ。一枚分おまけをつけようじゃないか」


 下着とシャツが六枚ずつ。多い気もするが、しばらく悩まないで済むしちょうどいいかもな。あまり買っても、今度は虫食いで穴が空きそうな気もする。苔草の虫よけは衣類にも効くかな?


「買います」


 そう伝えると店員は俺に商品をよこし、とびっきりの笑顔で籠から一枚ずつ掴んでぽいぽいと乗せた。

 みかん一つおまけの調子でパンツ盛られるのは微妙な気分だよ。

 店員がマグ読み取り器を取り出そうとしたが、壁沿いに吊られている衣類に目がいった。


「あっと、すみません。上着も買います」

「おや、稼いでんだね。じゃあ荷物はここに置いてちょうだい」


 上着と言ってみたが、ジャケットのような服を見かけた覚えがない。

 俺が買った肌着向きのシャツはケダマ製で比較的柔らかいが、普段みんなが着ているシャツは、樹皮繊維だとかでごわごわした厚手の生地だ。

 その上からさらに着こむのは、俺のポンチョのように、装備としてのケープやらマントだ。ここにな並んでいるのも、ほとんどがそういったもんだった。


「今着ているようなもんが欲しいのかい? 悪いけど、うちじゃそんな上等な生地は扱ってないよ」


 店員は、やや困ったように言う。

 そういえば行商が来て謎の木の実食を見つけたときに、他の露店も多少回ってみたが、衣類はあっても俺が着ているようなものはなかった気がする。


「扱ってる店はありますか?」

「残念だけど、この街で手に入れるのは難しいだろうね。兵隊さんや行商人向けだからねえ。次に行商が来たら聞いてみるといいよ」


 ああ軍用品とか、そういう手に入れにくさなのか。

 上等と言われると貴族とかそういった奴ら向けかと思ったが、ガサガサとした生地だし、そんなはずないな。かなり頑丈な生地ではあるが、柔軟性は乏しいし服として着る者はいないらしい。


「荷を風雨から守るのに重宝するからねぇ、旅向けだね」


 あのぉ、もしかして、養生シートとかビニールシート扱い……?

 用途はともかく、俺の初期装備、かなり贅沢だったのな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ