Re:メール。
Re:はじめまして掲示板見ました。
こーゆーの初めてなんですけど…よかったら友達になってくれませんか?このメールが秦の携帯に受信したのは、月が輝く真夜中だった。
「朔眞ぁ〜起きろって!」
「…ぅう、くぁ〜っぅふ。はよ」
外に出ると青い空と赤い頬が目に飛び込んでくる。
「朔眞…顔!」
「ぁあ、コレ?」
朔眞と呼ばれる青年の右頬はちょっぴり赤かった。
頬をさすりながらもう一人の青年に答える。
「昨日3番目に別れ話したら叩かれた」
「そのうち刺されるんじゃないかな?」
「そしたら眞澄に替え玉になってもらうから」
「なんだよ。それ!」
「心配すんなって、ウソだから」
朔眞と呼ばれる青年は、眞澄の双子の兄でだいぶ女グセが悪い。
対して弟の眞澄は、一度も女の子と付き合った事がない平凡な人生を歩んできた。
顔も声も育った環境も同じなのに、どうしたらこうも性格が違ってしまったのか。
「ウィッス!双子」
「彩おはよー」
「あれ!?さく(朔眞)、そのほっぺ…またぁ?懲りないねぇ」
「うるさい。ブス」
「あ゛〜ムカつくぅ〜なんでこんなんがモテんの?」
「さあな。俺先行くから」
後に残された眞澄と彩は朔眞について議論する。
といっても、最初彩が一方的に話して、眞澄は黙って聞いていただけだが。
「まー(眞澄)の方が優しいからモテそうだけどね」
「俺より朔眞は人の好き嫌いがないし…天性の女好き。だし」
「みんなもあんな奴のどこがいいんだか」
「…それは彩もだろ?」
「!!?」
「気づいてないと思ってた?いつから幼なじみやってっと思ってんのさ」
「あ、アハ、アハハ」
「頑張んないとマジで他の誰かに盗られるよ」
「分かってるよ!分かってるケド…」
「まっ彩なりにがんばんなよ」
「うん。ありがと」
「…これで、いいんだよなぁ〜」
そう呟きながら外をボーッと眺める。
「眞澄何がいいんだ?」
今が数学の授業中だという事を忘れて、自分の世界に入ってしまった。
おかげで、一人だけ課題プリント10枚やってくる事になった。
右隣の席の朔眞を見ると、『バーカ』と声に出さず口にした。
ヒタヒタヒタジャボンパシャンパシャンッ
「気持ちぃ〜」
今日は休みなのだけれど、水泳部の眞澄は気晴らしに泳ぎにきた。
「ハァー薄々気づいてたけど…やっぱ失恋かぁ」
小1時間泳いでプールから上がった時に携帯には一件のEメールが届いていた。
Re:メールありがとう☆あたしジンっていいます。
あたしの方こそよろしくネ(^∪^)っていうか…名前書いてなかったから教え下さい↓↓Re:Re:あっ!ごめんなさい。
名前忘れてましたた(笑)俺眞澄。
ところで、歳聞いていいですか?Re:Re:Re:眞澄君ね。
いい名前だね〜って、いきなり歳?失礼だなぁ〜(`□´)あたし17。
眞澄君は?Re:眞澄、でいいですよ。
17?俺も!なんだ〜タメだったんだRe:Re:ほんとに!?アッ!ごめん(-_-;)これから部活だから、またねぇ☆課題を前に頭を抱え、部屋で一人
「ジン」
について考える。
「部活って何やってんだろ?」
「誰が?」
「!!」」
すぐ後ろには兄の朔眞が、今帰って来たのだろう制服姿のままで立っている。
「なっ、なんでもない」
「?」
ガサガサッ朔眞はノート一冊分の白い紙袋に手を突っ込み、中を漁る。
「何?ソレ」
「隣のクラスの女子に貰った〜」
「んで、どーすんの?」
「どーするって?」
「イヤ、だから…付き合うとかさっ」
「ぁ〜ムリ。美人だったけど…今時手作りクッキーって、どーよ?」
そう言うと漁っていた紙袋から手作りクッキーであろう物を取り出した。
クッキーは透明な袋に数個入っていて、青いリボンで飾ってあった。
その中に入っていた手紙を読みながら、朔眞は寝てしまった。
眞澄は未だに机に向かっている。
デジタル時計は11時15分を表示していたが、ジンにメールを送りたくなった。
夜遅いので、しようか、しまいか悩んだが結局送った。
Re:夜遅くにごめん。
あのさ…やっぱ女の子って、手作りクッキーを好きな人に食べてもらうって、嬉しいのかな?あと、なんでメル友作ろうと思ったの??返信メールが帰ってきたのは、次の日のお昼だった。〜♪〜♪♪〜♪〜♪〜♪
「あれ?眞澄のケータイじゃね?」
つい最近登録したジンの着信音には、まだ慣れない。
Re:Re:はよ〜返事遅くなってごめんネ(:_;)う〜ん…嬉しいよ。
絶対!メル友はねぇ〜なんとなく、かな。
まわりの子とかも、そんなもんじゃない?Re:Re:Re:はよ〜へ〜…今まで一度も貰った事ないから(涙)貰ってみたいな〜俺は幼なじみ以外あんま女の子と話した事ないんだ。
これじゃダメだなぁって思って、女の子とメールしてみようと思ったのが理由なんだけど…Re:えっ!じゃあ今まで付き合ったりとかないの?Re:Re:うん(涙)しかも…昨日失恋決定したんだ。
Re:Re:Re:今日失恋しちゃったRe:Re:Re:Re:なんか、ごめん。
Re:ううん。
大丈夫!もしかしたら、そんなに好きじゃなかったのかも(@_@)って、前向きに考えればけっこー平気(^o^)
お互いの失恋話で打ち解けられたのか、それからほぼ毎日メールをするようになった。
Re:おはよ
昨日の音楽番組見た?
Re:Re:おはよ
見た見た!大塚愛ちゃん可愛かった〜☆☆
好きなテレビの話、よく聴くCDだったりする。
Re:Re:
映画?観ないな。
特にアクション映画とか。
Re:Re:Re:
あたしはアクション映画とかすっごい好き♪
Re:Re:Re:Re:
オススメとかは?
Re:
オススメ?ぅ〜ん…今週公開のアクション映画は観たいなっては思ってた(^∪^)
内容は何でもよかった。
互いを知ろうと情報を貪るようにメールのやり取りを繰り返す。
Re:Re:
部活?チア部☆眞澄は?帰宅部っぽい(笑)
Re:Re:Re:
チア部!かっこいい!スゴイ!帰宅部?一応俺水泳部なんだ。
Re:水泳部!?意外!夏はサイコーじゃない?(^_^)v☆☆Re:Re:意外かな?バリバリ運動部だから。
うん。夏はすっげー気持ち良い!Re:いいなぁ(・ε・)Re:Re:チア部ならさ。背高いの?Re:禁句用語!背の話は禁句用語だよ〜…チア部ん中では小さい方で、166cm(:_;)眞澄は?Re:Re:禁句用語?それくらいあれば十分だと思うんだけど…俺175cm。
「なんか最近元気なんじゃん?」
「そーかなぁ〜」
「なんかあった?」
「ぁ〜う〜…最近女の子とメールしてるんだ。その実は…すぅ゛好き、なんだ」
眞澄は照れ笑いしながら頭を掻く。
その横で同じ顔が豆鉄砲を喰らった鳩のように呆気にとられていた。
「…眞澄が!?彩以外の女と話した事ない眞澄が!?生まれてこのかた彼女がいない眞澄が!?」
「悪かったな。俺みたいなので」
眞澄は部屋で雑誌を読みながら話を聞いていた朔眞に向かって、ふてくされた。
それを見てすぐさま朔眞はフォローを入れる。
「イヤイヤ、別に悪くゆってんじゃなくてさ〜…ちょっと驚いた…眞澄なら応援してやるよ」
たとえ女グセが悪くても、兄弟思いの優しい奴だって事は眞澄がよく知ってる。
だから、朔眞に作り笑いさせている、顔だけで寄ってくる女の子達は決して好きにはなれなかった。
本人も周りが顔だけで寄ってきてるのは、よく分かっているはずなのに不特定多数の女の子と遊ぶ。
その理由が眞澄には分からなかった。
ジンとのメールを始めてから1ヶ月が経とうとしている。
季節は既に夏が終わろうとしていた。
この日も眞澄は部活で泳いだ帰りだった。
真夏に比べて陽が落ちるのが早くなったので、公園を通って近道をする。
すると、どこからか助けを求める声がした。
声の出所を見つけようと眞澄は辺りをグルリと見回す。
「!」
キョロキョロ
「…ャダ!放して!痛い!」
「うるさいんだよ!いいだろ?付き合ってくれよ」
男は、懇願する彼女の長い黒髪を力強く掴んでいた。
ドキドキドキ心臓の鼓動がうるさい。
「はなぅ゛んせよ」
普段の自分の弱さを押し隠して、助けに飛び出す。
あまりの緊張に口がついてこれずに噛んでしまう。
その眞澄の顔を苦しげな表情で見た彼女は、一瞬とてもとっても悲しげな表情に変えた。
「誰だ?」
「いーから放せよっ!3年…推薦とか取り消されちゃうんじゃないですか?先輩」
眞澄は左襟首のバッジに
「3B」
と表記されているのを見逃さなかった。
「クッ…」
ドサッ男は今更バッジを隠しながら、そそくさと退散していった。
心音がまだうるさい。
ドキドキドキ本当は耳の中に心臓があるんじゃないか?と思ってしまう。
彼女はその場に座り込んでしまっていた、力が抜けたようだ。
「大丈夫、ですか?」
ビクッ彼女は差し延ばされた手を見て肩をふるわせた。
「…怖いかな?」
この問いに彼女は小さく一度頭を動かす。眞澄は手を引っ込めると後ろを振り返る。
「ゆっくりでいいから立って、送るよ」
今男の人に触られるのは怖いが、漠然と不安が彼女を襲う。
「!」
後ろを向いたままの眞澄の上着の裾を彼女はギュッと握る。
その感触が伝わってくるのを確かめて歩き出す。
「こっちでいい?」
しばらく歩くと彼女の方から口を開いた。
「ぁの…家そこだから」
「大丈夫?」
「ありがとう」
「お礼なんていーよ」
裾から彼女の手がゆっくり離れて、玄関を開けて家の中に入って行く。
それを見届けてから家路につこうと、来た道を少し戻ろうと振り返る。
「ぅわっ!どーして?」
「そんな驚くなよ…傷つくなぁ」
まだまだ蒸し暑さを感じるのに汗をかいてない顔をした朔眞が立っていた。
「今日は一人?」
「ぁあ。今眞澄といたのって…」
「知ってんの?」
「知ってるも何も俺にホラ手作りクッキーの」
「あれ?」
「ぁあ。どーゆー知り合い?」
「いや…大した知り合いじゃないんだけど…」
「そっ。じゃ帰るだろ?」
一度だけ彼女が消えて行った家の方を振り返る。
その次の日に腰を抜かすほど、驚く出来事が眞澄を待ちかまえていた。
それは一人の訪問者によって訪れる。キョロキョロ
「誰か探してんの?」
「あっ…え〜と、」
窓際の席に友人と話している眞澄の方を見て、指さす。
「あの人呼んでもらっていい?」
「えっ!眞澄の方?朔眞の方じゃなくて?」
「…眞澄ってゆーんだ」
「眞澄が弟で、あっちの朔眞は兄貴」
「…間違いなく眞澄の方」
「そっ。オーイ眞澄ぃ!」
「ん〜?」
「呼んでっぞ」
「女の子♪」
一瞬クラス中がどよめいた。
女から呼ばれるのはいつも決まって兄・朔眞の方だから、弟の眞澄が兄を差し置いて呼ばれるなんて事は重大事件としか言いようがない。
「あ゛ーおそれていたことがついに!」
「なんだよ、それ?」
「ついに眞澄が朔眞の代わりにぶたれる日がやってきたんだ!」
「オイおい、冗談は顔だけにしとけって。俺がいつ女にぶたれたって」
『…』白々しいものである。
最近女にぶたれて頬に傷を作ってきたのは、皆様ご承知の通り
「朔眞」
。眞澄を呼んだのは昨日襲われていたのを助けた彼女だった。
「あれ?昨日の…どーしたの?また何かされた?」
「ううん。違うの、もう一度お礼がいいたくて…ありがとう」
「ほんとお礼なんていーって。よく俺が2Eだって分かったね」
「バッチ見たの。あたし新 秦。眞澄、君だよね?」
「…!ジン?もしかして…チア部の?」
「うん!やっぱり眞澄、君?実際名前呼ぶなんて慣れないや」
「いーよ。眞澄で」
「双子なんて知らなかったから驚いちゃった」
「兄貴の朔眞で俺弟」
「朔眞君の事は知ってたんだ…」
秦からお礼に貰った手作りクッキーを音を立てて貪り食う。ボリッボリボリッ
「眞澄!うっせー」
「…」
ボリボリボリッ彼女は秦=ジンだった。
しかも、兄の朔眞に告白していたとは知らなかった。
それを知って悔しいような言い表せない気持ちになって落ち込む。
夜になって秦からメールが一件届いた。
Re:クッキー食べてくれた?今日はビックリ!したけど…今度改めて二人で会わない?実は映画のチケット持ってるの(^∪^)Re:Re:クッキーありがとう。
おいしいよ!映画?悪いけど…Re:Re:Re:なんで?(`□´)あたしが朔眞君に告白してた事気にしてるの?Re:いや…そんなんじゃないけど。
Re:Re:じゃ決定ネ☆明日駅前に10時ね!遅刻しないでね〜待ってるから♪どうやら映画に行く事は決まってしまったらしい。
「…どーしよ…朔眞!」
「どーした?」
二段ベットの上段からヒョイっと顔を出す。
「俺の代わりに映画行ってくれ!!」
「はぁ?なんで?眞澄いきゃあいいじゃん」
「無理ムリむり!そんな事した経験ないからどーしたらいいか分かんない。それに応援してくれるって、言ったじゃん!」
「まぁ、言ったけど…」
一方は泣き出しそうな情けない顔、もう一方はそれを見て困った顔をしている。
朔眞はベットから降りて、眞澄の頭をペチッと叩く。
「今度なんかおごれよ」
「さくー」
「あ゛〜俺と同じ顔で情けない面すんな!」
トントントンッガチャッ
「入るよ〜」
ノックをして入ってきたのは、幼なじみの彩。
「…何してんのさ?」
情けない顔をしてる眞澄の肩に手をかける朔眞達を見て、彩の動きが止まった。『イヤ…別に』
「それよりさ〜一緒に映画行かない?」
「俺パス!」
「エッー!まーは?」
「俺もパス、かなっ」
「この映画明日までなのに…」
「彩ごめん」
「誰か他の奴と行けばいいじゃん」
「…」
「あっ!一緒に行く男なんていないかっ」
それを聞いて眞澄はヤバイと思って、彩を見る。
彩は握り拳をプルプルと振るわせて今にも襲いかかりそうだ。
「さくのバカ!大っ嫌い!」
豪快な足音をたてて部屋を出ていく。
「あっ彩!オィッ…あんな事ゆっていいのか?」
「いーんだよ」
午前10時5分前、既に駅には秦が来ていた。
黒のフリル付きミニスカートに、飾り気のない白いベアトップの上に青い半袖を羽織っている。
可愛さの中にどこかスポーティーな感じが秦の本当の美しさを際だたせていた。つまりは、可愛い。
「はよ」
「おはよ」
秦は控えめだけれど手を振る。
「何の映画見るの?」
「…えっぁあ、コレ」
出されたチケットは、昨夜彩が観に行こうと持ってきたのと同じだった。
「日曜だからけっこー混んでるね」
「そうだな〜今日最終日だし」
「あっち空いてるよ」
その二人の姿を目で追う影が二つ。
「…誰あれ?」
「ふっーなんとか無事に…」
『ん?』それぞれの声の方を見やる。『あ゛ー!!!』しばしの沈黙。
「まー?なんでここに?」
「あっ、んっ、イヤッ…なっ」
うまく誤魔化し切れずに口がどもる。
「さくと一緒にいた人誰?」
「…ピュッピュ〜〜♪」
うまく答えられないので、仕舞には下手な口笛を吹いてしまった。
それに業を煮やして彩は眞澄を連れてシアターホールの中に入った。
「この映画眞澄と一緒に観れるみたいで、よかった」
「何でこの映画?」
「…眞澄アクション映画好きだって言ってたから、これにしたんだけど」
「ぁあ〜うんうんアクション好き」
眞澄そんな事言ってたっけかな?映画あんま観ないって、言ってたような…ビィーーー
「…始まるよ」
アクション映画が始まり、彩と眞澄コンビは秦と朔眞達から少し離れて座る。
〔ぅ゛〜さくの隣に座りたかったのは、あたしなのにぃ〜〕〔ごめん…俺のせいだ〕〔何でまーが謝るの?〕〔実は…〕眞澄は彩に秦の事、自分の代わりに朔眞に秦とデートしてもらっている事を順を追って説明した。
「…何それっ!」
「シッー」
本当の事を知って、上映中にも関わらず勢い余って椅子から立ち上がる。
〔あわぁっ!〕〔ごめん〕〔何それっ!まーの意気地なし。
そこまで弱虫だとは思わなかった〕〔ハッ、本当そうだよな〕眞澄が見つめる先には朔眞の隣の秦の後ろ姿。
〔イイネーあの俳優好きなんだよね〜〕〔…そうなんだ〜ねぇ、コーラ飲む?〕〔ぁあ、ありがと〕映画に大興奮の中、眞澄のフリをした朔眞はコーラを受け取って一口二口飲んだ。
ゴクゴクッ〔おいしい?…朔眞君〕〔ぁあ、うん…さ…って!〕〔気づいてないと思ったの?最初からずっと気づいてたよ〕〔そりゃ困ったな〕ペコちゃんのように、ペロっと舌を覗かせた。
〔だって、眞澄はこーゆー映画観た事ないって言ってたし、話し方の印象が違う!それに運動部だからコーラ飲まないって言ってました〕〔参りました。
もう何もゆー事はないです〕〔それに…〕〔それに?〕秦は一度優しく笑う。
〔それにね…どっちが好きな人ぐらいかは、分かってるつもりなんだけど〕〔コクるの?〕〔しないよ〕〔何で?〕スクリーンにはエンドロールが流れて、映画が終わった事を知らせた。
彩と正体がバレた朔眞は昼食を取る為に映画館を出ようと、入り口に向かっていた。
「ホラ!まー行くよ」
「行くのかよっ」
「当たり前でしょ!見失っちゃうよ。急いで!」
「何かややこしい事になってきたなぁ…」
「早く早く!」
ファミレスに入ると、窓際の席に通される。
眞澄達からは朔眞の後ろ姿を確認できるが、遠くて二人の会話が聞き取れない。
「何話してるのかなぁ…ぅ〜楽しそう」
眞澄は秦が自分以外の人と楽しそうに笑っているのを見て、心が傷んだ。
ギュ〜〜〜胸が押しつぶされてしまいそうで、息ができなくて苦しかった。
「あっ!まー二人が出てくよ」
「まだ、ついてくの?」
「当たり前!もし告白とかなったら、どーすんの?」
ファミレスを先に出た二人はどこに行く訳でもなく歩いていた。
「どぉ二人ついて来てる?」
「ぁあ…何で彩までくんだよ」
「彩ちゃんには悪い事しちゃったかな?」
「何で?」
「…だって今日の映画朔眞君誘われたんだよね?」
「それが?」
朔眞は訝しげな顔で秦を見下ろす。
「鈍…それより頼んだ事お願いネ!」
「いつでもいいぜ」
二人は河川敷の遊具の間を抜け、青いブランコに跨る。ガチャッキィーキィー
「ブランコなんて懐かし〜楽しい〜ねっ眞澄!」
二人の後をついて来ていた本物の眞澄は、秦が朔眞を眞澄と呼んだ事に対して騙してるという罪悪感で胸が痛んだ。
そうこうしてるうちに秦が本題を切り出した。
「眞澄」
「何?」
「眞澄とメル友になって毎日が楽しかったよ。困ってたら助けてくれて家まで送ってくれて嬉しかった」
「俺も楽しかった」
「それでね今日会って、眞澄ならって思った…あたしと付き…」
「まっ!って」
思わず本物の眞澄が秦の前に飛び出す。
その瞬間ブランコをこぐ秦の足が眞澄の顔に見事命中してしまった。ガッツン『あ゛ーーー!!』
「ごめん眞澄大丈夫?」
「ぅんぐっ…今なん゛て?もしかして」
「ごめんネ!眞澄じゃなくて朔眞君だって最初から気づいてたの」
顔を押さえてる眞澄の代わりに一緒につけて来た彩が口を開く。
「…じゃあ分かってるなら、どうして?」
「彩おまえ関係ねーだろっ」
「あるよ!」
二人を見て秦は思いっきり笑った。
朔眞は不思議そうな顔をした、隣の彩は林檎に負けないくらい耳までもが真っ赤になる。
「心配しないで彩ちゃん。あたしが朔眞君と楽しそうにしてれば、ヤキモチやいてくれるかなってふざけてみたの」
「じゃ告白も…」
「もちろん冗談」
「よかった」
「だから、何でおまえは…」
顔を押さえたまま放心する眞澄が秦の前に立つ。
「…怒ってる?ごめ、」
「ごめん!俺意気地なしだった。他の人に、しかも前好きだった人にデート頼むなんてサイテーだった」
眞澄は深々と頭を下げる。
その姿を見て顔を上げてと、秦は優しく声かけた。
ゴォーーーーッ空が青い。
飛行機は細長い雲を作って次第に見えなくなってく。
「泣いて後悔するなら…」
「ぅ゛ぅ゛う゛わかってるよ」
泣いているのは眞澄。その鼻にはふんわりティッシュ。
「怒ってないから顔をあげて。怒ってないけど…」
そこにいる全員が、何だ?という表情に変わる。
「けど?」
「残念だったな。引っ越し前に眞澄と遊びたかったんだけど」
絶句。やっと出た言葉は引っ越し先を聞く事。
「引っ越し?どこに?」
「アメリカ。向こうで本格的にチアの勉強しに留学するの」
「アメリカ…いつ?いつ行くの?」
反芻してみても実感が湧かず、アメリカが宇宙の果てに思えた。
「5日後だってさ」
代わりに事情を聞いた朔眞が答える。
「映画観てる時に聞いた」
「…だから最後に眞澄と会いたかった…けど、今日は時間がなくなっちゃったね」
辺り一面太陽の光は消え失せ空には無数の星が煌めいていた。
見送りには行くと約束を交わし別れる。
Re:久しぶり☆あれから4日が経って、明日11時の便でアメリカに行きます。
見送りきてくれるよね?Re:Re:行くよ。
笑顔で送り出せればいいけど…朔眞と彩も一緒だから。
Re:Re:Re:ほんと?来てくれるんだ〜ありがとV(^-^)V☆
「…」
「…」
人々が行き交う空港で別れの言葉を探す二人は沈黙を語る。
「住所分かったら手紙とか書いてな」
「うん」
「チアの勉強頑張れな」
「うん」
「えっと…」
「…」
『11時08分発ニューヨーク行きは…ご搭乗が…お願いいたします』別れを告げるアナウンスが空港内に響きわたる。
「行かなきゃ」
「あっ、ぁあ」
離陸ゲートへと足をゆっくりと向ける。振り返ったまま話す。
「やっぱり、手紙書かないよ」
「えっ?」
「つらいから…好きなのに会えないなら手紙なんて書かないほうがいいもん」
顔が見えないが眞澄は秦が泣いてるんじゃないかと思った。
「会いに行くよ…今すぐは無理かもしんないけど、いつか必ず…」
振り返った秦の顔が目の前。Chu☆
「待ってる」
柔らかい唇が眞澄の唇を奪っていった。
秦の後ろ姿をいつまでもずっと見送る。
立ったままの眞澄の顔を朔眞が後ろからのぞき込む。
「あっ!ハナヂ」
ゴォーーーーッ空が青い。
飛行機は細長い雲を作って次第に見えなくなってく。
「泣いて後悔するなら…」
「ぅ゛ぅ゛う゛わかってる」
泣いてるのは眞澄。
自分が大切にしたかった人はいなくなった。伝えたい事も伝えられずに…。
「好き」
のたった一言も口に出せずに…。
「向こうでは気をつけろよ」
「大丈夫だよ。向こうで秦が待っててくれるから」
ガチャッ
「いってきます!」
だから、今度会ったら伝えたい…この青空の下で。
「秦が好き」
って。
こんにちは!そして、はじめまして☆宇佐美です。今回は第3弾目のお話でした。メインをメールでの会話にしたため雑な文章になってしまいました(;_;)ごめんなさいネ。次回は兄の朔眞の恋を予定しています。その前に修学旅行の短編も書くやもしれません。最後まで読んでいただいてありがとうございます。感想などいただけたら幸いです☆リクエストも募集中です♪