15話:ルビア
2人で協力しながら、ひたすらに頭と胴体を切り離す。
俺はナイフを手に切り離す。それを彼女が受け取りつつ、新しいうさぎを渡す。流れ作業を続ける事5分ほど。最初は1匹30秒くらい掛かっていたが、最後には10秒くらいで処理していた。慣れって恐ろしいな。
完全には切り離せていなくても、もう死んでいるだろう、動き出す事は無いだろう、そう思えるくらいのスピード重視での処理をしたため、出来上がったうさぎの山は残骸という印象だ。
でも処理の最中に聞こえてくる、
『レベルが6に上がりました。スキルポイントを3獲得しました。』
『レベルが7に上がりました。スキルポイントを3獲得しました。』
途中から聞き流していたが、あの声でうさぎは死んでいる事を確認できているため、ホッと一安心である。
「うさぎの肉って美味しいよな?」
解体する前に美味しいのか確認してみた。苦労して解体したのに不味かったらショックだからな。
「当たり前じゃないですか。ポピュラーで私も食べますよ。」
美味しいらしい。良かった。
「そうか。じゃあ1匹解体して食事にしよう。」
全部解体するのは時間も掛かるし、走ってきてお腹空いたし、1匹だけ解体しよう。手早く解体に取り掛かる。お腹の肉をざっくり切り取っていく。
「ちょっと!そんな勿体ない!ナイフ貸して!」
怒られた?ナイフを渡すとスムーズにうさぎを解体していく。てきぱきと進める様は職人芸。革、肉、内臓、骨、腱など、キレイに切り分けられていく。様子を眺めていると10分ほどで解体が終了していた。
「すごいな…」
「えっ、何がでしょうか?」
「スムーズに解体していて」
「そんなに解体は上手くないですよ?10分も掛かりましたし。普通の騎士は5分くらいで解体するじゃないですか。」
あれで下手な部類に入るらしい。この世界の普通ってすごいな…と、ビックリしていないで食事にしよう。家の中へ彼女を招き入れ、手を洗ってから調理にかかる。
「あの、料理得意だったりします?」
「料理ですか?得意も何も、焼くだけなら誰でもできますよね?」
解体技術とは異なって、調理技術はかなりレベルが低いようだ。彼女だけなのか、この世界の常識なのか。後者だとしたら、この世界で生きていく楽しみが減ってしまうな。。。
気を取り直して、料理を始める。とはいっても、鍋で炒めるだけである。簡単に炒めたうさぎ肉を皿に取り分け、スプーンと共に彼女に差し出す。
「いただきます」
この世界に来てからも、習慣としてこれは欠かさない。両手を合わせていただきますと言う。ルーティーンだ。一方、彼女は固まっていた。
「どうしたの?」
「あ、あの、この部屋はなんでしょうか?見た事の無い物ばかりで。。。」
戸惑いの表情を浮かべながら、彼女は問いかける。
「話は後でするから、ひとまず食べようか。」
そう彼女に勧めると、頷いた後にガツガツと食べ始めた。渡したスプーンも使わずに手づかみで。この世界は文明がだいぶ古いのだろう。解体技術はあるが、スプーンは使わず、調理技術もレベルが低い。何時代にあたるんだろうか。
うさぎ肉を食べ終えて、洗い物を終えた後、再度彼女と向かい合う。
「色々と聞きたい事があるだろうが、こちらから先に聞かせて欲しい」
そう切り出し、彼女からこの世界の情報を聞き出す事にする。
彼女に質問した結果をまとめるとこうだ。
彼女の名前はルビア。この森の近くにあるアンジオ王国という国の王女だったらしい。だが、その国でクーデターが起こり、国から逃げる中、追っ手を撒くために危険度Cのこの森、通称ミノタウロスの森へ逃げ込んだ。護衛者がいればなんとか抜けられるこの森だが、彼女一人ではモンスターを避けながら進んでも1週間も保たないような場所らしい。彼女一人である事はクーデター側も認識しているらしく、そのためこの森に逃げ込んだとは思っていないため、俺と出会うまで無事だったようだ。ちなみに、クーデターが起きた理由はルビアには分からないようだ。他国と比べて食料も豊富だし、税金も低めで治安も悪くない。領土が広いので多少目が届いていない地域もあるだろうが、クーデターが起きるような問題や気配は無かったようだ。
また、アンジオ王国があるのはプラント大陸という所であり、この大陸の南側にある国との事。そのアンジオ王国の王都アストレはアンジオの南部に位置し、この森はそこから更に南に位置しており、大陸の最南端にあるらしい。アンジオ王国の他には、ジムノ王国、テリダ共和国などがあるらしい。
次にモンスターについてだが、モンスターは様々な場所に生息しており、その中でも重点的に生息している場所はダンジョンと呼ばれている。このダンジョンにいるモンスターの強さ等により判定される危険度というものがあり、AからEの5段階となっているらしい。つまり、この森は危険度としては中程度という事になる。
また、このモンスターの肉や革、角などは食料や加工品の原料として使われており、そのためにモンスターを狩る事を生業としているハンターと呼ばれる職業が存在する。ハンターはその職業上モンスターを解体する事も多く、ベテランほど手際よく解体できるそうだが、ある程度は教養として教わるものであり、ルビアの解体技術もその教養として学び、王女の教育として実践訓練も行った賜物らしい。地球では考えられない英才教育だが。
なお、今まで倒していた巨大な鳥やうさぎは、それぞれファストバード、キラーラビットというモンスターらしい。
最後にスキルについてだが、大人であれば何かしらのスキルを持っているのが普通らしい。だが、どういうスキルが手に入るかは、各個人の適正や行動によるらしく、どうすればどのスキルが獲得できるかは分かっていないらしい。獲得したスキルについては、鑑定というスキルが必要で、基本は大きな街にある情報屋という所でお金を払って確認するらしい。また、レベルやランクというものは存在しないらしい。ただ、これは俺にだけあるとは思えないので、知る方法がないというのが正しいと思われる。
「なるほど、ありがとう。また色々と聞くと思うが、とりあえずこれくらいでいいや。」
「分かりました。次はこちらから色々と質問させてください。」
そこからはルビアからの質問に答える。名前やこのスキルの事、家にある各種設備について答えていく。先に色々聞いておいて良かった。そうじゃなきゃランクとかレベルとか普通は知らないものも答える所だった。また、どうしてここにいるのかについては、ここで修行をしているハンターだという事にして、向こうの世界から来た事はまだ伝えないでおいた。スキルについても、迎撃機能だけを伝えて、ランクやレベルでスキルが増える事やあの声については隠しておく事にした。
そうして、ルビアと情報交換をしているうちに外は暗くなっており、今日は寝る事にした。もちろん、俺はベッドだが、ルビアは床で寝るようだ。さすがにあったその日だもんね何もないよ。ルビアは相当疲れていたのか、すぐに眠りについていた。それを見て、俺も明かりを消して眠りにつく。
『…ちゃんと守れなくてゴメンね、もっと強くなるから…』
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ランク:2
レベル:7?
取得スキル:迎撃機能8、3点式ユニットバス、小型キッチン、電気温水器、冷蔵庫




