14話:第一人間発見
こちらの世界に来てから、モンスター以外の生き物にあったのは初めてだ。
遠くから見た感じは、170cmくらいの女性かな。白いキレイなドレスのような物を着ている。その白い生地には、土や草による汚れが付いている。そして長くてきれいな金髪。後ろ姿だけでも分かる、テレビで見ていたモデルのようなオーラ。思わず、その美しさに見惚れてしまう。
その時、彼女の奥、川の反対側で何かが動いた。
その彼女を見ていたのは俺だけではなかったのだ。動いた何かは1つだけではなかった。木の上にもいる。草むらも数箇所が同時に動いている。そして、反対側の川辺に現れたのはさっき倒したうさぎだ。それも数匹。
「逃げて!」
思わず叫んでしまった。その声で彼女は水を飲むのをやめ、顔を上げた。そして、その先にいるうさぎを見た瞬間、こちらに向かって走り出した。
それと同時に、木の上や草むらにまだ隠れていたうさぎが一斉に出てきた。10匹以上はいる。叫んだせいで出てきてしまったか!?後悔しても仕方ない。
「こっちへ!」
その彼女を誘導するように家の方向へ俺も走り出す。自分優先で放っておく方が確実に家まで帰れる。それでも、初めて出会った人間を見殺しにはできない。決して、キレイな女性であったからではない。断じてない。
家までは約800m。あんな走りにくそうなドレスを着た状態で、そんなに走れるのか。あのうさぎより早く走れるのか。
「教えていただき助かりましたが、この先に何かあるのでしょうか。」
そんな懸念を払拭するかの如く、俺と並走する彼女。別に待つためにゆっくり走ったりはしていない。走っている様子を少し見てみると、とてもスムーズなのだ。森の中で走りにくい事この上ないのだが、それに対して彼女はまるで陸上のトラックを走っているかのようにスムーズに走っているのだ。むしろ、進む方向が分からないため、俺が誘導するのを待つかのように苦もなくスピードを合わせてくれている。
「俺の家がある。そこまで行けばうさぎを倒せる。」
そう簡潔に答え、家に向かって走り続ける。3回目のモンスターからの逃走。心の余裕はあるが、それでもやはりキツイ。学生時代からスポーツはやっていたし、筋トレも好きでやっていた。でも、走るのはどうにも苦手だった。だって走るだけだよ、何が面白いんだよ、サッカーとかでボールを追いかけるなら走っていても楽しいけど、決められたルートを走るだけだよ。駅伝とか見ているのはワクワクしたけど、自分がそれをやりたいかと言われるとやりたくない。
でも走っておけば、こんなに苦しい思いはしなかったのかな。そんな事を思っていると、ようやく柵が見えてきた。入口に回り込み、中へと逃げ込む。柵の内側数mの所で振り返り、うさぎ達がやってくるのを待ち構える。
「どうしたの!?家の中に逃げ込まないの!?」
彼女はドアを開けながら、こちらに向かって叫ぶ。そりゃそうか。多分あのうさぎ達は柵の高圧電流で気絶するはずだ。ただ、万が一があるかもしれない。入口の様子を見ながらドアに近づく。
そして遂に、入口からうさぎが顔を出した。
バチィッ
次の瞬間には先頭のうさぎが音と共にヘッドスライディングをしていた。
バチィッバチィッバチィッ…
それからしばらく音が鳴り続ける。
「何が起きているの…」
隣から唖然とした声が聞こえてくる。そうだろう。俺も初めてあれをみればその反応をするはずだ。音と共にどんどん気絶していくうさぎ達。100%の確率で気絶している。1匹たりとも動いていない。積み上がっていくうさぎの山。
1匹目から30秒ほど経っただろうか。音が止み、目の前にはうさぎの山が残った。俺達を追いかけていたうさぎは全て気絶したようだ。全部で20匹くらいだろうか。とりあえず、起きる前に全て処理しなければ。
「今のうちに全部処理するから手伝ってくれ。」
彼女は唖然としたままだが、早速処理に取り掛かる。
今までは気絶している最中に処理できたが、この量だと動き出す可能性があるのではないか。もしそうだとしても処理するしか無い。山の一番上にいるうさぎを手に取り、ナイフを使って頭と胴体を切り離し始める。
彼女が動き出したのは、そこから数十秒後の事であった。
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ランク:2
レベル:5
取得スキル:迎撃機能8、3点式ユニットバス、小型キッチン、電気温水器、冷蔵庫




