EPISODE プロローグ「終止符と新たな切符」
この世界における魔族は基本的に人間には無害である。
むしろ協力的であり、魔族の王である魔王は人間との友好関係を築こうとしていた…
しかしこの世界の本当の悪は……平気で民を騙すような人間の貴族なのかもしれない
北歴アビス3789年…人間によって魔族はほとんど淘汰された…生き残った者は極わずか。
その数少ない者の1人…いや2人に魔王の娘達がいた。
姉は、天才的な頭脳で戦場を切り抜け、魔道具を作ったりして生活を何とかしていた。
妹は、次期魔王候補であり、能力面で言えばその魔王候補の名はふさわしいことが分かる…姉ほどでは無いがそこそこの頭脳は持ち合わせてるのでアホの子という訳では無い…ハズである。
これから語られる話は、天才魔王姉妹と彼女たちが作り上げた魔術人形が繰りなす魔族側の復興と希望の物語である─
─北アビス歴3789年
人類は大きな前進、魔族には大災害とも言える出来事…聖魔大戦が起こった。
魔族のみんなは何もしていない…何も悪いことはしていない…
だって人間である俺に優しくしてくれた…そんな人達が悪人なはずがない…
「いたぞ!!魔王の娘だ!…誘拐された子供もいるぞ!」
「あの子を助けなければ!!」
「魔族は人類の敵だ!…みんな殺してしまえ!!」
なんでみんな分かってくれないんだよ!!
「─私はあなたが生きていればそれでいいんです…だから!!」
「俺は嫌だ!!」
嫌なんだよ!大切な人を失うのは…もう嫌なんだよ!!!
「詠唱完了しました…打ち込みます!」
両親を失った俺を魔王様たちは…我が子のように育ててくれた!
…だからさ。
「何をしてるんだッ!ガキ!!?」
もう俺から何も奪わないでくれ…
「──!!──…お願─目を──て」
「俺は」
ごめんな…約束守れなくて
「そんな、嘘でしょ……?」
「あなたを」
生きてて良かったよ
「嫌よ!こんなの!?こんなのって…あっていいわけないでしょ!?」
「愛しています…だからお願いします…生きて……」
でもさ………
やっぱり俺も一緒に生きたかった
─なぁ神様…本当にいるんだったらさ…もう一度あの人に合わせてよ。
俺はあの人の傍に居たい。
それが身勝手な自己満足だとしても…俺はもう一度だけ…あの人を守り続けたい。
…あの人って誰だっけ?
それさえ思い出せない…自分の名前も…
忘れていくんだ…大切な思い出を。
「─できたわね!お姉様!」
「そうね…リリシア」
なんでだろう…とても…懐かしい…そんな気がした