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第12話―2

「は?」


 会長が不機嫌を隠しもしないような声色と表情になる。


「僕は裏切るわけないでしょ、みんなわかってるよね、みたいな前提を自分の中でつくってる感じが、自分たちからしたら鼻につくというかー? そういう態度が反感買うってこと、気づいてるんすかねー」


「は? 逆に言うけど、僕が白亜会を裏切ってなにになるっていうんだい? ナターシャには僕が自分で自分の首を絞める愚か者に見えているの?」

「いや、そういうこと言ってんじゃないっすけど。でもぶっちゃけ、白亜会にいる理由、会長が一番謎っすよねー」


 ナターシャ先輩が会長からそっぽを向いて両腕を広げた。ハリソン先輩がナターシャ先輩の言葉に頷く。


「……え、そう?」


「ハリソンはアホな理由で白亜会に所属してるってみんなわかってるし、一年坊たちもなんかやりたいことあんでしょー。自分は治癒魔法が使える稀有な存在ってんで、昨年度の会長からスカウトされただけ。会長と副会長が、自分ら後輩からしたら一番よくわかんないんすよー」


「ですってアンディ。白亜会に入った理由言っておいたら?」

「……は、はあ? なんで言わなくちゃなんないんだよ……」


「反感買ってるって言われて落ち込んでるわねえ、でもこのままじゃ疑われかねないんだから、否定材料くらい与えておかないとじゃない?」


「……から……」

 セシル先輩の言葉に会長は納得して、話し始めたみたいだけど、いまいちなんて言っているか聞こえない。


「会長、わんもあぷりーず」

「……人の役に立っていないと自分で自分の存在をゆるせなくなるからだよ……! 定期的に仕事や役割なんかが降ってこないと落ち着かないし、生徒会に入るのがちょうどよかったっていうか……!」


「いや、重」

 ハリソン先輩がげっそりとした声を零した。


「じゃあ所属は白亜会じゃなくたっていいわけだ。なんならかけ持ちくらいがちょうどいいかもっすねー」

「セシルどういうこと、さっきよりも疑いが深まってるんだけど……⁉」


「まあまあ、魔物退治のほうが保護よりも人間の役には立つじゃない、ねえ?」

「そう、そうだよセシルの言うとおり……ッ」


「というか会長ずっと副会長の操り人形みたいだけど」

 あたしの頭に顎を置きながらハリソン先輩が呟く。


「はあ~~っ⁉ 本当にお前たちは口が減らないな……! もういい好きに疑えよ、僕は紛うことなきシロなんだから、精々時間を無駄に使ってしまえ……! 僕は僕でひとりで調査する、お前たちの力は要らない……!」

「あ、会長、そういう言い方すると――」

 嫌な予感がして、会長の言葉を訂正させようとするけど。


「ハイハイ、朝から絶好のネタゲット~! 白亜会のみなさん、お疲れ様で~す!」

 寮の方向から、耳にペンをかけてノートを持っている男のひとが笑顔で近づいてくる。


 あれ、あのひとって。


「……は」


「……あー! きのうあたしにチラシくれたひと……!」

「あれ、キミって生徒会役員だったんだ。きのうは帽子とかつけてなかったよね?」


 男の人は軽い足取りでこちらにやってきた。気安い雰囲気をもって、あたしに目線を合わせるように少しだけ屈んで顔を近づけてくる。


「アンタ、だれだか知らねーけどアリスティアに近づかないでくれる?」

 ハリソン先輩が威嚇するようにしてあたしと男の人の間に割り込んできた。


「だれだか知らないって……、おれたちクラスメイトじゃん、ハリソン! ナターシャちゃんも!」

「そうだっけ」

「あーあー無駄っすよ、このひと全然顔と名前覚えないから」


 そういうナターシャ先輩はこのひとのことを知っているようだ。いつも気怠げで他人に興味なさそうだけど、ひとの情報はたくさん持ってるんだよね、ナターシャ先輩。


「えーそうなのー? まあいいや、キミにも挨拶したいし自己紹介するね! 改めまして、おれは二年のグレッグ。黒衣会のナンバーツーってとこ?」

 パチン、とグレッグ先輩がウィンクを飛ばす。白亜会にはいないタイプだ……、と思いながらきのうグレッグ先輩が言っていた言葉を思い出す。


「えっと……、じゃあグレッグ先輩はあたしが白亜会の人間だとは知らずにチラシをくれた……ってこと?」

「そーなるね! ただの聴衆に見せかけて宣伝をする、サクラをやってたってわけ。でもちょっと迂闊だったかなぁ。白亜会のひとたち対策早いな~とは思ってたけど、キミが情報を流したってことか」


「……君、『絶好のネタ』ってどういう意味だい」

「え、そのまんまの意味ですよ、白亜会の会長さん。こんな人の通るとこで喧嘩するなんて迂闊ですよねー。会長が本当は邪知暴虐だった、っていうのがただの噂じゃなくて真実になっちゃいますよ?」


 グレッグ先輩は顔に笑みを貼りつけながら、手に持っていたオルゴールのようなものをあたしたちの眼前にさらす。


「さっきの音声はこの魔道具で録音させてもらったんでぇ、会長は後輩に暴言を吐くし、仲違いして業務にまで影響出てるって、これで一気に証明されちゃいますね?」


 グレッグ先輩がくるくるとオルゴールのネジ巻きを回すと、音声が鮮明に流れ出す。会長の怒鳴っているような声が再び青空に響いて、あたしたちは顔を見合わせた。

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