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竜と兎の召喚士  作者: 九十九
北部魔法学園編
32/34

幕間 集う人、動く物語

僕の魔法に関する才は、つくづく商売に向いていると思う。体質で人に売るべき魔道具を見抜き、馬で物や人を運び、そしてもう一つの召喚魔法で…

魔法で商売が容易くなるなんて変な話だけれど、ある意味この世界に貢献できているので良しとしよう…それが少し黒い取引であったとしても、だ。

学生らしき子供からあんな商売を持ち掛けられるとは思ってもいなかったが、成立したのならばそれでいい。あの子があれをどう使おうが、僕は知らない。

さて、どうせ北部にまで来たのだ。滞在する為に宿を探して、妹弟子にでも会いに…

「…もしかして、ショウさん?」

相変わらず冷たいその声は、少々戸惑いながら僕にそう言葉を投げ掛けた。

「久しぶりだね、ヒサメさん。偶々すれ違えて嬉しいけど…よく僕が分かったね」

「いや…」

戸惑いがあった割には、そこまで驚いては無い様子。何故なのだろうと一瞬思ったが、彼女はこちらを指さした。

「そんなに大きな荷車を馬で引いている商人、一人しか心当たりが無いので…」

「そりゃそうだ」


「ところで君達、それ何持ってるの?」

「ああ、これは魔剣ですよ。小型の」

小型の剣…小刀みたいなものか。何度か考えたことはあるけれど、杖と魔剣では魔力の動かし方が違い過ぎて、結局実戦で運用してみようと思ったことがないな。

「…あれ、でも北部って武器製造に制限無かったっけ?」

「そうですね。なのでこれは実際はレンさんの物です」

しれっと発されたその言葉は、なんだか感慨深い物だった。そうか、あのレンさんももうそんな事が出来るほど大人になったのだな…

「ねえヒサメ、なんでこの人急に泣きそうになってるの?すごく大人でいい人なんじゃなかったっけ…?」

「さあ…まだ森に住んでいた頃はこんなに変な人じゃなかったんですけどね」

弟子とそのお友達さんから冷たい目を向けられている気がする。いやあ、人間歳を取ると涙脆くなるんだな。

「そのレンさんは今どこに?」

「何か用事があるみたいで、学園の方に帰りました。会いますか?」

「んー…ヒサメさんともレンさんとも色々積もるお話はあるんだけど、お友達のお邪魔にもなっちゃいそうだし、とりあえずは良いかな。機会ならいくらでもあるしね」

「分かりました。スピカの事も紹介したいですし、またいつか腰を据えてお話しましょう」

スピカ、と言うのは恐らく横にいるお友達の事だろう。いきなり現れた一回り歳上の男に対してしっかりと警戒心を働かせているらしく、こちらの様子を伺うだけでいる。聡い子だ。

「そうだね、またいつか。レンさんにもよろしく伝えておいて」

そう言葉を告げ、僕はその場を後にした。

…よろしく伝えておいて、とは言ったものの、僕がこの街にいることを知ったあの子は何かと僕を酷使する。僕の存在を知らせるようなことをするのは間違いだったのじゃないか、と少し引っかかったけれど、その引っかかりが間違いであることを願いたい。



「お疲れ様です、アウレリア先生」

休日の教員室、雰囲気も明るさも、いつもより少しだけ薄暗い。

アウレリア・アクア先生。私が去年、今のルナちゃん達を引き継いでから仲良くして貰っている、信頼している上司の一人だ。

「お疲れ様…ちなみにだけど、結界の調整はまだ出来てないから」

「…バレてましたか、まあ当日までに調整してもらえれば問題無いですよ」

どうやらここに来た理由はバレていたらしい。まあわざわざ休日に教員室にいるような人を、わざわざ休日に訪れるだなんて、バレない方が無理があるか。

「全く…結界の調整とやらは確かに出来てますし私もやりたかった事ですけど、こうも急に言われると流石に苦労すると言いますか…」

「恐らくですが、あの結界をもし物に出来ればとても使えるものになるかと…いや、非知者で年下の私が言うことではないかもしれませんが」

「変なとこで律儀ね。でも私もそう思う。それに私も見てみたいしね」

「…それはどちらの話ですか?」

含みを持たせた言い方をしたので、深堀りするために聞いてみる。

「言うまでも無いでしょう?両方よ。水の魔法を使った結界も…魔法使いの人狼も」

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