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竜と兎の召喚士  作者: 九十九
北部魔法学園編
28/34

番外 魔法の仕組み、世界の作り

設定的なアレです

この世界に来て、二度目の春だ。

春ということはつまり、レンさんがまた私達の元にやって来るということで…

「魔法の練習をしよう!」

「嫌です」

北部魔法学園に行くと決意はしたものの、未だに魔法の学習について抵抗のある私なのだ。

と言うか来るのが早すぎる。前はもう少し遅かった気がするのだけれど…早めに学園を出て一泊でもしてきたのだろうか。

「いつか学園に来るんでしょ?だったら覚えておいた方がいいよ」

「初級全て覚えれば、もう十分でじゃないですか?」

「…やっぱり才能あるね。でもまだまだ!私の魔法も覚えてもらわないと。これは流行るよ、絶対に」

魔法に流行とかそんなもの、あってたまるか。

それはさておき、レンさんの言う私の魔法とはつまり、攻撃魔法と防御魔法のことだ。

私と同じ魔力の不可視を代価に得た、人よりも長けた魔法創作力。それによって編み出した、ただ魔力を魔力として出すだけの魔法。

「…魔法って、少なくとも数百年前には存在していたんですよね?防御魔法が創られるまで、魔法使い達はどう防御してたんですか?」

「んー?地面の中級…岩石出したりとか、あとはまあそもそも回避するとか…召喚魔法盾にするとか?」

「一番最後の手段イカれてますね。では攻撃は?」

「それも同じ感じ。中級以上の魔法使ったり、攻撃向きの召喚魔法で攻撃したりとか?」

「もしかしてレンさん、魔法戦闘に革命起こしてませんか?」

昔の戦闘…見た目は派手だろうけれど、消耗の早そうな戦闘である。

そう言えば。魔力不可視による代価、と言う言葉から、私はふとあることを思い出した。

「レンさん、私達は魔力不可視のはずなのに、どうして攻撃魔法と防御魔法は見えるんでしょうか」

「あー…それね。超難しいから端的に言うけど、意思の問題」

…意思?意思と言うのは、自分の考えてる事なんかを指し示す単語で…どうして今それが関係してくるのだろうか。

「訳分かんない、って顔してるね…すっごく雑な例えを話すと、着火をする時は炎を出す想像してるじゃない?」

「はい。魔法は想像力が大事だ、とおじい様から教わりました」

召喚魔法や上級以上の人智を超えた物は特に大事、と何度も教わった記憶がある。

…そんな想像力を無視するこの角付き兎は一体何なのだろうか、とまた思うけれど、今は攻撃魔法の話だ。

「私も教えたはずなんだけどな…まあいいや。で、攻撃魔法を練る時に込めてるのは…攻撃をしたいって言う意思なの。防御魔法も同様」

「…意思と想像力は別では?」

「だから雑な例えって言ったの。実際には出す時に練ってるだけで、攻撃魔法の用途は攻撃しかない。だから見えちゃうって訳」

「要は魔法に意志を込める手段を作り出したんですね」

「そうだよ、だから私はすごいんだって。じゃあまず復習から始めよっか」

「一年前ですけどね、座学したの」

そこからは、ただのおさらいだった。

まずは攻撃魔法。ただ魔力を撃つだけ。

次に防御魔法。ただ魔力を壁の様に出すだけ。

以上。とても簡潔。

故に、この二つの解説は数秒もあれば終わってしまう。

「で、重要なのはここから。この二つの関係性についてだね」

「前回は途中までしか聞いてません」

この関係性、と言うのが非常に重要なのだ。

簡単にまとめると次の四つ。

一、防御魔法が防げる攻撃魔法は一発のみ

二、防御魔法は攻撃魔法以外の魔法なら複数回防ぐこともある

三、攻撃魔法はとても脆く、簡単に崩れる

四、攻撃魔法と攻撃魔法の衝突による崩壊の優劣は、複数の条件を参照して決定される

「…二と四、やっぱり曖昧ですよね。一年で研究に進展はあったんですか?」

「ちゃんと紙に書いておいてたんだ、偉いね。ちなみに進展はあったよ。しっかり授業で教える許可が降りるぐらいには」

「それは凄いですね。という事は研究終了ですか?」

「ありがとう。そうだね、とりあえず一区切りかな」

確か研究期間は三年ほど、と去年教えて貰った記憶がある。そしてほとんどが例の二と四に費やされたとも言っていたような。

ともあれようやく攻撃魔法と防御魔法が世に放たれると言う事になるのだろうが…この人、どうしてまだ教える許可の降りていなかった魔法を私に教えようとしていたのだろうか。

「それじゃあまずは防御魔法の防げる回数についてだね。簡単な例え話からしようか。そうだなあ…ヒサメちゃん、その紙を突き破ろうと思った時、どうする?」

「…身近にあるものだと、ペンで一突きですかね」

近くに立てられていたペンを握り、墨をふき取ってから紙に突き立てる。まだまだ書ける余白があるので、本気で突き破る気は無いけれど。

「いい答え。じゃあ次は…この壁。壁はペンで突き破れる?」

「無理です」

「その通り。じゃ、私が何言いたいか、分かる?」

すごく投げやりな問いだ。しかし、何となく理解は出来る。

彼女の言いたいことは恐らく…

「防御魔法に込める魔力量の違い、ですか」

「正解。流石だね。そこまで分かってるなら話飛ばそうか。次の例えは…」

レンさんは辺りを見渡し、何かを思い出したのか物置の方に向かって行った。

…やたらと物音がしているけれど、大丈夫だろうか。

そんな心配をよそに彼女は、色々な物を抱えて戻ってきた。

「散らかしたらおじい様に怒られますよ」

「大丈夫大丈夫。すぐ片付けるよ。」

部屋の隅に一度それらを置き、またごそごそと漁り始める。

そしてそこから取り出されたのは…

「ヒサメちゃん、これは見た事ある?」

「弓矢と…何でしたっけそれ。おじい様がずっと古代の遺物って言ってたやつです」

「確かパチンコとかいう名前だったかな。勘のいい君ならもう気付いてる?」

「…次は速度の話ですか」

「そう。いやあ、話しやすくて助かるよほんとに」

続いて机に置かれるのは、先程のペンと矢、そして大小二つの球体だった。

「さっきの手しかない状況だと、ペンは壁に刺さらない。そうだったね?」

「そうでしたね。頑張れば行けなくもなさそうですけど」

ペン程度の耐久性ならペンの方が先に壊れそうではあるけれど、出来なくもないだろう。

「やったら確実に怒られるけど…じゃあさ、この弓使って速度つけたら、どうなる?」

「簡単に刺さります」

「その通り。もちろん弓矢なら紙も破れるし壁にも簡単に突き刺さるんだけど、これ、魔法にも同じことが言えて、まず重要なのはもちろん魔力量。次に重要なのは速度…って言うことが、ここ一年で判明しました」

この人、やっぱりしっかり研究職の人なんだな、と再認識する。そう密かに尊敬している彼女は大小二つの玉を手で弄びながら、要らなくなっちゃったな、と呟いている。

「あ、ちなみに攻撃魔法同士の衝突における消失も同じことが言えます。もっとも、こっちはあんまり発生しないのと、防御魔法と他の魔法の時とは違って両方速度出てて色々とめんどくさかったりするから…一旦考えなくてもいいかな」

「ちゃんと研究者ですね…」

「でしょう?私凄いんだからねえ」

得意げに胸を張るレンさん。例えも分かりやすく、一年かかった研究内容をものの数分で理解出来てしまった。

この人を師として慕うのも、悪くは無いことなのかな。そう思った。



夏の長期休暇のある日の話。

夏、と言っても北部に位置して比較的涼しい気候のこの場所は、夏でも外出が苦じゃないほどの快適さだ。

「何気に女の子だけで揃うのって、初めてですよね…!」

「そうだね。いつか集まるだろうとは思ってたけど、まさかここまで遅くなるとは…」

「色々あったもんね、春学期」

学園街の一角の、とある喫茶店。私に似合うかどうかはさておいて、いわゆる女子会というものだ。

「こうして予定合わせて集まれたのは良いんですけど…こう言うのって何話すんですか?」

「ヒサメと同意見かも。何話せばいいのか分からない」

私とガブリエルの堅物二人、言ってしまえば何故ここにいるのか分からない、女子とは程遠い私達がそんな疑問を呈する。

「何って…身の上話?」

「スピカちゃん、それちょっと重いかも…」

「身の上話みたいなの、良いんじゃない?生い立ちとか、そう言う話」

「じゃあ…ヒサメ、やる?」

「どうして私が一番手なんですか…まあいいです、話すことは多分一番少なそうですし」

そうして私が話すのは、生まれ育った森での話と、学園までの旅の話…所々人に話せなさそうなことはしっかりと除いて。

「おじいさん、凄いいい人だね!」

「そうだよね、私もいつか会いに行きたいなあ」

「妹ちゃんも気になるな」

「クラゲは妹じゃないですけど…」

姉と呼び慕ってくれる私の後輩。私の贈り物は喜んでもらえただろうか。そもそも元気にしているのだろうか。

「じゃあ次は私か。と言っても田舎でずっと暮らしてたから…そんなに面白い話ないけど」

「そんなことないよ!学園外の外のお話、すごく気になる!」

「私は逆に、スピカの実家よりも田舎だったから気になるな」

「…そう?じゃあ頑張って話そうかな」

とても分かりやすい、それでいていい子だ。

スピカの生い立ちは、結果から言ってしまえば少しだけ重かった。田舎の貴族の娘として産まれ、魔法の才能が分かってからはとても大切に育てられたものの、入学決定から入学までの一年はほぼ放置だったらしい。

要約するとかなり残酷な話だけれど、入学決定までは本当に大切に育てられたとのこと。余暇も勉学も楽しんだ彼女は、私たちの中で唯一、中央学園とその付近の都市に行ったことがあるのだとか。

そんな話を聞いて、私はふとあることを疑問に思った。

「ここも学園もスピカの故郷も、私の故郷もそうだったんですが、この世界の街に統治者は居ないんですか?」

「統治者…っていうのは王とかそう言う話?」

「そうです」

「王様とか久々に単語聞いたかも」

こういった齟齬はもう慣れた。これがある時はだいたい神降ろしで何かあったか、私だけが持つ何かしらの知識があるかのどちらかだ。

「これは神降ろしの前と後で違うんだけど」

ガブリエルの授業の時間だ。

「神降ろしの前は王だとか市長だとか、そんなものは当たり前のように存在してたんだけどね。神様達は統治者という存在の発生すら警戒したのか、神降ろし以降は統治者のある街は統治者が死ぬか、街そのものが破滅するかして来たんだよ。そういう記録が山程ある」

「それって噂話じゃ無かったんだ」

「そうだよ。だからスピカの家も村長とかじゃなくて、名目上はただの貴族って名乗ってるんじゃない?」

「…確かに。あの人たちが主催して村で何かやるとかは無かったかも」

思い返してみれば、スピカの門出を祝うお祭りも村総出、そして彼女の両親は不在の様子だった。ついでに言えば当の本人も御屋敷の中。

この学園都市も北部魔法学園も統治者は居ないし、振り返ってみると色々と辻褄の合うことが多い。

「休みの日なのに授業してる気分…」

「私は結構勉強になりましたけど」

「お堅い話は無しにして、次は私が話そうか」

先程も授業をして結構喋ったはずのガブリエルがそう言った。

思えばガブリエルについては誰も彼女の全てを知らないのだ。生まれも育ちも、誰一人として共にしていない。

「私はここから西にある森に住んでて、たまに学園街までやってきて、しつこく勧誘されて、入学した」

「…終わり?」

しばらくの沈黙の後、アロゼが不思議そうにそう尋ねる。

無理もないだろう。だって私達より一回り年上のはずなのに、あまりにも話が薄すぎる。余生を楽しむ老婆のような生活、と言うのが初見の感想だ。

「終わり」

「木こりみたいな生活してない?」

「お婆さんみたい」

「確かに木は売ってたけど、そこまで言われるかあ」

「ほんとに売ってたんですね」

現役学生の数年前までの生活を語ったものとは思えない。もしかすると、案外この世界ではそれが普通なのかもしれないけれど。

「傷付くななんか…もう私はいいから、アロゼ、次どうぞ」

「えっ、私?私は学園街で生まれ育ったからそんなに面白い話無いけど…」

と言いながらも渋々語り出したアロゼのお話はそこそこに面白い物だった。それを要約するにはまず山脈について話さなければならないだろう。

学園の後ろに佇むその山は、実は学園だけが所有している訳では無いらしい。

と言うのも、そこで採れる回復結晶を含む希少な自然物を採集する魔法使いの企業?もある程度は土地を有しており、アロゼとシオンの父親はそこに所属しているとの事。

それ故に二人は家族ぐるみの付き合いがあり、幼馴染として仲良くやっているとの事。

二人の意外な馴れ初め…じゃなかった。関係性が明らかになったが、正直私はその企業の方が気になってしまう。

「お父様方、言い方は悪くなりますけど、よくあんな危険な場所に行こうと思いましたね」

「大丈夫だよ、私もそう思う。けど、魔法で回復が出来ない以上、回復結晶ってとっても貴重で、それを流通させたいんだー、ってお父さん言ってた。そんなお父さんの役に立ちたくて…魔法で回復する研究がしたいんだ、私」

とても良い信念をお持ちのお父様だ、と私は思う。周りにスピカやガブリエルと言った回復ができる召喚魔法を持つ人が居るから感覚が鈍ってしまっているけれど、本来この世界では回復はとても難しい事なのだ。

「一から十までいい話。私超感動した」

「アロゼ、いい子…!そんな君なら、シオン君とも結ばれるよ!」

「えっ、違、私今、そんな話してない!」

顔を真っ赤にさせながら否定するアロゼ。分かりやすいな…

そんなこんなで盛り上がる女子会は、まだまだ終わることがなさそうだ。



「…む」

「こんにちは、先輩」

食材の買い出しの帰り道、また路地裏で猫と戯れるエルーナ先輩を偶然見かけた。飽きないな、この人。

「…それも、カトロ先輩の子ですか?」

「違う、野良。カトロは長期休暇の中頃から消息不明になる。急に居なくなるから、どこにいるのかも聞けないし」

「あの人、召喚魔法の動物のごとく自由奔放ですね…」

「まあ外育ちだし、仕方ないんじゃない?」

この世界における連絡という物は、実は容易に行えるものでは無い。街の中だけなら配達員なんかに手紙を渡せばいいのだけれど、街と街の間ともなるとそれはそれは難しくなるのだ。

行商人に預けると時間がかかるし、かと言って遠距離専門の配達員が多い訳では無いし、料金がとても高く、好んで利用する人は多くない。ちなみにレンさんは地味に高給取りかつ研究者なので、惜しげも無く使うらしい。

「…急で悪いんだけど、今日時間作れる?」

「構いませんけど、食材を持って帰る時間だけくれませんか?」

「もちろん。今急に思い付いた事だし、ヒサメの自由にして」

思い付きで時間をくれ、と言われるのか…この人もなかなか自由奔放だ。

急いで食材をスピカに預け、再び同じ場所に戻って来ると、まだ猫と戯れているエルーナ先輩がそこには居た。

「…それで、どこに行くんでしょうか」

「そんな目で見るな後輩…いや、少し私の家に連れ込もうかなと」

「何でそんなこといきなり…」

実に不穏な言い回しだ。連れて行く、とか一緒に来てくれないか、とかならまだしも、その誘いに乗る人なんて…

「色んな魔法の資料、読める」

「…その釣りが成功するのは一回だけですよ」

と言った流れを経て、私は豪邸に足を踏み入れる。

お互い歯に衣着せぬ物言いが出来るのは、ガブリエルも双子もそうだけれど、私にとってはとても気が楽だ。

気が楽、なはずなのだけれど。

「アリスもよく来る。そんなに怖がることは無い」

流石の私もこれ程までの家は見た事がなくて緊張すると言うか…と言った感じで、気が落ち着かず辺りを見渡してしまう。豪邸と言えばスピカの家、というのが私の認識だったのだけれど、それを優に超えてきた。都会の金持ちはやはり少し違う。

そんな外見と同じく中も目を引くものばかりだった。アリス先輩が好んで蒐集していそうな魔道具から始まり、多くの本、果ては杖まで、何をどれだけ見たか、もう覚えていない。

そんな中でも一際目を引くのは、壁に飾られていた少し汚れた大きな紙。

「これは…地図、ですか」

「そう。この世界の地図」

壁に貼られた大きなそれは、綺麗な額縁に納められていた。

「私の行ったことのない南の方まで丁寧に…ご実家はもしかしてこれで金銭を?」

「いきなり薄汚い話になったね。まあ間違っては無い。製作者から買い取った地図の…地図のこう言うのってなんて言うんだ、原版?でいいのか。それはこう飾って、模写したものを売って…って感じ」

「どちらにせよ凄いですけど…」

ともあれこの豪邸はこういうものの積み重ねで出来ているのだろう。

南の方、つまり南部魔法学園や海のある方は、以前見た事のあるものよりも細かく道なんかが描かれている。

「うちは商業と工業、あとは何か、採掘の経営もやってたか。私は跡を継がないから、細かいことは知らないけど」

見慣れた石も飾られている事を考えると、もしかすると…というか恐らく、アロゼ達のお父様方が務めている所だろう。世の中は案外狭いとは本当なのだなと実感する。

「魔鉱、気になる?」

「…まあ少しは。最近よく見るので、ちょっとは知っておきたいかな、と」

「なんで青春を生きる少女が石をよく見てるのかは知らないけど、まあ知っておいた方がいい知識ではある」

そう言って手招きをするエルーナ先輩。しかしその先は陳列棚では無く、また別の部屋。

本当に、この貴族は恐ろしい。


魔鉱と呼ばれる特殊な石。

この世界のそこら中で見られる鮮やかなそれは、確認されているだけでも数十種類。

そんな中でも、世界の端、つまるところ学園の背にあるあの山でしか取れない魔鉱が数種類あるらしい。

「これ、緑色のが回復結晶。なんだっけな、粉末状にして加熱して水に溶かすんだったっけ」

「ただ割ったりするだけじゃないんですね」

私の中では一番印象に残っている回復結晶。実は加工に手間がかかる代物だったらしい。

採集だけでは済まさず、加工においても一癖あるとは。神様は、人々に回復手段をあまり与えたくなかったりするのだろうか。

「割ったりするだけなら、君達全員回復経験済でしょ…と、ごめん。あの時は色々大変だったって、聞いてる」

「構いませんよ。私は戦っただけで、その場にいた訳ではありませんから」

印象に残っているその理由、それは洞窟での一件で、これが目標として設定されていたからだ。

その話は既にエルーナ先輩とアリス先輩には共有済みであり、この二人は他の人よりも先んじて、洞窟がしばらく立ち入り禁止という事を知っている。

「ところで、どうしてあの山にしか回復結晶が無いんでしょうか」

「さあね、私は興味無いから分かんない。あの山は上からも下からも、どう足掻いても向こう側に行かせてくれないつまらない山だもん」

踏破者は誰も居ない、結界が乱れる、向こう側の景色が見えない、そんな逸話ばかりあるあの山脈。

それについて、ふと知りたくなった。

「行かせてくれない、と言うのはどういう事でしょうか」

「…あそこの周り、大結界が乱れるって言うのは知ってる?」

「はい。おじい様からもレンさんからも、教わりました」

「正確に言えば、大結界だけじゃなくて私たちの魔力も乱されるんだよ。もっとも、魔力が乱れる地点は結界の乱れよりもかなり奥。だいぶ進まないと実感できないんだけど」

その口ぶりから察するに、この人は魔力の乱れを経験済みなのだろう。

魔力という存在そのものへの関与、魔法という概念の麻痺を起こす…これもまた、神様の力とやらが関係していそうだ。

山脈のその先に、まだ世界があると思いますか。

そんな単純な質問は、人にぶつけるべきでは無い。何故だかそんな気がした。

「だから浮遊も使えなければ着火も出来ない。色んな人が山を超えた先は何も無いとか、ただの平面が広がってるだけだとか色々言うけど、そもそも誰かが上まで登った記録が無い。この家にすらね」

「神のみぞ知る、なのでしょうか」

「そう考えるのが自然…と言うか楽。ヒサメも大結界もあの山も、この世界って存外まだまだ謎だらけだよ」

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