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竜と兎の召喚士  作者: 九十九
北部魔法学園編
15/34

実戦訓練

キャラの絵を描いて見たら思った以上にさらに愛着が湧きました

しばらく高頻度で更新することを目標にします

魔力切れによる不調も完全に無くなり、授業にも出ることが出来るようになった。防御魔法の授業は、やっぱり行かないけれど。

しかし、現実とはそう上手くは行かないもので。

「ヒサメちゃん!今日こそ逃がさないからね!防御魔法みんなに教えるの手伝って!」

「手伝うも何も、既に教えたじゃないですか。それに今私、広範囲に半球状に展開出来るように研究中なんで…」

「だからなんで私に言わずに新しい事に手付けちゃうかなこの天才は…」

「天才じゃないです。それに、私があの授業に行くとレイラに睨まれるんですよ、すごく」

双子兄とは、あの洞窟でやり合って以来会っていない。

魔剣を半ば強奪して、彼の技術を見様見真似で再現して倒したのだ。どんな小言を言われるか、想像もつかない。

端的に言ってしまえば、めちゃくちゃめんどくさいので行きたくない。

「それは試験以前の話でしょ…ってことは試験終わってから一回も来てないね、君。いや試験前も全然来てなかったけど」

「…何か変わったんですか?彼」

「相変わらず辛辣だねえ…まあ、ちょっと防御魔法に前向きになってくれたかな」

動いていない状態でしか使えないから、という理由でずっと見せなかった上に緊急事態もあったので、彼の防御魔法はついに見ることがなかった。けれど、今頑張っているのなら…まあ、いつか見てあげないこともないか。

「みんな、洞窟での一件から意識が変わってる。ヒサメちゃんが頑張ってない、って言いたい訳じゃないんだけど…君ももっと、歩み寄ってみない?」

歩み寄れ、と言われても…ガブリエルとの一件と言い、そもそもこの学園に来たことと言い、私としてはかなり頑張っている方だ。

しかしレンさんの言葉を無碍にする訳にもいかないし…どうしようか。

「歩み寄る、と言っても、私は何をすればいいんですか」

そんな言葉を受けて、レンさんは悩み始める。なんで提案した側が考えてないんだ…ともあれ私が歩み寄っていないのもまた事実。何か出来ることは無いだろうか、と少し考える。

彼女はしばし唸り、しばらくした後閃いたと言わんばかりの顔をした。

「授業、してみる?それこそ実戦形式の。ヒサメちゃんなら出来るでしょ?」

「えぇ…」


十日ほど前のそんなやり取りを思い出しながら、学園内の広場へと向かう。

何かの冗談だと思い、調子に乗って防御魔法の授業を休み続けた。その結果、まさか本当に授業をする羽目になるとは思ってもいなかったのだ。

あまつさえ私が授業をやる事なんて予想出来ていなかったのに、本当に実戦形式と来た。やれ、やりたくない事は想定外にすぐ訪れてしまうものだな。

相手を倒すことは無いと思うが、そうなると魔力切れまで粘ると言った卑怯な戦法しか思いつかない。

「…と言うことで納得はいってませんが、よろしくお願いします」

「来なかった君が悪いね」

「お前が悪い」

どうやら私は少数派の様子。実際そう、彼ら彼女らは何も間違ってない、ぐうの音も出ない。

負け惜しみの文句も程々に、諦めて私はレンさん達の問答を見守る。

「でも先生、今からどういう事するんですか?」

そんな問いを投げかけたのはアロゼ。試験では私と班が違ったから、おそらく私の魔法については知られていない。

「ヒサメちゃんの防御を破れたら百点をあげます」

「出来る訳無いだろ」

「無理でしょ」

「先生冗談きついよ」

アロゼとは違って、私の防御魔法を知る三人、レイラ、スピカ、ガブリエルからレンさんは猛批判を受ける。もう一人既知であるカロンは、私から目をそらす。おい、なんでこっちを見ないんだ。

「私スピカにはもしかしたら負けるかもって思ってるけど」

「いや絶対無理だよ?一生勝てる気しないって」

…私、結構スピカに追い詰められた経験があるはずなんだけれど。いつになったらこの子は、自分の潜在能力に気づいてくれるのだろうか…そう考えていると、一人手が挙げる。

「俺、やってもいいか?」

「…弟の方は普通に杖なんですね」

「レイラが言ってた腹立つ呼び方ってこれかあ。そこそこ頭に来るかも」

通称双子弟。名前は確かサバトとかだった気がする。その名前から察するに呼び出すのは魔女かコウモリか…魔法使いが魔女を呼び出す図は逆に見てみたくはある。

カロンから聞いた情報によると、兄同様指折りの攻撃魔法使いらしいけれど…本当に大丈夫だろうか。

「サバト君…ならまあ、ギリ大丈夫か。ヒサメちゃん、頑張ってね」

「どういう意味の応援か知りませんが、レンさんから許可も出たのでやりましょうか。好きなタイミングでどうぞ」

あの洞窟なんかよりゆうに超えた広さを持つこの場所は、両端に一人ずつ立てば、攻撃魔法がすぐには飛んでこない程の距離がある。野次馬がやってこないか心配だけれど…その時はその時だ。

戦う空間は白線で囲まれている範囲内。私もサバトも、その端に向かう。急な戦闘も焦るけれど、こんな風に戦闘が確定している状況もあまり気分のいいものでは無いな。

目の前の敵と全く関係のないそんなことを考えていると、早速攻撃魔法が飛んでくる。一見慣れていない様な、ただ真っ直ぐ飛ぶだけの捻りのないもの。

ただこの双子は、性格が悪い。

急激に速度を上げて私を通過した攻撃魔法は、私の背後で急旋回し、炸裂する。なるほど、スピカと同じような感じか。

今回は防げたけれど、もう少し速度が速ければ、もうあと何度か曲がっていれば、防げなかったかもしれない。

「…普通背後に防御魔法貼れるかよ」

「非知者は普通じゃないんじゃなかったんですか?」

「こいつほんとに頭来るな!」

激昂と同時に多くの攻撃魔法が出された。兄同様、煽りに対する耐性はそこまでないらしい。ならどうして人を見下すのか…

羽虫のようにふらふらと、しかし素早く飛んでくる大量の魔法を見切るのは、流石に難しい。

これは授業。彼らはもちろん、私だって学ぶ機会は与えられてるはず。

ならば、魔法の試用ぐらいは許されるだろう。

「範囲防御」

広域防御との区別をつけるために詠唱を設定したけれど、どうやら上手くいったらしい。

何発も当たっている感覚なのか、ずっと衝撃が伝わってくる。一体何発撃ったんだろうか、彼は。

だいぶ砂埃がたってしまったので、微風でそれを払う。

少しむせるが、そこまで問題は無いだろう。

「どうやって全部防ぎ切ったんだ…?」

「防御魔法しかないでしょう。召喚魔法でも使ってみてはどうですか?」

「出さないだろ。いつ本気でやり合うか分かんねえのに易々と出すもんじゃない」

成程、頭は普通に切れるらしい。なら彼の召喚魔法はしばらく分からないか。

「そう言えば、私この授業に駆り出された時に言われたんですよね」

「駆り出されたって…一体何を?」

この二人、兄弟揃って攻撃魔法の造詣がかなり深い。この短期間でよく学んだものだと、そう思う。

ただし…私の知りうる限り、どちらも良質な魔法使いは存在しないのだ。

どちらも、とはなんの事か?決まっている。

「…防御魔法教えるのを手伝って欲しい、とレンさんに」

歪む顔、とても小さな破裂音…舌打ちしたなこいつ。

初めて怒りを顕にしたサバトは一体何を見てそうなったのか…恐らく、私の背後にある数多くの攻撃魔法だろう。と言っても、スピカには勝てないけれど。

「私は貴方程攻撃魔法の操作を上手く出来ませんが…質量なら、確実に上です」

レンさんは攻守共に並に、レイラは攻撃特化で私は防御特化。そういった具合に、どちらも頭一つ抜けてつよい人は、私は見た事がない。

「防いでくださいね、しっかりと」

「…来い!」

いつかの光景を思い出す。洞窟の時と違うのは、相手が受け切る気力に満ち溢れていた事だろうか。

出ては飛んでいく攻撃魔法を眺めながら、考える…これでは洞窟での出来事以前と、なんらやってる事に変わりはないじゃないか。ふとそんなことを思い出したので、攻撃を維持しつつ横に移動する。これなら私自身の練習にも良いし、彼の練習にも効果的だろう。

そんな攻撃を短時間続けた後、彼の安否を確認する。

分かってはいたが、流石に無事か。

「…よく受け切りましたね。もっとも、効率があんまり良くなかったみたいですが」

「だからその方法を教えろって…!まあいいか、俺の勝ちだからな」

一体何を言っているのだろうか?山勘に頼り切るのは嫌だけれど、今はやらざるを得ない。頭上に普通の防御魔法展開するのとほぼ同時、そのほんの少し遅くに弱めの衝撃を受ける。

さっきの猛攻の際にあえて数発外して、私の頭上に攻撃魔法を貯めていたのか。

…私はつくづく、敵と発想が被りがちだな。

「普通の防御魔法で受けられるのが一番腹立つな」

「そうでしょうか。それはすみませんでした。あと…」

防ぎ切ったとは言え、流石にやられっぱなしは癪に障る。少し灸を据えよう。

「勝てる時は勝てるってわざわざ口に出さずに、すぐ攻撃しましょう」

双子弟から少しずらした位置に、以前のメテオラビットほどの魔力量を込めた攻撃魔法を落とす。

多少地響きがしたのでやりすぎたかとも思ったけれど、これぐらいしないとあの双子は反省しなさそうだ。

とは言え、私も魔力探知を出していれば、最後の一発に気付けただろうし、舐めていたのはお互い様だ。

どうにもこの双子を相手にすると躍起になってしまう。知者への差別感情は無いけれど、この二人だけはしっかりと分からせ無ければいけないと、心のどこかで思ってしまっている。私も考えが浅ましいな。

「お疲れ様。流石に勝てちゃうか、ヒサメちゃんなら。サバト君も良かったよ、やっぱり攻撃魔法の使い方が悪質だね」

「それ、褒めてますか先生」

「褒めてる褒めてる。スピカちゃんよりタチ悪いから、もっと伸ばそう。騙し討ちは強い戦法だよ」

「しれっと私も貶してませんか?」

「この人褒めるのヘタクソなので、諦めて慣れて下さい」

事実、私も何かを褒められる時は、必ず浮遊を引き合いに出される。初めて使った時からほとんど成長していない私も私だけれど、この人は本当に人を褒めることに関しては才能が皆無だ。魔力が見えないことじゃなくて、それが対価になっているんじゃないかと思うほどに。

「ヘタクソとは失礼な…で、次誰行く?」

「誰も行きたがらないと思う」

「俺が行く」

間髪入れずにそう答え、、周囲を気にせず進んでくるのは、レイラ・アールバント。

思い返してみれば、洞窟内でも戦闘と言える戦闘はしていない。本人からすればリベンジなのか、不完全燃焼の再燃なのか分からないけれど、私としてももう一度やりたかったので、別にやってもいい。

「良いか、先生」

「あーうん、君なら全然いいよ」

「じゃあ早速」

そんな言葉を言い終わる前に、レイラは急激に距離を詰めてくる。洞窟の中で見た手法と同じだ。

防御魔法も張らずに突っ込んでくるので、迂闊に攻撃ができない。怪我をさせてしまいそうだ。

「相変わらず無茶苦茶ですね。私は魔物じゃ無いんですけど」

「俺らからしたら魔物と変わんねえよ…!」

遠慮なく思い切り振られる魔剣。普通の攻撃魔法に比べて魔剣そのものの質量も加わっているので、やはりそこそこ重い。

一度防がれたはずなのに、またしても懲りず魔剣を振るおうとする。本当に、荒々しい詰め方だ。

と、思ったのも束の間、攻撃の向きが、私ではなく地面に向かった。

「奔流」

その詠唱、水の中級魔法の詠唱が唱えられた途端、魔剣の色が鮮やかな青色に変わる。と言うよりこれは…水を纏っている?なるほど、攻撃魔法が纏えるなら他のものも出来ない訳が無いか。

それが深く地面に刺さると、足元が不意にぐらつく。

「面白いこと、出来るじゃないですか」

まだ水が入ったばかり、しかも中級魔法なのでそこそこの量があり、泥と言うよりは水に近い状態。抜け出そうと思えばすぐに抜け出せる。

「浮遊」

いつもの様に杖を飛ばす。急上昇は、大得意だ。

気がかりなことがあるとすれば、足元がドロドロしていて不快なことだろうか。

思い切り振りかぶったのに手応えがなかったからか、レイラは辺りを見回してからすぐにこちらに気付く。

彼なら、飛ぼうと思えばすぐにこちらに飛んでくる。浮遊魔法の扱いは、余裕で負けているのだ。

案の定同じく急上昇し飛んできた彼の攻撃を自由落下のついでに躱し、着地する。

なんだか攻撃されてばかりで少し癪に障るな。

「レンさん、これどこまで反撃していいですか」

「ウサギ禁止。あと魔力量は自制してね」

「分かりました」

観客のガブリエル達の方から、ウサギってあの時の、と言った会話が聞こえてくる。

そう言えば、見せたのはあの時の一度きりだったっけ。ガブリエルにすら詳細を話していなかった気がする。

「これでようやく、あの時と同じか」

「そうですか。ならあなたの防御魔法を見ることはないですかね」

「…お前本当に…!」

攻撃魔法の質は気にしなくていい。ただ物量で押し切ればいい。もし防御魔法の上達具合が私の想定以上だったなら、その時はその時だ。

大量に出しておいた攻撃魔法を着実に数発ずつ、レイラにぶつけながら、じわじわと前に進む。

真っ直ぐに飛んでいて、質もかなり荒い。動きながら精度の高い攻撃魔法を出すことが、私にはまだ出来ない。

しかし拘束は確実に出来ているようで、魔力探知を使っても、レイラが動いている様子は無い。

このまま魔力切れまで粘れば…

と思ったその時、砂埃を切って中からレイラが飛び出す。文字通り真っ二つに切られたそれは左右に綺麗に分断され、そちらに目がいってレイラへの対処が遅れる。

これは、かなりまずい。

防御魔法をしようにも間に合わないと判断。手元に残っていた五割ほどの魔力ほぼ全てを回して、身に纏っている防御魔法で受けるしかないか。

そう思ったのは正解だったようで、相当な強さの衝撃を腕全体に受ける。こいつ、容赦してないな。

「魔力、そんなに残ってないでしょう?」

「残念ながらそうでも無いな」

「あれだけの攻撃魔法を受けておいて?」

「全部捌けたよ。お陰様でな」

全部捌けた?そんなはずがない。あの量を捌いて魔力量も残っているとなると…

まさか。

「球体型じゃなくて、一発ずつ、局所的な防御をした…?」

「ご名答!」

砂埃でほぼ見えなかったはずだ。そうなると、魔力を認識する力、ひいては空間把握能力がかなり高いという事になる。

思い返してみれば、魔物との戦闘でも正面からの攻撃はしっかりと避けていた。

才能の原石は、スピカ以外にも居たのだ。

そんな事を悠長に考えている暇もなく、また魔剣からの力が強くなる。じわじわと自分の防御魔法が中和されていく感じは、とても不愉快だ。

お互いの残りの魔力量は私には分からない。けど恐らく…少し不利だ。

このままだと、もしかすると、負ける…?

「魔力切れの気絶はもう味わいたくないだろ!?早く投降しろ!」

「降参しても止めないでしょう?なら魔力切れを待ちます」

余裕ぶって答えているけれど、実際の所結構きつい。と言うのも、やはり性別の違いから来る力量差は防御魔法ではどうにもならないもので、そろそろ腕が限界だ。

そんな事を、魔剣と私の腕の隙間を見ながら考える。

…虚空が、あるのか。だったら、もしかすると。

「…は?」

私と魔剣の間に隙間があるなら、その隙間の原因たる防御魔法を一瞬で解除し、攻撃をいなせば、その場しのぎにはなる。

呆けた顔をしてよろけ、レイラは前に倒れ込む。

後は少し痛めつけて…

「痛え、が…お前馬鹿だな?」

「…何がですか」

「ヒサメちゃん、勝負に勝って試合に負けたねえ」

勝負に勝って試合に負けた…?一体何を。

その発言の意図をじっくりと考えて、ついに私は自分の失態に気付いた。

「…あ」

完全に忘れていたけれど、防御魔法を破られれば負け、なのだ。そこに私の意思があろうとなかろうと。

レイラが意図した展開ではなかったようだけれど、防御魔法が無くなった以上私の負けだ。完全にしてやられた…というかただの自滅か。

「まあ正直、レイラくんに味方が居ればレイラくんの勝ちだし、居なければヒサメちゃんがとどめ刺して勝ちだし…こればっかりは結果論だけど、しっかり破ったレイラくんの勝ちだね。勝てると思ってなかったからやっていいよって言ったんだけど…意外だね」

「非知者って煽らないと死ぬ病気にでも罹ってるのか?」

「私とレンさんだけですね」

「分かってるならやめないか?」

漫才をしていると、流石にやりすぎたのか、野次馬が群がり始める。面倒なことになる前にさっさと撤退したい。

「レンさん、私そろそろ…」

「あー魔力危ない?じゃあキリもいいし終わろうか。他のみんなはまた今度」


「さて、どうでしたか」

「双子の殺意が高いので、二度とやりたくありません」

当たり前のように授業終わりに私の部屋にやってくる担任は、今日も満足気にお茶を飲んでいる。

「でもヒサメ、やっぱりすごいよ。あの双子相手に攻撃魔法で圧倒するんだもん」

早く教員の部屋に帰って欲しいという願いを打ち砕くかのように、お茶菓子を持ってくるスピカ。

…まあたまには、こういうのも悪くないかな。

「圧倒はしてないはずです。結局私のやることって時間稼ぎと質量で攻めることだけなので。それに…」

「それに?」

「多分私は、兄の方にいずれ負けます。弟もその可能性はありますし、スピカにも、そのうち」

私の出来ることといえばただの防御と、ちょっと特殊な攻撃。さっきも言ったとおり、物量で押して、変な攻撃は全て凌いでで時間稼ぎをしているだけだ。

いつかレイラの反応速度が私の防御を上回れば、いつかスピカの効率と詰め方が私の無茶苦茶な防御を破れば…そんな日は、おそらくそう遠くはない。

「珍しく卑屈じゃない?ヒサメちゃん。何かあった?」

珍しく卑屈、と言うけれど私としては常日頃思っている事だ。特にスピカは、まだまだ伸びしろがある。

「目の当たりにしたんです、才能を。私みたいに、何かを引き換えに得た能力なんかじゃない。その人だけの強みを」

元より備えているただの強み。それは私の弱みと共に備わった強みとは全く違うもので、今日その差を目の当たりにした。

そもそもこの世界にいる歴が違うのだ。私はまだ三年ほど、知者は生まれてから今まで。

「君には君の強みがあるじゃない。特に想像力?防御魔法の開発者としては腹立たしい限りですよ」

「そもそも私は魔法作れませんし。それに、魔力探知の応用は出来そうにないですよ」

防御魔法は既にやっている通り。攻撃魔法も思い付いてはいるが、熟練度故に試すことがまだ出来ない事が幾つかある。しかし魔力探知はどうだろうか。ただ魔力を探るだけ…上手い事応用出来そうには思えない。

「でも私は君の…なんだっけ、広域防御とか使えないもの」

「…やめませんか、この褒め合い」

「それは本当にそう、本当に恥ずかしい」

「見てる分には楽しかったけどねえ」

徐々に赤くなるレンさん、くすくすと笑うスピカ。

そんな二人を見ていると、私の悩みなんてどうでも良くなりそうな気がする。

ただし、そんな悩みにだって向き合わなければいけないのも事実だ。

具体的には攻撃魔法と浮遊魔法。この二つはレンさんの言う通り、改善しなければならない。

…けれど今は、この三人での時間を楽しもう。

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