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きょうはごちそう

作者: 神村 律子

 わたしのおうちは、びんぼうです。


 なので、ごはんはあさとよるだけです。


 おひるごはんは、こうえんでみずをのんでがまんします。


 ときどき、おなかがぐうってなってはずかしいです。


 それで、きょうはおとうさんがいつもよりはやくかえってきました。


「今日はご馳走だぞ」


 おとうさんがわらっていいました。わたしたちもわらいました。


「今日はお肉のお料理よ」


 おかあさんも、うれしそうにいいました。


「わーい」


 わたしといもうとは、よろこんではしりまわりました。


 でも、おなかがへっているので、すぐにはしるのをやめました。


 おかあさんはたくさんごちそうをつくってくれました。


 わたしといもうとは、どんどんたべました。


 おなかがたぬきさんみたいにふくれて、ふたりでわらいました。


 おとうさんとおかあさんもわらっています。


 わたしはなんだかねむくなって、いもうととおへやでねました。


 


 うーん。くるしいよ。


 わたしはくるしくて、めをさましました。


 おとうさんが、わたしのくびをしめていました。


 おとうさんはないていました。


「おとうさん、くるしいよ。やめてよ。わたしがいいこでないから、おこってるの?」


「違う、違うんだ」


 おとうさんはまだないています。わたしもなきました。


「ごめんなさい、ごめんなさい。いいこになるから、おこらないで、おとうさん」


 わたしはなんかいもいいました。それでおとうさんはわたしのくびをしめるのをやめました。


「ごめんよ、ごめんよ」


 おとうさんはわたしをだきしめました。


「くるしいよ、おとうさん」


 おとうさんはまだないていました。


 おかあさんもないています。いもうとはまだねています。


「ごめんな、ごめんな。お父さんとお母さんが悪かった。ごめんな」


「ごめんね、ごめんね。お母さんを許して」


 おかあさんもわたしをだきしめてくれました。


「おとうさん、おかあさん、なかないで。わたし、いいこになるから」


「おまえはいいこだよ」


「そうよ、いいこよ」


 おとうさんとおかあさんは、わたしをみてわらいました。


 わたしもわらいました。




 それであさになりました。


 おとうさんは、しごとにいきました。


 おかあさんもおにんぎょうをつくっています。


 わたしといもうとはおてつだいです。


 おひるはまたみずかな?


 おにくがたべたいな。


 でもいいや。


 おにくたべると、おとうさんとおかあさんがないちゃうから。


 がまんしなくちゃ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何の肉だったんでしょう。 「わたし」は殺されて食べられるのかと思いました。 健気な「わたし」が不憫でなりません。 それ以上の奥深さには気づきませんでした(-_-) 素敵な時間をありがとうご…
2011/07/30 19:45 退会済み
管理
[一言] これはかなり嫌な感じに怖かったです。 子供の視点で描かれているために全体像が見えないというところが、余計に嫌な雰囲気を形作っていましたね。 これは勉強になりました。 それでは
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