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仮かの(隼人視点)

 期末テストが終わると、冬休みに入った。毎年であれば、ちさき、真香、拓也と俺の四人でクリスマス会に大晦日のカウントダウンと予定で埋まっていただろう。


「試験できたか?」


 放課後、俺の席の隣に座る真香に声をかける。


「いやあ、なんとか追試は免れたよ」


「そのレベルかよ」


「まあ、でもいつもよりはマシだよ」


 それでいつもよりマシとはどう言うことだよ。


「まあ、いいや。これからどこか行くか?」


 陸上部の部活は休みに入ると基本ない。別にインターハイを狙うような強豪校でないのだから当然のことだ。進学校のクラブ活動なんて必死でやってる奴の方が圧倒的に少ないのだ。


「うん!! 隼人と一緒ならどこにでも行くよ」

 

 真香が俺のことを好きだと知ったのは1週間前。俺は、まだその答えを返せないでいた。


「帰りにファミレスでも寄って帰るだけだ」


「了解しました!」


 頭に手を当てて敬礼をする。全く何を考えているんだよ。それにしてもやけに嬉しそうだな。


「なんかいいことあったか?」


「そりゃもう……、隼人と一緒だから……」


「よく恥ずかしげもなく、そんな台詞言えるな」


 ちさきなら、思っていたとしても絶対声には出さないだろうな。まあ、ちさきは未唯のものなのだが……。


「ほら、行くぞ」


 俺が手を出すと、指を絡めてくる。


「えへへへっ、恋人繋ぎだよ」


 俺はその手を解いて普通に握った。


「ちぇっ! ツンデレだね」


「俺はデレねえし」


「じゃあ、ツンツン?」


 なんか某アニメのキャラを想像して頭を振った。


「ちげえよ、行くぞ」


「うっ、うん!」


 数人の見知った生徒に会ったが俺たちを不思議そうに見るものはいない。ただ、……。


「あれ? 今日はちさきちゃんいないの?」


「ちさきは一緒じゃないんだな」


 下駄箱までの僅かの距離であったが、全員から聞かれた。


「うっ、うん。まあな……」


 なんとも煮え切らない返事をする。


「ダメだよ。そんなこと言っちゃ。隼人は傷心中なんだからね」


「えっ!? お前ら何かあったのか?」


 面倒くさいな。真香もちゃんと答えなくてもいいんだよ。


「なんもないですよ」


 俺はそのまま真香の握った手を強く引いた。


「ちょ、ちょっと……」


 驚いた真香とそのまま、学校の外に出る。


「ごめんね、なんか軽率だった」


「いいよ、俺の問題だからな」


「そんなことないよ!! ちさきが拓也と付き合って、本当に辛いのは隼人じゃない!」


「いや、いいんだ。これは俺だけの問題だからさ」


「わたし、隼人の力になりたい。ねっ、キスしたよね。本気だよ! わたし……、隼人になら何されたっていい!!」


 真剣な表情で俺を見つめる。こんなにも真香は俺のことを好きでいてくれてたのか。


「もう少し時間くれないかな。きっと悪いようにはしないから……」


「うんっ、いつまででも待つよ」


「いつまででもでいいのかよ」


「その代わりわたしが行き遅れたら、隼人が絶対もらってね」


 そんなに待つのかよ。俺は思わず苦笑いしてしまう。


「ほら、ファミレスに行くんだろ」


「うっ、うんっ!!」


 ファミレスに入ると見知った顔がいた。ちさきや拓也もいるのかと見渡すがふたりの姿はない。


「ご注文は何にいたしましょうか?」


 ちさきなら、アイスコーヒーを何も言わずにふたり分注文するだろう。


 俺が何も言わなくても、俺がしたいことをしてくれる。それがちさきだった。


「で、何が飲みたい?」


「うーん、目移りしてしまう」


 そうだ。こいつは部類の優柔不断だった。


「じゃあ、俺はアイスコーヒーで、こいつは後で呼びますから……」


 あまり待たせたら悪いと思って、店員に一度下がってもらった。


「じゃあ、このシナモンミルクティーで……」


 注文が決まるまで予想通りきっかり20分の時を要した。もちろん、俺のアイスコーヒーは目の前にある。


「はいはい、店員さん、シナモンミルクティーでお願いします」


「はい。ご注文は以上でよろしいでしょうか」


「うん、それでいいよ」


 厨房に戻っていくウエイトレス。その姿を横目に真香の方に向いた。


「で、隼人は試験どうだった?」


「聞きたい?」


「うっ、……うううっ」


 なんで自分から聞いたのにこいつはこんなに及び腰なんだろう。なんだか、昔飼っていたチワワに似てるな。


「言わなくていい!」


「なんでだよ!」


「その笑みから想像ついたもん」


「はいはい、いつも通りだったよ」


「その答えむかつく」


「まあ、いいじゃん。真香も彼氏・・がいい点数の方がいいだろ」


「えっ!?」


 オレンジの瞳が大きく驚いた表情で見開かれた。


「付き合ってくれるの?」


「キスした相手に答え待たせるのも悪いしさ。まあ、恋人らしいことは暫くできないがとりあえず仮で……」


「仮かの?」


「嫌か……?」


「嫌じゃないけど……、なんかセックスフレンドみたいでいやらしい響き……」


 こいつは脳内お花畑か。


「全くいやらしくねえし、なんだよ、その恥ずかしい台詞は?」


「あっ、いえ、つい言葉に出ただけで……」


 ホテル前でのちさきと未唯のことを思い出して頭を振った。ちさきのことは、忘れると決めたんだ。何考えてるんだよ。


「まあ、そんなことだから、よろしくな」


「ありがとう」


「どういたしまして」


 目の前の真香は本当に嬉しそうにニッコリと笑った。その表情を見て俺は少し救われたような気がした。




――――――




順調に恋が成就していくように思えます。

このまま終わってしまうのでしょうか。


応援ありがとうございます。


今度もよろしくお願いします。

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