クリスマス・イブ その4
「メリークリスマス!」
領主館に戻り、クリスマスパーティーの準備を始める。
たくさんのお料理と、豪華なケーキ。後は少しずつ食べてきた私お手製のシュトーレン。
お料理とケーキほとんどは、アランさんが私達へのクリスマスプレゼントとしてご購入くださった。
「アランさん、ありがとうございます!」
「いえいえ、こちらこそお二人のクリスマスパーティーに混ざって良かったのですか?」
「アランも家族だとリシアが聞かなくてな。私は二人が良かったぞ?」
「はいはい、お姉さま七面鳥ですよー。」
お姉さまに七面鳥のローストを切り分けて渡す。
何か食べさせてる間は静かなのだ。
「リシア様はもうお嬢様の扱いは完璧ですね。」
「そうでもないんですよ?言っても聞いてくれない事が多くて。」
「そういう時はもう遠慮なく叱ってやってください。大変でしょう?」
「ええ。もう毎日怒ってますよ。」
そんな他愛のない話をしながら食事を進めていく。
この時間を幸せと呼ぶのだろうと思う。
「ケーキ、ハチミツ掛けます?」
「…隙あらばハチミツを掛けさせようとするな?」
「え、だってお姉さま何でもハチミツ掛けるじゃないですか。」
「あそこのハニートーストだけだと…」
この流れもいつもの流れだ。
お姉さまにちょっとイチゴが多くなるように切り分けて渡す。
甘いものが特に好きなお姉さまは幸せそうだ。
「お姉さまって甘いもの好きのくせに太りませんよね…。」
「鍛えているからな。」
「運動量が減ってる現状ならばそのうち太りますよ?お嬢様。」
「うるさい、アラン。また落とし穴に落としてやろうか?」
「二度引っかかる馬鹿はおりますまい。次やれば私が勝ちますよ。」
「はいはい、喧嘩するならケーキ取り上げますよ?」
アランさんは、最近よくお姉さまとこうして喧嘩するようになった。
お姉さま曰く、昔はいつもああだったから、リシアをお客様と思って振る舞っていたのでは?とのこと。
今はもう身内くらいに思って貰えているみたいだ。
◆ ◇ ◆ ◇
「「「ごちそうさまでした。」」」
たくさんのごちそうも、3人で食べてしまえばあっという間だ。
まぁ主にお姉さまとアランさんが良く食べるのだが。
「さて、食事が終わりましたし、プレゼント交換と行きましょうか!お姉さま!」
「ああ。そうしようか。」
私達はそれぞれプレゼントを持ち寄る。
「お姉さまには服を用意しました!冬のとってもふりふりもふもふのかわいい奴ですよ!この前買った防寒具と一緒に着てください!」
ウール地のピンクの服で、袖口には白いファーがついている。
ピンクのサンタさんと言った感じの服装で、スラっと長いお姉さまのが着るとセクシーに見えるよう、下はズボンにしてみた。
もちろんとても暖かく、お姉さまも喜んでいただけると思う。
「とても可愛いな。私に似合うだろうか…。」
「お姉さまは可愛いと何度言えば解るんですか?」
不満げにお姉さまのわき腹をつんつんしてやる。
「わかった、わかったからやめてくれ。な?」
とてもむずがりながら身をよじる。本当に可愛い人だ。
「で、お姉さまは私に何をくれるんですか?」
「選んだは良いものの、喜んで貰えるか不安でな…。」
「なんでしょうなんでしょう!ほら、観念して出してくださいな!」
相変わらずこういうシチュエーションでは勿体ぶるんだから。私は何でも喜びますよ。
「これを…。何かあった時、リシアが自分の身を守れたら、と。」
そう言って差し出したのは、小刀と短めの剣だ。
一目見ただけでも業物とわかるような出来だ。
「ありがとうございます!これ、すごく高いんじゃないですか?」
「私の剣と同じ人に作って貰ったものだ。」
「つまり、お揃いだと。」
「…そういう解釈も出来るな。」
お姉さまは言葉を濁すが、多分同じ事を考えていたな?これは。
「お揃い、とっても嬉しいです!」
「もちろん、リシア自身の身を守る以前に私が必ず守る。万が一の時のものだと思って欲しい。」
「解ってますよ。でも、自衛の力は磨かないといけませんね。今度、剣を教えて貰えますか?」
「構わないが…私はあまり人に教えるのが得意ではない。アランに教わった方がいいぞ?」
「お嬢様、教える練習もかねて自分でお教えになった方がよろしいのでは?」
「そうですよ!私はお姉さまに教わりたいです!」
そうやって思い出を繋げていくことが大事なのだ。
アランさんの助け船はありがたい。
「では、年明けくらいから私が教えよう。不慣れだが頑張るからな。」
「ええ!お願いします。」
「改めて、リシア。誕生日おめでとう。」
「ありがとうございます。お姉さまに祝って貰えたことが、とても嬉しいです。」
私は大事にお姉さまからいただいた剣を仕舞い、小刀は携帯できるようにしておく。
まさか、この剣を使うときが来るなんて、今の私は思ってもなかったけれど。