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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第六章 次こそ君を
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クリスマス・イブ その2

クリスマス・イブの街。私達はサンタとトナカイの扮装をして街を歩く。


「お姉さま、あの大岩の広場のところで力試しをしてるみたいです!」

「ほう。大岩を模した岩を持ち上げれば今日使える商品券か。やってみようか?」

「大丈夫ですか?」

「無茶はしないさ。」


お姉さまは岩の前に歩みを進める。


「私もやっても構わないか?」

「大丈夫だが…トナカイの姉ちゃん、こいつはかなり重いぞ?男でも持ち上げられた奴はほとんど居ねえ。」

「やってみればわかるさ。」


お姉さまは自信満々に岩の下に手をかける。


「ほう、なるほど?」

「重いだろう?それくらいにしときな。」

「ああ、リシアよりは重いな?」

「私と比べないで貰えますか!!」


思わず遠くからツッコミを入れてしまう。

なんてことを言うんだあの人は。


「まぁ、この程度なら大丈夫だ。」


そう言うとお姉さまはまるで重さなどないようにそれを持ち上げる。


「おおすげえな、トナカイの姉ちゃん!これなら大岩も持ち上げられるんじゃないか?」

「さすがに無理だ。昔試した。」


試したことあるってのがびっくりなんですけども。


「せっかくだ、ちょっとサービスしてやろう。」


お姉さまはおもむろに岩から片手をはずしたかと思うと、残りの片手でそれを上下させる。

観衆から喚声があがる。


「やるな!サービスしてくれた分でそこの姉ちゃんの分と二人分商品券やるよ!」

「感謝する。…皆、女の私に負けたままで良いのか?」


お姉さまは岩の前からハケる時にニヤリと笑うとそんな挑発するようなことを述べてこちらに戻ってくる。

岩の前にはたくさんの人が一挙に押し寄せていた。


「リシア、商品券を貰ってきたぞ。さて、何に使おうか。」

「お姉さまかっこよかったですよ?」


帰ってきたお姉さまを労うと、うれしそうに笑う。かわいいな。


「せっかくならホットチョコレートのお店でトッピング全部入れちゃいません?」

「それはいいな。最高の贅沢だ。」


私たちは手を繋ぎ直し、ホットチョコレートの店へ足を向けた。


◆ ◇ ◆ ◇


「お兄さん!ホットチョコレート全部入りで!お会計はこれでお願いします!」

「おお、力試しの商品券か。誰があげたんだ?」

「こちらのトナカイのお姉さまです!うちのトナカイさん、最強なんですよ?」


私がシャドーボクシングをやるように手をしゅっしゅとパンチするふりをすると、店員のお兄さんは苦笑いをする。


「上げたのはサンタの姉ちゃんじゃなくて、トナカイの姉ちゃんだろうよ。ほら、全部入り二つだ。」

「いいんですよ!ありがとうございます!」


ホットチョコレートを受け取り、休憩所まで歩く。

座るところを見つけ、ホットチョコレートに口を付ける。


「はぁぁ、最高に美味しいですね、これ。」

「ああ、たまらないな…。」


お姉さまと顔を見合わせ、笑いあう。


「楽しいですね、お姉さま。」 

「ああ、楽しい。」


私も、お姉さまも、最高に楽しんでいるのがわかる。


「本当は、連れてきた時不安だったんだ。王都に比べれば、何もない街だから。」

「そんなことありませんよ?とっても良い街です。」

「そう言ってくれると嬉しい。私もこの街が好きだ。」


お姉さまは愛おしそうな目を街の人混みに向ける。


「連れてきたはいいものの、王都と比べられて帰りたい、住みたくないと思われたらどうしようとずっと思っていた。杞憂だったがな。」

「ふふ、本当に要らぬ心配でしたね。」

「我が家でも、使用人たちやアランとすぐ馴染めるよう、とても頑張ってくれていたのはよくわかっている。ありがとう。」

「皆様方が良い人たちだっただけですよ。」

「アランなどは気難しい方だと思うがな?」

「お姉さまよりはずっとマシですよ。」

「…私、気難しくはないと思うが…」

「ご自覚がおありでないだけかと。」


お姉さまは眉間に皺を寄せ、悩まれている。

その姿が面白い。


「…何にせよ、私の為に頑張ってくれていることには変わりはない。ありがとう。愛している。」

「私も愛していますよ。」


どちらからともなく、私たちは口づけを交わした。



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