アランとの出会い
「着いたぞ、リシア。降りられるか?」
お姉さまは先に馬車から降りて私に手をさしのべる。
その手を取って、私は馬車を降りる。
「わぁ、これがお姉さまのお屋敷…!」
降りた先には無骨でシンプルながら大きな屋敷。
お姉さまはここで育ったのか。
「大きいだけで何の面白味もない家だがな。」
「私は好きですよ?」
そう話す私たちに一人の男性が近寄ってくる。
「これはお嬢様、お帰りなさいませ。」
「ああ、アラン。久しぶりだな。」
アランと呼ばれた男性はお姉さまに恭しく挨拶をする。
「変わりはなかったか?」
「ええ。万事つつがなく。お嬢様、こちらの方は…」
「リシア・エヴァンス子爵令嬢だ。以前より手紙には何度か書いたと思うが、彼女のことだな。」
「これはこれは。はじめまして、私このローエンリンデ領にて代官を務めております、アランと申します。」
「はじめまして!リシア・エヴァンスです!よろしくお願いします!」
アランさんは口調こそ丁寧に私に接してくださるが、目つきは笑っていない。
私何かしたかな?
「アランは一族代々私の家に仕えてくれていてな。両親亡き今、私の親代わりみたいなものだ。」
「そんな。お嬢様、恐れ多くございます。」
「事実だろう?現に今も、アランだからこそ領地の一切を任せられる。」
「身に余る光栄にて。」
お姉さまにとって大事と言うことは私にとっても大事ということだ。仲良くなれるかな?
「領主館は既にお嬢様をお迎え出来るよう整えてございます。ご案内いたしましょう。」
アランさんが屋敷に向かって歩み始めると、お姉さまは私に対してこっそり耳打ちする。
「アランは大体の事情を把握している。リシアのことも、婚約破棄も。その上でまだ納得してもらえてない。すまないな。」
「いえ、仕方ありませんよ。」
「ここにいる間に説き伏せるつもりだが、何せ奴は頭が堅い上に…っ!」
お姉さまの顔色が途端に変わったと思うと、突如私を抱き寄せ剣を抜き、何かを弾く。
「随分良くなられましたね?お嬢様。」
「いきなりだな?アラン。」
足下には小刀が転がっている。えっ、何事!?まさか誘拐イベント??
「ご当主を継がれるなどとおっしゃられるのではこの程度は容易に防いでいただかなければ。」
「以前会った頃の私なら危うかったと思うが?」
「でしょうね。それなら、そんな夢物語諦めてもらわなければいけませんから。」
そう告げると、何事もなかったかのようにアランさんは屋敷に向かって足を進める。
「アランは、頭が堅い上に…ローエンリンデにふさわしく脳筋だ。」
私、アランさんと仲良くなれるのだろうか。