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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第六章 次こそ君を
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記念SS 赤髪の快男児と銀髪の魔女 その2

20000pv記念ssです!

同時刻に一つ前の話も更新しています。


ここまで多くの人に見てもらえると思いませんでした!

これからも是非見守っていただければと思います。


今回のお話はカイトとシンシアのお話、カイト視点となります。



「馬を駆るというのは、どんな気分なのですか?」


とある理由で学園の競技場で愛馬と馬術の練習をしていた。

俺の馬術の練習を眺めていた少女はそう訪ねる。


「あぁ?シンシアは馬に乗ったことがないのか?」

「ありません。普通はないものかと。」

「あー…俺の比較対象が間違ってた。」


脳内に浮かぶのは俺と負けず劣らずの腕前で馬を駆る女。あれと一般貴族令嬢を比較するのは少々酷だ。


「どんな気持ちって…そりゃあれだよお前。なんてーか…あれだわ。」

「私の解る言語でお願い出来ますか?」


確かに自分の今の言葉は会話になっていない。

だが、どんな気持ちかと問われるとどうにも表現しづらいのが実情なのだ。


「あー…」 


シンシアの足下に目を落とす。これでは難しい。


「今週末、ここで集合だ。必ずズボンを履いてこい。良いな?」

「どうして週末にあなたと会わなければいけないのですか?」

「やかましい。とにかく約束だ。」


嫌そうにしているが、こいつが来ないということはまぁない。そういう女だ。



◆ ◇ ◆ ◇


「悪い、待たせたか?」

「いえ、今来たところです。」


週末、俺たちは同じ場所で顔を合わせる。

念押し通りしっかりとズボンを履いてやってきた。


「で、乗馬の練習をするんですか?」

「察しがいいな。そういうことだ。乗ってみるのが一番速い。」

「なるほど。語彙力がおありでないのでお得意の肉体言語でと。」

「お前が女じゃなけりゃ今頃三発は拳が入ってるよ。」


口の減らない女である。まぁ、変によそよそしいよりずっとましだ。


「こいつがうちの馬の中の一匹、涼風だ。」

「ごきげんよう、涼風。首を撫でても?」

「ああ、喜ぶぞ。」


家でも一番気の良い馬を連れてきただけあって、機嫌よくシンシアに撫でられている。

この女、動物にはこんな優しい面出来んだな。


「じゃあ乗ってみっか。涼風、頼むぞ。」

「よろしくお願いします。」

「まずは、涼風の左側に立て。そう。そして左手で手綱と馬のタテガミをしっかり持つ。離すなよ?その後は、右手で鞍の奥を持って、右足で地面を蹴りつつ、右手で強く体を引き寄せて跨がる。惜しい、もう一度だ。」


最初の馬に跨がるところで躓く。後少しなんだが。


「いいか、俺のかけ声で飛べよ。3、2、1、そら!」


飛ぶシンシアの体に手をかけ、補助するように上げてやる。


「よし、跨がれたな!」

「カイト様、変なところを触らないでいただきたいのですが。」

「知るか。練習中は言いっこ無しだ。」


そういいながらも、急に先ほどの手の感触が気になってくる。

ええい、邪念を振り払え。


「乗れたら次は、少しずつ歩いていくぞ。まずは乗馬の姿勢は、バランスよく、まっすぐに、力を抜いての三箇条だ。やってみろ。」

「こうですか。」

「姿勢がすごく良いな。何かやってたか?」

「姿勢を良く保つのも貴族令嬢の品性のうちですから。」

「確かにな。それにしたってシンシアは綺麗だと思うぞ?」

「姿勢が、ですね。」


元々良く動けるタイプだ。この分なら問題なさそうだが。


「じゃあ少しずつ歩かせていく。俺が涼風を先導するから、お前はただ乗っていることに集中しろ。」

「落ちないよう、頑張ります。」

「そんなことにはならねえさ。なっても受け止めてやるから心配すんな。」


涼風の手綱を持ち、少しずつ引いていく。

変に身構えたりせず、涼風の歩くのに合わせて乗っているので、涼風も気楽そうだ。


「良いな。良くリラックスして乗れている。怖くないのか?」

「先ほど受け止めていただけると約束いただいたはずですが。」

「そうなんだがよ…。」


シンシアの絶大な信頼に思わずたじろぐ。普通、そういわれても少しは怖いもんだ。


「まぁいい。もう少し歩いて慣れてきたら速度を上げていくからな。」

「わかりました。」

「速度があがっていくと、自然と馬は上下に揺れるもんだ。そうなったら、合わせて自分も上下に体を動かしてやれ。軽く腰を浮かせて立って、また座る感じだ。」

「こうですか。」


シンシアは少し大袈裟に上下する。一部が揺れて目に悪い。


「もっと小さく。そうだな、そんな感じ。」

「なるほど。これはなかなか大変ですね。」

「歩くリズムに合わせなきゃならないからな。コツは後ろ脚だ。後ろ脚が上がったのが解った瞬間に立つ。踏み下ろした瞬間に座る。」

「わかりやすいですね。流石です。」


シンシアも俺の言ったことをすぐ飲み込み、吸収していく。

教えている方は楽しい。

少しずつ、乗馬のコツを教えていった。


◆ ◇ ◆ ◇


「おお、すごいじゃねえか。」

「教え方がよろしいのかと。」


もうすぐ夕日が沈む頃、シンシアは最後には自分一人で基本の早足で乗れるようになった。1日でここまで行けば上等だ。


「ほんじゃあまぁ、最後は俺の気持ちを味わって貰うか。」

「と言うと。」

「こういうことだ。」


自分はシンシアの後ろに跨がり乗馬する。

涼風を落ち着かせ、自分に主導権を持たせる。


「急に何をされるのですか?」

「今から馬を駆けさせる。しっかり捕まってろよ!」


涼風の胴に足を入れ、速度を上げてゆく。

シンシアが落ちぬよう、あれこれ指示を出す。


「は、速いですね。」

「俺がいりゃ問題ねえよ。」

「これはどちらへ?」

「内緒だ!」


涼風を駆けさせ、目的の場所へ向かう。

時間的にも良さそうだ。


◆ ◇ ◆ ◇


「これは…」

「壮観だろ?」


連れてきたのは王都の西の小高い丘。

遮る建物がなく、大きな夕陽が沈んでいくのが一望できる。


「王都の周りを走るときは、いつもこの風景を見てから帰るんだ。シンシアにも見せてやろうと思ってな。」

「凄いですね…。」


静かに、だが真っ直ぐに夕陽を見つめるシンシア。

夕陽に照らされる彼女の顔は、魔法がかかったようで。


「どうだ?馬を駆る時の気持ち、解ったか?」

「解ったような気がします。特に楽しかったですね。」

「ああ、俺もだ。」


今日の乗馬は、いつもよりずっと短いのに、いつもよりずっと楽しかった。

その理由は、きっと。









カイトとシンシアのお話は書いていて本当に楽しいです。

記念SSではカイトとシンシアもですが、色んな方面に手が出せればなと。

どういう形式でもいいので、こう言ったSSが見たい!という希望をいただければ、記念ごとの時に検討しますのでお気軽にどうぞ。

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